上京して一人暮らし始めたら、毎日違う美少女が泊まりに来るようになった

さばりん

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第一章 出会い編

第十五話 大学生活開始

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 朝、日差しが差し込む部屋の中で目を覚ました。
 ゆっくりと起き上がり、ふと時計を見る。時刻は8時30分を指していた。
 
 今日から大学の授業が始まる。といっても、最初の一週間は、授業を選ぶためのオリエンテーションみたいなものらしい。いくつか授業に出て、履修する授業を先生の特性や単位認定の方法、難しさなどで、各自判断して考える期間ということになっている。

 なので、今週は履修する数よりも多めに授業に参加しなればならなかった。
 俺は、今日は2限からの必修授業を受けた後、昼休憩を挟んで三、四、五限と、選択授業をお試しで出る予定となっていた。初日から四時限連続授業とか、鬼畜だ。誰か四次元ポケットで俺を五限終わりまでタイムスリップしてくれないかなぁ……。
 
 そんなことを考えながら、冷蔵庫へと向かい、中からタッパーに詰めた白米を取りだして、電子レンジで温める。
 ご飯を温めている間に、布団を畳んで、部屋の隅に置く。次に、鞄の中に筆記用具とルーズリーフを入れる、授業の一覧表も一応鞄に詰め込んで準備を済ませる。
 
 ピーっと電子レンジが鳴り。ご飯が温まったことを知らせる機械音が鳴った。
 俺はご飯を取りだして、お茶碗に移し替える。お茶碗に入れたご飯と一緒に醤油さしに入った醤油を机の上に持っていく。机に置いた後、もう一度キッチンに戻り、食器棚からコップと小さめの器を取りだす。
 そして、コップに水を入れてから、冷蔵庫をあけて卵を一つ取りだして持っている器の中に入れた。机に卵の入った器と、お水が入ったコップを置いた。お箸を持ってくるのを忘れて、再び取りに行く。
 お箸を取って来た俺は、机の前に座り、テレビのリモコンの電源ボタンを押した。
 テレビでは、朝の情報番組を丁度やっているところであった。
 
 机の角で卵をコンコンと叩いて割れ目を入れる。パカっという音と共に卵の黄身と白身が、器の中にプリっと出てきた。黄身を割って、醤油を加え、よくかき混ぜる。お茶碗の中に溶いた卵を入れて、卵かけごはん略してTKGの出来上がりだ。
 
 俺は手を合わせて心の中でいただきます。と唱えてから食事を開始する。
 
 テレビではエンタメコーナーの時間になり、アナウンサーが来週から公開の新作映画の披露試写会のニュースを伝えていた。その披露試写会には、女優井上綾香いのうえあやかの姿があった。

 井上綾香は、芸能人としてにこやかな笑顔を報道陣の前で振りまきながら、質問に受け答えをしていた。
 
 俺たちが休みの日も、彼女はこうして仕事を淡々とこなしている。大学が始まっても、授業が終われば、放課後には取材や撮影を夜遅くまで行うのだろう。

 そう考えると、改めて彼女がであることを思い知らされる。

 学業と仕事を両立させることなんて、俺には絶対できる自信が無い。
 だからそこ、俺は少しでもこれから井上さんを手助けしていければなと思う。
 そう心に決意して、卵かけご飯を口へ掻き込んだ。

 朝食を食べ終え、洗面所で顔を洗い歯を磨く。歯を磨いている間に鏡を見ると、左側の髪の毛が寝癖ではねていた。歯を磨き終わり、うがいをして、俺は水道で髪の毛をジャァっと思いっきり濡らす。
 
 近くに置いてあったバスタオルで頭を拭いて、ドライヤーで髪を乾かした。
 今度は近くにおいてあるワックスを手に取って、一定量を指ですくいあげて手になじませる。そして、髪の毛をセッティングして身だしなみを整えた。

「よし」

 気合いを入れ直して、再び部屋に戻る。
 朝ごはんのお茶碗などを流しに置き、洗い物を済ませる。
 今日は家に着くのが夜の六時を過ぎてしまうので、白米だけは炊いておこうと思い、お米を三合出して、お水でお米を研ぐ。タイマーを十九時にセットして炊けるようにしておく。
 
 準備を終えて、時計を確認すると、時刻は九時半を回っていた。

 授業は十時半からなので、少し時間に余裕を持って早めに家を出ることにする。
 玄関で靴を履いて、ドアを開けた。

 外の廊下へ出ると、ポカポカ陽気で空気が少しいつもより温かく感じられた。
 ドアのガギを閉めて、アパートの階段を下りる途中、ふと隣の扉に視線を向ける。

 そう言えば、優衣さんはもう仕事に向かっていったのだろうか?
 ちゃんと寝坊しないで間に合ったのだろうか?

 そんな心配をしつつ、俺も優衣さんが先に歩いて行ったであろう駅の方へと歩いていく。


 ◇

 
 電車も通勤ラッシュのピークはとうに過ぎ、人もまばらだったので、時間通り大学に到着する。正門から講堂まで続いている一本道には、同じ時間から授業を受けるであろう生徒たちが大勢歩いていた。
 
 今日の授業場所は8号館なので、8号館がある右に反れていく小道へと入る。
 
 大学は基本的に生徒が移動して各授業の場所へ移動しなければならないのだが、休憩時間が10分間だけなので、連続して授業がありかつ次の授業場所が、大学のキャンパスの反対側で、駆け足で移動しなければならないなんてことも更にあるそうだ。

 俺は8号館の4階へと階段を登り、目的の教室へ到着した。
 まだ、1限が終わるまで10分ほどあったが、俺が次の授業で使う教室は私用されていないようで、俺と同じ次の授業を受ける人がちらほらと教室へ入っていくのが見えた。
 
 俺もその人たちと同様に、後ろのドアから教室へと入る。
 教室に入ると、前から階段教室となっていて、後ろの通路から教室を一望することが出来た。
 
 俺がどこに座ろうかと悩んでいると、聞き覚えのある声が聞こえてくる。

「あ、おーい南! こっち」

 声の元へ視線を向けると、真ん中のあたりで厚木あつぎが手を振っていた。どうやら先に到着して席を取っておいてくれたみたいだ。
 俺は手を振りながら厚木の元へと階段を下りていく。

「おはよ、席ありがと」
「いいってことよ、入れよ」
「おう、サンキュ」

 俺は厚木が座っていた通路側の席の、一つ内側の席に座った。
 さらに隣を見ると、筆記用具と教科書が置いてある。

「この二つも厚木の?」

 俺が指さしながら厚木に尋ねる。

「そうそう、井上さんと詩織しおりの分」

 どうやら四人分の席を、最初に到着した時点で確保してくれたらしい。

「最初だし、どのくらい人来るかわかんないから、席ないと困るかと思って」
「助かったわ。これから一番に来た奴がこうすれば、遅れても問題ないしな」

 なるほど、誰かしら席を確保してくれたら、万が一遅れてきたとしても座れるし、利口な考えだ。俺も最初に到着したらこうしようと、厚木の行動から学んで、次から実行しようと誓う。

「それに、俺一限から授業だったのに、オリエンテーションが三十分で授業終わっちまって、暇だったんだよね」

 頭を掻きながら厚木は、朝の出来事を話してくれる。
 そんなことをしているうちに、一限の授業終了のチャイムが鳴った。

「お、やっと一限終わった。やっぱり大学の授業って長いな」

 厚木はそんな愚痴を呟きながら後ろの扉の方を眺める。

「そろそろ二人とも来るかな?」
「そうかもな」

 厚木につられて、俺も後ろの方を振り返ると、ちょうど扉から井上さんが教室へと入ってきたところだった。
 井上さんは上の方から、先ほどの俺と同じようにキョロキョロと教室を見渡している。

「あ、井上さんだ」
「え? あ、本当だ」

 俺たちは井上さんの方へ手を振った。すると、井上さんも俺たちの存在に気が付き、表情を緩ませる。
 トコトコと階段を俺達の元まで降りてきた井上さんは、笑顔で挨拶を交わしてきた。

「おはよう、南君。厚木君」
「おはよう、井上さん」
「おはよう」

 手を可愛く振りながら、笑顔で振り返してくれる井上さん。あぁ、これから毎日こんな可愛い子の笑顔が見られるなら、四時限連続授業でも頑張れそうな気がする。なんて俺は幸せ者なんだぁ~と、感慨深く思っていると、厚木が井上さんに指さしながら口を開く。

「井上さんの席はそっちね」
「ありがとー」

 厚木が指さした方へ、井上さんは歩き出す。
 俺は自分の座っている、後ろのスペースを通してあげて、井上さんは俺の隣の机に荷物を置いて隣に座った。

「悪い南、教科書取ってくんない?」
「あぁ、おけ!」
「井上さんちょっとごめんね……」
「え? あ、うん」

 井上さんの席のさらに奥に置いてある厚木の教科書を取るために、俺は懸命に手を伸ばした。井上さんに腕が当たりそうになり、井上さんが後ろに身体を逸らす。

 手を伸ばしただけでは届かなかったので、さらに身体を前のめりにして伸ばす、顔が井上さんの身体の目の前まで近づき、ふわっといい香りが漂ってきた。
 俺は何とか厚木の教科書を手に取り、ようやく自分の席に座りなおす。

「あ、ごめん井上さん。隣の席高本の分だから、適当に何か荷物置いておいてくれない?」
「あ、うん。わかった」

 井上さんは机に置いてあった荷物を、椅子において席を確保してくれた。

「ありがとう」

 俺は井上さんにお礼を言って、厚木の方へ身体を向ける。

「ほい、教科書」
「サンキュー」

 厚木は教科書を受け取って、軽い口調で一言お礼を言った。
 そんなことをしているうちに、教室には必修の授業ということもあり、一年生で多くの人が溢れかえっていた。
 すると、カツカツと階段を駆け下りてくる音が聞こえてきた。その音は俺たちの方へ向かってきて、その音を鳴らしている人物は、ドンっと厚木が座っている机を両手で叩いた。

「セーフ」

 そこにいたのは、汗をだらだらと掻いて、ゼェゼェと息を切らした高本たかもとだった。

「初日から寝坊かよ」

 厚木が高本を見て苦笑しながら言った。

「しょうがないでしょ……朝弱いんだから」

 相当走って来たのだろうか、膝に手を当てて、項垂れてせき込んでいた。

「詩織ちゃん、おはよう」

 井上さんが心配そうに高本の様子を伺っている。

「あっ、綾香っちおはよう」

 高本は女子とは思えないひどい表情で、井上さんに向き直り挨拶を交わす。

「あはは……だ、大丈夫?」

 井上さんは苦笑いしながら高本に声を掛ける。

「大丈夫、もう少ししたら復活するから……」

 再び下を向き、ふぅっと息を吐くと、高本はムクっと体制を立て直して身体を起こして、ふうっと、大きく息を吸いこみ、言い放つ。

「よしっ、ふっかーつ!」

 まだ息は少し荒いが、いつもの高本に戻ったようだ。
すると、高本はキョロキョロと辺りを見渡して声を上げる。

「あれ? 私の席は?」
「あっち、井上さんの隣」
「あ、あそこね。サンキューサンキュー」

 手刀切りで「ごめんね」といいながら、高本が俺たちの後ろを通っていく。
 高本が着席してまもなく、二限開始のチャイムが鳴った。

 ついに、新しい学生生活が本格的にスタートする。
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