俺のチートって何?

臙脂色

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第四章   ― 革命 ―

第132話 状況確認 その2

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 「今から2日後、フィオレンツァとの戦争が始まる」

 アルーラ城の謁見の間にて、現役の女王カトレアが内容の重さとは裏腹に淡白に告げる。
 玉座に腰掛けるカトレアの前に跪いていた騎士団総司令官、技術省およびギルド省のトップの面々は、突然の事態に言葉を失った。

 ディックが予想していた通り、カトレアは徹底抗戦の構えをとったのだ。
 フィオレンツァが送った通牒の内容を簡潔にまとめると、

 ・王位の返上を求める。
 ・カトレアのやり方では魔人討伐は不可能。。
 ・現在の王国の制度に不満を持つ者が大勢いる。

 など、要件とその理由が書かれており、締めくくりには、

 ・要求が受け入られないのであれば、2日後に直接伺う。

 と、あった。

 フィオレンツァと直接対峙してしまえば、『絶対服従』でどんな命令にも従うしかなくなってしまう。それは、カトレアが女王ではいられなくなることを意味していた。

 フィオレンツァが再び女王となれば、国の戦力は低下し、また娘のような犠牲者が出る。
 それは許されない。
 その感情が、カトレアにフィオレンツァとの戦争を決めさせた。

 「セルギウス、第一から第三までの障壁を展開せよ。国の衛りを強固にするのだ」

 「御意にございます」

 カトレアの指示に、司令官である男は頭を下げる。

 「モンタークは魔人侵攻時の手引きに従い各ギルドに避難誘導を」

 「は……はは!」

 ギルド省の男は動揺を隠せない。
 行われる度に国民たちから面倒だの、仕事が止まるだの文句を言われ、自分自身ですら何の役に立つのかと疑問に思っていた避難訓練に、まさか役立つ瞬間が来ようとは思いもしなかったのである。

 「最後にヒックリン。これはいい機会だ」

 「は?」

 「これまでの成果を、この大舞台で私に見せてみせよ」

 「ッ! はは!」

 カトレアの言葉の意味を理解した技術省の女も、他の二人と同様に頭を下げた。

 その三人を前にしながら、カトレアは思うのだった。

 ……フィオレンツァ、そなたどういうつもりだ?
 いつ魔人が襲ってくるかわからないというのに、人間同士で戦争など……そんな場合でないことは貴様とて承知のはずだろう。

 カトレアは通牒に記されていた内容を思い起こす。
 ・カトレアのやり方では魔人の討伐は不可能。

 ……フン。魔人を討ち果たせなかった貴様が言えたことではなかろうに……それとも、女王に戻らなければならなぬ別の理由でもあるのか?
 まあよい。
 どうせ、聴いておるのだろう?
 来るなら来るがいい。
 かつて貴様が育てたこの国が、私の手でどれだけ成長したか見せてくれようぞ。


 カトレアの独白に、フィオレンツァが口元を緩ませた。


 「おや? 何か嬉しいことでもあったんかいのう?」

 フィオレンツァの横を歩いていたジイが興味深そうに訪ねる。

 「いえ、何でもありません」

 「ふむ?」

 フィオレンツァ、千頭、そしてディック。各々がカトレアに戦いを挑む動機を確認し合った後、フィオレンツァは数十名の近衛兵に囲まれながら収容所の地下へと続く階段を降りていた。
 地下にはエマとアイリスが脱獄させた囚人たちが集められていた。
 彼らとは共闘して騎士と戦いはしたものの、それは脱獄のため利害が一致しただけであり、王国との戦争まで付き合ってくれる保証は無い。
 なので、自分たちに協力してくれるか否か、フィオレンツァは『読心』で確認する必要があった。

 「女王様」

 途中、上の階から追いかけてきた千頭に呼び止められる。

 「あら、どうかしましたか?」

 「ちょっと確認したいことがありまして……」

 ……本当はわかっているんでしょう?

 千頭の思い描いているものが、フィオレンツァの脳内にも映る。
 アルーラ城。

 小樽さんにはああ言いましたけど、僕があなたに協力する理由。それは、騎士団から逃げるためじゃない。
 僕らの生まれ育った母なる星に帰るためだ。

 千頭の表情は相変わらず人を嘲り笑っていたが、目はまったく笑っていない。
 その目に、フィオレンツァは動ぜず答えた。

 「えぇ、わかっていますとも。それで構いません」

 「そうですか。なら、いいんです。ありがとうございます」

 千頭は顔をニッコリとさせて言うと、上へ戻ろうとした。

 「お待ちください」

 それをフィオレンツァが呼び止める。

 「構いませんが、その場所にあなたが探し求めている答えはありませんよ」

 「……僕はね、何事も自分で真実を確かめないと気が済まない性格なんですよ」

 それだけ言い残して、千頭は去って行った。
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