上京して一人暮らし始めたら、毎日違う美少女が泊まりに来るようになった

さばりん

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第三章 GW帰省編

第五十六話 愛梨さんの素性(愛梨3泊目)

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「到着!」

 お店の締め作業を終えて、母親の車に揺られること30分。南家の実家に到着した。
 
 既に日は沈み、真っ暗になった町の住宅街の中に佇む2階建ての白い家が、俺達を出迎えてくれた。
 愛梨さんは車を降りると、もの珍しそうに俺の実家を眺める。

「へぇー、ここが大地君の実家かぁ……大きいね」
「まあ、都内のアパートに比べればそりゃでかいですよ」
「それはそうだけど、やっぱり家のスケールも都内より大きく見えるよ」
「そうですかね……?」

 俺は改めて愛梨さんに言われて自分の実家をまじまじと観察してみる。
 確かに都内とは違い、広々とした庭や駐車場が各家に完備され、隣との家の間隔も都内と違い広いからだろうか?
 アパートのような集合住宅もこの辺りにはなく、同じような一軒家が連なっていることを考えると、都内と比べて大きく見えてしまうのも仕方がないのかなと思えてきた。

「二人とも早く入りなさい、そこにいても寒いわよ!」

 母親が玄関の扉を開けて手招きしているのを見て、二人で顔を見合わせる。
 海から吹いてくる冷たい夜風が顔に当たりツーンとした冷たさが染みわたる。

「行きましょうか」
「うん」

 俺が一歩前を歩きながら、愛梨さんを家に迎えた。


 ◇


 愛梨さんは家に上がった後も、驚きっぱなしだった。
 どこか懐かしさを覚えるような古びたリビング、俺や大空の部屋も紹介して、生活感あふれる様子に何度も感動していた。
 
 後で話しを聞いたところ、子供の頃からずっとマンション暮らしだったため、一軒家に来たのは初めてなのだそう。
 
 愛梨さんはずっとキョロキョロと俺の実家を観察し終えて、来客用の寝室へと案内された後、大空と一緒にお風呂に入り、今は大空の部屋でおしゃべりにきょうじている。

 女の子の会話に加わるのは気が引けるので、俺は自分の部屋で布団を敷いて、布団の上でスマホを操作しながらくつろいでいた。

 健太から連絡が来ており、今日の授業で抜き打ちのテストが行われたと報告が届いた。
 クソ……マジ最悪だ、GWくらいホント休ませてくれよ大学め……。
 
 そんなことを思っていると、コンコンとドアが叩かれた。

「はーい」

 俺は寝っ転がりながらドアの方へ顔を向けると、ガチャっと扉が開き愛梨さんが顔を出した。

「やっほ、大地くん! って随分とくつろいでるね」
「まあ、特にやることもなかったんで」
「そっか……ちょっとお話しない?」
「えぇ、いいですよ」

 愛梨さんは部屋の中に身体を入れて、静かにドアを閉めた。
 俺も布団から起き上がってあぐらをかいて座り、愛梨さんの方へ向き直る。

「大空との話は終わりました?」
「うん! 大空ちゃんすごいはしゃいでたみたいで、途中でウトウトしちゃってたから寝かせてきてあげた」
「そうだったんですね、それはすいません」

 ふと部屋の時計を見ると、時刻は夜の11時を既に回っていた。

「それにしても、大空ちゃん可愛いね」
「自慢の妹ですから」
「お? シスコン宣言?」
「まあ、否定はしません」
「あら珍しい。って、私も人のこと言えないんだけどね」

 何気なくそんなことを呟く愛梨さんは、どこか寂し気な表情をしていた。

「その……こっち座ります?」

 俺は何か言わなければならない気がして、愛梨さんを布団へ招いた。

「ありがとう」

 一言礼を言って、愛梨さんが俺の布団の上に座った。

「私にもね、大地君と同じ3つ離れた妹がいるんだけど、大空ちゃんと同じころはすぐに『お姉ちゃん』って甘えてきて、可愛かったなぁー」

 俺が聞いてもいないことを、愛梨さんはどこか懐かしむような表情で遠くを見ながら口にした。
 そういえば、俺は愛梨さんの家のことを何も知らない。
 愛梨さんが今どこに住んでいるのかさえ知らない。家族と一緒に住んでいるのかな? 
 
