44 / 172
第二章 ― 争奪戦 ―
第41話 好きな女
しおりを挟む
好きになった女の子も守れないまま……死ぬわけにはいかねぇよな。
喉元に熊の牙が突きたてられるギリギリで上体を起こし、立ち上がった。
熊は俺のしぶとさに苛立ったのか低い唸り声をあげて、体をフラつかせている俺へと突進してくる。
この状態で逃げ切るのは無理だ。
なら、やるしかない。
俺は、この熊をぶっ倒して、んでもってマリンを助ける!
手を握り締める。
胸の内で、闘志という名の炎が燃え上がったように感じた。
熊が俺に圧し掛かろうと、その巨体を二足歩行で持ち上げて倒れ込んでくる。
「だああああああああああ!!!!!!!!」
雄叫びをあげ、全身全霊で右の拳を下から上へ熊の土手っ腹目掛けてアッパーを叩き込んだ。
空中を舞うダイアモンドダストが風圧によって乱れるのと同時に、熊の体が空高く飛び上がる。熊はそのまま綺麗な放物線を描いた後、頭から地面に落ちた。
しばらくアッパーのポーズをとったまま、倒れている熊をじっと見る。
……死んだ……のか?
熊はピクリとも動かない。
間違いなく生命活動を終えていた。
「やったぞ……マリン……」
自分自身が生き残ったこと以上に、マリンを救える喜びを噛み締めた。
「にしても、あんなでかい熊をぶっ飛ばせるなんて……これが俺のチート能力なのか? 怪力とか、みたいな?」
しげしげと熊を屠った右腕を見る。
「う……」
何だ? 右腕が地味に痛むぞ。 手首の辺りか?
「あっ!」
手首を軽く曲げようとすると、激痛がはしる。
まさか殴った反動で骨が折れたのか?! 何にしろ、さっさと山を降りないとやべぇ。
ジャージのポケットに、アイヴィール草がしっかりと入っていることを確認してから、来た道を戻り始めた。
足早に真っ暗な森の中を進む。
「ゼェ……ハァ……」
息が切れる。
足が痒い。
歩いたときの振動で右手首が痛む。
流石に走る気力は残っていなかった。
「……暖かくなってきた」
雪はちらついているものの、アイヴィール草が咲いていた場所に比べれたら、ここは熱帯地域みたいなものだ。
手首の痛みのために、来る途中に登ってきた崖を降りることができず、大きく回り道をすることになってしまった。
とはいえ、夜はまだ明けていない。
大丈夫、間に合う。
崖の下へと降りる道を見つけ、ようやく雪が降らない標高まで引き返すことができた。
あと少しだ。
へっ、リーとかいうヤツは俺が死ぬとか言ってたっけ。どうだ、生き残ってやったぞ。だいたい大人っつーのはビビリ過ぎなんだよ。臆病風に吹かれず、気合入れりゃ何でも解決できるんだ。
ガサッと森の奥で草むらの揺れる音が聞こえた。
「モンスター?!」
音が発生した方向に目を向けると、光る点が二つ、闇に浮いていた。
喉元に熊の牙が突きたてられるギリギリで上体を起こし、立ち上がった。
熊は俺のしぶとさに苛立ったのか低い唸り声をあげて、体をフラつかせている俺へと突進してくる。
この状態で逃げ切るのは無理だ。
なら、やるしかない。
俺は、この熊をぶっ倒して、んでもってマリンを助ける!
手を握り締める。
胸の内で、闘志という名の炎が燃え上がったように感じた。
熊が俺に圧し掛かろうと、その巨体を二足歩行で持ち上げて倒れ込んでくる。
「だああああああああああ!!!!!!!!」
雄叫びをあげ、全身全霊で右の拳を下から上へ熊の土手っ腹目掛けてアッパーを叩き込んだ。
空中を舞うダイアモンドダストが風圧によって乱れるのと同時に、熊の体が空高く飛び上がる。熊はそのまま綺麗な放物線を描いた後、頭から地面に落ちた。
しばらくアッパーのポーズをとったまま、倒れている熊をじっと見る。
……死んだ……のか?
熊はピクリとも動かない。
間違いなく生命活動を終えていた。
「やったぞ……マリン……」
自分自身が生き残ったこと以上に、マリンを救える喜びを噛み締めた。
「にしても、あんなでかい熊をぶっ飛ばせるなんて……これが俺のチート能力なのか? 怪力とか、みたいな?」
しげしげと熊を屠った右腕を見る。
「う……」
何だ? 右腕が地味に痛むぞ。 手首の辺りか?
「あっ!」
手首を軽く曲げようとすると、激痛がはしる。
まさか殴った反動で骨が折れたのか?! 何にしろ、さっさと山を降りないとやべぇ。
ジャージのポケットに、アイヴィール草がしっかりと入っていることを確認してから、来た道を戻り始めた。
足早に真っ暗な森の中を進む。
「ゼェ……ハァ……」
息が切れる。
足が痒い。
歩いたときの振動で右手首が痛む。
流石に走る気力は残っていなかった。
「……暖かくなってきた」
雪はちらついているものの、アイヴィール草が咲いていた場所に比べれたら、ここは熱帯地域みたいなものだ。
手首の痛みのために、来る途中に登ってきた崖を降りることができず、大きく回り道をすることになってしまった。
とはいえ、夜はまだ明けていない。
大丈夫、間に合う。
崖の下へと降りる道を見つけ、ようやく雪が降らない標高まで引き返すことができた。
あと少しだ。
へっ、リーとかいうヤツは俺が死ぬとか言ってたっけ。どうだ、生き残ってやったぞ。だいたい大人っつーのはビビリ過ぎなんだよ。臆病風に吹かれず、気合入れりゃ何でも解決できるんだ。
ガサッと森の奥で草むらの揺れる音が聞こえた。
「モンスター?!」
音が発生した方向に目を向けると、光る点が二つ、闇に浮いていた。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
モブです。静止画の隅っこの1人なので傍観でいいよね?
紫楼
ファンタジー
5歳の時、自分が乙女ゲームの世界に転生してることに気がついた。
やり込んだゲームじゃ無いっぽいから最初は焦った。
悪役令嬢とかヒロインなんてめんどくさいから嫌〜!
でも名前が記憶にないキャラだからきっとお取り巻きとかちょい役なはず。
成長して学園に通うようになってヒロインと悪役令嬢と王子様たち逆ハーレム要員を発見!
絶対お近づきになりたくない。
気がついたんだけど、私名前すら出てなかった背景に描かれていたモブ中のモブじゃん。
普通に何もしなければモブ人生満喫出来そう〜。
ブラコンとシスコンの二人の物語。
偏った価値観の世界です。
戦闘シーン、流血描写、死の場面も出ます。
主筋は冒険者のお話では無いので戦闘シーンはあっさり、流し気味です。
ふんわり設定、見切り発車です。
カクヨム様にも掲載しています。
24話まで少し改稿、誤字修正しました。
大筋は変わってませんので読み返されなくとも大丈夫なはず。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる