俺のチートって何?

臙脂色

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第二章   ― 争奪戦 ―

第25話 異世界生活スタート

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 遥か彼方の次元でが思う。



 …………怒りだ。

 怒りが血となって全身を巡っている。
 あれからどれほどの時が経っただろう。
 最早、自身が何に怒っているのかも曖昧になってきている。
 しかし、これだけははっきりしている。

 憎い。
 世界が憎い。
 ニセモノの世界が憎い。

 だから、全てを殺す。


 ――――――


 異界暦138年 9月

 異世界ウォールガイヤに来てから一週間が経った。ここでの生活にも慣れ始め、ルーチンが出来上がりつつある。

 朝、マリンに起こしてもらう。
 起きたら歯を磨き顔を洗う。
 朝食に目玉焼きとパンをマリンが用意してくれるので食べる。
 外に出て、街を散策。その過程で幾つかお気に入りの飲食店を発見したので、そこで昼食をとることが多い。

 この七日間、街を散策していくつかわかったことがある。一つは、街が多くのチート能力によって支えられているということ。さっき話した飲食店で使われている食材も、チート能力によって生産速度を上げていたり味の加工を行ったりしている。冷蔵庫、炊飯器、電気ポット、IHなどの電化製品もあり、これらは電気魔法で生み出された電力によって稼動しているそうだ。

 それってもうほとんど現代と変わらなくね? って思ったそこのあんた、全くもってそのとおりで、外観やインフラが少し古臭いだけで、技術力は俺がいた2018年の地球に肉薄している。ここまでくると、もうスマホが出てきたって驚かない。

 実は、自動車も何台か見かけている。軽トラックだけだが。あれもチート能力の賜物なんだろうか。

 他にも、料理や風呂などで使う火も魔法が使われているし。洗濯も水と風魔法を巧みに操って行われていた。俺もその魔法洗濯をやってもらいたかったが、金がかかるので地道に洗濯版で洗うことにした。

 外から帰ってきたら、後は晩飯を食い、銭湯に行き、寝るだけだ。

 食って、散歩して、寝る。素晴らしい日々だ。学校にも行かなくていいし、スローライフって感じだ。


 悠々自適の生活だが、不満なことが一つある。それは睡眠不足であること。睡眠時間は7時間と十分あるのに眠い。原因は一部始終を見てくれればわかる。



 「おやすみ、マリン」

 「はい、おやすみなさい。ショウマ様」

 消灯し、それぞれの布団に身を包む俺とマリン。

 それから時間が経つと、マリンの布団がもぞもぞと動き出す。
 かと思えば、マリンが自分の布団から出てきて、俺の布団に入り込んできた。

 ま、マリンのやつ今日もくるか!

 マリンはとても寝相が悪かったのだ。
 昨日も一昨日も、俺の布団に入り込み、両手で俺の片腕をホールドして、その豊満な胸を押し付けてきた。
 童貞がそんなことされてまともな状態でいられるわけもなく、理性を保つのが精一杯でとても寝られたもんじゃない。

 だがなマリン! 甘いぜ!
 マリンとは逆方向に、体を横向きにする。
 ふふふ、どうだ! これなら俺の背中が壁となって“当ててんのよ”が出来まい!

 が、マリンは俺の予想を超える。
「んー、ショウマさまー」と、寝言を言いながら、なんと俺に馬乗りしてきたのだ。

 はいいぃ?! なあ、マリン! もうこれワザとだよね! 絶対起きてるよね! 確信犯だよね! 

 馬乗りの状態からマリンは、上体を前に倒し、覆いかぶさってくる。

 近い! 顔が近い! マリンの口と俺の耳がゼロ距離ってくらい近い! マリンの寝息が耳にダイレクトアタックしてるよ! こそばゆいよ! 髪の毛からも甘い香りが漂ってきて、理性がやばいよ!

 うぅ……こんなときギャルゲーマニアである友達のA君、お前ならどうする?

 「渡辺」「渡辺」と、本来聞こえるはずの無い友達のA君の声が聞こえてきた。
「お前はまだまだ未熟だな。確かに添い寝イベントは相手の好感度がかなり高くなければ起こらないであろうイベントではあるが、なーに使い古された演出だ。こう思っとけ、添い寝はギャルゲーのおもむきだってな」
 趣だって? 言っていることが意味不明だよA君……。

 幻聴と人肌の温かさの中、今夜も俺は眠れない。
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