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勇者、ときめく
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「流すって、何をだ?」
上半身を起こし、俺はキョトンとして首を傾げる。するとリュートは腰に手を当て自慢げに答える。
「ふふん、そりゃあ、この場面で流すって言ったら”噂”に決まってるだろ?見てろ」
リュートは手を広げて俺に見せる。
「?」
何かと思って見ているとリュートの右手のひらから黒い球体が生まれた。その球体がなんなのかとまじまじと見つめると、球体からはいつの間にか黒いつぶらな目が生えていた。いや、目どころか鳥のような足もあるしくちばしも生えている。
いつの間にか球体は黒くて丸っこい鳥になっていた。
「なんだこいつ…?」
「コイツは俺の作りだした使い魔だ。魔物を創り出したのは久々だがなかなか良い出来だな」
「これでいい出来なのか…」
魔物ってもっとデカくて恐ろしい見た目のやつしか見たこと無かったからこんなふっくらとした愛らしい見た目の鳥が本当に魔物なのか疑わしがった。しかし普通の鳥には絶対に無い小さな角が生えているのでコイツは正真正銘の魔物なのだろう。
「それで、コイツはなんなんだ?」
あんまりすごい事するような魔物には見えないな…。
「コイツは一種の洗脳魔法が使える魔物だ」
「いや意外に凄い恐ろしいこと出来るヤツ!」
「正確にはコイツは俺の言ったことを記憶して飛んで行き、肩にとまらせた人間に俺の言葉を信じ込ませるという事ができる鳥だ。つまり…」
「つまり?」
「俺が先程述べた敗北宣言を人間に信じ込ませることが出来る」
「そうか!つまりこの鳥を使って人々にもうお前に害はないと思わせればいいんだな!」
この方法なら村のみんなも村長も、世界中の人々が信じてくれるはずだ。
「だがコイツには欠点があってだな。1匹につき1人の人間しか洗脳できない。洗脳すればすぐさま消えてなくなる」
「えっ!?それじゃあ世界中の人々にお前の脅威が無くなったとは伝えられないんじゃ……わかった!その鳥を大量生産するんだな!」
「アホかお前!使い魔作るってのは体力使うんだよ!たかがこんな小さな鳥でも世界人口分作ってたら流石の俺でも死ぬわ!」
「じゃあ一体どうする気なんだ…?」
「だからさっき言っただろ、噂を流すと。」
「噂…」
「風の便りって言葉があるだろ?噂ってのは風みたいなスピードで流れていくもんなんだ。だから何処かの国から国へ渡り歩いているお喋りな行商人にでも信じ込ませればあっという間だ」
「なるほど!それなら少しの数で済むって訳か!お前意外に頭良いな!意外に!」
「なんで2回言った?」
「だってお前って俺の事を嫁にすることしか考えてないような頭の残念なやつだと思ってたから。少し感心した」
「はあ?何言ってんだお前?」
リュートは唐突に俺を抱き上げる。
「えっ、ちょ、なんだよ」
急にお姫様抱っこをされ、戸惑っているとリュートは俺の顔に顔を近づける。俺との戦闘後だなんてことを微塵も感じさせない白くて美しい顔。瞳と瞳が合ったかと思うと唇に違和感を感じた。
リュートが「キス」をしたのだと気づいた。
認識する頃にはリュートの唇は離れていた。
「お前は俺が感心できるような良い奴になったと思ったようだがな、生憎俺様はお前の言う頭の残念なやつのままなんだよ。これから先ずっとな」
「……っ!」
俺はなぜ今!?と思いながら唇に手を当てる。そして顔がどんどん火照っていくのを感じた。戦闘で弱った心臓がドクドクと忙しなく動く。
「あれだけ勉強しといて恥ずかしいのか?やっぱり可愛いなぁ『俺の』ミオは」
「なっ!俺のってどういう意味だ!」
「そのままの意味だ。大体、魔王の監視をするために城でこれからずっと一緒に暮らすってそれもう嫁に来たようなもんだろ?」
「そんなわけないだろ馬鹿リュート!俺は!お前の監視なの!!それだけの関係だ!」
恥ずかしさからリュートの胸をポカポカと叩く。
「そんな傷負っててもまだまだ元気そうだな。とりあえずまた傷が言えるまで手とり足とり看病してやるからな、マイダーリン♡」
リュートはまたいつもの恐ろしいほどの美しい笑顔を見せる。いつもの顔なのにそれが何故かいつもより一際輝かしく思えてしまった。
俺は顔を背け、目をギュッと瞑る。
「~~~もうっ!変なことしたら俺に悪事を働いたとみなして退治してやるからな!」
「はいはい、勇者様の仰せのままに~」
絶対に適当に答えてると思うが、とりあえず怪我人の俺は大人しく運ばれることにする。
リュートが幸せそうな笑顔を浮かべながら鼻歌交じりでいつもの部屋まで運んでくれる腕の中で俺はドキドキと跳ね上がる心臓の音がバレないか心配しつつも安心感でいっぱいになった。キュウっと締め付けられるようなこの感情はなんなのかよく分からない。
