超美形魔王が勇者の俺に嫁になれとほざいている件

むらびっと

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勇者、敗北する

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ドーンという音と共に俺は端っこへ吹っ飛ばされ、壁へ頭を打ち付けて無事気絶、はしなかった。流石に手加減されてるだけあって意識は失わなかった。が、これではまるで再放送だ。

分かってはいた。感情に流され、ただただ剣を振るうこの展開の結末なんて。多分誰でも想像つくだろうしつまらない最期。
HPはもうほぼ無いし右腕は剣が握れないほど骨がバッキバキに折れてる。既に満身創痍でゲームオーバー寸前、いや、心はもうとっくのとうにゲームオーバーを迎えている。前回同様に弱すぎる自分に心がボッキリと折れるのを感じている。
そもそも魔王に幽閉されてから特にこれといって鍛錬も積んできていなかった地点で何もかも答えは出ていた。

ははっ……俺、なにやってんだろ……

みんなの為とか、世界を救うとか豪語していたやつがこんなザマだ。

霞んだ視界に魔王が壁にめり込んで座ったまま動かない俺の所へ歩いてくるのが見えた。魔王はボロ雑巾のような俺とは全く違い、傷一つ無い。いつもの綺麗な顔には汗ひとつかいていない。
それが見てて辛くて、悔しくて、悔しくて、とてつもなく悔しくていたたまれなかった。
だがその悔しいという感情だけが今の俺の唯一の原動力となり、なんとか立ち上がろうとする。
折れてない左手を付き、起き上がろうと必死にもがく。
すると魔王は跪き、俺の肩を掴み、壁に押し付ける。

ああ、俺、遂に殺されるのかな……でもそれならそれも……

「やめだ」

「…………?」

どういう意味なのか全く理解できない。何がやめなのだろうか?

「お前をいたぶるのはここまでだ」

「……っ!」

なんだよそれ……こんな……

「心配すんな、また1から看病してやるから……」

言葉が終わる前に俺は力が思うように入らない腕で魔王の胸ぐらを掴む。

「ふ、ざけんな……最後…まで……戦えよ……!」

消えそうな息混じりに俺は訴える。その言葉を聞いて魔王はため息をつく。

「戦う?リンチの間違いだろ。差は歴然だしな」

「っ…………!」

確かにそうだ。こいつの事だ、本当だったら一発で死んでしまうような攻撃だってできたはず。なのにわざわざここまで傷だらけにしてコイツは俺の心をへし折ってきた。それが自分をとても惨めにしていた。途中必死に剣をふるいながらも幾度か心のどこかではさっさと終わりにして欲しいとも思ってしまった。それほど惨めな戦いだった。

こんな惨めな姿になっても死ぬことさえ許されないのか。

俺はいつの間にかポロポロと涙を流していた。情けなくてグッと堪えようとしても止まらない。

「……っ……」

「おいおい、俺は好きな奴をそんな風に泣かせるのは趣味じゃねえ。泣くな、お前の気持ちを利用した俺が馬鹿だった」

不意にリュートの大きな手のひらが俺の頭を撫でた。

「やめろよっ!俺にそんな態度とるな!殺せよ!俺は……最後まで勇者として……!世界を滅ぼさんとする悪に立ち向かったという勇者として死にたいんだよ!お前なんかの慈悲で生きていたくなんてない……!」

リュートの手を振り払う。が、リュートは何度も頭を撫でてくる。

やめろよ……これじゃあ本当に惨めじゃないか……

段々とえづき始め、より一層涙をこぼす。もう泣いていることを気にすることもできなくなってしまった。そんな俺をただひたすら宥めるようにリュートは撫でてきた。濡れてよく見えない視界の中、リュートは少し悲しげな顔を浮かべているようだった。



どれくらい時間が経ったか分からないが、俺は流石に泣き止み、鼻だけををズビズビ言わせていた。
普段ならこんな姿見せたらコイツは笑うだろうが、今日は真剣な眼差しを感じるだけだ。

「落ち着いたか?」

「……」

落ち着きはしたが、よくよく考えたら先程から大泣しているのを見られ続けていた事に気が付き、恥ずかしさと戸惑いで何も答えられない。

俺、これからどうすればいいんだろう……

魔王には負けるし、かと言って殺してはくれないし、しかもよく分からない状況になってしまっている。
気まずくて黙りこくっているとリュートが先に口を開く。

「……ミオ」

「……」

「お前に黙っていたことがある。」

「?」

ずっと視線を逸らしていたが、リュートの方に向ける。

「とてつもなく大事な話だ。お前自身の考えを曲げることになる話だ。だが話した方がいいと思うからここでお前の人生観を変えてしまっても話す」

「……?」

俺に関係すること……?

その言葉に泣き疲れて動かない頭で聞くことにする。

「それは……」

「…………」

そ、それは……?

「それはだな……俺は世界を滅ぼそうとか、世界征服とか、侵略とかそういうことにまっっっっっったく興味が無いということだ」
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