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絆編
覗きがバレてクロノ死す
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友の名誉を守ろうと奮闘してからしばらくして、王都に謎の男が現れたという噂を聞いた。
素性は分からないが、見事なマンティコアの防具で固めており、剣の振りの早さから見ても相当な実力者だという。いずれ王都ギルドに属するときには、すぐに名が知れ渡るだろうと言われていた。
マンティコアの素材を販売する噂も、皆の協力と謎の男の登場により、信憑性は確固たるものとなった。伝説の装備を入手できるチャンスがあるとなれば、腰抜けたちも王都ギルドに詰めかけ、今では大盛況だと聞く。
肝心の素材の抽選と販売は、まだ先になる。それらの手間はすべて王都ギルドに押し付けた。俺の存在を秘匿することを条件に、王都ギルドのメンツを守ってやったのだ。
一線を引いていた受付係の連中も、首の皮一枚つながって、今頃は押しかけた冒険者たちの対応に悲鳴を上げていることだろう。失敗を知った彼らなら、また同じ過ちは繰り返さないと信じるしかない。人手不足だしな。
まぁ、俺は善人じゃない。メンツこそ守ってやったが、その代償は高く付くぞ。いずれお礼はするなんて言われたが、その程度で済ますつもりはない。今はつかの間の日常を楽しむがいい……。
アルバギルドの休止の噂も消え去り、友の名を悪く言う人ももう居ない。アルバに不況は来なかった。俺たちの行動が実を結んだということだ。早期に手を打てたから、こんな奇跡が起きたのだろう。
「あー、もう疲れた。何もしたくない。サボるぞサボるぞ」
問題が片付いたので、自宅のベッドで派手に寝転がっている。近頃はハードで忙しい生活が続いていた。少しくらい休んだっていいだろう。ついでに、趣味の覗きを決行するゥ!!
「行けっ! シャドーデーモン(小声)」
シャドーデーモンを差し向けた場所は、アルバの一般市民向けのレストランである。そこのウエイトレスが可愛いのだ。だってテレサちゃんだもん。
店は結構な繁盛っぷりで、せわしなく注文を書き取るテレサちゃんを見つけた。服装はウエイトレス御用達のメイド服っぽいあれである。スカートが少し短い。客たちも鼻の下を伸ばしている。もちろん俺も。
「むっ、あのおっさん……俺と同じ匂いがする」
別に転生者だとか、闇の魔術師というわけではない。普通にスケベで変態っぽい。どうしようもないオーラが滲み出ていたのだ。生きてるだけで罪だから。誰か殺しといて。
おっさんが、スっと手を伸ばす。その先には、テレサちゃんのキュっと締まったお尻がある。ま、まさか……このおっさん、白昼堂々とお触りを!?
「危ないテレサちゃん! 変態に狙われているぞ!」
『うーん、ブーメラン』
自宅でシャドーデーモンを介して覗きをしている俺の声は、当然ながら届かない。それでも自然と口から出てしまったのだ。
俺の気持ちが伝わったのだろうか? テレサちゃんはスラリと伸びた足を一歩踏み出した。尻を触ろうと伸びていた手が空を切る。指を伸ばしても届かない。そんな絶妙な距離感であった。
「ふぅ、危ない危ない。あのおっさんの手付き……常習犯だな。次にうちのテレサちゃんにやったら、埋めちまうぞ。暗黒式埋葬術でなァ!」
暗黒式埋葬術……まず気に入らないやつを見つけます。顔面を掴みます。ダークネスを唱えます。ナイトスワンプを唱えます。埋めます。
