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第二章 ― 争奪戦 ―
第48話 アリーナ
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初めて出会ったときと同様、レイヤは鎧を身に纏っているのと、外ハネしている髪の毛先が歩く度に揺れていた。
「レイヤじゃないか。久しぶり」
「やっほー、久しぶりだね! ショウマ君が大怪我して、マリンちゃんは病気にかかったって聞いたけど大丈夫?」
レイヤまで知ってるとは、オルガが話したのか。
「ああ。俺はこの通り。マリンも今は元気にしてるよ。検査に問題がなければ今日には退院だ」
レイヤが胸に手を当てて、ホッと一息つく。
心配かけちまってたか。
「本当に良かったわ。もう……今度危ないことするときは、お姉さんにちゃんと相談しなさいね!」
「そうするよ」
こっちとしても、二度とあんな目には遭いたくないからな。
「それにしても……葉子ちゃん、ここにショウマ君を連れてきたのって……」
「ええ。彼にも見てもらうことにしましたから」
明るかったレイヤの表情が陰る。
「レイヤさんのおっしゃりたいことは重々承知していますが、遅かれ早かれこの子は知ることになります。なら、早いに越したことはありません」
なんだなんだ、二人は知り合いか? ったく、勝手に二人で話し進めちゃって、俺は置いてけぼりかよ。
「……わかったわ。次の対戦がそろそろ始まるからアリーナへ急ぎましょ」
レイヤは表情こそ笑顔だったが、どこか暗い面持ちでアリーナと呼んだ巨大な建物へと歩き出した。
朝倉と俺も、その後に続いた。
アリーナへは俺たちだけじゃなく、他に何十人という人間が建物の入り口へと入っていく。
薄暗く飾り気のない廊下を歩き、階段を登る。
この建物の構造からして、ここはひょっとして野球場とかか?……んなわけないか。
あの朝倉が、散々もったいぶってそんなオチをかますとは思えない。
……こいつは。
階段を登り切ると、そこは日の光が入り込む屋外だった。
目の前には平らな地面が円形に広がっていて、それを取り囲むように観客席が並んでいる。
『それでは本日、第五回戦目となる試合を開始します! 引き続き司会は私グチタマと、解説はニーモニックが担当していきます!』
アリーナに響き渡るアナウンスに呼応するように、観客席から歓声がドッと沸く。
これほど騒がしい場所はいつ以来だろうか。
慣れない声量に酔いそうになる。
『赤コーナーより! 『雷魔法』のチート能力を持つレイヴン!』
一層、大きな歓声があがる。
マジでうるせー。自分の話してる声すら聞こえなさそうなくらいだ。
観客席と観客席の間にある通路から、真っ黒かつ光沢のある服で全身を覆っている男が現れた。
服はサイズが小さいのかピッチリと体に張り付いているようになっているため、股間がモッコリとしているのが確認できる。変態か?
『青コーナーより! 『炎魔法』のチート能力を持つ村崎 敦!』
レイヴンとやらが入場してきた通路とは、反対に位置している通路から別の男が現れる。
こっちは、パーカーにジーンズと普通な格好だ。
普通なためか、歓声もさっきと比べて小さい。
「なるほど、村崎君は今日が試合でしたか。レイヤさんが何故こちらにいらっしゃったのか納得がいきました」
朝倉が言った。
「村崎君のことはちょこっと面倒みたから、応援しにね」
「負けるとわかっていて……ですか?」
「……そうよ」
二人は何の話をしているんだ?
つか、これは何の催しなんだ?
「朝倉。ホント話についていけないんだが、これは何をやろうとしてるんだ?」
「人間同士の戦いよ」
「レイヤじゃないか。久しぶり」
「やっほー、久しぶりだね! ショウマ君が大怪我して、マリンちゃんは病気にかかったって聞いたけど大丈夫?」
レイヤまで知ってるとは、オルガが話したのか。
「ああ。俺はこの通り。マリンも今は元気にしてるよ。検査に問題がなければ今日には退院だ」
レイヤが胸に手を当てて、ホッと一息つく。
心配かけちまってたか。
「本当に良かったわ。もう……今度危ないことするときは、お姉さんにちゃんと相談しなさいね!」
「そうするよ」
こっちとしても、二度とあんな目には遭いたくないからな。
「それにしても……葉子ちゃん、ここにショウマ君を連れてきたのって……」
「ええ。彼にも見てもらうことにしましたから」
明るかったレイヤの表情が陰る。
「レイヤさんのおっしゃりたいことは重々承知していますが、遅かれ早かれこの子は知ることになります。なら、早いに越したことはありません」
なんだなんだ、二人は知り合いか? ったく、勝手に二人で話し進めちゃって、俺は置いてけぼりかよ。
「……わかったわ。次の対戦がそろそろ始まるからアリーナへ急ぎましょ」
レイヤは表情こそ笑顔だったが、どこか暗い面持ちでアリーナと呼んだ巨大な建物へと歩き出した。
朝倉と俺も、その後に続いた。
アリーナへは俺たちだけじゃなく、他に何十人という人間が建物の入り口へと入っていく。
薄暗く飾り気のない廊下を歩き、階段を登る。
この建物の構造からして、ここはひょっとして野球場とかか?……んなわけないか。
あの朝倉が、散々もったいぶってそんなオチをかますとは思えない。
……こいつは。
階段を登り切ると、そこは日の光が入り込む屋外だった。
目の前には平らな地面が円形に広がっていて、それを取り囲むように観客席が並んでいる。
『それでは本日、第五回戦目となる試合を開始します! 引き続き司会は私グチタマと、解説はニーモニックが担当していきます!』
アリーナに響き渡るアナウンスに呼応するように、観客席から歓声がドッと沸く。
これほど騒がしい場所はいつ以来だろうか。
慣れない声量に酔いそうになる。
『赤コーナーより! 『雷魔法』のチート能力を持つレイヴン!』
一層、大きな歓声があがる。
マジでうるせー。自分の話してる声すら聞こえなさそうなくらいだ。
観客席と観客席の間にある通路から、真っ黒かつ光沢のある服で全身を覆っている男が現れた。
服はサイズが小さいのかピッチリと体に張り付いているようになっているため、股間がモッコリとしているのが確認できる。変態か?
『青コーナーより! 『炎魔法』のチート能力を持つ村崎 敦!』
レイヴンとやらが入場してきた通路とは、反対に位置している通路から別の男が現れる。
こっちは、パーカーにジーンズと普通な格好だ。
普通なためか、歓声もさっきと比べて小さい。
「なるほど、村崎君は今日が試合でしたか。レイヤさんが何故こちらにいらっしゃったのか納得がいきました」
朝倉が言った。
「村崎君のことはちょこっと面倒みたから、応援しにね」
「負けるとわかっていて……ですか?」
「……そうよ」
二人は何の話をしているんだ?
つか、これは何の催しなんだ?
「朝倉。ホント話についていけないんだが、これは何をやろうとしてるんだ?」
「人間同士の戦いよ」
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