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第一章 ― ワールドガイダンス ―
第1話 トラック
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俺の名前は|渡辺 勝麻、18歳。どこにでもいる普通の高校生ってやつだ。
突然だが、俺はトラックに撥ねられて死んだ。
―――――――
まだまだ夏の暑さが残る2018年9月。ほとんどの高校三年生が大学受験に向け、本腰を入れて勉強を始める時期だ。その例に漏れず、俺も学習机に向かっていた。
高校三年生のあるべき姿をとっていることから、今初めて俺のことを知ったヤツは、俺が真面目な性格に思えたかもしれない。
けど、違うんだよなー。
椅子に座ってボーッとしてるだけなんだよなー。
ノートも新品のように全ページ綺麗なんだよなー。
このノート買ったの一ヶ月前なんだよなー
俺は直前までやる気を出さない性格。夏休みの宿題を最後の日に終わらせるタイプの人間だ。だから、その日の夜も全く勉強に身が入っていなかった。
「あーあ、勉強嫌だなー。やめよっかなー。受験勉強なんてきっと12月くらいから始めてもなんとかなるよなー」
と、俺はここのところ毎日唱えている呪文を口にしていた。それに母さんが対応する呪文を唱えてくる。
「馬鹿なこと言ってないで、集中する。でないと晩御飯抜きにするよ」
んなこと言ったってやる気出ないものは出ないんだからしょうがないだろ。今日もこのまま何もできなさそうだし、現実逃避しよう。
「そだ、コンビニ行くか」
「あ、コラ!」
「これはサボリじゃないよん。休憩だよん」
母さんの呼び止める声が後ろから聞こえてきたが、無視してボロアパートを軽快な足取りで出た。
残暑が纏わりつく夜に、アイスクリームという神の食い物は欠かせない。それがコンビニにはある。コンビニはいい。第二の実家のような安心感がある。
コンビニに着いてすぐに“ホールインワンバー”という名の棒アイスを買って満足し、ウキウキで帰路につく。
その帰りの道中だった。
突如、視界が高速でグルグル回った。
――え、何が? 起きた?
気づけば俺は横たわっていた。
状況を確認しようと体を起こそうとしてみたが、足も動かないし腕も動かない。
ならば頭はと、首辺りに力を入れてみたところ、動いてくれた。
顔を下に向けたとき、自分の身体が見え、絶句した。
……嘘だ……こんなの、夢に決まってる……夢に決まってる!
否定の言葉が幾つも頭の中に浮かんでくる中で、俺はある物の存在に目の焦点が合わさる。
トラックだ。
その瞬間、自分に起きたことを全て理解した。
不幸にも、俺はトラックにぶつかってしまったんだ。
最近、トラックに撥ねられて死亡する事故が相次いでいるとは聞いていたけど、まさか自分の身に起こるなんて――。
それが、元の世界での最後の思考だった。
突然だが、俺はトラックに撥ねられて死んだ。
―――――――
まだまだ夏の暑さが残る2018年9月。ほとんどの高校三年生が大学受験に向け、本腰を入れて勉強を始める時期だ。その例に漏れず、俺も学習机に向かっていた。
高校三年生のあるべき姿をとっていることから、今初めて俺のことを知ったヤツは、俺が真面目な性格に思えたかもしれない。
けど、違うんだよなー。
椅子に座ってボーッとしてるだけなんだよなー。
ノートも新品のように全ページ綺麗なんだよなー。
このノート買ったの一ヶ月前なんだよなー
俺は直前までやる気を出さない性格。夏休みの宿題を最後の日に終わらせるタイプの人間だ。だから、その日の夜も全く勉強に身が入っていなかった。
「あーあ、勉強嫌だなー。やめよっかなー。受験勉強なんてきっと12月くらいから始めてもなんとかなるよなー」
と、俺はここのところ毎日唱えている呪文を口にしていた。それに母さんが対応する呪文を唱えてくる。
「馬鹿なこと言ってないで、集中する。でないと晩御飯抜きにするよ」
んなこと言ったってやる気出ないものは出ないんだからしょうがないだろ。今日もこのまま何もできなさそうだし、現実逃避しよう。
「そだ、コンビニ行くか」
「あ、コラ!」
「これはサボリじゃないよん。休憩だよん」
母さんの呼び止める声が後ろから聞こえてきたが、無視してボロアパートを軽快な足取りで出た。
残暑が纏わりつく夜に、アイスクリームという神の食い物は欠かせない。それがコンビニにはある。コンビニはいい。第二の実家のような安心感がある。
コンビニに着いてすぐに“ホールインワンバー”という名の棒アイスを買って満足し、ウキウキで帰路につく。
その帰りの道中だった。
突如、視界が高速でグルグル回った。
――え、何が? 起きた?
気づけば俺は横たわっていた。
状況を確認しようと体を起こそうとしてみたが、足も動かないし腕も動かない。
ならば頭はと、首辺りに力を入れてみたところ、動いてくれた。
顔を下に向けたとき、自分の身体が見え、絶句した。
……嘘だ……こんなの、夢に決まってる……夢に決まってる!
否定の言葉が幾つも頭の中に浮かんでくる中で、俺はある物の存在に目の焦点が合わさる。
トラックだ。
その瞬間、自分に起きたことを全て理解した。
不幸にも、俺はトラックにぶつかってしまったんだ。
最近、トラックに撥ねられて死亡する事故が相次いでいるとは聞いていたけど、まさか自分の身に起こるなんて――。
それが、元の世界での最後の思考だった。
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