 愛梨さんがアパートに一方的に押しかけてきているだけで、それ以外で愛梨さんと会う時のは、大学やサークル活動ばかり。愛梨さんから自分の家族の話を切り出したのは初めてで、それが意外だった。

「愛梨さんは、今は妹さんと仲良くないんですか?」
「ううん、今も仲はいいし、よく連絡も取りあっているわ、でも……」

 愛梨さんはバツが悪そうな表情を浮かべたが、諦めたようにふっと息を吐いた。

「あれは一昨年のことだね、両親が離婚ちゃって、私たちはそれぞれの片親について行くことになったの、私が父親に、妹が母親に付いていった」

 愛梨さんは昔の悲しい出来事を俯きながら、どこか寂しそうな表情で話し続ける。

「私とお父さんが前の家を出ていったんだけど、私は大学への進学も決まってたから、都内じゃないところへ引っ越したお父さんとも別れて、結局一人暮らしする羽目になったの。お母さんからは『そんな無責任な父親は放って、うちに帰ってきなさい』って言われたんだけど、お父さんのことも裏切れなかったし、結局今も私は一人暮らしをしながら、時々妹の様子を見に、元いた実家に会いに行くって感じ」

 哀愁を漂わせる表情を浮かべながら、愛梨さんが自分の家のことを話してくれた。

「そうだったんですね、なんかごめんなさい。悲しい過去を思い出させちゃって……」
「ホント、大地君のせいなんだからね」

 正直愛梨さんが自分のことを話してくれたことが意外だった。それでも、愛梨さんが俺に言いにくいことを話してくれるくらいに、俺のことを信用してくれることが嬉しかった。
 すると、愛梨さんは冗談ぽくニコっと作り笑いを浮かべた。その表情もどこか目の奥底に見える愛梨さんの心情が写っているような気がした。

「ということで、大地君には、私のお姉ちゃんとしての役割をしっかりとまっとうさせてもらわなきゃね!」

 愛梨さんが切り変えるようにそう言うと、俺の方へスっと近づいてきた。そのまま俺の肩を掴んで、布団に押し倒した、仰向けに布団に押し倒された俺の身体に愛梨さんがうつぶせの状態で乗っかってきた。

 お風呂上りのフワッとしたいい香りと、透き通ったような爽やかな愛梨さんの匂い。そして、なんといっても胸の辺りに当たっているクッションのような柔らかい感触が身体全身に伝わる。

「ちょっと、愛梨さん!?」

 俺は何がなんだかわからないまま、アワアワと手の置き場に困りながら愛梨さんを見つめる。
 愛梨さんは俺を見つめなおすと、ニコっと微笑んで言った。

「どうしてだろうね、なんか大地君の前だと、なんでも知っててほしいって思っちゃって、家族のことなんて今まで話したことなかったのに、ホント責任取ってよね」

 そう言うと、愛梨さんは顔を俺の顔へと近づけてきて……俺が目を瞑ると、愛梨さんは俺の顔の横に付いている耳に口を近づけてふぅっと息を吹きかけた。
 身体全身がゾクっとして身震いをする。
 くすぐったいともかゆいとも何とも言えない感覚に陥り、思わず逃げようと足を動かした。

「こーら。ダメ、今日は私の弟としていっぱい甘やかさせてもらうんだから」
「弟……ですか?」
「そう、妹にも構ってもらえず寂しいお姉ちゃんは、弟の大地君に構ってもらいのです。ダメ?」

 首をキョトンと傾けて俺の目を覗き込むように見つめてくる愛梨さんは、とても甘美的であどけなさが残る表情で可愛かった。
 俺は思わず目を逸らして、

「ダメじゃないです……」

 と答えることしか出来なかった。

「そっか、じゃあお言葉に甘えて」

 愛梨さんはニコッと笑い、再び俺の耳に息を拭き掛けて、愛梨さんは満足するまで弟みたいな俺の反応を楽しんだ。


 ◇


 しばらく俺の両耳を堪能した愛梨さんは、最後に思いっきり、耳に息を吹きかけてチュっと耳にキスをして離れた。
 俺はずっと愛梨さんの気持ちいい耳責めにやられ、息を荒げクタクタになってしまっていた。

「ありがとう、満足した!」

 すっきりした表情で愛梨さんがそう言うと、俺の身体から離れ、すっと起き上がった。
 急に俺の元から身体を離した愛梨さんを、俺は驚くようにしてじぃっと見つめる。

「どうしたの? そんな物欲しそうな表情しちゃって」

 愛梨さんはからかうように目で、俺を見つめながら再び身体を近づけてきて、手をスっと人差し指を俺の唇の前に置いた。

「ダーメ、今日は弟なんだから、スキンシップはここまで! また、向こうに帰った時、してあげるね♪」

 ウインクをしつつ官能的な大人びた声で言い終えると、今度こそ愛梨さんは俺の身体から離れて立ち上がり、そのまま部屋のドアの方へと向かっていく。

「お休み大地君」

 顔だけこちらに向け、手をヒラヒラと振りながら静かに扉をパタンと閉めて、愛梨さんは来客用の寝室へと戻っていった。

 俺は愛梨さんにからかわれながらも、愛梨さんのことを少し知ることが出来て嬉しくもある反面、愛梨さんの新たな素顔を知ってしまった。そんな一日になった。
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