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第二章 寝泊り開始編
第十八話 運命の席決め
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俺たちが向かったのは、新入生歓迎会が行われる駅前近くの大衆居酒屋。
入り口で靴を脱いで、懐かしい番号札の木の板をはめ込む式のロッカーに靴を入れ、木の板を取りだす。
「こういう居酒屋とか初めて来た」
俺が物珍しい様子で辺りを見渡していると、綾香が意外そうな顔をする。
「そうなの? みんな来てるもんだと思ってた」
「いや……だって未成年だし、なかなか来ないでしょ?」
「へぇーそういうもんなんだ……」
「綾香は来たことあるの?」
「うん、私は撮影の打ち上げとかでよくスタッフさんとかに連れられて」
「あぁ……なるほど。大人の付き合いってやつか」
「そうそう」
そんな会話をしつつ、お店の廊下を進むと、廊下を進んだ左側に、これぞ宴会場といったような、広い座敷席が現れた。そこには、数名の先輩と思われる人たちが既に準備をして待っていた。
座敷の入り口で一人の先輩が声を掛けてくる。
「はい、ここで新入生のみんなにはくじを引いてもらいます。この書かれた番号の席に座ってくださいね」
「はーい!」
「ぐぬぬぬぬぬっ……」
詩織が恨めしい視線で健太を睨みつけている。
一方で、監視が届かない位置に詩織が行く可能性が出た健太は、にたぁっとしてやったり顔で勝ち誇った顔を浮かべていた。
お互いバチバチと視線を交錯させ、けん制し合いながらくじを引いていく。
「それじゃあ今度は後ろの二人、どうぞ!」
そのくじ引きが、俺達にも回ってきた。俺は綾香とどちらからでもなく顔を見合わせる。
「……どっちから引く?」
「大地君から引いていいよ」
「わかった」
綾香に促されて、俺はくじの紙が入った箱を持っている先輩の前に立つ。
そして、両手を合わせて祈りを捧げる。
どうか、天使のような女性がいるテーブルになりますように……!
◇
新入生たちは、引いたくじの番号のテーブルへ散らばって座った。
俺は他の三人とは別々のテーブルになった。俺が座敷の端の列の真ん中のテーブルで、綾香は俺が座っている席から斜め右前のテーブル。その左隣のテーブルには、ぐぬぬっと悔しそうな表情を浮かべる健太と、勝ち誇ったような表情を浮かべている詩織の姿があり、詩織はにこやかな笑みで俺に手を振っている。神は詩織に味方したようだ。
そんなことをして先輩たちを待っていると、ようやくガヤガヤと騒がしい声が聞こえてきて、先輩たちと思われる人達がやってきた。
同じ私服姿であるにもかかわらず、先輩たちは新入生とは違い、どこか大人びた雰囲気があるから不思議なものだ。これも、大学生特有の成せる技なのだろうか?
