俺のチートって何?

臙脂色

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第二章   ― 争奪戦 ―

第37話 初めての試練

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 「そんなすごい薬草があるなら、どうして栽培とかして増やしてないんだよ」

 「栽培できるような代物じゃあらへんさかい。アイヴィール草は人に見つかった時点から三日後には枯れてしまうんよ」

 「人に見られたら枯れるって? んなことありえるのか」

 「あり得るも何も実際そーなんや。せやから、アイヴィール草は生息しているところへ直接取りに行く必要があってな……」

 リーがぽりぽりと頬を指先で掻く仕草で察する。

 「簡単じゃないってのは、アイヴィール草が厳しい環境に生えてるってことか?」

 「環境が厳しいだけやない、そもそも時間がどう足掻いても足りんのや。アイヴィール草は、王国から北に位置する一番高い山――アルカトラズ山っちゅう山の近辺で確認されとる。王国からアルカトラズ山まで走っても片道10時間はかかる。運良く見つかったところで、マリンはんを救えるまでの時間にまにあわ――」

 「オッケー。アイヴィール草の特徴は?」

 聞く必要の無い話が続きそうになったから、声をかぶせてやった。

 「白い茎に黒い花弁やけど……まさか、あんさん」

 俺はリーに背を向けて部屋を出ようとする。

 「あかんで!」

 それをリーが前に出て、両手を広げて止める。

 「行ったらマリンはんどころか、あんさんまで死ぬで! アルカトラズ山はただの山ちゃう! 降り止まない雪に気温-50度、おまけに王国の騎士でも手を焼くモンスターがぎょーさんおるんや!」

 「……で? 死ぬのが何だって言うんだ?」

 「な、何言うてんねん! 死んだらあかんに決まっとるやろ!」

 「死ぬのがいけない……ね」

 転生者である俺に対して、そんな台詞が飛び出すとか……くだらねぇ……。

 「どうせ俺は一度死んでるんだ。二度死のうが、三度死のうが、知ったこっちゃねぇ」

 リーの肩を押して、強引に部屋を出る。
 すると、扉の横で壁にもたれかかっているオルガに遭遇する。
 さっき病院に見せた身分証で呼び出されたのだろうが、今はオルガの相手をしている時間は無い。無視だ。

 「待て」

 オルガが俺の手を掴む。

 「説教なら後にしろ。今は一分一秒が惜しい」

 「冷静になれナベウマ。マリンのことは確かに残念だ。だがな、この世界で人が死ぬなんて珍しくも無いこと。お前が責任を感じる必要はない」

 「……言いたいことはそれだけか?」

 掴まれている方の手に力を込める。それに対抗するように、オルガの手にも力が入る。

 「たった二週間だぞ。そんな短い間柄で何故そこまで――!」

 オルガの手を力任せに振り払った。

 「この力は?!」

 驚くオルガを余所に、俺は全力で走り出して病院を飛び出した。


 ああ、そうだ。マリンと過ごした時間はたったの二週間ぽっちでしかない。浅い関係なのかもしれない。
 だがな、親しくないからと割り切るには、もう彼女のことを知り過ぎちまったんだよ!
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