27 / 56
第二章 寝泊り開始編
第二十七話 吉川さんの素顔(萌絵1泊目)
しおりを挟む
玄関の鍵穴に鍵を差し込んで、カチャっと施錠を解除して、玄関のドアを開けて、吉川さんを家に招き入れる。
「どうぞ、何もないですけど」
「お、お邪魔します」
ペコペコとしながら吉川さんは、恐る恐る玄関へ足を踏み入れた。
俺は部屋の明かりをつけて、吉川さんを迎え入れる。
「適当に荷物置いちゃってください」
「うん、ありがとう……」
吉川さんは脱いだ靴を綺麗に並べてから、くるっと部屋の方へと身体を向け、中をキョロキョロと見渡しながら「ほえー」っと興味深そうな声を出して歩いてきた。
「その……狭くて申し訳ないですが」
「いやいや、泊めてくれるだけも本当に感謝というかなんというか……本当にありがとう!」
深々と吉川さんは俺に向かって頭を下げた。
「まあ、色々事情があるみたいですし別にいいですよ。とりあえず、先にシャワー浴びてくるので、テレビとか見てて時間潰しててください」
「あっ、うん。わかった」
明日は俺も朝から大学だし、もてなしている暇はあまりない。
吉川さんにそう言い残して、俺はそそくさとお風呂場へと向かった。
◇
シャワーを浴びて部屋へ戻ると、吉川さんは自分の荷物を整理しているところだった。
黄色いリュックサックの中には、寝巻きや歯ブラシなどの宿泊用具がすでに入っていたようで、それらが机の上に並べられていた。どうやら、木曜日は頻繁にこのような事態が起こるようで、いつでも宿泊できるように準備を整えているらしい。
「上がったので、次どうぞ」
「あぁ、ごめんね。ありがとう」
吉川さんは寝間着を持って立ち上がり、シャワーの方へ向かって行く。
俺は吉川さんがシャワーを浴びている間に、来客用の布団と自分の布団を敷いて、就寝の準備を整えて、明日の準備を済ませておく。
しばらくすると、オレンジ色のバスタオルで髪を拭きながら、吉川さんがお風呂から出てきた。
「お風呂ありがとう!」
「いえいえ。狭くてすいま……せ……」
俺はお風呂上がりの吉川さんを見て驚いた。化粧を落としてすっぴん姿になった吉川さんは、いつもの大人びた雰囲気は微塵もなく。小顔の丸い顔に綺麗な鼻筋、唇がプリっとした可愛らしい顔立ちへ変貌を遂げていた。
「いやいや、全然平気、平気! って、どうしたの? そんな驚いた顔して?」
あどけない表情で吉川さんがキョトンと首を傾げる。その表情から見ても、吉川さんは俺よりも年上の女性とは到底思えなかった。
「あの、大変失礼なこと聞いたら申し訳ないんですけど」
俺は敬語になりながら恐る恐る質問をしてみた。
「吉川さんっておいくつなんですか?」
俺がそう尋ねると、吉川さんは「あ~」と何やら納得したような声を漏らした。
「えっとね、十八歳」
「へっ……え!? 十八!? 同い年!?」
「あははっ……やっぱり、年上だと思ってたよね」
吉川さんは苦笑いした表情で髪の毛を拭いている。
「いやだって、ドラックストアで会った時はすごい大人びてて、てっきり年上かと……」
「あはは、よく言われるんだよね。私大人っぽいメイクしてるから年相応にみられなくてさ」
髪の毛をくしゃくしゃとタオルで乾かしながら、吉川さんはのんきにそう言った。だが、これは困ったぞ。
「同い年ということは……俺はこれからどう接して喋れば……」
「普通にため口でいいよ! それに、吉川さんって他人行儀な呼び方も辞めてさ、フランクな感じでいいって!」
髪を乾かし終えて、バスタオルを首に巻き、ニコニコしながら吉川さんが言ってくる。
「え、じゃあ。吉川?」
「ぶっ、なんで疑問形なの?」
俺の呼び方がおかしかったのか、クスクスと笑われた。
「普通に萌絵でいいよ。私も大地って呼ぶし」
仲のいい友達と喋っているかのような感覚で、吉川さんはフランクな口調で俺を呼んだ。
「わかった。じゃあ、改めてよろしく。萌絵」
「うん、よろしくね大地!」
あどけなさが残る表情で、ニコっと笑った彼女は、どこか優しさに包まれるような、そんな笑顔だった。
◇
早朝、まだ日が昇って間もない頃、玄関のドアを開けて、萌絵がくるっと振り返る。
「それじゃあ、泊めてくれてありがとねー」
「うん、またね」
ニコっとした笑顔で、可愛らしく胸元の前で手を振って、萌絵は俺の家を後にした。
玄関の鍵を閉めて、部屋へ戻ると、なんだが肌寒さを感じられた。
それにしても、まさか萌絵が同い年だとは思わなかったなぁ……。
あの後、萌絵が専門学校に通いながらアルバイトをしていることや、共通の好きなアーティストがいたことなどを話して、すっかり意気投合した。寝る頃には、もう名前呼びにぎこちなさはなくなっていて、完全に友達として打ち解けていた。
終いには、「また、こういう機会があったらうちに泊まりにおいでよ」っと完全に家に誘い込む口実を作るようにして、萌絵と連絡先まで交換していた。
たまには、萌絵のドラッグストアに顔を出して買い物をして様子を見に行こう。そう思う俺なのだった。