俺は次々と入ってくる先輩たちの顔を順に見ていく。すると、宴会場スペースの入り口に三人ほどの女性の先輩たちが現れた。おしゃべりに興じながら入って来たその女性の中に、あの天使のような女性の先輩はいた。
今日は、黒のシャツに赤のカーディガンを羽織り、紺のジーンズを着こなして、こないだよりも大人びた雰囲気をさらに醸し出していた。俺はその先輩が向かう方向をずっと眺めていた。
そして、彼女は俺のテーブルを通り過ぎる際、一瞬チラっとこちらを見たような気がするが、すぐに視線をおしゃべりしている人の方へと戻し、無情にも俺の座っているテーブルを通り過ぎて行ってしまう。
そして、その天使のような女性が向かったのは、綾香が座っているテーブル。
残念ながら、神は俺にも味方してくれなかったようだ。そう簡単に物事は上手く進まないわな。
俺よりも近くに天使のような女性が座った健太は、でへーっと緩みに緩んだ顔で、その天使のような女性を見つめている。だが、それを見た詩織が、咄嗟に後ろから健太の目元に手を回して視界を遮る。
俺のブロックには、黒ぶち眼鏡を掛けた短髪の細身の男性と、髪をオールバックに固めて、耳にピアスをしたイケメンの先輩が座った。
「こんばんはー」
イケメンの先輩が俺たちにフランクな挨拶をしてくる。
「今日は参加してくれてありがとう。短い時間だけど雰囲気だけでもつかんでってくれると嬉しいかな」
「マジメか!」
細身の男性の発言に対して、イケメンの先輩がそうツッコミを入れる。
「うるせぇ!」
細身の男性は、イケメンの先輩に突っ込まれてニヤニヤとしていたが、一つ咳ばらいをして、パンパンと手を叩きながら注目といって立ちあがる。どうやら細身の男性は、このサークルの代表者らしく、全員に向かって挨拶を始めた。
「えっと、今日は新入生の皆さん集まってくれてありがとうございます。短い時間ですが、雰囲気だけでもつかんでいってください」
俺たちに先ほど言っていたことを、他の新入生にも言っていた。他の先輩からは、「真面目だぞ~」と、イケメン先輩と同じようなヤジが飛ばされていた。どうやら、そういうキャラの人らしい。
「先輩のみなさんは積極的に、新入生の人に声を掛けてあげてください」
『はーい』と先輩たちの生返事が聞こえる。
「それじゃあ、みなさんグラス持ってください! グラスに注いでない人は急いで!」
俺たちは手元に置いてあったピッチャーに入っていたウーロン茶らしきものをグラスに注ぐ。イケメンの男性が、細身の男性に瓶ビールをグラスに注いで渡してあげていた。
「みなさん、準備はいい?」
「ちょっと待って」
他の机からそんな声が聞こえてくるので、グラスを持ってしばし待つ。
先ほど待ったがかかった机の方から、「いいよ~」という声が聞こえてきた。
「じゃあ、今日は楽しみましょう、乾杯!」
「かんぱーい!」
こうして、『FC RED STAR』の新入生歓迎会が幕を開けた。
入り口で靴を脱いで、懐かしい番号札の木の板をはめ込む式のロッカーに靴を入れ、木の板を取りだす。
「こういう居酒屋とか初めて来た」
俺が物珍しい様子で辺りを見渡していると、綾香が意外そうな顔をする。
「そうなの? みんな来てるもんだと思ってた」
「いや……だって未成年だし、なかなか来ないでしょ?」
「へぇーそういうもんなんだ……」
「綾香は来たことあるの?」
「うん、私は撮影の打ち上げとかでよくスタッフさんとかに連れられて」
「あぁ……なるほど。大人の付き合いってやつか」
「そうそう」
そんな会話をしつつ、お店の廊下を進むと、廊下を進んだ左側に、これぞ宴会場といったような、広い座敷席が現れた。そこには、数名の先輩と思われる人たちが既に準備をして待っていた。
座敷の入り口で一人の先輩が声を掛けてくる。
「はい、ここで新入生のみんなにはくじを引いてもらいます。この書かれた番号の席に座ってくださいね」
「はーい!」
「ぐぬぬぬぬぬっ……」
詩織が恨めしい視線で健太を睨みつけている。
一方で、監視が届かない位置に詩織が行く可能性が出た健太は、にたぁっとしてやったり顔で勝ち誇った顔を浮かべていた。
お互いバチバチと視線を交錯させ、けん制し合いながらくじを引いていく。
「それじゃあ今度は後ろの二人、どうぞ!」
そのくじ引きが、俺達にも回ってきた。俺は綾香とどちらからでもなく顔を見合わせる。
「……どっちから引く?」
「大地君から引いていいよ」
「わかった」
綾香に促されて、俺はくじの紙が入った箱を持っている先輩の前に立つ。
そして、両手を合わせて祈りを捧げる。
どうか、天使のような女性がいるテーブルになりますように……!