『殺意が高いんじゃ!』
「いやだってさ! あんなおっさんに触られていいほど、テレサちゃんの尻は安くない。お前も俺なら分かるだろ」
『親バカだね。いや、ただのバカだね。あの程度のお触りなんて、テレサちゃんが躱せないはずがないだろう?』
「それな! とりあえずパンツ見ようぜ!」
テレサちゃんの足元にシャドーデーモンを移動させる。むほほ、黒のレースのおパンティだ。俺がかつてプレゼントした系統だが、微妙にデザインが違う。青いバラの刺繍が見事だ。世界に一つだけの花だ。
肉付きの良くなった、白い太ももと、黒のおパンティのグラデーション。もう芸術である。実に素晴らしい。息子も感動の涙を流している。一生眺めていたい……。
「あれ、もう移動しちゃった。追え追え!」
次にテレサちゃんのスカートの中身を覗き見たとき、ベストアングルに遭遇した。動き回った影響か、おパンティが少しズレていて、ぷにまんを拝めたのだ。
「食い込み具合がたまらん。もう少し派手に動いてくれたら、縦筋が見え……見え……ないけど、これシコれる!!」
その後もテレサちゃんは忙しく店内を歩き回り、スカートの中身を凝視することは出来なかった。これでは生殺しである。
『仕方ないさ。本当に忙しそうだ。そもそも、覗きは犯罪です』
「いやいや、他の子は覗かないぞ。でも、テレサちゃんのスカートの中を覗いてもいいって法律に書かれてるから」
『合法にして健全。世界は今日も美しい』
「まったくだ。あぁ、また撫で回したいなぁ……」
『呼べばいいじゃないか。すっ飛んで来るでしょ。それなのに、バカ正直に距離を取ってさ。会いたいくせに』
あれだけ派手なことをして送り出したのだ。たとえテレサちゃんが凄腕のレンジャーだろうと、誰かに見られる可能性はゼロじゃない。だからスカートの中を覗くのだ!!
「それにしても忙しそうだなぁ。テレサちゃんを託した人は、民宿を経営しているはずだが……手広くやってるのかな?」
気になると止まらないタイプの俺は、テレサちゃんの足元にビタ付けしていたシャドーデーモンを移動させ、客たちから情報収集を始めた。
どうやら、託した人のお知り合いが細々と経営している飲食店で、たまたま人手が欲しかったときに、助っ人として参加したらしい。今では宿屋とレストランを掛け持ちしていて、看板娘にまで上り詰めた。
少し見ないうちに立派になったもんだ。俺の息子も見て欲しい。今凄く立派になってるからな!!!!!!!!
『キミは喋らなければ立派だよ。喋るとダメだ。酷すぎる』
「辛辣ゥ! いいじゃんか。ふざけるのも久々なんだし」
それからというもの、隙あらばテレサちゃんの様子を眺める日々が続いた。もちろん、そのほとんどはスカートの中であるが、ちゃんと顔も見た。俺に向ける笑顔とはまた別の笑顔を見た。皆に囲まれて、楽しそうで良かった。
一方で俺はというと、近頃はだいたいひとりだ。ミラちゃんやティミちゃんと遊んでもいいのだが、不況に備えて生産調整をしていたので、今まで作らなかった分を作ることになり、大忙し。頑張る女の子の邪魔をしたくないのだ。
「だからスカートの中を覗く!!」
『分かった。分かったから……口に出すのは止めなよ』
人肌が恋しくなるときもあったが、やはりテレサちゃんのスカートの中を凝視するのは楽しく、満ち足りていた。とても平和なのも良い。そんな日々が続くと思っていた。
アルバに強い風が吹く。もうすぐ春になるのだろう。そんなある日、家の扉が乱暴に叩かれた。まさか、覗きがバレたのだろうか……?
