俺のチートって何?

臙脂色

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第一章   ― ワールドガイダンス ―

第13話 オルガの仕事と魔人

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 「よくわかったよ。俺の当面の目標は、自分のチート能力が何なのか知るってことでいいんだよな」

 「そういうことだな」

 うーむ。野垂れ死んだりしないか、ちょっと心配になってきたぞ。せめて食いぶちぐらいは稼ぎたいところ。

 「心配するな。1ヶ月は俺が面倒を見てやる」

 また人の心を読んできやがってコイツは。

 「ずいぶん面倒見がいいんだな。それ、あんたにメリットあるのかよ」

 「メリットも何もそれが俺の仕事だからだ」

 「俺を助けることが仕事?」

 「俺は初心者サポートを生業にしている。お前のようにウォールガイヤに来たばかりの転生者は途方に暮れるからな、この世界での生活に慣れるまでの支援をする」

 「でも、俺はそのサポートに対して金とか払えないぞ」

 転生前にコンビニで買い物をしたときのお釣りがズボンのポケットの中に入ったままになっていたが、缶ジュース一本買える程度の額で支払えるとは思えなかった。そもそもこの世界って日本円なんだろうか。


 「金を払う必要は無い。それに伴う経費やら報酬やらは王国が払ってくれている」

 「つまりオルガは公務員みたいなもん?」

 「早い話、そういうことだな」

 なるほどね。
 ここにきてようやくオルガが俺を助けた理由がわかった。疑いが完全に晴れたってわけじゃないけど、仕事なら親切にいろいろと教えてくれるのも納得がいく。

 「猪モンスターを軽くやっつけちまうもんだから、てっきりモンスターとか魔人退治の仕事してるのかと思った」

 その台詞の直後、オルガが足を止めた。
 どうしたのかと、俺も立ち止まってオルガの顔を見やると、ずっと気の抜けた表情だったオルガの目に真剣味が宿っており、その目で俺を見ていた。
 突然の変貌に、思わずたじろいでしまう。

 「ナベウマ。最後にこれだけは覚えておけ」

 「なんだよ?」

 「に関わろうとするな」

 「え、でもさっき人間にとって敵だって言ってたじゃないか。もし俺が討伐任務とか受けたら戦うことになるかもしれないんじゃないのか?」

 「魔人の討伐任務なんてものはない」

 敵なのに討伐任務がない? どういうことだ?

 「和平交渉でもしてる最中とか?」

 「いいや。魔人は和平を結ぶような種族じゃない。ただただ危険なんだ。遭遇すれば人間はまず助からない。んだ。だからナベウマ、魔人をどうにかしようなんて考え、もったりするなよ」


 魔人ってそんなに強いのか?
 そう聞こうと口を開けたが、声にはならなかった。
 何で声にならなかったんだろう。再びオルガが歩き始めたから?
 ……違う。オルガがとても悲しそうな目をしていたからだ。


 『人間は魔人に勝てない』
 この言葉を本当の意味で理解したのは、もっと後になってからだった。
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