俺のチートって何?

臙脂色

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第二章   ― 争奪戦 ―

第29話 タイトルコール

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 銭湯から帰った後、俺は部屋で一人考え込んでいた。
 チート能力がわからなきゃ定職にはつけないか。こりゃ、いよいよ真面目に自分の能力を探らなきゃいけないな。

 「……ノビノビのーピストル!」

 子供の頃に読んだマンガの主人公をマネて、腕が伸びるイメージをしながらパンチを繰り出してみる。
 当然、腕は伸びない。

 「……分身の術!」

 股を開いて、両手の人差し指と中指を立てて、それを胸の上あたりで交差させてみる。
 が、やはり何も起きない。


 「ただいま戻りました、ショウマ様!」
 
 銭湯から帰ってきたマリンが勢いよく襖を開けて入ってきた。

 「……何をしてるんです?」

 俺の分身の術ポーズを見てマリンがきょとんとする。

 見られたあぁ! 恥ずかしいところ見られたあぁ!
 敷いておいた布団の中へと、逃げるように潜り込んだ。

 「ショウマ様?! ショウマ様ー」


 はぁ……俺のチートって何?


 翌日。

 「キノコ狩りアルバイトの方ですか? では、あちらで名前のご記入をお願いします」

 俺とマリンはキノコ集めバイトにやってきた。ここに来る前に、二人分の軍手を買い、マリンにはジャージとマフラーも備えておいた。

 「ショウマ様! これ暖かくてフワフワしててとても気持ち良いです!」

 マリンが白いマフラーを両手でぽふぽふする。

 「はははっ! 気に入ってくれたようで何より。んじゃ、キノコ集めますか」

 「はい!」

 俺とマリンは、竹でできたカゴを背負うと、セネルの森の中へと出発した。


 キノコがちらほらと見つかり出す頃になると、周りたくさんいたビギナー転生者たちの数も疎らになり、近くには3、4組ほどしかいなくなっていた。
 それにしても、セネルの森は聞いていたとおり冷えるな。軍手をしてても手が冷える。手はジャージのポッケに突っ込んでおくか。

 「あ、ショウマ様! 両手をポケットに入れて歩くのは危ないですよ!」

 「まるでオカンみたいなことを言うなマリンは。昔からしてることだし、別に平気だよ」

 「むー」

 な、マリンが頬をほんのり膨らませて、俺をジト目で睨んでいる。マリンでも怒ることがあるんだな、ちょっと意外。

 「わ、わかったよ。言うとおりにするよ」

 「ふふっ、素直に聞いてくれて嬉しいです」


 それから2時間ほど、キノコを拾いつつ歩を進めていくと、白くて細いキノコが密集しているエリアを発見する。

 「見てください! 木にも生えてますよ!」

 マリンの言う様に、そのキノコは木が見えなくなるくらいに、みっちり生えていた。
 正直、キモイ。

 「なんか毒キノコっぽく見えるけど、食えるのか?」

 特に、このキノコは拾ってくるななどの指示は受けていないので、懐疑的になりながらも俺はそのキノコを土から抜き取ろうとした。

 そのときだった。
 親指に鋭い痛みがはしった。

 「え?」

 抜き取ろうとしたキノコが親指にくっついて――いや、噛み付いてるうぅ?!
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