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自由編
クロノ誕生秘話
しおりを挟む「成功に至る苦悩……だったらアニキは、一体どれだけの苦労を……」
苦労、か。してきたさ。長く苦しい終わりの見えない苦労だった。
俺は美少女のおしっこが好きだ。だが排泄行為に欲情するなど、普通の人間のすることではない。興味のないふりをして、否定し続けた。どれだけ否定しようとも、その欲望が消えることはなかった。
日を増すごとにそれが大きくなるのを自覚したが、必死に理性で蓋をした。その蓋の中で、化け物が育っているとも知らずに。
やがて化け物は成長し、とうとう強固な蓋をぶち抜き、出てきてしまった。止める術はもうない。あとにあるのは、いつも自己嫌悪だった。
それを何年、何十年と繰り返し、疲れてしまった。同時に受け入れたのだ。終わりなき欲望は、紛れもない俺の性癖なのだ、と。受け入れた瞬間、世界に光が差した。息苦しさが消えた。
俺は生まれ変わった気分だった。同時に、新たな鎧を纏うことになる。ただの変態と蔑まれないように、必要以上に常識を吸収しようと努力を続けている。世界のどこかに居る同族が苦しまないように、常に人の目を気にしている。
もうすっかり慣れた頃、また悩みが生まれた。おしっこそのものが好きなのか、おしっこをする光景が好きなのか、おもらしが好きなのか、恥じらう姿が好きなのか。もしくは変態と罵倒されたいのか。潮吹きもいいぞ、と。
コレ、と決まったものがあったとしよう。そこからが問題だ。服は来たまま? それとも脱がす? 全裸か、半裸か。具体的にどこを脱がす?
いつ・どこで・誰と・どのような体勢で・どの角度から拝めばいい? 覗き込むのか、見上げるのか? 光源ひとつで見え方も違ってくる。
近くで見たい。いっそ触れるべきか? あの温もりを肌で、五感で感じなくてどうする? いいや、遠くから全容を把握したい。日常的な場所でするのか、タブーとされる場所でするのか?
これだけの選択肢がありながら、ごく一部でしかない。組み合わせの総数は、膨大だ。考えるほどに奥深さを認識し、やがて俺は宇宙空間に漂っていた。見渡す限りの闇の中で、輝くのは大小様々な性癖という名の星だ。
悩めど悟りには至らず、目を背けた先にあったのは、地球に酷似した惑星だった。その青さに気付かされた。『俺は青かった』、と。
性癖は地動説。自分を中心に回っている。他人からすれば小さな一歩だが、俺にとっては大きな飛躍だった。
答えを急ぐのは止めた。最高の性体験なんて、すぐに決まるわけがない。すべて試してからでも遅くはない。そのためならば、どんな虚無にだって耐えると心に誓ったのだ……。
「ふっ、それを語るつもりはない」
「俺が半端モノだからですかい!?」
「お前がノーマルだからだ。ノーマルはいいぞ。誇れ!」
「そんな……俺は偉大なアニキに少しでも近づきたいってのに……っ」
「性癖は、教わるものではない。気づくものだ。性癖は人生だ。若者よ、大いに悩め。それもまた――」
「ひとつの人生、ですかい。へへっ、完敗でさぁ。やっぱりアニキはすげぇや」
ロックはノーマルだ。おじさんの変態陽系に加わることはない。だが、もし俺と同じ低みに来てしまったのなら、その時は、言葉はいらない。
誰とでも分け隔てなく分かり合うのは難しい。俺たちは、Hタイプという新人類として、同じ苦労をしたもの同士、ただ尊重し、尊敬しあい、適度な距離を保って生きていこう……。
『ボクの横にクソデカ宇宙空間作るの止めてくれる?』
(そういえば、ナイトメアは宇宙っぽい見た目してるよなぁ。黒っぽいメインカラーが宇宙で、ところどころ光ってるそれが俺の性癖かな?)
『ここまで侮辱されたのは生まれて初めてだよ……』
ネクタイ型ナイトメアが締まる。首が絞まる。俺の深層を知る唯一の謎の生物なのに、どうも違うらしい。
「さぁ、くだらない話は終わりだ。業務に戻るぞ!」
「へいっ! 今日も気合を入れて、客を捌きやしょう!!」
今日も店が開く。俺たちは何故か客の拍手に迎えられた。
「……次の改築は、もっと分厚い壁にしようか」
「が、がってんで。これからは俺もマスク被ることにしやす……」
その後、嬢たちにパっと見分けるのが面倒だとお叱りを受け、ロックは被ったズタ袋の額に、『副』と書いていた……。
あとがき
(・ω・`≡´・ω・)「顔を隠せばイケメン」などと思ってる人おりゃんよな?
クロノ誕生秘話ってことで( ˘ω˘)
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