とりあえず、これからも超美形魔王との暮らしは続いていくらしい。
上半身を起こし、俺はキョトンとして首を傾げる。するとリュートは腰に手を当て自慢げに答える。
「ふふん、そりゃあ、この場面で流すって言ったら”噂”に決まってるだろ?見てろ」
リュートは手を広げて俺に見せる。
「?」
何かと思って見ているとリュートの右手のひらから黒い球体が生まれた。その球体がなんなのかとまじまじと見つめると、球体からはいつの間にか黒いつぶらな目が生えていた。いや、目どころか鳥のような足もあるしくちばしも生えている。
いつの間にか球体は黒くて丸っこい鳥になっていた。
「なんだこいつ…?」
「コイツは俺の作りだした使い魔だ。魔物を創り出したのは久々だがなかなか良い出来だな」
「これでいい出来なのか…」
魔物ってもっとデカくて恐ろしい見た目のやつしか見たこと無かったからこんなふっくらとした愛らしい見た目の鳥が本当に魔物なのか疑わしがった。しかし普通の鳥には絶対に無い小さな角が生えているのでコイツは正真正銘の魔物なのだろう。
「それで、コイツはなんなんだ?」
あんまりすごい事するような魔物には見えないな…。
「コイツは一種の洗脳魔法が使える魔物だ」
「いや意外に凄い恐ろしいこと出来るヤツ!」
「正確にはコイツは俺の言ったことを記憶して飛んで行き、肩にとまらせた人間に俺の言葉を信じ込ませるという事ができる鳥だ。つまり…」
「つまり?」
「俺が先程述べた敗北宣言を人間に信じ込ませることが出来る」
「そうか!つまりこの鳥を使って人々にもうお前に害はないと思わせればいいんだな!」
この方法なら村のみんなも村長も、世界中の人々が信じてくれるはずだ。
「だがコイツには欠点があってだな。1匹につき1人の人間しか洗脳できない。洗脳すればすぐさま消えてなくなる」
「えっ!?それじゃあ世界中の人々にお前の脅威が無くなったとは伝えられないんじゃ……わかった!その鳥を大量生産するんだな!」
「アホかお前!使い魔作るってのは体力使うんだよ!たかがこんな小さな鳥でも世界人口分作ってたら流石の俺でも死ぬわ!」
「じゃあ一体どうする気なんだ…?」
「だからさっき言っただろ、噂を流すと。」
「噂…」
「風の便りって言葉があるだろ?噂ってのは風みたいなスピードで流れていくもんなんだ。だから何処かの国から国へ渡り歩いているお喋りな行商人にでも信じ込ませればあっという間だ」
「なるほど!それなら少しの数で済むって訳か!お前意外に頭良いな!意外に!」
「なんで2回言った?」
「だってお前って俺の事を嫁にすることしか考えてないような頭の残念なやつだと思ってたから。少し感心した」
「はあ?何言ってんだお前?」
リュートは唐突に俺を抱き上げる。
「えっ、ちょ、なんだよ」
急にお姫様抱っこをされ、戸惑っているとリュートは俺の顔に顔を近づける。俺との戦闘後だなんてことを微塵も感じさせない白くて美しい顔。瞳と瞳が合ったかと思うと唇に違和感を感じた。
リュートが「キス」をしたのだと気づいた。
認識する頃にはリュートの唇は離れていた。
「お前は俺が感心できるような良い奴になったと思ったようだがな、生憎俺様はお前の言う頭の残念なやつのままなんだよ。これから先ずっとな」
「……っ!」
俺はなぜ今!?と思いながら唇に手を当てる。そして顔がどんどん火照っていくのを感じた。戦闘で弱った心臓がドクドクと忙しなく動く。
「あれだけ勉強しといて恥ずかしいのか?やっぱり可愛いなぁ『俺の』ミオは」
「なっ!俺のってどういう意味だ!」
「そのままの意味だ。大体、魔王の監視をするために城でこれからずっと一緒に暮らすってそれもう嫁に来たようなもんだろ?」
「そんなわけないだろ馬鹿リュート!俺は!お前の監視なの!!それだけの関係だ!」
恥ずかしさからリュートの胸をポカポカと叩く。
「そんな傷負っててもまだまだ元気そうだな。とりあえずまた傷が言えるまで手とり足とり看病してやるからな、マイダーリン♡」
リュートはまたいつもの恐ろしいほどの美しい笑顔を見せる。いつもの顔なのにそれが何故かいつもより一際輝かしく思えてしまった。
俺は顔を背け、目をギュッと瞑る。
「~~~もうっ!変なことしたら俺に悪事を働いたとみなして退治してやるからな!」
「はいはい、勇者様の仰せのままに~」
絶対に適当に答えてると思うが、とりあえず怪我人の俺は大人しく運ばれることにする。
リュートが幸せそうな笑顔を浮かべながら鼻歌交じりでいつもの部屋まで運んでくれる腕の中で俺はドキドキと跳ね上がる心臓の音がバレないか心配しつつも安心感でいっぱいになった。キュウっと締め付けられるようなこの感情はなんなのかよく分からない。
とりあえず、これからも超美形魔王との暮らしは続いていくらしい。
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