「どうぞ、何もないですけど」
「お、お邪魔します」
ペコペコとしながら吉川さんは、恐る恐る玄関へ足を踏み入れた。
俺は部屋の明かりをつけて、吉川さんを迎え入れる。
「適当に荷物置いちゃってください」
「うん、ありがとう……」
吉川さんは脱いだ靴を綺麗に並べてから、くるっと部屋の方へと身体を向け、中をキョロキョロと見渡しながら「ほえー」っと興味深そうな声を出して歩いてきた。
「その……狭くて申し訳ないですが」
「いやいや、泊めてくれるだけも本当に感謝というかなんというか……本当にありがとう!」
深々と吉川さんは俺に向かって頭を下げた。
「まあ、色々事情があるみたいですし別にいいですよ。とりあえず、先にシャワー浴びてくるので、テレビとか見てて時間潰しててください」
「あっ、うん。わかった」
明日は俺も朝から大学だし、もてなしている暇はあまりない。
吉川さんにそう言い残して、俺はそそくさとお風呂場へと向かった。
◇
シャワーを浴びて部屋へ戻ると、吉川さんは自分の荷物を整理しているところだった。
黄色いリュックサックの中には、寝巻きや歯ブラシなどの宿泊用具がすでに入っていたようで、それらが机の上に並べられていた。どうやら、木曜日は頻繁にこのような事態が起こるようで、いつでも宿泊できるように準備を整えているらしい。
「上がったので、次どうぞ」
「あぁ、ごめんね。ありがとう」
吉川さんは寝間着を持って立ち上がり、シャワーの方へ向かって行く。
俺は吉川さんがシャワーを浴びている間に、来客用の布団と自分の布団を敷いて、就寝の準備を整えて、明日の準備を済ませておく。
しばらくすると、オレンジ色のバスタオルで髪を拭きながら、吉川さんがお風呂から出てきた。
「お風呂ありがとう!」
「いえいえ。狭くてすいま……せ……」
俺はお風呂上がりの吉川さんを見て驚いた。化粧を落としてすっぴん姿になった吉川さんは、いつもの大人びた雰囲気は微塵もなく。小顔の丸い顔に綺麗な鼻筋、唇がプリっとした可愛らしい顔立ちへ変貌を遂げていた。
「いやいや、全然平気、平気! って、どうしたの? そんな驚いた顔して?」
あどけない表情で吉川さんがキョトンと首を傾げる。その表情から見ても、吉川さんは俺よりも年上の女性とは到底思えなかった。
「あの、大変失礼なこと聞いたら申し訳ないんですけど」
俺は敬語になりながら恐る恐る質問をしてみた。
「吉川さんっておいくつなんですか?」
俺がそう尋ねると、吉川さんは「あ~」と何やら納得したような声を漏らした。
「えっとね、十八歳」
「へっ……え!? 十八!? 同い年!?」
「あははっ……やっぱり、年上だと思ってたよね」
吉川さんは苦笑いした表情で髪の毛を拭いている。
「いやだって、ドラックストアで会った時はすごい大人びてて、てっきり年上かと……」
「あはは、よく言われるんだよね。私大人っぽいメイクしてるから年相応にみられなくてさ」
髪の毛をくしゃくしゃとタオルで乾かしながら、吉川さんはのんきにそう言った。だが、これは困ったぞ。
「同い年ということは……俺はこれからどう接して喋れば……」
「普通にため口でいいよ! それに、吉川さんって他人行儀な呼び方も辞めてさ、フランクな感じでいいって!」
髪を乾かし終えて、バスタオルを首に巻き、ニコニコしながら吉川さんが言ってくる。
「え、じゃあ。吉川?」
「ぶっ、なんで疑問形なの?」
俺の呼び方がおかしかったのか、クスクスと笑われた。
「普通に萌絵でいいよ。私も大地って呼ぶし」
仲のいい友達と喋っているかのような感覚で、吉川さんはフランクな口調で俺を呼んだ。
「わかった。じゃあ、改めてよろしく。萌絵」
「うん、よろしくね大地!」
あどけなさが残る表情で、ニコっと笑った彼女は、どこか優しさに包まれるような、そんな笑顔だった。
◇
早朝、まだ日が昇って間もない頃、玄関のドアを開けて、萌絵がくるっと振り返る。
「それじゃあ、泊めてくれてありがとねー」
「うん、またね」
ニコっとした笑顔で、可愛らしく胸元の前で手を振って、萌絵は俺の家を後にした。
玄関の鍵を閉めて、部屋へ戻ると、なんだが肌寒さを感じられた。
それにしても、まさか萌絵が同い年だとは思わなかったなぁ……。
あの後、萌絵が専門学校に通いながらアルバイトをしていることや、共通の好きなアーティストがいたことなどを話して、すっかり意気投合した。寝る頃には、もう名前呼びにぎこちなさはなくなっていて、完全に友達として打ち解けていた。
終いには、「また、こういう機会があったらうちに泊まりにおいでよ」っと完全に家に誘い込む口実を作るようにして、萌絵と連絡先まで交換していた。
たまには、萌絵のドラッグストアに顔を出して買い物をして様子を見に行こう。そう思う俺なのだった。
0
お気に入りに追加
45
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。

