俺のチートって何?

臙脂色

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第一章   ― ワールドガイダンス ―

第16話 トドメ

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 男性は腰に差していた短剣を取り出すと、それの柄部分を俺に向けて差し出した。

 モンスターを殺してもらう? どういうことだ?
 殺すこと事態は害虫駆除みたいなものとして理解できるが、何故トドメを俺たちに?
 思っていることを察したのか、男は次のこと言った。

 「王国に入国するにあたり必要となる手続きで、転生者の方には全員やってもらっていることです」

 俺は男やレイヤ、オルガの顔を一瞥する。

 ……見た感じ悪そうなヤツらには見えないし、従って間違いはない……よな? オルガは別。

 意を決して男から短剣を受け取ると、ネズミっぽいモンスターの側まで近づき、見下ろした。ピクピクと体を痙攣させている。目は真っ黒なので、どこに目線が向けられているのか不明だが、何となく俺の顔を見ているような気がする。

 相手はモンスター。
 とっとと首やら頭やらを短剣で一刺しして殺してしまえばいいはずなのだが、なかなか実行に移すことができない。

 ……相手の命を一方的に奪うのって、こんなにも心の準備が必要なのか。

 「なぁ――」
 「逃げるな、やるんだ」

 助け舟を出してもらおうとオルガに声をかけたところ、ピシャリとはねつけられてしまった。

 「魚を捌く感覚でズバーッってやっちゃえばいいよ!」

 レイヤがアドバイスらしき言葉を送ってくれるが、いかんせん魚を捌いた経験が無い。料理に関しては完全に母親に任せていた。


 「……スゥー……ハァー……」

 深呼吸をし、頭をブルブルと左右に振る。

 「よくわかんねぇけど、決まりらしいからな。俺を恨むなよ!」

 短剣の刀剣部分を下に向け、柄を両手で握る。剣先が狙う先は、ネズミモンスターの首部分。俺は両腕に渾身の力を込め、突き刺した。

 ヂュッ!

 モンスターから鳴き声がもれる。

 よし、やったぞ!
 短剣も深く入った。これで――!

 死んだかに思えたモンスターがビクビクと大きく震え出し、驚いた俺は尻餅をついてしまう。

 「素人の剣で即死にできるとでも思ったのか?」

 「もう、オルガはすぐそういう意地悪なこと言う。ショウマくん、頑張って! 今のをあと2回もやれば終わるから!」

 あと……2回も?

 モンスターは自身の体を跳ねさせるくらい、強い力で痙攣している。俺にはその動きが、まるで断末魔の叫びのように聞こえ、胃から不快なものがせり上がってきそうになる。
 その不快なものの浮上を唾を飲み込むことで抑えると、俺は改めて覚悟を決めた。
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