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第1章 俺もチートキャラになりたいんですけど…

4話 土御門さんはチートキャラ

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 え、何このステータス。
 なんでこんな高いんだ?
 それにレベルまで上がってるし。
 そんな感じで俺が呆然と土御門さんのステータスを確認していると当の彼女から声がかかった。

「高音くん?どうしたのかしら?」
「ん、ああ。ものすごくステータスが高くて驚いたんだ。」
「私は魔法とスキルのLVをあまり上げていなからじゃないかしら?風魔法は風を吹き出すだけならそこまでLVも要らなかったし。」

 なるほど。
 確かに俺は転移魔法のLVを上げるのに2000くらいステータスポイントを使っている。
 それなら、この数字でもおかしなこともないか。

「それとレベルはさっき風魔法を打った時に魔物を倒したんだと思うわ。」

 そう言って彼女は辺りを見回した。
 俺たちが歩いている周りは数十メートル程木々が吹き飛ばされているし、ここらにいた魔物も同じようにふっとばされたのだろう。

「なるほど。そうだったのか。」
「ええ、魔物は倒すと魔石っていうものを落として消えるそうよ。それらしいものを見つけたら拾ってみましょう。」
「りょーかい。」

 そうして俺たちが周囲を見回しながら歩いていると、木々が吹き飛ばされていない地点まで到達した。

「それで、このまま森を歩くのか?」
「ええ。本当なら高音くんの転移魔法で町か村まで行けたらいいのだけど、どこにあるかもわからないし現実的ではないわね。それに、レベルが上がっても魔力は回復しないみたいだから、どこか休める場所を見つけた方がいいと思うの。」

 確かに落下中には一面に森が広がっているだけで、町や村は確認できなかった。
 それならば土御門の言う通りに、休める場所を見つけて魔力の回復を待った方がいいかもしれない。
 魔力があれば魔物が来ても転移で逃げられるし、幸いにも少しずつだが時間経過で魔力が回復しているからな。

「じゃあ、とりあえずは洞窟みたいな場所を探すか。なんとか日が沈む前には見つけたいな。」
「そうね、幸いまだ日は高いけど。森の中で野宿は危険だろうし。」

 今後のある程度の方針を決めた俺たちは森に入って行って休めそうな場所を探し始めた。
 森は木々が鬱蒼としていて少し暗いが、南国のジャングルの様な植生ではないため割と歩きやすい。

 そうして歩いている道中、俺は黒っぽい宝石のようなものを拾った。
 多分これが魔石だろう。
 流石に森の中に黒曜石みたいなただの石が落ちているとは思わないし。

 そんな事を考えながら俺が魔石を手に持って眺めていると、土御門さんが俺が持っているものを見て声をかけてきた。

「ねえ、高音くん。それってやっぱり冒険者ギルドで売れるのかしら?」
「さあ、よくわかんないけど、売れるんじゃないか?定番だし。」
「それじゃあしっかりと持っていた方がいいわね。私達無一文な訳だし。」

 俺はそう言う土御門さんにさっきから気になっていたことを尋ねた。

「土御門さん。」
「何かしら?」
「土御門さんってオタクなのか?」
「な、なな、なんのことかしら?」
「いや、だって普通の女子高生は詠唱とか冒険者ギルドとか知らないと思うんだよ。」
「そ、それくらい最近の女子高生のジョーシキよ。ジョーシキ。」

 両手をブンブン振りながら顔を赤くし、否定する土御門さん。

「いやいや、普通の女子高生は異世界に来てもあんなテンション上がんないでしょ。」
「それは、土御門家の一人娘としての生活から解放されたからよ。」
「あと、王城でめっちゃニヤニヤしてたじゃん。」
「そ、そんなこと。」
「大丈夫だよ土御門さん。此処には俺しかいない。自分に正直になっていいんだ。」
「ぐ、ぐぬぬ。」

