俺のチートって何?

臙脂色

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第一章   ― ワールドガイダンス ―

第7話 ご主人様

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 坂をかなり下った。
 コンクリートジャングルの中で育ってきた俺にとって、森は不慣れで何回か転びそうになる。
 いつになったら街に着くんだと辟易している内に、周囲の景色が変わり、高い木が並ぶばかりだったのが、低いものになっていた。
 そろそろ、森を抜けられるのかもしれない。

 ここまで歩く間に、オルガは二つのことを教えてくれた。
 この異世界はと呼ばれているということ。そして、ウォールガイヤにはモンスター、魔人と呼ばれる敵がいること。

 モンスターがいると聞いてますますファンタジーっぽいなって思った。前の世界で死んじまって、たくさんのものとの突然の別れを悲しんでいたが、少しずつ新しい世界に興味を持ち始める自分がいた。


 それにしても女の子って本当に軽いんだな。ここまで結構歩いたけど、全く疲れないや。

 「あの……重くないですか?」

 マリンが耳元で呟いてきた。
 超近距離から聞こえてくる女の子の声に、ドキッとする。

 ああダメだダメだ! こんなんだから童貞扱いされるんだ!
 もっとクールな態度でいないと。

 「全然へぃきぃだよ」

 顔はポーカーフェイスを決めていたが、声が全くポーカーになっていなかった。
 情けない俺の声に反応して、オルガがまた口角を上げやがる。ムカツク。

 「ありがとうございます。ご主人様」

 ご主人様……うん。オルガのおかげで大分状況も掴めてきたし、そろそろ最初の疑問を紐解くとするか。

 「あのさ、マリン。俺って君と昔からの知り合いだっけ?」

 「いいえ、先程の場所で初めてお会いしたばかりですよ」

 だよなぁ。
 そうなるとやっぱり謎なのは。

 「何で俺のことをご主人様っていうの?」

 初めて会ったときから、このマリンという女の子は俺のことを知っているかのような口ぶりで話していた。けど、俺はこんな娘知らない。こんな可愛い女の子知ってたら忘れるはずがない。
 それに、ご主人様と呼ばれるほど、ご立派な身分になった覚えもない。誰かと勘違いしてるんじゃないだろうか。

 「それは渡辺様がとてもお慕いできる方で、私のご主人様だからですよ」

 うん?
 言葉のキャッチボールできてなくね?

 「ご主人様って思い始めたのはいつ?」

 「初めて寝顔を見たときにですよ」

 ごく当たり前のように即答してくるけど、理解できない。何でそれでご主人様扱いになる?
 納得できない返事に、オルガがフォローを入れる。

 「転生者と一緒に現れたパートナーっていうのはそういうものだ。どんな扱いを受けようが主人の意思に従う。だからその娘はお前の好きなように扱っていいんだぞ」

 好きなように……。

 さっき見たマリンの胸元やらお尻が脳内で浮かび上がる。

 いやいや、それはダメでしょ! 道徳的に! まだ会ってから1時間経った位だぞ! もっとお互いを知ってからそういうことはだな!

 と、理性を保とうとするが、頭のどこかでそんな展開を期待している自分がいて。
 なんて欲望に忠実なんだろうと、自分自身に呆れてしまった。
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