俺のチートって何?

臙脂色

文字の大きさ
上 下
12 / 172
第一章   ― ワールドガイダンス ―

第9話 初戦闘

しおりを挟む
 バオォ!

 猪がこっちに向かって突進してきた。

 「ヤベェ!」

 まさに猪突猛進なそれを横に転がってかわすと、手近な石を拾い上げて猪に投げてぶつける。が、効果は今ひとつのようで、怯みもしない。

 ダメだ! もっと大きな石を! 太い棒でもいい! 武器を見つけないと!


 「逃げるなナベウマ! 正面から挑め!」

 おいおい、何言ってるんだよ?!
 オルガの言っていることがあまりに理解不能で、名前がナベウマで定着していることに突っ込む気すら起きなかった。

 「ボーっとするな! 来るぞ!」

 言われなくてもわかってるっての!

 猪が再び攻撃を仕掛けてくる。

 オルガは正面から戦えとかバカなこと言ってたけど、そんな自殺行為はできるわけない。だから、さっきと同じ様にかわ――。

 ドンッ!

 あれ?
 体が飛ん――。

 背中に激痛がはしった。
 なんで、俺、仰向けになってる?

 いつの間にか、俺は地べたに横たわっていた。

 何が起きた?……いや……本当は想像がついてる。でも、認めるのが怖かった。前の世界ではせいぜい膝を擦り剥く程度の怪我しかしてこなかった自分が、まさかそんな。
 
 自分の腹部に手を当てる。ヌチャッと湿った感触が指に伝わる。その指を見ると、赤い液体がついていた。

 認めざるを得なかった。
 俺は、大怪我を負ってしまったと。

 「アグッ! ううぅ……ああぁ!」

 認めた途端、腹部が焼けるように熱くなった。それも一瞬ではない。常時続いている。傷口を両手で押さえつつ、猪の方を見ると、牙から血が滴っていた。

 あんな太いものが腹に刺さった? 嘘だろ? 服の上からじゃよくわからないけど、腹に大きな穴が開いたんじゃ?

 つい恐ろしい想像をしてしまい、青ざめる。

 痛みに悶えている間に、猪はまた助走をつけてやってくる。

 勘弁してくれ! 痛みで動けない! マジで死んじまう!


 「ご主人様!」

 マリンが倒れている俺に覆いかぶさるように抱きついてきた。

 マリン?! ダメだ、このままだとマリンが!


 「んー、ではないのか」

 この危機的状況に、オルガは悠長なことを言いながら、猪の前に立った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

聖女の娘に転生したのに、色々とハードな人生です。

みちこ
ファンタジー
乙女ゲームのヒロインの娘に転生した主人公、ヒロインの娘なら幸せな暮らしが待ってると思ったけど、実際は親から放置されて孤独な生活が待っていた。

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

【完結】聖女ディアの処刑

大盛★無料
ファンタジー
平民のディアは、聖女の力を持っていた。 枯れた草木を蘇らせ、結界を張って魔獣を防ぎ、人々の病や傷を癒し、教会で朝から晩まで働いていた。 「怪我をしても、鍛錬しなくても、きちんと作物を育てなくても大丈夫。あの平民の聖女がなんとかしてくれる」 聖女に助けてもらうのが当たり前になり、みんな感謝を忘れていく。「ありがとう」の一言さえもらえないのに、無垢で心優しいディアは奇跡を起こし続ける。 そんななか、イルミテラという公爵令嬢に、聖女の印が現れた。 ディアは偽物と糾弾され、国民の前で処刑されることになるのだが―― ※ざまあちょっぴり!←ちょっぴりじゃなくなってきました(;´・ω・) ※サクッとかる~くお楽しみくださいませ!(*´ω`*)←ちょっと重くなってきました(;´・ω・) ★追記 ※残酷なシーンがちょっぴりありますが、週刊少年ジャンプレベルなので特に年齢制限は設けておりません。 ※乳児が地面に落っこちる、運河の氾濫など災害の描写が数行あります。ご留意くださいませ。 ※ちょこちょこ書き直しています。セリフをカッコ良くしたり、状況を補足したりする程度なので、本筋には大きく影響なくお楽しみ頂けると思います。

処理中です...