10 / 12
3階 ボス戦2
しおりを挟む
こいつは本当にヤバい……まずいことになった……。
「ナーシン!ここは1回引いてっ……!」
そう声をかける頃にはもうナーシンは剣を構え、ミシェルに突進していた。
「ちょっと!待っ……!」
「いや、待てない。こいつはただならぬ奴だと俺の第六感が言っている。早急にカタをつけなければ…!」
そうなんだよタダならねぇ奴なんだよ!だからやめてくれえぇぇ!
僕の制止しようとする意思も届かず、ナーシンはミシェルに剣を振り下ろす。
その瞬間、ミシェルの足元から黒く蠢くものが溢れてきた。
振りかざした剣はミシェルの体に触れることなく、ミシェルの目の前で静止した。ミシェルは指1本動かしてはいない。一瞬のうちにその黒く蠢く闇が手の形になり、ミシェルを切る既のところで受け止めたのだ。
「なにっ……!」
ナーシンは思わず身を引き、僕の所まで下がった。
「こいつはまさか……っ」
『ふっふっふ、その通りです』
ミシェルの足元からは複数の黒い触手が生えてきて部屋全体を覆う。
『私は闇魔術師、影使いミシェル・ハイント』
「やはりそうだったか……」
「ナーシン知ってるのかい?」
「ああ、名前だけ聞いた時はあまりピンと来なかったが昔、父がこいつの話をしてくれたことを思い出した。世界的にも有名な闇魔術の使い手……そして世界を裏で支配しようと企てている者の1人だと」
『おやおや、詳しいのですねぇ?ワタクシのファンでいらっしゃいますか』
ミシェルは黒くしなやかな黒髪を撫でながら微笑む。
「ファンな訳ないだろ、お前は世界の敵だ。父もいずれは我が国の騎士も対立するだろうと言っていた」
ナーシンはまた剣を構える。
『なんと。ワタクシは別に世界を滅ぼそうとする魔王ではないのですよ?ただ、この世界は少しばかり眩しすぎる。だから闇を作ることによって彩度を調整してこの世の均衡を正していこうと行動したまでなのですが……』
「黙れ、お前のせいでどれだけの国や人が犠牲になったと思っている。起こしても意味の無い戦争を何度も多国に強要し、滅ぼそうとする姿は魔王と変わらない」
『悲しいですねぇ、ワタクシのこの美学が分からないとは。きっと貧しく、教養も無い廃れた場所で育ったのでしょうねぇ』
「黙れ」
『おやおや、大変申し訳ありません。ワタクシとしたことが本当のことを述べてしまいました』
「……」
ヤバい、珍しくナーシンがキレている。確かにこいつは沢山の国を陥れた大悪党だ。だがそんな予備知識は正直当てにならない。コイツの中には真の闇っていうのが隠れているんだ。
「ナーシン、ここは一旦引こう……きっとイタイ目に……」
「いや、ダメだ。コイツを生かしておけばまた新たな犠牲者が出る。それに貴方をこんな奴の犠牲者にしたくない」
「僕はきっと、てゆーか100%大丈夫だよ。でもナーシン、君のことが心配なんだよ!僕は君に傷ついて欲しくないんだ!」
僕はナーシンの手を握る。
するとナーシンは低い僕の背に合わせて少しかがみ、肩に手を添える。
「……ありがとうイミリア。今まで何も言わなかった貴方がそこまで言う相手だということは相当強いと分かっている。でも、ここは俺に任せて欲しい」
「ダメだ!ナーシン行かないで!」
子供のようにすがる僕の手を剥がし、ナーシンはミシェルにまた刃を向けた。
「イミリア、俺を信じていてくれ」
「……」
もう何を言っても止められまい、そう思い僕は黙り込む。
頼む……何も起こらないでくれ……。
『お話は済みましたか?最期になるやもしれません、別れの言葉を告げてもよろしいのですよ?』
「お前こそ言い残す言葉がそれで良ければ始めるぞ」
『ふっふっふ。いいでしょう!さあ、かまえたまえ!』
ミシェルの足元には太陽によって作られた色濃い闇が茂っている。
ナーシンが足をにじった瞬間、ミシェルの闇が無数の腕となりナーシン目掛けて伸びていく。
ナーシンに手が届くその瞬間、ピシャリ、と音がした。
まるで全ての時が固着したかのように皆が静止した。
ふと、外に目をやると今までさんさんと輝いていた太陽が雲に隠れ、雷が鳴り出し、空は完全に荒れ模様だった。
来た、来てしまった。この時が。
「ナーシン!ここは1回引いてっ……!」
そう声をかける頃にはもうナーシンは剣を構え、ミシェルに突進していた。
「ちょっと!待っ……!」
「いや、待てない。こいつはただならぬ奴だと俺の第六感が言っている。早急にカタをつけなければ…!」
そうなんだよタダならねぇ奴なんだよ!だからやめてくれえぇぇ!