ポリスメ~ンは朝に来るらしい。今はちょうど朝だ。開き直る覚悟をして、家の扉を開けると……ハゲだった。
「今すぐギルドに来れるか? 少し面倒なことになった」
「嫌ですー。出勤には早すぎますぅ」
「……お貴族様が、お前をご氏名なんだよ」
「突然そんなこと言われても。取り込み中なんだが……」
「何の用事だ? 俺が代わろうか?」
えぇっ、俺の代わりに覗きを? 通報しました。
「とりあえず顔だけは出せ。あまり遅くなるとご機嫌斜めだ。難癖付けられて捕まっても困るからな」
スカートの中を覗くのは合法だが、用事を思い出すのは罪らしい。渋々ハゲと並んでギルドに向かった……。
ギルド長の部屋の向こうから、聞き慣れない声がする。この先にお貴族様が居るのは間違いないだろう。あぁ、開けたくない。でも案外どうでもいい用事かもしれない。帰ってシコれる可能性にかけることにした。
「クロノ、入ります」
部屋の中には、女の貴族と執事と思われる爺さんが居た。どちらも仕立ての良い服を着ていることから、羽振りがいいのだろう。こっちはちょっと前まで不況だなんだとヒィヒィ言っていたのになぁ。
それにしても嫌な空気だ。みんな難しい顔をしている。とくにギルド長は困った顔をしながら俺を見てくる。何かを言うとしているが、お貴族様を横目で見て口を閉じた。
「あなたがブサイクロノ・ノワールさん? 驚いたわ。本当に名前を呼べないのね」
女は中々の巨乳だった。腕を組んでいると、おっぱいが腕の上に乗っている。普段なら鼻の下を伸ばすのだが、もう本当に嫌な予感しかしない。俺はろくでもないことに巻き込まれる……そういう確信がある。
だから、どうせ酷い目に遭うなら、少しくらい良い思いをしてもいいのではなかろうか? とりあえず、抱きつくことにした。
「……先生っ!」
「きゃぁ!? ちょ、ちょっと!? 何なの!?」
なぜ先生と呼んで抱きついたのか? 深い意味はないが、苛立ちと焦りの混ざった表情を見ていると、女教師っぽいなぁと思ったからである。
スンスン。嗅ぎ慣れない香水の匂いがする。これが貴族スメルか。悪くないだろう。
「貴様! お嬢様から離れろ! 不敬罪で捕らえるぞ!」
仕立ての良い服は肌に心地よく、女性らしい柔らかさも相まって実に良かった。爺さんに引っ張られてるから、離れなければならないが……言い訳を考えてなかった。やっべぇぞ!?
「お、お待ち下さい! 彼は先も話した通り、記憶喪失の疑いが強いのです。あなたを見て、何かを思い出したのかもしれません」
まじ? よーし、ここはギルド長のアシストに乗っかろう。
「はっ!? 自分としたことが、とんだ失礼を。お許しください。どうしてだか懐かしい感じがして、思わず……」
「ブサクロノくん、何か思い出せたのかね?」
「いえ、それが……そこの執事の怒鳴り声で遠ざかって行きました……」
『ナチュラルに人のせいにする。キミは本当にクズだな!?』
「そうか。残念だ。またきっと(思い出す)チャンスがあるさ」
「本当に、残念です。でもきっと、また(抱きつく)チャンスがありますよね……」
「あなた達、こちらを忘れて貰っては困ります。私たちは依頼にやってきたのです」
おぉ、なんと仰々しい。抱きついたときは、『きゃぁ!?』なんて可愛らしい声を出していたのになぁ。猫被ってるのかな。舐められたら無効か。お貴族様は大変だ。肩とか揉んであげたいぜ。
「まさかとは思いますが、俺に依頼ですか? この最弱の闇の魔術師に、達成できる依頼なんて、せいぜいホーンラビット討伐くらいでしょう」
「……謙遜ね。あなたは自分の通り名をご存知ないのかしら?」
俺の通り名? オークとか、ゴブリンとか……絶倫とか?
