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第二章 ― 争奪戦 ―
第27話 初めてのお仕事は~?
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「25番でお待ちの方どうぞー」
俺とマリンは、机を挟んで係りの女性と向き合った。その人も白黒のウェイトレスの格好をしている。
「本日はお仕事をお探しということで参られましたか?」
「はい。俺、一週間前に転生してきたばかりで仕事が無くて」
「承知いたしました。身分証明書はお持ちですか?」
俺はポケットから俺とマリン――2枚のカードを抜き取り、係りに手渡した。
「ギルドのご利用は初めてですか?」
「はい」
「では、お二人の情報を登録しますが、その前にカードに記録された情報と相違ないか確認させていただきますね」
係りの人の目が青色に光り出した。王国に入る前に出会った男のときと同じだ。おそらく、この青い目はチート能力の一種で相手のステータスを見抜くことができるんだろう。
「はい、確かに。渡辺 勝麻様、Lv2 攻撃力3 防御力2 魔力0 器用さ1 速さ2。マリン様、Lv2 攻撃力1 防御力1 魔力0 器用さ3 速さ2。転生日、異界暦138年 9月7日、仮住所はオルガ様のところですね」
係りの人が、喋りながらカードの情報を紙に書き込んでいく。
そういえば転生日の9月7日って、ちょうど俺が前世に死んだ日と同じなんだよな。今日は9月15日だけど、前の世界も今は9月15日だったりするのかなぁ。別世界なんだから今頃も何もないんだけど。
「チート能力の記入欄が空白になっておりますが、今もご不明のままでしょうか?」
「あ、はい」
「申し訳ありません。それですと、定職のご案内は難しくて、アルバイトのみの案内となりますがよろしいですか?」
む、就職するにはチート能力が必須なのか?
なかなか世知辛い異世界だな全く。とにかく、このまま帰ったんじゃあ、オルガに何を言われるか。せめて、条件のいいところを見つけよう。
「それでいいっす。時給が良ければ」
「畏まりました」
係りの人は机に置いてあった分厚いファイルを手に取ると、ペラペラとページをめくり始めた。
「キノコ狩りバイトなんていかがですか? 肌寒い環境下での仕事ですが、単純作業で日給は9000Gですよ」
「え、キノコ狩り? キノコ狩りって遊びじゃなくて、仕事なのか?」
「はい。この時期になりますと、セネルの森と呼ばれる場所に美味しいキノコが大量発生するんです。それも人手がいくらあっても足りないくらいに生えてきます」
「……そんなオイシイ話があったら、ベテランの人だってたくさん参加しそうだけど、それでも足りないの?」
「いえ、このアルバイトは初心者ギルド限定のものなんですよ。転生してきたばかりの方が熟練者に仕事を取られないようにするための」
なるほど、納得。
「いかがなさいますか?」
「……これって週5勤務?」
「いえ、来れる日に来てくれればいいそうですよ」
「このアルバイトが出来るのはいつまで?」
「期限はキノコが発生すしている間ずっとなので、特定の終了日があるわけではありません……例年どおりであれば、11月初めまで続きますね」
来れる日に行けばいいっていうのは魅力的だよな。報酬も悪くないし、いいかな。
「そのバイトやりたいっす」
「はい。では、依頼主に渡辺様のことをお伝えしておきますね。アルバイトの詳細はこちらの用紙に書かれていますので、お目通しください」
キノコ狩りかぁ。
二、三本くらい、ちょろまかせないかな。
俺とマリンは、机を挟んで係りの女性と向き合った。その人も白黒のウェイトレスの格好をしている。
「本日はお仕事をお探しということで参られましたか?」
「はい。俺、一週間前に転生してきたばかりで仕事が無くて」
「承知いたしました。身分証明書はお持ちですか?」
俺はポケットから俺とマリン――2枚のカードを抜き取り、係りに手渡した。
「ギルドのご利用は初めてですか?」
「はい」
「では、お二人の情報を登録しますが、その前にカードに記録された情報と相違ないか確認させていただきますね」
係りの人の目が青色に光り出した。王国に入る前に出会った男のときと同じだ。おそらく、この青い目はチート能力の一種で相手のステータスを見抜くことができるんだろう。
「はい、確かに。渡辺 勝麻様、Lv2 攻撃力3 防御力2 魔力0 器用さ1 速さ2。マリン様、Lv2 攻撃力1 防御力1 魔力0 器用さ3 速さ2。転生日、異界暦138年 9月7日、仮住所はオルガ様のところですね」
係りの人が、喋りながらカードの情報を紙に書き込んでいく。
そういえば転生日の9月7日って、ちょうど俺が前世に死んだ日と同じなんだよな。今日は9月15日だけど、前の世界も今は9月15日だったりするのかなぁ。別世界なんだから今頃も何もないんだけど。
「チート能力の記入欄が空白になっておりますが、今もご不明のままでしょうか?」
「あ、はい」
「申し訳ありません。それですと、定職のご案内は難しくて、アルバイトのみの案内となりますがよろしいですか?」
む、就職するにはチート能力が必須なのか?
なかなか世知辛い異世界だな全く。とにかく、このまま帰ったんじゃあ、オルガに何を言われるか。せめて、条件のいいところを見つけよう。
「それでいいっす。時給が良ければ」
「畏まりました」
係りの人は机に置いてあった分厚いファイルを手に取ると、ペラペラとページをめくり始めた。
「キノコ狩りバイトなんていかがですか? 肌寒い環境下での仕事ですが、単純作業で日給は9000Gですよ」
「え、キノコ狩り? キノコ狩りって遊びじゃなくて、仕事なのか?」
「はい。この時期になりますと、セネルの森と呼ばれる場所に美味しいキノコが大量発生するんです。それも人手がいくらあっても足りないくらいに生えてきます」
「……そんなオイシイ話があったら、ベテランの人だってたくさん参加しそうだけど、それでも足りないの?」
「いえ、このアルバイトは初心者ギルド限定のものなんですよ。転生してきたばかりの方が熟練者に仕事を取られないようにするための」
なるほど、納得。
「いかがなさいますか?」
「……これって週5勤務?」
「いえ、来れる日に来てくれればいいそうですよ」
「このアルバイトが出来るのはいつまで?」
「期限はキノコが発生すしている間ずっとなので、特定の終了日があるわけではありません……例年どおりであれば、11月初めまで続きますね」
来れる日に行けばいいっていうのは魅力的だよな。報酬も悪くないし、いいかな。
「そのバイトやりたいっす」
「はい。では、依頼主に渡辺様のことをお伝えしておきますね。アルバイトの詳細はこちらの用紙に書かれていますので、お目通しください」
キノコ狩りかぁ。
二、三本くらい、ちょろまかせないかな。
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