即興ミステリ

天草一樹

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李千里の推理(Best solution)

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「今回の事件、ある意味一番重要なのは、これが実際の事件ではなく礼人が作った架空の事件だというところだ。この大前提があることで、容疑者三人の中に必ず一人だけ犯人がいるという事実と、犯人以外は嘘をつかないという絶対の保証が得られている。となれば、後は各容疑者を一人ずつ、いったん犯人であると仮定してみて、その発言が嘘であった場合を考えてみればいい。要するに、俺が真実にたどり着くために用いた方法は消去法だ。現実世界で消去法を用いて犯人を決めるなんてのは最も愚かな考えの一つだが、こういった限定された物語の中でならば最も有効な方法へと変わっていく。

 さて、まず誰が赤貫を殺した犯人足りえないのか。これはすぐに分かることだな。そしてこいつが犯人でないことが分かると、一気に真相が近くなる」

「もったいぶらずにその犯人足りえないという人物を早く教えてくれよ」

 焦れた様子で、多多岐が早く話すよう急かしてくる。こいつ、もう立ち直りやがった! 馬鹿っていうのは落ち込むのも早ければ、立ち直るのも早いのか。全く面倒な生き物だ。

 俺は絶対零度の視線を多多岐に向け、無理やり黙らせる。

「余計なヤジが入ったが、俺が言っている犯人でない人物。それは、戸田賀華太だ」

「なるほどねぇ。確かに僕の経験上オネェ系の男性は心優しい人物が多かったしね。やっぱり女の心を得ようとする過程で、暴力とか嫉妬とか言う醜い感情はできるだけ落としているんだろうねぇ」

 多多岐は訳知り顔でうんうんと頷く。

 ……そうだった、こいつには俺の視線は通じないんだったな。ああ、何とかこいつを黙らせる方法はないものか……。

 頭痛を覚えそうになりながらも、俺は多多岐を無視することに決めて話を再開する。

「戸田賀が犯人でないとする理由は簡単だ。もし戸田賀が犯人であるのなら、警察に対して赤貫が死んでいなかったと証言するはずがないからな。

 どうしてそう言えるのか。それは、赤貫を殺した犯人が、三美が刺したと言った場所と同じ場所を刺し、同じ体勢になるように殺したからだ。このことから、赤貫を殺した犯人は三美が赤貫を刺したことを――さらには、どこを刺したかまで具体的に知っていたということになる。ではどうやってそれを知ったのか。三美は赤貫を刺した後ずっと自分の部屋にこもっていたらしいから、当然誰にも言っていない。となると、犯人はたまたま三美が赤貫を刺した現場を目撃したか、被害者である赤貫自身から聞いたことになる。

 まあ、戸田賀の無実を証明するのは、このどちらの場合でも可能だがな。何せ、三美が赤貫を刺して逃げたという事実を知っていたのなら、赤貫が生きていたなどと言う証言をする必要は一切生じないのだから。単に赤貫が死んでいたと証言さえしていれば、後は自動的に三美が犯人として警察に捕まるだけ。何せ三美はそれだけ不審な行動をとっているし、自分が赤貫を殺してしまったかもしれないと考えていたようでもあるからな。

 これらから、戸田賀は犯人でないと断定できる。もし、そんなことに頭が回らない馬鹿だったのなら、それはそれだが……狂人並みに頭が悪いという説をありにしてしまうと、そもそも推理の余地がなくなる。つまりこの可能性はあり得ない。そうだろ、礼人」

「うん。犯人は矛盾した行動はとらないよ。推理が楽しめなくなるような仕掛けは入れてないから」

 礼人のお墨付きをもらい、俺は少し勢いづきながら話を進める。

「これで残る犯人候補は二人。この二人のどちらが犯人であるかを確定させるのは多少面倒だったが、戸田賀が犯人ではない――つまり戸田賀の証言、22時半ごろにはまだ赤貫が生きていたというものが真である。それを疑わなくてよくなった瞬間、一気に視界が開けた。

 と、その前に一つはっきりさせておかないといけないことがあるな。22時半に赤貫が生きていたということは、三美に刺されて倒れたのは、赤貫の演技だったということだ。また、三美が犯人であり、赤貫を刺す演技をしたという嘘をついた可能性もあるが、これは限りなくゼロに近いと言っていいだろう。仮に、この発言により誰か一人が劇的に怪しくなっているというならまだしも、この嘘は事件をごちゃごちゃにしているだけで三美に何もメリットをもたらしていない。それどころか、この三人の中では特に怪しい人物として疑われるデメリットさえ含んでいる。よって、赤貫が死ぬ演技をしたというのは事実だったと考えられる。