「不滅のブサクロノ。それがあなたの通り名よ。私も最近になって耳にしたのだけれど、どんな怪物に出会っても、生きて帰って来るんですってね?」
間違っちゃいないが、不滅とは大きく出たなぁ。鼻水垂らしながら逃げてるだけなんだが。そもそも、不滅は夜鷹だろ。潰したけどさ。あぁ、枠が空いたから不滅と呼ばれてもおかしくないのか。
「理解したようね。今日はあなたに指名依頼があるの。引き受けて下さる?」
「お断りしま――」
「貴様! 先程はお嬢様に不埒な真似をしてくれたな。このまま捕らえても構わないんだぞ?」
あちゃー。なんで抱きついちゃったんだろう。俺ってバカだなぁ。これで断りにくくなったぞ。相棒もちゃんと止めてくれよ……。
『言葉が通じるのに会話が成立しないこともあるんだねぇ。いや、まぁ……呆れて言葉も出ないよ。まさか何の迷いもなく実行するなんて』
運どころか、相棒にまで見放されてしまった。仕方がない、自分の尻を自分で拭く……それが大人ってもんさ。
「まずは話を聞きましょう。受けるかどうかは、そのあとで」
心の中でため息をつきながら、これから飛び出すであろうろくでもない話に耳を傾けた……。
素性は分からないが、見事なマンティコアの防具で固めており、剣の振りの早さから見ても相当な実力者だという。いずれ王都ギルドに属するときには、すぐに名が知れ渡るだろうと言われていた。
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肝心の素材の抽選と販売は、まだ先になる。それらの手間はすべて王都ギルドに押し付けた。俺の存在を秘匿することを条件に、王都ギルドのメンツを守ってやったのだ。
一線を引いていた受付係の連中も、首の皮一枚つながって、今頃は押しかけた冒険者たちの対応に悲鳴を上げていることだろう。失敗を知った彼らなら、また同じ過ちは繰り返さないと信じるしかない。人手不足だしな。
まぁ、俺は善人じゃない。メンツこそ守ってやったが、その代償は高く付くぞ。いずれお礼はするなんて言われたが、その程度で済ますつもりはない。今はつかの間の日常を楽しむがいい……。
アルバギルドの休止の噂も消え去り、友の名を悪く言う人ももう居ない。アルバに不況は来なかった。俺たちの行動が実を結んだということだ。早期に手を打てたから、こんな奇跡が起きたのだろう。
「あー、もう疲れた。何もしたくない。サボるぞサボるぞ」
問題が片付いたので、自宅のベッドで派手に寝転がっている。近頃はハードで忙しい生活が続いていた。少しくらい休んだっていいだろう。ついでに、趣味の覗きを決行するゥ!!
「行けっ! シャドーデーモン(小声)」
シャドーデーモンを差し向けた場所は、アルバの一般市民向けのレストランである。そこのウエイトレスが可愛いのだ。だってテレサちゃんだもん。
店は結構な繁盛っぷりで、せわしなく注文を書き取るテレサちゃんを見つけた。服装はウエイトレス御用達のメイド服っぽいあれである。スカートが少し短い。客たちも鼻の下を伸ばしている。もちろん俺も。
「むっ、あのおっさん……俺と同じ匂いがする」
別に転生者だとか、闇の魔術師というわけではない。普通にスケベで変態っぽい。どうしようもないオーラが滲み出ていたのだ。生きてるだけで罪だから。誰か殺しといて。
おっさんが、スっと手を伸ばす。その先には、テレサちゃんのキュっと締まったお尻がある。ま、まさか……このおっさん、白昼堂々とお触りを!?
「危ないテレサちゃん! 変態に狙われているぞ!」
『うーん、ブーメラン』
自宅でシャドーデーモンを介して覗きをしている俺の声は、当然ながら届かない。それでも自然と口から出てしまったのだ。
俺の気持ちが伝わったのだろうか? テレサちゃんはスラリと伸びた足を一歩踏み出した。尻を触ろうと伸びていた手が空を切る。指を伸ばしても届かない。そんな絶妙な距離感であった。
