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10:非日常と休息
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「くそ! 本当に腹立たしい野郎だなあいつは! 根津が死んだってのに悲しいなんてそぶり一切見せないし、いまだに自分だけ高みにいるかのように俺らを見下してやがる」
「落ちつけ友哉。確かに氷室は腹の立つ奴だけど、決して馬鹿じゃない。ここから確実に生きて帰るには、あいつの力も必要だと思う。仲良くしろとまではいわないけど、一々挑発に乗らないよう我慢ぐらいはすべきだ」
「それじゃああいつが益々調子に乗ることになると思うんだけどよ……。でもまあ、お前がそういうなら多少は我慢する努力をするわ」
友哉が渋々と言った表情でどかりと椅子に座る。僕もベッドに腰かけながら、あははとから笑いを浮かべた。
昨日から続く想像だにしなかった非日常。初日なら大丈夫だろうと思っていたゴーストからの攻撃は、根津の首なし死体と言う最悪の形で実現してしまった。はっきり言って、もう何も考えたくない。最悪殺されることになってもいいから、救助が来るまでじっと部屋の中に籠っていたい。そんな投げやりな気持にすらなりそうだ。
と、不意に友哉のやや赤く色づいた左手が目に入った。そういえば、今朝僕の安否を確認するために、かなり長い時間扉を叩き続けていたんだった。
疲れた様子で椅子に深く腰掛けている友哉に、僕は「ゴメン」と謝罪の言葉を口にした。
「朝、あんなに扉叩いてたのに、だいぶそのまま待たせちゃったよね。無事であることを知らせるために、最初に軽く声をかけておくべきだったよ。まだ少し赤いけど、痛かったりしない?」
「ん、そんなの気にすんな。お前の人形は無事だったから大丈夫だとは思ってたんだけどな。根津の死体見てパニックになっちまってよ。こっちこそ朝から大分騒々しくしちまって申し訳ないくらいだ。それに扉叩いてた左手より、昨日寝ぼけてベッドから落ちたときに捻った右手の方が痛いしな。こいつのせいでお前を部屋に運ぶ役目を佐野先輩に譲り渡すことになっちまったぜ」
プラプラと右手を軽く揺らしながら、時折痛そうに顔をしかめる友哉。今の今まで全くそんなことに気づいていなかった僕は、少し驚きながら友哉の右手を見つめた。
「全然気づかなかったよ。そんなそぶり見せてくれないし。と云うか揺らしてないで安静にしてないとダメだろ。ここには救急箱とかないから対した治療はできないけど、ちゃんと冷やして休ませてやらないと」
「そこまで大したことねえから大丈夫だよ。それに、俺たちの中には根津を殺した殺人犯が紛れてるかもしれないんだからな。できるだけ弱みは見せたくない」
そういうと友哉は椅子から立ち上がり、「でも一応冷やしとくべきだよな。いったん俺も自室に戻るよ。なんかあったら呼んでくれな」と言葉を残し、部屋から出ていった。
一人になった僕は、根津の部屋で嗅いだ血の匂いが今も残っている気がして来て、取り敢えずシャワーを浴びることにした。
「落ちつけ友哉。確かに氷室は腹の立つ奴だけど、決して馬鹿じゃない。ここから確実に生きて帰るには、あいつの力も必要だと思う。仲良くしろとまではいわないけど、一々挑発に乗らないよう我慢ぐらいはすべきだ」
「それじゃああいつが益々調子に乗ることになると思うんだけどよ……。でもまあ、お前がそういうなら多少は我慢する努力をするわ」
友哉が渋々と言った表情でどかりと椅子に座る。僕もベッドに腰かけながら、あははとから笑いを浮かべた。
昨日から続く想像だにしなかった非日常。初日なら大丈夫だろうと思っていたゴーストからの攻撃は、根津の首なし死体と言う最悪の形で実現してしまった。はっきり言って、もう何も考えたくない。最悪殺されることになってもいいから、救助が来るまでじっと部屋の中に籠っていたい。そんな投げやりな気持にすらなりそうだ。
と、不意に友哉のやや赤く色づいた左手が目に入った。そういえば、今朝僕の安否を確認するために、かなり長い時間扉を叩き続けていたんだった。
疲れた様子で椅子に深く腰掛けている友哉に、僕は「ゴメン」と謝罪の言葉を口にした。
「朝、あんなに扉叩いてたのに、だいぶそのまま待たせちゃったよね。無事であることを知らせるために、最初に軽く声をかけておくべきだったよ。まだ少し赤いけど、痛かったりしない?」
「ん、そんなの気にすんな。お前の人形は無事だったから大丈夫だとは思ってたんだけどな。根津の死体見てパニックになっちまってよ。こっちこそ朝から大分騒々しくしちまって申し訳ないくらいだ。それに扉叩いてた左手より、昨日寝ぼけてベッドから落ちたときに捻った右手の方が痛いしな。こいつのせいでお前を部屋に運ぶ役目を佐野先輩に譲り渡すことになっちまったぜ」
プラプラと右手を軽く揺らしながら、時折痛そうに顔をしかめる友哉。今の今まで全くそんなことに気づいていなかった僕は、少し驚きながら友哉の右手を見つめた。
「全然気づかなかったよ。そんなそぶり見せてくれないし。と云うか揺らしてないで安静にしてないとダメだろ。ここには救急箱とかないから対した治療はできないけど、ちゃんと冷やして休ませてやらないと」
「そこまで大したことねえから大丈夫だよ。それに、俺たちの中には根津を殺した殺人犯が紛れてるかもしれないんだからな。できるだけ弱みは見せたくない」
そういうと友哉は椅子から立ち上がり、「でも一応冷やしとくべきだよな。いったん俺も自室に戻るよ。なんかあったら呼んでくれな」と言葉を残し、部屋から出ていった。
一人になった僕は、根津の部屋で嗅いだ血の匂いが今も残っている気がして来て、取り敢えずシャワーを浴びることにした。
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