俺のチートって何?

臙脂色

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第二章   ― 争奪戦 ―

第35話 病院

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 道中、街を歩いていたオバサンが、俺とは反対の位置からマリンの歩行を支えてくれたおかげで、何とか病院にまで辿り着くことができた。
 流石に病院の建物はしっかりとしているようで鉄筋コンクリートで造られており、ガラス越しに見える屋内の様子も清潔感がある。

 ここまで案内してくれた男が、病院の中へと駆け込み医者を呼びに行ってくれた。
 それと同時に、マリンの手に力が入ったので歩を進めていた足を止める。

 「マリン?」
 「あ……ぐ……ヒューヒュー」

 おいおい、この笛みたいな呼吸音! マリンの身に一体何が起きてるんだ?!
 ちくしょう! マリンがこんなに苦しんでるのに、何もしてやれない自分にイライラする!

 ついに、マリンは完全に脱力してしまう。

 「やばい、一度寝かせないと!」
 「あ、あんたダメよ!」

 付き添ってくれたオバサンが、マリンを横にしようとするのを制する。

 「あたしも似たような経験したからわかる! こういうとき、横になるともっと苦しいんだ! 椅子か何かに座らせんと!」

 座らせるたって、近くにベンチみたいなものは――。

 そこへ、先ほど病院へ入った男が、何人かの看護師とストレッチャーを引き連れて戻ってきた。

 「こちらへ乗せてください!」

 看護師の指示に従い、マリンをストレッチャーに乗せる。

 「しょ……ま……」

 かすれ声でマリンが俺を呼ぶ。
 今にも閉じてしまいそうな目はひどく充血していた。
 マリンが運ばれていく。

 「マリン!」

 その後を追う。
 看護師たちはマリンを乗せたストレッチャーを引っ張って、病院内に入ると角を曲がり、奥の部屋と入った。続いて俺も入ろうとしたが、看護師に止められる。

 「先生のチート能力ですぐに治しますので、そちらに座ってお待ちください」

 言われたとおり、俺は椅子に座って待つことにした。


 約一時間が経ったときだった。
 マリンたちが入った部屋から、何人か出てきた。その中の一人が駆け出して受付の方へ向かって行った。

 「マリンは無事か!?」

 「……一命を取り留めてはいますが、油断できない状態です」

 胸が締め付けられるように痛む。

 「どうして……『回復魔法リカバリー マジック』とやらですぐ治せるんじゃないのかよ!」

 「『回復魔法』はあくまで細胞分裂を加速させるチート能力であって、病巣を取り除くことはできないんですよ」

 白衣を着た男が、看護師を下がらせて言った。

 「彼女の状態のことは、透視医である私から説明します。結果から先に言わせてもらうと、彼女の気管支と肺全体がに侵されてます」

 ……は? カビ?

 「肺がカビに侵食されるというケース自体は珍しくありません。当病院でもステロイドや抗真菌薬による治療や、症状が重いときは『放射線魔法ガンマナイフ マジック』の能力をもつチート外科医が物理的に排除する治療を何度か行っています。しかし、患者に巣くっているカビの増殖スピードが異常に速く、『放射線魔法』をもってしても処理が追いつかない状況です」

 「……方法は……治す方法はまだあるよな?」

 「……私たちにできることはここまでです」
 「なっ!」
 「ただし、他の専門――薬草師ならば、助ける手立てがあるかもしれません」

 「じゃあ、早くその薬草師とやらを呼んでくれ!」

 「既に『精神感応テレパシー』でこちらに向かうよう手配しています」
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