 多多岐先生、あなたは結果としてそのことに気づくことができていました。そういう意味で、完全に的外れな推理をしていたとは言えない。あと少し、この事実を理解したうえでもう一段階深い考察ができていたなら、俺が到ったのと同じ解答を得ることができたはずです」

 すでに立ち直った様子の多多岐にわざわざこんな励ましの言葉を言う必要はないと思うが、とりあえず言っておく。

 この言葉を聞いた途端、多多岐はフフンと得意げな顔を作り、ビシッと俺を指さしてきた。

「そう、まさにそうなんだよ! 僕は自分の推理が限りなく正解に近いところまで行っていることには気づいていたんだ! ただ、それだとセンちゃんの出番を奪ってしまうことになると思ってね、あえて途中の段階で考えることを放棄したのさ。どうだい、教師として生徒の活躍を奪わないようにするこの配慮っぷり!まさに僕こそが教師の鑑だとは思わないかい!」

 後悔。激しく後悔。こんな奴を励まそうなどと思った俺が馬鹿だった。

 本格的に頭痛がしてきた気がするが、鋼の精神力で気のせいだと思い込む。

 俺は多多岐の言葉には何も答えず、話を再開した。

「さて、赤貫がわざわざ死ぬ演技を三美に見せつけたこと。これに、戸田賀の証言を合わせたとき、本来赤貫が目論んでいた当日のシナリオが浮かび上がってくる。

 赤貫が本来行おうとしていたこと、それは、自身が作った『すっごいトマトジュース』――もとい、『血と全く同じ匂いと見た目を兼ね備えたトマトジュース』のお披露目会だったんだ」

「な、なんだってー!」

 お決まりの言葉を吐いて、多多岐が驚きのポーズをとる。礼人はというと、一切動揺した様子も見せず、楽しそうな様子で俺の答えを聞いている。

 フン、そんな風に笑っていられるのは今のうちだけだ。これからお前が考えていたことを全て丸裸にしてやる。

 俺は内心で礼人への挑戦心を新たにし、話を続けていく。

「赤貫がどうして死んだふりを行ったのか。それは、自分の作ったすっごいトマトジュースを、本当に血と勘違いしてくれるかどうかを試したかったからだ。この考えの補強としては、戸田賀が赤貫の部屋に行った際、すでに服を着替えていたり、床の掃除を済ませていたこと。そして、戸田賀が見たという消えたトマトジュース瓶と透明なタッパーの存在だ。明らかに、これらは戸田賀に対しても三美にやったのと同じ実験――ドッキリを行おうとして、その準備をしていたのだということを示している。結果としては、戸田賀が予定より早く来たために、実験を中断しなくてはいけなくなったようだがな」

「ちょ、ちょっと待ってくれよセンちゃん! 僕はてっきり赤貫さんが言っていたすっごいトマトジュースって、三美さんが見たっていうトマトナイフのことだと思ってたけど、違うのかい?」

「それは礼人の――もとい赤貫の――いや、やっぱり礼人のブラフですよ。この事件、すっごいトマトジュースが何かを当てない限り、完璧な解答にたどり着けないようになっています。だから、三美にトマトナイフがすっごいトマトジュースの正体だと話させることで、俺たちの思考をミスリードさせ、解決にたどり着けなくしたわけだ。ちなみに『すっごいトマトジュース』が『血と全く同じ匂いと見た目を兼ね備えたトマトジュース』であることは、赤貫がトマトジュース瓶の中身を透明なタッパーに入れようとしていたこと。そして、わざわざ死んだふりをする際に腹から大量の血を出して見せたことから推測される。まあ、この考えはやや推測の域を出ないものだし、飛躍した推理が必要とされるわけだが、これさえわかれば全てが一本の筋としてつながる。

 まず、死体の周辺にトマトジュースがまかれていた理由も判明する。要するに、赤貫が血のり代わりに使った『すっごいトマトジュース』の存在を、他のトマトジュースでカバーしようとしていたんだ。赤貫を殺した犯人は、すっごいトマトジュースが何かを知り、そのトマトジュースの存在を、警察や他のトマトジュース発明家にばれないようにしたかったわけだ」

「で、でも、何でばれないようにしたかったのかな? ああ、もしかして、こっそり盗んで自分のものにしようとしてたからかい?」

「ええ、それもあるでしょう。しかし、それとは別に、もう一つもっと大きな理由があります。いいですか、犯人の気持ちになって考えてみてください。

 もし血にそっくりなトマトジュースの存在が発覚していたら。さらには、赤貫の部屋から、同じ柄の服が何着も出てきたとしたら。そして、すっごいトマトジュースの入った瓶や、用途不明のタッパーが見つかったとしたら――誰かが、赤貫の用意していたドッキリ計画に気づいてしまうかもしれない。そう犯人が考えるのは自然なことだと思いませんか」

「確かに、赤貫さんがドッキリを計画していたことがばれれば、三美さんの疑いは消えるし、三美さんが刺したのと同じ状態を作ったことだって無駄になる。だからドッキリがばれてしまうのは……。うん? 待ってよ、結果として赤貫さんのドッキリに気づける可能性があった人物って、実際にドッキリを体験した三美さんだけじゃないの? 戸田賀さんは結局ドッキリの準備ができる前に来ちゃって、ドッキリのことは何も知らなかったみたいだし。羽切さんが赤貫さんの部屋に行った時には、すでに赤貫さんが、殺されて、いて……? も、もしかして犯人って!」

 驚愕に目を見開かせて、多多岐が俺を見つめてくる。俺はそれに対して小さく頷き、

「そう、赤貫を殺した犯人は、羽切紀霊ワギリキレイだ。

 ドッキリに気づかれてしまうかもしれない、そんな心配をするのは、ドッキリを自分も体験し、かつ自分以外のものも同じ体験をしていた場合のみだ。お笑い芸人でもなければ、日常の中でドッキリが仕掛けられているなどと考える者は、まず百パーセントいないからな。

 つまりだ、犯人がドッキリの事実を隠すような行動をしたということは、自分の前に同じドッキリを受けたものがいると知っている人間だけなんだ。そして、三美と羽切、この二人のうちその考えに至れる人物がどちらかと言えば、答えは明白だろう。

 ちなみに、三美が犯人だった場合、ドッキリに実際にあったのは自分一人であるから、わざわざ替えの服を捨てたり、すっごいトマトジュースを盗む必要性すらなかったからな。どちらにしろ、彼女は犯人じゃない」

 俺は、挑むような視線を礼人に向ける。

 礼人は相変わらず笑顔のままだが、特に反論してくる気配はない。俺の説明が終わるまで、一言も自分から話すつもりはないということか。

 いいだろう。お前の作った物語、その全てを俺が説明してやろう。

「赤貫を殺すまでの羽切の行動を追ってみると、次のようになると考えられる。

 約束の時間――24時ごろに羽切は赤貫の部屋を訪れた。そこで、羽切も最初に三美が体験したのと同じようなドッキリを仕掛けられたのだろう。しかし、彼は三美のように自室へと逃げ戻ったりはせず、それがドッキリであることを看破した。そして、ドッキリがばれた後に行われるのは、当然ネタ晴らしだ。一番最後の訪問者であった羽切は、赤貫から他の被験者がどんな反応をしたのかも当然聞かされることになった。そこで、三美が赤貫を刺した後、生死を確認することもなく逃亡したことも知ったのだろう。おそらく、戸田賀がドッキリについて知らずに帰ったことも。あとは、元から持ってきていたトマト柄のナイフで、三美が刺したのと同じ場所を刺し赤貫を殺害。後は三美が見たのと同じような体勢になるよう死体を動かし、ドッキリをにおわせそうなものを片っ端から処分していったわけだ。動機はもちろん、赤貫が作ったすっごいトマトジュースの強奪と言ったところだろうな」

 以上で俺の推理は終了だ。

 そう告げて、俺は二人の反応を見た。

 多多岐は……何というか尊敬のまなざしで俺を見つめている。まあこのダメ教師から尊敬されたところで、いろいろと面倒ごとを手伝わされるようになるだけだろうからちっともうれしくないが。

 肝心の礼人は、やはりにこやかな笑顔を俺に向けている。

 無言のままじっと視線を礼人に向け、今の答えで正しかったのかどうかを問う。

 数秒の沈黙のうち、礼人はゆっくりと口を開いていき、

「さすが千里だね。あれだけの情報からこんな真相を導き出せるなんて。僕の完敗だよ」

 と、敗北を宣言した。



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