記憶の箱庭

むらびっと

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7話

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あれから5日、またなにかされるのでは?と少しばかり危機感を募らせていたが、朗らかに時は過ぎていった。セルリックはボクのご飯を毎日3食作ったり、体を拭いたり、トイレへ連れていくのにちょくちょく顔を出すが、それ以外はどこかに消えてしまうため特に話もせずにいた。ボクは思い出せることがほぼ無いのでセルリックが何者なのか、普段何をしているのか聞くが返事はいつも「別になんでもいいだろ」の一点張りだ。お陰でボクは退屈で仕方ない。

 ただ、ボクをどこで見つけたのか、について聞いてみたことがあったがそれだけは教えてくれた。

 話によるとボクは道端でガリガリに痩せ細って倒れていたらしい。それをたまたまセルリックが拾ってくれたとのこと。それを聞く限りボクは記憶の無くなる前は貧乏で物乞いなんかをしていたのかもしれないと思った。
 なんで人間と敵対する悪魔のセルリックがボクを助けたのかと聞いた時は「この顔は育てりゃ上物に化けると見込んだんだよ。俺好みのな」という何ともいかがわしい理由だったのですぐに話はやめた。

 今日も暇をして大きな両開きのガラスドアから外のテラスを見つめる。外はいつも晴れで雲ひとつない。まるで誰かが作り出した青い天井のようだ。
 テラス奥には木が茂っており、背の高い木々のせいで奥には何があるのか全く見えない。

 (あの奥には何があるんだろう……村とか町なんかがあったりして)

 そこにどんな何があるのかを空想するのがボクの日課になっていたが流石に飽きてきた。いくら巡らせどそれは空想に過ぎない。

 「はあ……」

 ため息を漏らし、ボクは上半身を起こしてみる。まだまだ貧弱な体だが少しの時間ならば自力で起こせるようになっていた。だが起きたところで見える景色が差程変わる訳でもない。ボクは仕方なくまた寝っ転がり、脚をパタパタ動かす。

 「外に行ければな……」

 そんなうわ言を呟いてみてふと気づく。ボクの脚はパタパタと上下させられるほど動くことに。

 (動くってことはもしかして……もう立てるってことじゃないか!)

 ボクは勢いよくベッドで再度体を起こし、脚をベッドから下ろす。歩くなんて普通の人間ならば造作もないことだが今のボクにとっては心臓が大きく鼓動するほどの難関ミッションだ。
 早速足腰に力を入れてベッドからしりをを浮かせる。手も離していよいよ直立する。
    ボクは何とか立つことができた。

 (た、立てた……!!)

 と、思った瞬間ボクの体はグラグラと大きく揺れ、転倒する。

 「イテテ…………」

 ちゃんと転ぶ間際にに手をついたのが良かったのか頭を打ちつけるなどの大事には至らなかった。しかし実に惜しい。もう少しで歩けそうな気もしたのだが……。

 ボクは上半身を起こすとたまたま目に入ったのはいつもベッド脇に置いてあるサイドテーブル。

 (そうだ、あれにつかまれば……)

 きっと立つのに何か補助するものがあればいけるだろうと思ったボクはサイドテーブルに近づき、まずはいつもセルリックが腰を下ろしている椅子に捕まる。そして椅子からテーブルへと手を移すとゆっくりまた足腰に力を入れる。すると先程よりもすんなりと立ち上がることが出来た。

 (やった!これであとは歩ければ……)

 思った途端、何かの記憶がふとボクの脳裏を横切った。
 その瞬間、ボクはまた床に盛大に倒れ込む。

 程なくしてドタドタと忙しない音を立てながらセルリックが勢いよく部屋の扉を開ける。

 「おい!さっきから何やって……!?」

 慌てた様子でボクの体を起こす。

 「バカかお前は!なにしてんだ!!」

 ボクは返す言葉がない。今はそれどころじゃなかった。
 ボクは先程の脳裏に浮かんだ光景が離れず、目を見開いていた。息も段々乱れてきて苦しい。

 「おい!?マジでどうしたんだ!何があった!?」

 「…………足が……動かない…………」

 「そりゃお前、まだ本調子じゃねえからに決まって……!」

 「違う……違う……!もう動かないんだ…………ボクの足は…………二度と…………」

 ボクはいつの間にか恐怖から身を守るように体を丸めて泣きじゃくっていた。

 ボクは一瞬だけだが過去を思い出したのだ。
 誰かに両足を潰されてもう二度と歩けなくなっているという記憶を。
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