 おおう。
 ぐぬぬって言う人初めて見たわ。
 これはもう一押し行けば折れそうだな。

「それに、俺だって異世界もののラノベやアニメが大好きだ。何も恥じることなんかない。」
「そ、そうよっっ!私だって異世界ものの小説が好きなのよ!お稽古の合間の唯一の息抜きなのよ!いつか異世界に行けたらなと常々思ってたのよ!それに私だってケモミミの女の子の耳とか尻尾をハスハスしたいのよ!悪いっ!?」

 これは想像以上だったわ。
 土御門さんは自分の欲求を口に出したからか、真っ赤になりながらも腕を組んでドヤ顔をしている。
 ちょっと涙目な土御門さんかわいい。

「い、いいんじゃないか?」
「そうよ、私は素晴らしいのよ。異世界生活をエンジョイするのよ!!」

 天に向かって叫ぶ土御門さん。
 もう何を言ってるのか分からん。
 興奮し、欲求を暴露する土御門さんを宥めること数分、ようやく土御門さんは落ち着いた。

「ふ、ふう。なんかスッキリしたわ。」
「ああ、そうですか。」
「それで高音くんは私に秘密にしていることはないの?」
「なんで?」
「なんでって、私だけ秘密を明かして不公平じゃない。」
「い、いや、秘密とか特にないしな。」
「そうなの?何かしらあるんじゃないないのかしら?」

 土御門さんがそう言いながらグイグイ近寄って来る。

 俺が土御門さんに隠していることは彼女への恋心くらいだ。
 ただ、流石に今告白することはできない。
 だって、仮に振られた場合今後の生活が気まずくなる。
 彼女とは当分一緒に行動するわけだしそんなリスクはおかせない。

「いや、本当に何もないって。マジで。」
「本当に何もないのかしら?一つくらいあるでしょ?」
「いやいやいや。」

 そんなやりとりを続けてしばらく。
 ようやく土御門さんが折れてくれた。

「もう。仕方ないわね。それじゃあ貸しにしといてあげるわ。」
「あ、ありがとうございます。」

 ふう、どうやら逃げ切れたようだ。
 そう安心していると彼女がボソッと呟いた。

「もう、告白してくれてもいいのに…」

 え、なにそれ?
 俺が土御門さんを好きだってバレてる?
 もしかして土御門さんも俺のことが?
 いやいや、待て。焦るな高音風舞。
 まだ何も確証がない状態で動くのは得策ではない。
 いや、でも告白してみても?

 そう俺が悶々としていると後ろからパキッと音がした。
 俺と土御門さんは音のした方をバッと振り返る。

「グルルルル」

 そこにはデカくて黒いツノが生えたトラのような生き物がいた。

「下がって、高音くん。」

 土御門さんの声が後ろから聞こえたかと思った瞬間、彼女は黒いトラの真横にいた。
 いつの間にそこまで移動したんだ?
 そう俺が思った時にはドゴっという音とともにトラは真横に吹き飛び黒い霧となって消えていた。

「ふう、こんなものかしらね。あら、レベルが上がったわ。」
「ちょ、ちょ、土御門さん?今何したんだ?」
「何ってトラの真横まで移動して風魔法を出しながら思いっきり殴ったのよ?」
「え、全く見えなかったんだけど。」
「それはステータスが全然違うからだと思うわよ?」
「あ、そう。」

 どうやら彼女とのステータスの差は思った以上に大きいらしい。
 しっかりと安全マージンを確保できるまではレベリングもできないし、正直戦闘では全く役に立たなそうな俺である。
 ていうか、普通の女子高生っていくら自分の方が強いって思っても自分の数倍のデカさのトラに素手で殴りかかれるものなのか?

