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アリシア編
エルフの生態
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猛る欲望をアリシアの穴にこき捨ててスッキリした。
ドロドロになったあそこを執拗に拭いていると、アリシアが目覚めた。
ほんの少し、艶めかしい声を上げて。
「おう、起きたか。お腹減ってないか?」
「え、えっと……減ってっ、ますっ」
質問をしながらもあそこを拭く手を止めなかったので、『減ってない』なんて言うと第二ラウンドが始まってしまう。
察しのいいアリシアの返事は、それなりに焦りが含まれていた。
「好きな食べ物ある? 嫌いな食べ物も教えてね」
「お野菜が好きです。お肉は嫌いというか、食べられません」
「へー、珍しい……ん? 食べられない? ヴィーガンなのか?」
「ヴィー? 何ですかそれ?」
「完全菜食主義者だよ。肉・魚はもちろん、卵や乳製品に蜂蜜とか食べない人」
「そうだと思います。でも、はちみつは食べますよ」
「はちみつはオッケーと。それは信仰とか小難しい理由があるのか?」
「単純に美味しくないから食べません。はちみつは蜂さんがおすそ分けしてくれるので食べてました」
「蜂さん? 変わった名前の人も居るんだな」
「そうですか? 蜜蜂を蜂さんと呼ばないんですか?」
「ちょっと待って。あの蜜蜂? ぶんぶん飛ぶ虫が、はちみつをおすそ分けに来るの!? まじで!?」
「はい。エルフは森の動植物や虫と仲良しなので、リスさんや鳥さんが木の実をくれたりしますよ」
うーん、ファンタジー。いや、メルヘンか?
メルヘンで思い出した。あの幻聴のことを聞かねば。
「ねぇねぇ、あの幻聴はアリシアがしたのか?」
「幻聴、ですか?」
「助けてってやかましくてさ。おかげで寝不足。アリシアと再会したのも、幻聴に半ば強引に導かれてだな……」
「あー、妖精さんだと思います」
妖精まで居るのかぁ。ファンタジーだなぁ。
存在しないで欲しかったような……。
面と向かって文句言いたいような……複雑な気分だ。
「妖精さんは小さな思念みたいなもので、実体はありません。姿も見えません。知性もそんなに高くないって言われてます。エルフは妖精さんにも好かれるので、私の現状を見て闇雲に助けを求めたのだと思います」
「ごめん、言わせてくれ。くっそ迷惑な存在だな……」
「ごめんなさい。でも変ですね。妖精の声を聞ける人なんて、ほとんど居ないはずなんですが……ご主人さまって、エルフの血が流れてたりします?」
「いや? 普通に人間だぞ。純度100%だ。オークと間違われることは多いが」
「そうですか。ご主人さまは私と面識があるので、気配を覚えて話しかけた可能性はあります。でも聞こえる理由にはならないですね。動物には妖精さんを知覚する子も居るんですけど……」
仮に間違われようが、俺は人間だから聞こえない。
別の要因がある。可能性としては……。
「もし仮に、人間とは違う高位の存在が居たら、そいつは会話出来るのかな?」
「上位存在ならありえますね。レイスとかリッチなどの思念体も聞こえているらしいです。話は通じないそうですけど」
なるほど。よく分かった。俺が妖精の声が聞こえた理由は……。
(ナーイートーメーアー。お前のせいかー)
『……ボクはキミさ☆』
(ごめんなさいは?)
『ごめんなさい』
(どうして頼んでもない通訳をしてくれたのかな?)
『凄くやかましかったから☆ミ』
相棒の口癖は、『ボクはキミさ』である。
どうも『俺』としてロールプレイをしているのか、明らかに何かを知っていても俺が知らないことは答えない。
その癖に、ちょいちょいキャラがブレてこういうお茶目な一面を見せるのである。
憎めない相棒のことだし、許してやるか。
ただし妖精……てめーはダメだ。
「ばーかばーか。妖精に文句言っても罰が当たったりしないよな? どんな感じ?」
「しないと思います。彼らは気まぐれですけど、強い存在ではないです。私はエルフなので、『お願い』はよく聞いてくれますよ」
「お願い、ねぇ……具体的に頼むよ」
「バフをかけてくれたり、初級の属性魔法で攻撃してくれることもありますよ。気まぐれなので、毎回ってわけじゃないですけどね。効果もランダムです」
「くっっっそいらねぇ」
「そうですか? 使えない属性魔法だったり、MPを消費しないところは便利だと思いますけど……」
「俺は曖昧なものに命を預けるなんて、恐ろしくて出来ないね」
「それは、そうですね。私も強敵を相手に計算したことはないです。一日の始まりに、軽い運試しだと割り切ってお願いすることが多かったです」
「まぁ妖精についてはおいおい検証するか。腹減った」
いつものように肉野菜炒めを作り、自分の飯の準備はした。
問題はアリシアである。
完全菜食主義者は人生で初めて出会ったし、好みの料理なんて作れんぞ。
はちみつは食べるらしいから本当の意味での完全菜食主義者ではないが、もう完全菜食主義者ということにしよう。
異世界の完全菜食主義者は、はちみつを食べるんだ。
「アリシアの好みの料理が分からない。ふえーん(野太い声)」
「気にしないでください。適当にお野菜を少しいただければ大丈夫ですから」
「そうか? 有り合わせでサラダ作るね」
簡単に切っただけのサラダをアリシアの前に置く。
テーブルで食事をするのが習慣ではあるが、アリシアがずり落ちたら大変だ。
ベッドの上で一緒に食事をすることになった。
手が使えないアリシアに『あーん』するのは俺の役目である。
「はい、あーん(野太い声)」
「あ、あーん」
「どう? 美味しい?」
「美味しいです。ありがとうございます」
「そうかそうか。どんどん食べなさい」
「お、お腹いっぱいです……」
「……はぁ?」
小鉢1杯ほど食べさせたところで、アリシアが音を上げた。
きっと俺の聞き間違いだろう。
「遠慮しなくていいぞ? それとも嫌いな野菜だったか?」
「大好きですよ。でも本当にお腹いっぱいなんです」
「えぇ……ダイエットか!? ぶりっ子か!? もしそうなら止めておけ。俺の前で隠し事は無理だ。苦しくなる前に諦めて齧りついちゃいなよ!?」
「ほ、本当なんです。エルフですから」
「おめぇ、『エルフですから』で何でも通ると思うなよ」
「エルフはあんまり食べないんです。すぐお腹いっぱいになるんです!!」
そんな馬鹿な……この食生活で、どうやってこの巨乳を維持していると言うのか。
ファンタジーだってちゃんと法則があると思うんだ、うん。
そして俺は気づいた……エルフの栄養源を!!
「さては光合成するんだな!? そうなんだな!?」
「しないです。日向ぼっこは、気持ちいいですけど……」
違った。いや、まじか……。
魔物とか獣人とか色んな生物と接してきたが、ここまで意味不明な生物は初めてだ……。
ドロドロになったあそこを執拗に拭いていると、アリシアが目覚めた。
ほんの少し、艶めかしい声を上げて。
「おう、起きたか。お腹減ってないか?」
「え、えっと……減ってっ、ますっ」
質問をしながらもあそこを拭く手を止めなかったので、『減ってない』なんて言うと第二ラウンドが始まってしまう。
察しのいいアリシアの返事は、それなりに焦りが含まれていた。
「好きな食べ物ある? 嫌いな食べ物も教えてね」
「お野菜が好きです。お肉は嫌いというか、食べられません」
「へー、珍しい……ん? 食べられない? ヴィーガンなのか?」
「ヴィー? 何ですかそれ?」
「完全菜食主義者だよ。肉・魚はもちろん、卵や乳製品に蜂蜜とか食べない人」
「そうだと思います。でも、はちみつは食べますよ」
「はちみつはオッケーと。それは信仰とか小難しい理由があるのか?」
「単純に美味しくないから食べません。はちみつは蜂さんがおすそ分けしてくれるので食べてました」
「蜂さん? 変わった名前の人も居るんだな」
「そうですか? 蜜蜂を蜂さんと呼ばないんですか?」
「ちょっと待って。あの蜜蜂? ぶんぶん飛ぶ虫が、はちみつをおすそ分けに来るの!? まじで!?」
「はい。エルフは森の動植物や虫と仲良しなので、リスさんや鳥さんが木の実をくれたりしますよ」
うーん、ファンタジー。いや、メルヘンか?
メルヘンで思い出した。あの幻聴のことを聞かねば。
「ねぇねぇ、あの幻聴はアリシアがしたのか?」
「幻聴、ですか?」
「助けてってやかましくてさ。おかげで寝不足。アリシアと再会したのも、幻聴に半ば強引に導かれてだな……」
「あー、妖精さんだと思います」
妖精まで居るのかぁ。ファンタジーだなぁ。
存在しないで欲しかったような……。
面と向かって文句言いたいような……複雑な気分だ。
「妖精さんは小さな思念みたいなもので、実体はありません。姿も見えません。知性もそんなに高くないって言われてます。エルフは妖精さんにも好かれるので、私の現状を見て闇雲に助けを求めたのだと思います」
「ごめん、言わせてくれ。くっそ迷惑な存在だな……」
「ごめんなさい。でも変ですね。妖精の声を聞ける人なんて、ほとんど居ないはずなんですが……ご主人さまって、エルフの血が流れてたりします?」
「いや? 普通に人間だぞ。純度100%だ。オークと間違われることは多いが」
「そうですか。ご主人さまは私と面識があるので、気配を覚えて話しかけた可能性はあります。でも聞こえる理由にはならないですね。動物には妖精さんを知覚する子も居るんですけど……」
仮に間違われようが、俺は人間だから聞こえない。
別の要因がある。可能性としては……。
「もし仮に、人間とは違う高位の存在が居たら、そいつは会話出来るのかな?」
「上位存在ならありえますね。レイスとかリッチなどの思念体も聞こえているらしいです。話は通じないそうですけど」
なるほど。よく分かった。俺が妖精の声が聞こえた理由は……。
(ナーイートーメーアー。お前のせいかー)
『……ボクはキミさ☆』
(ごめんなさいは?)
『ごめんなさい』
(どうして頼んでもない通訳をしてくれたのかな?)
『凄くやかましかったから☆ミ』
相棒の口癖は、『ボクはキミさ』である。
どうも『俺』としてロールプレイをしているのか、明らかに何かを知っていても俺が知らないことは答えない。
その癖に、ちょいちょいキャラがブレてこういうお茶目な一面を見せるのである。
憎めない相棒のことだし、許してやるか。
ただし妖精……てめーはダメだ。
「ばーかばーか。妖精に文句言っても罰が当たったりしないよな? どんな感じ?」
「しないと思います。彼らは気まぐれですけど、強い存在ではないです。私はエルフなので、『お願い』はよく聞いてくれますよ」
「お願い、ねぇ……具体的に頼むよ」
「バフをかけてくれたり、初級の属性魔法で攻撃してくれることもありますよ。気まぐれなので、毎回ってわけじゃないですけどね。効果もランダムです」
「くっっっそいらねぇ」
「そうですか? 使えない属性魔法だったり、MPを消費しないところは便利だと思いますけど……」
「俺は曖昧なものに命を預けるなんて、恐ろしくて出来ないね」
「それは、そうですね。私も強敵を相手に計算したことはないです。一日の始まりに、軽い運試しだと割り切ってお願いすることが多かったです」
「まぁ妖精についてはおいおい検証するか。腹減った」
いつものように肉野菜炒めを作り、自分の飯の準備はした。
問題はアリシアである。
完全菜食主義者は人生で初めて出会ったし、好みの料理なんて作れんぞ。
はちみつは食べるらしいから本当の意味での完全菜食主義者ではないが、もう完全菜食主義者ということにしよう。
異世界の完全菜食主義者は、はちみつを食べるんだ。
「アリシアの好みの料理が分からない。ふえーん(野太い声)」
「気にしないでください。適当にお野菜を少しいただければ大丈夫ですから」
「そうか? 有り合わせでサラダ作るね」
簡単に切っただけのサラダをアリシアの前に置く。
テーブルで食事をするのが習慣ではあるが、アリシアがずり落ちたら大変だ。
ベッドの上で一緒に食事をすることになった。
手が使えないアリシアに『あーん』するのは俺の役目である。
「はい、あーん(野太い声)」
「あ、あーん」
「どう? 美味しい?」
「美味しいです。ありがとうございます」
「そうかそうか。どんどん食べなさい」
「お、お腹いっぱいです……」
「……はぁ?」
小鉢1杯ほど食べさせたところで、アリシアが音を上げた。
きっと俺の聞き間違いだろう。
「遠慮しなくていいぞ? それとも嫌いな野菜だったか?」
「大好きですよ。でも本当にお腹いっぱいなんです」
「えぇ……ダイエットか!? ぶりっ子か!? もしそうなら止めておけ。俺の前で隠し事は無理だ。苦しくなる前に諦めて齧りついちゃいなよ!?」
「ほ、本当なんです。エルフですから」
「おめぇ、『エルフですから』で何でも通ると思うなよ」
「エルフはあんまり食べないんです。すぐお腹いっぱいになるんです!!」
そんな馬鹿な……この食生活で、どうやってこの巨乳を維持していると言うのか。
ファンタジーだってちゃんと法則があると思うんだ、うん。
そして俺は気づいた……エルフの栄養源を!!
「さては光合成するんだな!? そうなんだな!?」
「しないです。日向ぼっこは、気持ちいいですけど……」
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