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第二章 ― 争奪戦 ―
第57話 嵐の前の静けさ
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修行が始まってから三日目。
今日はジェニーにとって重要な日だ。アリーナで無事に勝ってメシュを守れるかどうか。
頼むぜジェニー。勝って初心者転生者、勝率0%の記録を塗り替えてやってくれ! ……のはずだったんだがな……。
「うわあああん! 良かったよジェニイイィ!」
「はいはい。良かったねー」
アリーナの出場選手用の入り口前で、泣きじゃくるメシュの頭をジェニーが撫でていた。
ジェニーは無事にアリーナで勝ってメシュを守ることができた――というわけではなく、相手が辞退してきたから試合中止の形になったのだ。会場内ですれ違った観客たちの会話からわかったことだが、どうやら対戦相手の女性は試合前に泣きまくってるメシュを見て「ないわー」と言っていたそうだ。
「オルガ、この場合は試合に勝ったってことでいいのか?」
「試合をしていないんだから、勝ち負けもないだろう」
「ですよねー」
オルガによれば、出場選手が女性であると、こういうことが起きるのは珍しくないらしい。趣味じゃないパートナーを押し付けられるくらいなら辞退料を払ったほうがマシってことだ。俺もそんな展開になってくれたらいいんだけどなぁ、人生甘くないよな。
何はともあれ、良かった。この二人が離れ離れになるなんて、想像もしたくないからな。
おめでとう、ジェニー、メシュ。
俺は祝いの言葉をジェニーとメシュに送ると、また修行の場へと臨むのだった。
修行から帰宅後、あることが発覚する。
マリンのチート能力だ。
夕食時のことだ。晩飯を作る係となったマリンがその日作ってくれたのは、ビーバードの唐揚げ――鶏の唐揚げだったのだが。何て言えばいいだろう、美味いのはもちろんなんだが、食ったそばから体に活力? 気? みたいなものが満ちるのを感じた。
一緒に食べていたオルガもそのことに気がつくと「マリンの能力は『揚げ物達人』だ」とズバリ言い放った。『揚げ物達人』はあらゆる揚げ物の美味しく調理できてしまうだけでなく、それを食べると気力が溢れてくるという不思議な能力らしい。
最近は『怪力』とか『炎魔法』だとか攻撃系のチートばかりに目がいきがちだったが、生産系のチート能力もあったんだったな。すっかり忘れてた。
自分の能力がわかったマリンは嬉しそうに目を輝かせ、これでもっと俺の役に立てると、感動的な言葉を口にしていた。
ああ、これがリア充ってやつなんだなぁと、幸せな気分に浸っている俺を他所に、オルガは話を進めてきた。
「ナベウマ、明日初心者ギルドに行って、マリンの能力を登録するついでに仕事を探してみな」
今日はジェニーにとって重要な日だ。アリーナで無事に勝ってメシュを守れるかどうか。
頼むぜジェニー。勝って初心者転生者、勝率0%の記録を塗り替えてやってくれ! ……のはずだったんだがな……。
「うわあああん! 良かったよジェニイイィ!」
「はいはい。良かったねー」
アリーナの出場選手用の入り口前で、泣きじゃくるメシュの頭をジェニーが撫でていた。
ジェニーは無事にアリーナで勝ってメシュを守ることができた――というわけではなく、相手が辞退してきたから試合中止の形になったのだ。会場内ですれ違った観客たちの会話からわかったことだが、どうやら対戦相手の女性は試合前に泣きまくってるメシュを見て「ないわー」と言っていたそうだ。
「オルガ、この場合は試合に勝ったってことでいいのか?」
「試合をしていないんだから、勝ち負けもないだろう」
「ですよねー」
オルガによれば、出場選手が女性であると、こういうことが起きるのは珍しくないらしい。趣味じゃないパートナーを押し付けられるくらいなら辞退料を払ったほうがマシってことだ。俺もそんな展開になってくれたらいいんだけどなぁ、人生甘くないよな。
何はともあれ、良かった。この二人が離れ離れになるなんて、想像もしたくないからな。
おめでとう、ジェニー、メシュ。
俺は祝いの言葉をジェニーとメシュに送ると、また修行の場へと臨むのだった。
修行から帰宅後、あることが発覚する。
マリンのチート能力だ。
夕食時のことだ。晩飯を作る係となったマリンがその日作ってくれたのは、ビーバードの唐揚げ――鶏の唐揚げだったのだが。何て言えばいいだろう、美味いのはもちろんなんだが、食ったそばから体に活力? 気? みたいなものが満ちるのを感じた。
一緒に食べていたオルガもそのことに気がつくと「マリンの能力は『揚げ物達人』だ」とズバリ言い放った。『揚げ物達人』はあらゆる揚げ物の美味しく調理できてしまうだけでなく、それを食べると気力が溢れてくるという不思議な能力らしい。
最近は『怪力』とか『炎魔法』だとか攻撃系のチートばかりに目がいきがちだったが、生産系のチート能力もあったんだったな。すっかり忘れてた。
自分の能力がわかったマリンは嬉しそうに目を輝かせ、これでもっと俺の役に立てると、感動的な言葉を口にしていた。
ああ、これがリア充ってやつなんだなぁと、幸せな気分に浸っている俺を他所に、オルガは話を進めてきた。
「ナベウマ、明日初心者ギルドに行って、マリンの能力を登録するついでに仕事を探してみな」
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