恐喝されている女の子を助けたら学校で有名な学園三大姫の一人でした
恋狸
青春
特殊な家系にある俺、こと狭山渚《さやまなぎさ》はある日、黒服の男に恐喝されていた白海花《しらみはな》を助ける。
しかし、白海は学園三大姫と呼ばれる有名美少女だった!?
さらには他の学園三大姫とも仲良くなり……?
主人公とヒロイン達が織り成すラブコメディ!
小説家になろう、カクヨムでも投稿しています。
カクヨムにて、月間3位

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

覚えたての催眠術で幼馴染(悔しいが美少女)の弱味を握ろうとしたら俺のことを好きだとカミングアウトされたのだが、この後どうしたらいい?
みずがめ
恋愛
覚えたての催眠術を幼馴染で試してみた。結果は大成功。催眠術にかかった幼馴染は俺の言うことをなんでも聞くようになった。
普段からわがままな幼馴染の従順な姿に、ある考えが思いつく。
「そうだ、弱味を聞き出そう」
弱点を知れば俺の前で好き勝手なことをされずに済む。催眠術の力で口を割らせようとしたのだが。
「あたしの好きな人は、マーくん……」
幼馴染がカミングアウトしたのは俺の名前だった。
よく見れば美少女となっていた幼馴染からの告白。俺は一体どうすればいいんだ?

俺の家には学校一の美少女がいる!
ながしょー
青春
※少しですが改稿したものを新しく公開しました。主人公の名前や所々変えています。今後たぶん話が変わっていきます。
今年、入学したばかりの4月。
両親は海外出張のため何年か家を空けることになった。
そのさい、親父からは「同僚にも同い年の女の子がいて、家で一人で留守番させるのは危ないから」ということで一人の女の子と一緒に住むことになった。
その美少女は学校一のモテる女の子。
この先、どうなってしまうのか!?

学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった
白藍まこと
恋愛
主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。
クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。
明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。
しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。
そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。
三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。
※他サイトでも掲載中です。

コミュ障な幼馴染が俺にだけ饒舌な件〜クラスでは孤立している彼女が、二人きりの時だけ俺を愛称で呼んでくる〜
青野そら
青春
友達はいるが、パッとしないモブのような主人公、幸田 多久(こうだ たく)。
彼には美少女の幼馴染がいる。
それはクラスで常にぼっちな橘 理代(たちばな りよ)だ。
学校で話しかけられるとまともに返せない理代だが、多久と二人きりの時だけは素の姿を見せてくれて──。
これは、コミュ障な幼馴染を救う物語。
毎日更新します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる