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勇者、見初められる
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くそ、やってしまった…。
伝説の剣を手に入れたからと余裕ぶっこいてレベル54で魔王城なんかに来るんじゃなかった。大体そうじゃなかったとしても小ボスの後にすぐラスボスってなんだよ。もう薬草ねぇよ。鬼畜すぎるにも程がある。せめて一昔前のラスボスみたいにHP満タンに戻してくれるとかそういう設定にしてくれよ。
そんな愚痴をこぼしたくなりながらたった今魔王に挑んでいる俺は勇者だ。世界の平和を守るため、悪を滅ぼすためにこの魔王城に来た。レベルはそこそこだがまあ魔王に会うまでに城の中でレベル上げでもするかなー、と思っていたら城で捕まっているエルフを助けたせいで大誤算。エルフが近道教えるなんて言うからついてきたら目の前には既に戦闘態勢に入ってる小ボスを発見してしまいそのまま戦闘。いや確かに近道って言ったけどさ。まさかここまでの近道だと思わないじゃん?やっと倒したらもう魔王ってそんなんありかよ。しかもめっちゃ強いじゃん。あっさり出てきたから中ボスかと思ってたら「私は魔王だぁぁぁ!」とか言い出すからこちらポカン状態から始まったからね?ちょっと油断してたからね?もうHP半分以下なんだけどどうすんのこれ?あ、やべぇまた魔王必殺技撃ってくるじゃんマジでヤバいエルフ許さんマジでこれ死ぬ死ぬ死ぬしn……。
ドーンという音と共に俺は端っこへ吹っ飛ばされ、壁へ頭を打ち付けて無事気絶したのであった。
*
あー、かったるいわー。今回の勇者も全く手応えなかったなー。始まりの村のヤツらちゃんと育成してんのかよ。やる気あるやつ選べよな。ちゃんと面接とかして。こっちは雑魚相手するほど暇じゃねぇんだよ戦う以外にもやる事あるんだよ。
あ、どうも魔王です。また勇者殺っちゃいました。さーてと、また見せしめに勇者の死体でも外に晒そっかなー。えーっと勇者の死体はー、あったあったあんな端っこに。
あれ、こいつHP1残ってんじゃん。気絶してんのかよ。このままチョップしただけでも死にそうだな。まあでもこのまま外に吊るしておいて起きた時に驚いた顔見るのも面白そうだし生かしておくか。顔にペンで髭書いてやろっと(笑)
そう思い俺は勇者の兜を取った。そしてその勇者の間抜け面を拝もうと前髪を掴んで無理やり顔を上げさせる。
さーてどんな顔してんのかなー。前回のやつは鎧だけ立派で中身は勇者とは思えないくらいガリガリ野郎だったなー。今回もそんくらい面白いやつを…。
俺はそいつの顔を見た瞬間固まった。
「…………………まじか……。」
*
ん、あれ……俺寝てた…? どうしてたんだっけ……。確か魔王と……。
ハッとして目が牙える。そうだ俺は魔王へ戦いを挑んでいたんだ。そして負けそうになって…ところでここはどこだ?
俺はゆっくりと起き上がった。起き上がって気づいたのだが俺が寝ていたのは縦横どっちにでも寝られそうな程ものっすごいどデカいキングサイズのベッドだった。めっちゃ驚いた。それにも驚いたが現在いる部屋にも驚いた。至る所に金ピカの装飾がしてあり、上を見上げればシャンデリアがついていてなんかもうすんごい良いところの貴族の部屋って感じである。
(どういう事だ?なんで俺はこんな豪華絢卿な部屋で寝ているんだろう……)
辺りをキョロキョロしていると少し先にあるこれまた金ピカな装飾が施されている扉が開いた。その扉の先から来たのはー人の男性。
男性は白髪でさらに雪のような白い肌、それにコバルトブルーの瞳。そしてその宝石のような瞳を覆うように長いまつ毛が瞬きをする度に被さるとても儚げで見目麗しい長身の美青年だった。服装は黒いズボンからシャツがはみ出ててちょっとだらしない感じの服装だが、それを気に留めさせないほどの美しさ。
少し見とれていると男性は俺に近寄り、ベッド脇の椅子に座った。
「やっと起きたか。死んだかと思ったくらいよく寝てたぞ。」
誰だこの超絶綺麗なイケメンは…?はっ!もしかして俺を助けてくれた貴族の方とか…?
「あの、助けていただきありがとうございます。まさか貴族様に助けていただけるとは……」
「貴族?貴族じゃねえよ」
「え、じゃあまさか王族とか!?」
「違う違う」
「じゃあ、貴方は一体……?」
「俺、魔王だから」
「……は?」
「魔王だから」
「…………」
貴族とかの間で流行っているジョークなのか…?
「あ、あはは……面白い冗談ですね」
「冗談じゃねえよ。マジで魔王だから。これ見れば思い出すかなー」
そう言うと男は右手から火の王のようなものを出し、魔王の必殺技「なんか凄い波動砲みたいなやつ」を壁に放ち、ドカーンというけたたましい音と共に壁にでかい穴を開けて見せた。穴の先が外に通じてるほどの凄まじい威力に俺は見覚えがあった。それは正しく俺が気絶する前に魔王が最後に俺に向けて放った技だという記憶がある。
つまりは……。
「…………まじ?」
「そゆこと」
「え、いや……その……え?」
「ゆっくりしていけよ、勇者」
「ええええええええ!!?」
伝説の剣を手に入れたからと余裕ぶっこいてレベル54で魔王城なんかに来るんじゃなかった。大体そうじゃなかったとしても小ボスの後にすぐラスボスってなんだよ。もう薬草ねぇよ。鬼畜すぎるにも程がある。せめて一昔前のラスボスみたいにHP満タンに戻してくれるとかそういう設定にしてくれよ。
そんな愚痴をこぼしたくなりながらたった今魔王に挑んでいる俺は勇者だ。世界の平和を守るため、悪を滅ぼすためにこの魔王城に来た。レベルはそこそこだがまあ魔王に会うまでに城の中でレベル上げでもするかなー、と思っていたら城で捕まっているエルフを助けたせいで大誤算。エルフが近道教えるなんて言うからついてきたら目の前には既に戦闘態勢に入ってる小ボスを発見してしまいそのまま戦闘。いや確かに近道って言ったけどさ。まさかここまでの近道だと思わないじゃん?やっと倒したらもう魔王ってそんなんありかよ。しかもめっちゃ強いじゃん。あっさり出てきたから中ボスかと思ってたら「私は魔王だぁぁぁ!」とか言い出すからこちらポカン状態から始まったからね?ちょっと油断してたからね?もうHP半分以下なんだけどどうすんのこれ?あ、やべぇまた魔王必殺技撃ってくるじゃんマジでヤバいエルフ許さんマジでこれ死ぬ死ぬ死ぬしn……。
ドーンという音と共に俺は端っこへ吹っ飛ばされ、壁へ頭を打ち付けて無事気絶したのであった。
*
あー、かったるいわー。今回の勇者も全く手応えなかったなー。始まりの村のヤツらちゃんと育成してんのかよ。やる気あるやつ選べよな。ちゃんと面接とかして。こっちは雑魚相手するほど暇じゃねぇんだよ戦う以外にもやる事あるんだよ。
あ、どうも魔王です。また勇者殺っちゃいました。さーてと、また見せしめに勇者の死体でも外に晒そっかなー。えーっと勇者の死体はー、あったあったあんな端っこに。
あれ、こいつHP1残ってんじゃん。気絶してんのかよ。このままチョップしただけでも死にそうだな。まあでもこのまま外に吊るしておいて起きた時に驚いた顔見るのも面白そうだし生かしておくか。顔にペンで髭書いてやろっと(笑)
そう思い俺は勇者の兜を取った。そしてその勇者の間抜け面を拝もうと前髪を掴んで無理やり顔を上げさせる。
さーてどんな顔してんのかなー。前回のやつは鎧だけ立派で中身は勇者とは思えないくらいガリガリ野郎だったなー。今回もそんくらい面白いやつを…。
俺はそいつの顔を見た瞬間固まった。
「…………………まじか……。」
*
ん、あれ……俺寝てた…? どうしてたんだっけ……。確か魔王と……。
ハッとして目が牙える。そうだ俺は魔王へ戦いを挑んでいたんだ。そして負けそうになって…ところでここはどこだ?
俺はゆっくりと起き上がった。起き上がって気づいたのだが俺が寝ていたのは縦横どっちにでも寝られそうな程ものっすごいどデカいキングサイズのベッドだった。めっちゃ驚いた。それにも驚いたが現在いる部屋にも驚いた。至る所に金ピカの装飾がしてあり、上を見上げればシャンデリアがついていてなんかもうすんごい良いところの貴族の部屋って感じである。
(どういう事だ?なんで俺はこんな豪華絢卿な部屋で寝ているんだろう……)
辺りをキョロキョロしていると少し先にあるこれまた金ピカな装飾が施されている扉が開いた。その扉の先から来たのはー人の男性。
男性は白髪でさらに雪のような白い肌、それにコバルトブルーの瞳。そしてその宝石のような瞳を覆うように長いまつ毛が瞬きをする度に被さるとても儚げで見目麗しい長身の美青年だった。服装は黒いズボンからシャツがはみ出ててちょっとだらしない感じの服装だが、それを気に留めさせないほどの美しさ。
少し見とれていると男性は俺に近寄り、ベッド脇の椅子に座った。
「やっと起きたか。死んだかと思ったくらいよく寝てたぞ。」
誰だこの超絶綺麗なイケメンは…?はっ!もしかして俺を助けてくれた貴族の方とか…?
「あの、助けていただきありがとうございます。まさか貴族様に助けていただけるとは……」
「貴族?貴族じゃねえよ」
「え、じゃあまさか王族とか!?」
「違う違う」
「じゃあ、貴方は一体……?」
「俺、魔王だから」
「……は?」
「魔王だから」
「…………」
貴族とかの間で流行っているジョークなのか…?
「あ、あはは……面白い冗談ですね」
「冗談じゃねえよ。マジで魔王だから。これ見れば思い出すかなー」
そう言うと男は右手から火の王のようなものを出し、魔王の必殺技「なんか凄い波動砲みたいなやつ」を壁に放ち、ドカーンというけたたましい音と共に壁にでかい穴を開けて見せた。穴の先が外に通じてるほどの凄まじい威力に俺は見覚えがあった。それは正しく俺が気絶する前に魔王が最後に俺に向けて放った技だという記憶がある。
つまりは……。
「…………まじ?」
「そゆこと」
「え、いや……その……え?」
「ゆっくりしていけよ、勇者」
「ええええええええ!!?」
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