「ふぅ、危ない危ない。あのおっさんの手付き……常習犯だな。次にうちのテレサちゃんにやったら、埋めちまうぞ。暗黒式埋葬術でなァ!」
暗黒式埋葬術……まず気に入らないやつを見つけます。顔面を掴みます。ダークネスを唱えます。ナイトスワンプを唱えます。埋めます。
『殺意が高いんじゃ!』
「いやだってさ! あんなおっさんに触られていいほど、テレサちゃんの尻は安くない。お前も俺なら分かるだろ」
『親バカだね。いや、ただのバカだね。あの程度のお触りなんて、テレサちゃんが躱せないはずがないだろう?』
「それな! とりあえずパンツ見ようぜ!」
テレサちゃんの足元にシャドーデーモンを移動させる。むほほ、黒のレースのおパンティだ。俺がかつてプレゼントした系統だが、微妙にデザインが違う。青いバラの刺繍が見事だ。世界に一つだけの花だ。
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「あれ、もう移動しちゃった。追え追え!」
次にテレサちゃんのスカートの中身を覗き見たとき、ベストアングルに遭遇した。動き回った影響か、おパンティが少しズレていて、ぷにまんを拝めたのだ。
「食い込み具合がたまらん。もう少し派手に動いてくれたら、縦筋が見え……見え……ないけど、これシコれる!!」
その後もテレサちゃんは忙しく店内を歩き回り、スカートの中身を凝視することは出来なかった。これでは生殺しである。
『仕方ないさ。本当に忙しそうだ。そもそも、覗きは犯罪です』
「いやいや、他の子は覗かないぞ。でも、テレサちゃんのスカートの中を覗いてもいいって法律に書かれてるから」
『合法にして健全。世界は今日も美しい』
「まったくだ。あぁ、また撫で回したいなぁ……」
『呼べばいいじゃないか。すっ飛んで来るでしょ。それなのに、バカ正直に距離を取ってさ。会いたいくせに』
あれだけ派手なことをして送り出したのだ。たとえテレサちゃんが凄腕のレンジャーだろうと、誰かに見られる可能性はゼロじゃない。だからスカートの中を覗くのだ!!
「それにしても忙しそうだなぁ。テレサちゃんを託した人は、民宿を経営しているはずだが……手広くやってるのかな?」
気になると止まらないタイプの俺は、テレサちゃんの足元にビタ付けしていたシャドーデーモンを移動させ、客たちから情報収集を始めた。
どうやら、託した人のお知り合いが細々と経営している飲食店で、たまたま人手が欲しかったときに、助っ人として参加したらしい。今では宿屋とレストランを掛け持ちしていて、看板娘にまで上り詰めた。
少し見ないうちに立派になったもんだ。俺の息子も見て欲しい。今凄く立派になってるからな!!!!!!!!
『キミは喋らなければ立派だよ。喋るとダメだ。酷すぎる』
「辛辣ゥ! いいじゃんか。ふざけるのも久々なんだし」
それからというもの、隙あらばテレサちゃんの様子を眺める日々が続いた。もちろん、そのほとんどはスカートの中であるが、ちゃんと顔も見た。俺に向ける笑顔とはまた別の笑顔を見た。皆に囲まれて、楽しそうで良かった。
一方で俺はというと、近頃はだいたいひとりだ。ミラちゃんやティミちゃんと遊んでもいいのだが、不況に備えて生産調整をしていたので、今まで作らなかった分を作ることになり、大忙し。頑張る女の子の邪魔をしたくないのだ。
「だからスカートの中を覗く!!」
『分かった。分かったから……口に出すのは止めなよ』
人肌が恋しくなるときもあったが、やはりテレサちゃんのスカートの中を凝視するのは楽しく、満ち足りていた。とても平和なのも良い。そんな日々が続くと思っていた。
アルバに強い風が吹く。もうすぐ春になるのだろう。そんなある日、家の扉が乱暴に叩かれた。まさか、覗きがバレたのだろうか……?
ポリスメ~ンは朝に来るらしい。今はちょうど朝だ。開き直る覚悟をして、家の扉を開けると……ハゲだった。
「今すぐギルドに来れるか? 少し面倒なことになった」
「嫌ですー。出勤には早すぎますぅ」
「……お貴族様が、お前をご氏名なんだよ」
「突然そんなこと言われても。取り込み中なんだが……」
「何の用事だ? 俺が代わろうか?」
えぇっ、俺の代わりに覗きを? 通報しました。
「とりあえず顔だけは出せ。あまり遅くなるとご機嫌斜めだ。難癖付けられて捕まっても困るからな」
スカートの中を覗くのは合法だが、用事を思い出すのは罪らしい。渋々ハゲと並んでギルドに向かった……。
ギルド長の部屋の向こうから、聞き慣れない声がする。この先にお貴族様が居るのは間違いないだろう。あぁ、開けたくない。でも案外どうでもいい用事かもしれない。帰ってシコれる可能性にかけることにした。
「クロノ、入ります」
部屋の中には、女の貴族と執事と思われる爺さんが居た。どちらも仕立ての良い服を着ていることから、羽振りがいいのだろう。こっちはちょっと前まで不況だなんだとヒィヒィ言っていたのになぁ。
それにしても嫌な空気だ。みんな難しい顔をしている。とくにギルド長は困った顔をしながら俺を見てくる。何かを言うとしているが、お貴族様を横目で見て口を閉じた。
「あなたがブサイクロノ・ノワールさん? 驚いたわ。本当に名前を呼べないのね」
女は中々の巨乳だった。腕を組んでいると、おっぱいが腕の上に乗っている。普段なら鼻の下を伸ばすのだが、もう本当に嫌な予感しかしない。俺はろくでもないことに巻き込まれる……そういう確信がある。
だから、どうせ酷い目に遭うなら、少しくらい良い思いをしてもいいのではなかろうか? とりあえず、抱きつくことにした。
「……先生っ!」
「きゃぁ!? ちょ、ちょっと!? 何なの!?」
なぜ先生と呼んで抱きついたのか? 深い意味はないが、苛立ちと焦りの混ざった表情を見ていると、女教師っぽいなぁと思ったからである。
スンスン。嗅ぎ慣れない香水の匂いがする。これが貴族スメルか。悪くないだろう。
「貴様! お嬢様から離れろ! 不敬罪で捕らえるぞ!」
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「お、お待ち下さい! 彼は先も話した通り、記憶喪失の疑いが強いのです。あなたを見て、何かを思い出したのかもしれません」
まじ? よーし、ここはギルド長のアシストに乗っかろう。
「はっ!? 自分としたことが、とんだ失礼を。お許しください。どうしてだか懐かしい感じがして、思わず……」
「ブサクロノくん、何か思い出せたのかね?」
「いえ、それが……そこの執事の怒鳴り声で遠ざかって行きました……」
『ナチュラルに人のせいにする。キミは本当にクズだな!?』
「そうか。残念だ。またきっと(思い出す)チャンスがあるさ」
「本当に、残念です。でもきっと、また(抱きつく)チャンスがありますよね……」
「あなた達、こちらを忘れて貰っては困ります。私たちは依頼にやってきたのです」
おぉ、なんと仰々しい。抱きついたときは、『きゃぁ!?』なんて可愛らしい声を出していたのになぁ。猫被ってるのかな。舐められたら無効か。お貴族様は大変だ。肩とか揉んであげたいぜ。
「まさかとは思いますが、俺に依頼ですか? この最弱の闇の魔術師に、達成できる依頼なんて、せいぜいホーンラビット討伐くらいでしょう」
「……謙遜ね。あなたは自分の通り名をご存知ないのかしら?」
俺の通り名? オークとか、ゴブリンとか……絶倫とか?
「不滅のブサクロノ。それがあなたの通り名よ。私も最近になって耳にしたのだけれど、どんな怪物に出会っても、生きて帰って来るんですってね?」
間違っちゃいないが、不滅とは大きく出たなぁ。鼻水垂らしながら逃げてるだけなんだが。そもそも、不滅は夜鷹だろ。潰したけどさ。あぁ、枠が空いたから不滅と呼ばれてもおかしくないのか。
「理解したようね。今日はあなたに指名依頼があるの。引き受けて下さる?」
「お断りしま――」
「貴様! 先程はお嬢様に不埒な真似をしてくれたな。このまま捕らえても構わないんだぞ?」
あちゃー。なんで抱きついちゃったんだろう。俺ってバカだなぁ。これで断りにくくなったぞ。相棒もちゃんと止めてくれよ……。
『言葉が通じるのに会話が成立しないこともあるんだねぇ。いや、まぁ……呆れて言葉も出ないよ。まさか何の迷いもなく実行するなんて』
運どころか、相棒にまで見放されてしまった。仕方がない、自分の尻を自分で拭く……それが大人ってもんさ。
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