「安心してちょうだい!私が高音くんをしっかりと守るわ!」

 俺が呆然と考え事をしていたため、どうやら魔物に怯えてると思ったらしい。
 どちらかというとトラよりも土御門さんの方が衝撃的だったわけだが。

「あ、ああ。宜しく頼む。ただ、無理はしないようにな。」
「ええ、任せてちょうだい!!」

 彼女はそう言うとトラの魔石を拾いに行った。
 トラの魔石は今まで拾った魔石よりもふた回り程大きいし、そこそこ強い魔物なのだろう。
 その後、何度か現れたトラやクマ、イノシシ、トカゲのような魔物をバッタバッタと土御門さんがなぎ倒すこと約一時間。
 俺たちは綺麗な水の流れる小川を見つけた。

「なあ、この水飲めんのか?」
「そうね。見た目的は飲めそうだけど、もしこれを飲んでお腹を壊したら洒落にならないしやめておきましょう。」
「とは言え、流石に喉が乾いたな。」
「そうねぇ…」

 そう言うと彼女は顎に手を当てて何やら考え始めるとステータスカードを取り出した。

「水魔法覚えるのか?」
「ええ、そうよ。やっぱり旅の定番は水魔法よね。ステータスポイントもレベルが上がって増えてるし、余裕で覚えられるはずよ。」

 そう言って彼女は地面に手を当てて土から二つコップを作り出すと、そこに水を入れ始めた。
 どうやら土魔法も習得したらしい。

「はい、どうぞ。美味しい水よ。」
「ああ、ありがとう。」

 土御門さんから出てきた水。
 そう思うと結構興奮した。
 水を飲み終えた俺たちはコップを転移魔法のアイテムボックスにしまい、小川に沿って歩くことにした。

「そろそろ日が落ちて来たし、寝床を見つけたいわね。」
「ああ、そうだな。ん?あそこの洞穴なんていいんじゃないか?」

 俺がそう言って指差した方向には浅めだがそこそこの広さのある洞穴がある。

「そうね。今晩はあそこで過ごしましょうか。」

 土御門さんはそう言うと洞穴の近くまで向かい洞穴に向かって火球を放った。

「ちょ、何してんだ?土御門さん!?」
「何って虫の駆除と殺菌よ。寝てる間に刺されたくはないでしょう?」
「あ、ああ。なるほど。」

 土御門さんが逞し過ぎて俺のすることがほとんどないな。
 そうこうしている内に土魔法で整地して、ドアまで付けてるし。

「んー。戸車が無いから、ドアの滑りが悪いわね。」
「ああ、本当だ。ビクともしない。」
「そうかしら?普通に開閉はするけれど?」

 腕力で一切叶わない俺は土御門さんにドアの開閉を頼まなくてはいけなくなった。
 少し涙がこぼれたよ。

 それから俺がアイテムボックスを使って薪を集めて、土御門さんが土魔法で落とし穴を周りに作っている間に完全に日は落ちた。

「ふう、なんとか火を起こせたし、水もなんとかなったけど食べ物がないと困るわね。」
「ん、ああ。それなんだけど。もしかするとなんとかなるかもしれないぞ。」
「どういうことかしら?」
「転移魔法のLV7で自分の記憶にあるものをその場から持ってこれるらしい。」
「それでどこから持ってくるの?」
「ああ、俺の部屋に昨日買ったカップ焼そばがあるはずだ。それを転送させてみる。」
「そうなの!?それは楽しみね!!」

 よっぽどお腹が空いていたのか土御門さんが物凄く目を輝かせている。
 もしかしてカップ焼きそばを食べたことがないのだろうか?
 結構なお嬢様らしいし。

 そんな事を考えながら俺のステータスカードを確認してみると魔力は700まで回復していた。

「よし、それじゃあ行くぞ。アポート!!」

 俺が魔法を使ったその直後、俺の目の前にスーパーの袋に入ったカップ焼そば2つが現れた。

「やった。やったわ。高音くん。ありがとう!!」

 そう言って土御門さんが俺に抱きついて来たが俺はまた魔力を使い切ったのか気絶した。
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