僕の制止しようとする意思も届かず、ナーシンはミシェルに剣を振り下ろす。
その瞬間、ミシェルの足元から黒く蠢くものが溢れてきた。
振りかざした剣はミシェルの体に触れることなく、ミシェルの目の前で静止した。ミシェルは指1本動かしてはいない。一瞬のうちにその黒く蠢く闇が手の形になり、ミシェルを切る既のところで受け止めたのだ。
「なにっ……!」
ナーシンは思わず身を引き、僕の所まで下がった。
「こいつはまさか……っ」
『ふっふっふ、その通りです』
ミシェルの足元からは複数の黒い触手が生えてきて部屋全体を覆う。
『私は闇魔術師、影使いミシェル・ハイント』
「やはりそうだったか……」
「ナーシン知ってるのかい?」
「ああ、名前だけ聞いた時はあまりピンと来なかったが昔、父がこいつの話をしてくれたことを思い出した。世界的にも有名な闇魔術の使い手……そして世界を裏で支配しようと企てている者の1人だと」
『おやおや、詳しいのですねぇ?ワタクシのファンでいらっしゃいますか』
ミシェルは黒くしなやかな黒髪を撫でながら微笑む。
「ファンな訳ないだろ、お前は世界の敵だ。父もいずれは我が国の騎士も対立するだろうと言っていた」
ナーシンはまた剣を構える。
『なんと。ワタクシは別に世界を滅ぼそうとする魔王ではないのですよ?ただ、この世界は少しばかり眩しすぎる。だから闇を作ることによって彩度を調整してこの世の均衡を正していこうと行動したまでなのですが……』
「黙れ、お前のせいでどれだけの国や人が犠牲になったと思っている。起こしても意味の無い戦争を何度も多国に強要し、滅ぼそうとする姿は魔王と変わらない」
『悲しいですねぇ、ワタクシのこの美学が分からないとは。きっと貧しく、教養も無い廃れた場所で育ったのでしょうねぇ』
「黙れ」
『おやおや、大変申し訳ありません。ワタクシとしたことが本当のことを述べてしまいました』
「……」
ヤバい、珍しくナーシンがキレている。確かにこいつは沢山の国を陥れた大悪党だ。だがそんな予備知識は正直当てにならない。コイツの中には真の闇っていうのが隠れているんだ。
「ナーシン、ここは一旦引こう……きっとイタイ目に……」
「いや、ダメだ。コイツを生かしておけばまた新たな犠牲者が出る。それに貴方をこんな奴の犠牲者にしたくない」
「僕はきっと、てゆーか100%大丈夫だよ。でもナーシン、君のことが心配なんだよ!僕は君に傷ついて欲しくないんだ!」
僕はナーシンの手を握る。
するとナーシンは低い僕の背に合わせて少しかがみ、肩に手を添える。
「……ありがとうイミリア。今まで何も言わなかった貴方がそこまで言う相手だということは相当強いと分かっている。でも、ここは俺に任せて欲しい」
「ダメだ!ナーシン行かないで!」
子供のようにすがる僕の手を剥がし、ナーシンはミシェルにまた刃を向けた。
「イミリア、俺を信じていてくれ」
「……」
もう何を言っても止められまい、そう思い僕は黙り込む。
頼む……何も起こらないでくれ……。
『お話は済みましたか?最期になるやもしれません、別れの言葉を告げてもよろしいのですよ?』
「お前こそ言い残す言葉がそれで良ければ始めるぞ」
『ふっふっふ。いいでしょう!さあ、かまえたまえ!』
ミシェルの足元には太陽によって作られた色濃い闇が茂っている。
ナーシンが足をにじった瞬間、ミシェルの闇が無数の腕となりナーシン目掛けて伸びていく。
ナーシンに手が届くその瞬間、ピシャリ、と音がした。
まるで全ての時が固着したかのように皆が静止した。
ふと、外に目をやると今までさんさんと輝いていた太陽が雲に隠れ、雷が鳴り出し、空は完全に荒れ模様だった。
来た、来てしまった。この時が。
10
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
超美形魔王が勇者の俺に嫁になれとほざいている件
むらびっと
BL
勇者のミオ・フロースドは魔王に負け死ぬはずだった
しかし魔王はミオをなんと嫁に欲しいとほざき始めた
負け犬勇者と美形魔王とのラブコメライフが始まる!
