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第二章 ― 争奪戦 ―
第30話 ジェニー
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キノコが親指に減り込んでるわけじゃない! キノコの傘の下には口のようなものあって、しかも、その上下に鋭い歯が並んでいる! こいつはキノコの皮をかぶったモンスターだ!
「いっつっ!」
振り払おうと手をブンブン振るがキノコモンスターは離れない。軍手ごと引っ張ろうとしてもダメ。
慌てて腰の短剣を抜き、キノコの傘を刺し貫こうとするが。
「ッ?! 滑る!」
傘部分は潤滑油が塗りたくられているかのようにヌルヌルしており、そのため切っ先が傘の上を滑って突き刺すことができない。対処できないままそうこうしている内に、指先から血が滴れる。
「ショウマ様!」
マリンは短剣を握ってオロオロとしている。
これは、地味にヤバイぞ!
指が食い千切られるという最悪の結末を想像したときだった。
「ありゃ、大丈夫っすかー?」
黒いウェーブロングの髪型の女の子が、俺たちの前に現れた。
俺たちと同様にジャージ姿のその女の子は、俺の側まで来て屈んだ。
「あー、バッタモンダケに噛み付かれちゃったんすねー。ちょいと我慢してねー」
気の抜けるような喋り方は、緊急事態の真っ最中であることを忘れさせる。
女の子が短剣でキノコモンスターの傘裏を軽く着ると、モンスターは噛む力を失い俺の指からポロリと落ちた。
「コイツは柄の付け根に筋肉みたいなものが集まってるんで、そこ切っちゃえば安全っすよ」
「いてて……ありがとう、助かったよ」
「ショウマ様を助けていただき、ありがとうございます!」
俺の隣で、マリンが深々と頭を下げる。
「なーに、初心者同士困ったときはお互い様ってねー。二人とも初めて見る顔だけど、転生したて?」
「ああ、こっちに来てまだ一週間ちょっとだ」
「ほえー、そりゃあ新人の中の新人っすね。私は遠矢 千鶴――じゃなくてジェニーっす。こっちは転生して3週間になるんで、わからないことがあったら遠慮なく聞いてくだせー」
今明らかに日本人っぽい名前が飛び出てたよな。
という、ツッコミはせず、普通に返事をする。
「俺は渡辺 勝麻だ。いろいろと教えてもらえると助かるよ。こっちの初心者サポーターは全然サポートする気なくて、知らないこと多いんだよね」
「あー、そいつはぁ大変っすねー」
やる気の無い声のせいで、完全に他人事のように聞こえる。実際他人事だけども。
「ところで、どーっすかね?」
「へ? 何が?」
ジェニーの急な問いかけに戸惑う。
「ジェニーって名前良くないっすか?」
「あ、ああ。良いんじゃないか?」
「ふっふぅー、せっかくの第二の人生っすからねー。どうせならカッチョイイ名前にしたくって」
なんというか、マイペースな女の子だな。
「渡辺くんも初心者ギルドで名前変えてもらったらどーすか? 初心者ギルドのお世話になっている間は無料で変更できるっすよ」
「名前ね……」
一瞬、ナベウマという単語が脳裏を過ぎる。
アレだけはないな。
「俺はあんまり名前に拘ってないからいいかな」
「そっすか」
「ジェニー!」
遠くから男の声がした。
「いっつっ!」
振り払おうと手をブンブン振るがキノコモンスターは離れない。軍手ごと引っ張ろうとしてもダメ。
慌てて腰の短剣を抜き、キノコの傘を刺し貫こうとするが。
「ッ?! 滑る!」
傘部分は潤滑油が塗りたくられているかのようにヌルヌルしており、そのため切っ先が傘の上を滑って突き刺すことができない。対処できないままそうこうしている内に、指先から血が滴れる。
「ショウマ様!」
マリンは短剣を握ってオロオロとしている。
これは、地味にヤバイぞ!
指が食い千切られるという最悪の結末を想像したときだった。
「ありゃ、大丈夫っすかー?」
黒いウェーブロングの髪型の女の子が、俺たちの前に現れた。
俺たちと同様にジャージ姿のその女の子は、俺の側まで来て屈んだ。
「あー、バッタモンダケに噛み付かれちゃったんすねー。ちょいと我慢してねー」
気の抜けるような喋り方は、緊急事態の真っ最中であることを忘れさせる。
女の子が短剣でキノコモンスターの傘裏を軽く着ると、モンスターは噛む力を失い俺の指からポロリと落ちた。
「コイツは柄の付け根に筋肉みたいなものが集まってるんで、そこ切っちゃえば安全っすよ」
「いてて……ありがとう、助かったよ」
「ショウマ様を助けていただき、ありがとうございます!」
俺の隣で、マリンが深々と頭を下げる。
「なーに、初心者同士困ったときはお互い様ってねー。二人とも初めて見る顔だけど、転生したて?」
「ああ、こっちに来てまだ一週間ちょっとだ」
「ほえー、そりゃあ新人の中の新人っすね。私は遠矢 千鶴――じゃなくてジェニーっす。こっちは転生して3週間になるんで、わからないことがあったら遠慮なく聞いてくだせー」
今明らかに日本人っぽい名前が飛び出てたよな。
という、ツッコミはせず、普通に返事をする。
「俺は渡辺 勝麻だ。いろいろと教えてもらえると助かるよ。こっちの初心者サポーターは全然サポートする気なくて、知らないこと多いんだよね」
「あー、そいつはぁ大変っすねー」
やる気の無い声のせいで、完全に他人事のように聞こえる。実際他人事だけども。
「ところで、どーっすかね?」
「へ? 何が?」
ジェニーの急な問いかけに戸惑う。
「ジェニーって名前良くないっすか?」
「あ、ああ。良いんじゃないか?」
「ふっふぅー、せっかくの第二の人生っすからねー。どうせならカッチョイイ名前にしたくって」
なんというか、マイペースな女の子だな。
「渡辺くんも初心者ギルドで名前変えてもらったらどーすか? 初心者ギルドのお世話になっている間は無料で変更できるっすよ」
「名前ね……」
一瞬、ナベウマという単語が脳裏を過ぎる。
アレだけはないな。
「俺はあんまり名前に拘ってないからいいかな」
「そっすか」
「ジェニー!」
遠くから男の声がした。
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