◇
新入生たちは、引いたくじの番号のテーブルへ散らばって座った。
俺は他の三人とは別々のテーブルになった。俺が座敷の端の列の真ん中のテーブルで、綾香は俺が座っている席から斜め右前のテーブル。その左隣のテーブルには、ぐぬぬっと悔しそうな表情を浮かべる健太と、勝ち誇ったような表情を浮かべている詩織の姿があり、詩織はにこやかな笑みで俺に手を振っている。神は詩織に味方したようだ。
そんなことをして先輩たちを待っていると、ようやくガヤガヤと騒がしい声が聞こえてきて、先輩たちと思われる人達がやってきた。
同じ私服姿であるにもかかわらず、先輩たちは新入生とは違い、どこか大人びた雰囲気があるから不思議なものだ。これも、大学生特有の成せる技なのだろうか?
俺は次々と入ってくる先輩たちの顔を順に見ていく。すると、宴会場スペースの入り口に三人ほどの女性の先輩たちが現れた。おしゃべりに興じながら入って来たその女性の中に、あの天使のような女性の先輩はいた。
今日は、黒のシャツに赤のカーディガンを羽織り、紺のジーンズを着こなして、こないだよりも大人びた雰囲気をさらに醸し出していた。俺はその先輩が向かう方向をずっと眺めていた。
そして、彼女は俺のテーブルを通り過ぎる際、一瞬チラっとこちらを見たような気がするが、すぐに視線をおしゃべりしている人の方へと戻し、無情にも俺の座っているテーブルを通り過ぎて行ってしまう。
そして、その天使のような女性が向かったのは、綾香が座っているテーブル。
残念ながら、神は俺にも味方してくれなかったようだ。そう簡単に物事は上手く進まないわな。
俺よりも近くに天使のような女性が座った健太は、でへーっと緩みに緩んだ顔で、その天使のような女性を見つめている。だが、それを見た詩織が、咄嗟に後ろから健太の目元に手を回して視界を遮る。
俺のブロックには、黒ぶち眼鏡を掛けた短髪の細身の男性と、髪をオールバックに固めて、耳にピアスをしたイケメンの先輩が座った。
「こんばんはー」
イケメンの先輩が俺たちにフランクな挨拶をしてくる。
「今日は参加してくれてありがとう。短い時間だけど雰囲気だけでもつかんでってくれると嬉しいかな」
「マジメか!」
細身の男性の発言に対して、イケメンの先輩がそうツッコミを入れる。
「うるせぇ!」
細身の男性は、イケメンの先輩に突っ込まれてニヤニヤとしていたが、一つ咳ばらいをして、パンパンと手を叩きながら注目といって立ちあがる。どうやら細身の男性は、このサークルの代表者らしく、全員に向かって挨拶を始めた。
「えっと、今日は新入生の皆さん集まってくれてありがとうございます。短い時間ですが、雰囲気だけでもつかんでいってください」
俺たちに先ほど言っていたことを、他の新入生にも言っていた。他の先輩からは、「真面目だぞ~」と、イケメン先輩と同じようなヤジが飛ばされていた。どうやら、そういうキャラの人らしい。
「先輩のみなさんは積極的に、新入生の人に声を掛けてあげてください」
『はーい』と先輩たちの生返事が聞こえる。
「それじゃあ、みなさんグラス持ってください! グラスに注いでない人は急いで!」
俺たちは手元に置いてあったピッチャーに入っていたウーロン茶らしきものをグラスに注ぐ。イケメンの男性が、細身の男性に瓶ビールをグラスに注いで渡してあげていた。
「みなさん、準備はいい?」
「ちょっと待って」
他の机からそんな声が聞こえてくるので、グラスを持ってしばし待つ。
先ほど待ったがかかった机の方から、「いいよ~」という声が聞こえてきた。
「じゃあ、今日は楽しみましょう、乾杯!」
「かんぱーい!」
こうして、『FC RED STAR』の新入生歓迎会が幕を開けた。
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