⚠️注意:ほぼギャグ小説です
なんで俺の周りはイケメン高身長が多いんだ!!!!
柑橘
BL
王道詰め合わせ。
ジャンルをお確かめの上お進み下さい。
7/7以降、サブストーリー(土谷虹の隣は決まってる!!!!)を公開しました!!読んでいただけると嬉しいです!
※目線が度々変わります。
※登場人物の紹介が途中から増えるかもです。
※火曜日20:00
金曜日19:00
日曜日17:00更新
どうやら生まれる世界を間違えた~異世界で人生やり直し?~
黒飴細工
BL
京 凛太郎は突然異世界に飛ばされたと思ったら、そこで出会った超絶イケメンに「この世界は本来、君が生まれるべき世界だ」と言われ……?どうやら生まれる世界を間違えたらしい。幼い頃よりあまりいい人生を歩んでこれなかった凛太郎は心機一転。人生やり直し、自分探しの旅に出てみることに。しかし、次から次に出会う人々は一癖も二癖もある人物ばかり、それが見た目が良いほど変わった人物が多いのだから困りもの。「でたよ!ファンタジー!」が口癖になってしまう凛太郎がこれまでと違った濃ゆい人生を送っていくことに。
※こちらの作品第10回BL小説大賞にエントリーしてます。応援していただけましたら幸いです。
※こちらの作品は小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しております。
BLゲームの世界でモブになったが、主人公とキャラのイベントがおきないバグに見舞われている
青緑三月
BL
主人公は、BLが好きな腐男子
ただ自分は、関わらずに見ているのが好きなだけ
そんな主人公が、BLゲームの世界で
モブになり主人公とキャラのイベントが起こるのを
楽しみにしていた。
だが攻略キャラはいるのに、かんじんの主人公があらわれない……
そんな中、主人公があらわれるのを、まちながら日々を送っているはなし
BL要素は、軽めです。
【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます
猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」
「いや、するわけないだろ!」
相川優也(25)
主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。
碧スバル(21)
指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。
「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」
「スバル、お前なにいってんの……?」
冗談? 本気? 二人の結末は?
美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
生徒会長親衛隊長を辞めたい!
佳奈
BL
私立黎明学園という全寮制男子校に通っている鮎川頼は幼なじみの生徒会長の親衛隊長をしている。
その役職により頼は全校生徒から嫌われていたがなんだかんだ平和に過ごしていた。
しかし季節外れの転校生の出現により大混乱発生
面倒事には関わりたくないけどいろんなことに巻き込まれてしまう嫌われ親衛隊長の総愛され物語!
嫌われ要素は少なめです。タイトル回収まで気持ち長いかもしれません。
一旦考えているところまで不定期更新です。ちょくちょく手直ししながら更新したいと思います。
*王道学園の設定を使用してるため設定や名称などが被りますが他作品などとは関係ありません。全てフィクションです。
素人の文のため暖かい目で見ていただけると幸いです。よろしくお願いします。
真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~
シキ
BL
全寮制学園モノBL。
倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。
倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……?
真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。
一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。
こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。
今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。
当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる