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絆編
スライドジト目
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清水の匂いが薄れ、別の香りが漂う小さな股ぐらから顔を話す。見上げた先にあるのは、熱を帯びた瞳だ。互いに乱れた息を吐き出しながら、何も言わずに見つめ合う。そんな時間も、いずれは終わる。
「……続き、しちゃう? 今ならママの処女だってあげるよ……?」
ママの処女とかいうパワーワードに、ごくりと喉を鳴らしたとき、薄い扉の向こう側で人の気配がした。レンジャーでなくとも、あまりのボロさに床が軋む音がするのだ。
「ティミちゃーん。いつまで休憩してるんですかー? 寝てるなら叩き起こしますよ――」
ノックもせず、ばばーんと扉を開け放ってしまうのは、ミラちゃんである。俺もティミちゃんも素っ裸で、こんな状況を見てしまったミラちゃんは……。
「あれ? おじさんじゃないですか。いつ来たんです? ティミちゃん、おじさんが来たら教えるって約束しましたよね?」
そんな約束をしていたのか。名指しされたティミちゃんは、ミラちゃんから目を逸らした。それはもう、見事なスライドジト目だった。
「まさか抜け駆けですか!? だいたい、おじさんを最初に拾ってきたのは誰だと思ってるんですか! 私ですよ!」
そんな捨てられた子犬みたいな言い方されてもなぁ。まぁ、あの当時は社会から蹴り出されてた節があるから、完全に間違いとは言い切れないけど。
「その私を差し置いて、内緒で楽しいことをするなんて。筋が通らないってものですよ!」
絡み方が完全にヤクザ。まぁ、ミラちゃんも遊んで欲しい年頃だからな。はたちだけど。さて、ティミちゃんの言い訳は……。
「あー、ミラはポーション作りサボったし?」
なるほど。約束を先に破ったのはミラちゃんだと。微妙に論点をすり替える作戦に出たようだ。
「い、いいじゃないですか。サボったと言われても、ちょっとだけですよ」
「毎日サボってるの知ってるよ。それに、毎日ちょっとずつサボる時間が増えてるのも知ってるよ」
「き、気のせいですよ。ティミちゃん真面目なとこあるから、自分を基準にしちゃいけませんよ」
「どうせ今もあたしを呼ぶふりして、サボろうとしてたでしょ」
「ち、違いますよ。おじさんは信じてくれますよね?」
こういう行為の途中だったので、気持ちの切り替えが難しい。まぁ、ミラちゃんがサボってるのは分かった。
女の子の体をいじるのは大好きだが、ミラちゃんをいじるのも楽しいから好きなのである。
「うーん、おじさん赤ちゃんだからなぁ。難しいことはティミちゃんママに聞いてよ」
「赤ちゃん!? ティミちゃんママ!?」
「そんな目で見ないで。疲れた男を癒やすのも良い女の嗜み」
「良い女って……それ、自分で言っちゃうのは違うと思いますよ。良い女って言うのは、私のような巨乳のことです!」
えっ? ミラちゃん巨乳だったのか? ええっ、意味が分からないぞ。
混乱した俺は、言い争いをするふたりを並べて、横から覗き込んでみる。すると、僅かではあるが、ミラちゃんのほうが膨らみがある……気がする。
「ほら、おじさんも頷いてる。私の勝ちです。反省してください」
小人族の基準だと、これが巨乳なんだなぁ。こういうの、どんぐりの背比べって言うんだぜ。言わないけどな。
「確かにミラは巨乳だけど、胸の大きさで女の子の価値は決まらない」
あっ、やっぱり巨乳なのか。さっきは自分に言い聞かせる感じだったけど、そうなのか。仕方ないね。
「外見よりも内面。最後は包容力が勝つ」
確かに。だって誤差だし。言わないけど。
「好きな人を満足させられるなら、それでいい。実際、ブサクロノを満足させたから間違いない」
「ほらやっぱり抜け駆けです。私だって満足させられますよ! さぁ、おじさん。次は私と楽しいことしますよっ」
名指しされてしまった。もう少し、仲睦まじい口論を眺めていたかった。本物の喧嘩はもっと罵倒が飛び交うものなのだ。
「それが金玉からっぽでさぁ。いやぁ、短時間の連続射精はハードだね」
「ははぁーん。さては私を試してますね? いいですよ! 手順をすっ飛ばして、即尺です――」
「あっ、待ってミラ。止めたほうが――」
ぶらぶらしていた息子をパクっと咥えたミラちゃんは、そのまま固まった。そしてすぐに俺の股間から離れて、天を仰ぐ。
「なんかおしっこ臭いんですけどおぉぉぉっ!?」
「あーあ、だから言ったのに。ブサクロノのちんちん、あたしの……その、あれで洗ったから……」
「なんてことしてるんですかあぁぁぁ!」
「あたしもどうかと思ったよ。でも、ブサクロノに頼まれちゃったから……」
「出したてのおしっこはほぼ無菌だぞ」
「そういうことを言ってるんじゃないですよっ。友達のおしっこの味なんて知りたくなかったですよ……」
落ち込むミラちゃんの肩にポンと手をおいて、慰めの言葉をかけてあげないとな。
「大丈夫だって。だいたいみんな同じ味だ」
「慰めになってません……」
とうとう膝をついてしまった。仕方ないなぁ。ご機嫌を取るか。えーっと、ミラちゃんが喜びそうなことは……。
「機嫌直してくれよ。お詫びにチューしよう」
目を閉じて、唇をタコのように突き出して迫る。冗談半分だったのだが、ミラちゃん的にはOKだったらしい。
小さな唇の感触を楽しんだあと、ぬるりと舌を入れる。
「んっ……おじさん……ちょっと……っ」
いつもならされるがままなのに、今日は抵抗してくるねぇ。いいね、燃えてきたぜ。強引に続けようとしたら、するりと抜け出されて、ミラちゃんはまたしても天を仰いだ。
「なんかおしっこ臭いんですけどおぉぉぉっ!?」
「あぁ……そういえばティミちゃんのあそこを舌で拭いたばかりだ。ごめん」
「一度ならず二度までも!」
「ミラ、ちょっと落ち着いて。元はと言えばミラが割り込んできたのが悪い。ブサクロノは悪くない」
「そんなこと言ったら、ティミちゃんが約束を破るからですよっ」
堂々巡りである。まぁ、タイミングが悪かったってやつじゃないかなぁ。ふたりをなだめて、お部屋を掃除した。
風通しが良すぎる部屋なので、濃密な匂いはもうどこにもない。少し名残惜しいが、気持ちを切り替えて普通のお話をするのも悪くない。
「ミラちゃんってポーション作れたのか」
「ううん、ミラは作れないよ」
「つ、作れてますよ!」
「効果が安定しないものはポーションと呼ばない」
「今日はちょっと調子が悪かっただけです。明日は大成功しますよ!」
ティミちゃんが鼻でため息をついた。ふたりの仲の良さは分かるが、落ち着いて話を聞いたことってほとんどなかったな。この際だから、聞いてみるか。
「小人族はポーションを作れるようになって一人前と認められる。あたしが族長なのは、ポーション作りが得意だから」
「どうせ私は落ちこぼれですよーだ」
うーん、なんとなく分かったけど、太ったゴブリンだって世の中には居るんじゃないか? 別に小人族=ポーションって少し極端じゃないか?
「昔の話をするね。あたしたちは、名前の通り。体が小さく、非力で、戦う力がほとんどない。優しいエルフに守られて生きてきた。でも守ってくれた人は、あたしたちの代わりに傷つく。だから小人族はポーション作りに特化した」
「おぎゃあと言った瞬間から、ポーション作りのいろはを叩き込まれるんですよ。それで、私だけが適応できなかったというか……」
小人族の考えは合理的だ。ただ少し、前時代的だ。俺の生前は、時代とともに変化して、多様化が進んでいたものだが、古い体制はいつもどこかに残っていた。魔物が蔓延るこの世界では、やはり難しい問題だな。
「友達を抜きにしても、あたしは別に、ポーションを作れない小人族が居てもいいと思ってる。でもミラが自分からポーション作りを希望したからには、妥協はしない」
「分かってますよ。ちょっと合わないだけです。それでも、諦めたくないんですよねぇ……」
苦手だろうと頑張る。ティミちゃんママから再教育を受けたばかりのおじさんも、これには同意する。そもそも、なぜ合わないのにやりたがるんだろうか。楽しそうには思えないし。
「ミラはね、いつかブサクロノにポーションを渡したいんだって。小人族にとっては親しい人への贈り物で、愛とか友情とか感謝とか。そんな意味がある。どれだと思う?」
「ちょっ!? ティミちゃん!? それ言わなくていいですよっ」
「あたしが言わなきゃ、ミラ絶対に言わないでしょ……ミラね、もう夜を売るのは止めてるよ。かなり前のことだけど、知らなかったでしょ?」
そりゃ初耳だ。全世界のロリコンも血の涙を流すことだろう。ただ、個人的には喜ばしいことだ。別に独占欲というわけではない。やりたいこと……夢が見つかったのだろう。夢を叶えるために努力する子はいつだって素敵さ。
だから、その夢を叶えてあげたいな。俺はポーション作りに関して協力してあげることはできないが、もしミラちゃんがポーションを作ったときは、飲んであげよう。ティミちゃんと愛のポーション契約をしているが、浮気は男の甲斐性さ。
「あの、おじさん。もし私がポーションを……ちゃんとしたポーションを作ったら、そのときは……飲んでくれますか……?」
「もちろん。それで、ティミちゃんに怒られたときはこう言うんだ。『水とポーションを間違えた』ってね」
「あたしの前で言ってどうするの。でも、そのときだけは目を瞑ってあげる」
「もう……めっちゃ恥ずかしいんですけど! とにかく約束ですよ。嘘付いたらポーション飲~ます」
どっちにしても飲むんだな。ミラちゃんと指切りをしてお約束。
「おじさんは嘘つきだけど、約束は守る主義なんだ。まぁ、困ったことがあったらいつでも言ってくれ。腹の肉を揺らしながら駆けつけるからさ。それじゃ、またね」
笑顔でふたりと別れて、ボロ宿の扉を開け放つ。今日はいつもより晴れ渡っている気がする。まぁ、中に居たときと明るさはほとんど変わってないが、気のせいだろう。
最高の宿に背を向ける。名残惜しさはない。また疲れたら、立ち寄ればいいのだ。湧き上がる気力をエネルギーにして、力強く歩き出した……。
途中でティミちゃんとの行為を思い出して、息子も元気を取り戻してしまったがために、前のめり……いや、前かがみで歩くことになった……。
「……続き、しちゃう? 今ならママの処女だってあげるよ……?」
ママの処女とかいうパワーワードに、ごくりと喉を鳴らしたとき、薄い扉の向こう側で人の気配がした。レンジャーでなくとも、あまりのボロさに床が軋む音がするのだ。
「ティミちゃーん。いつまで休憩してるんですかー? 寝てるなら叩き起こしますよ――」
ノックもせず、ばばーんと扉を開け放ってしまうのは、ミラちゃんである。俺もティミちゃんも素っ裸で、こんな状況を見てしまったミラちゃんは……。
「あれ? おじさんじゃないですか。いつ来たんです? ティミちゃん、おじさんが来たら教えるって約束しましたよね?」
そんな約束をしていたのか。名指しされたティミちゃんは、ミラちゃんから目を逸らした。それはもう、見事なスライドジト目だった。
「まさか抜け駆けですか!? だいたい、おじさんを最初に拾ってきたのは誰だと思ってるんですか! 私ですよ!」
そんな捨てられた子犬みたいな言い方されてもなぁ。まぁ、あの当時は社会から蹴り出されてた節があるから、完全に間違いとは言い切れないけど。
「その私を差し置いて、内緒で楽しいことをするなんて。筋が通らないってものですよ!」
絡み方が完全にヤクザ。まぁ、ミラちゃんも遊んで欲しい年頃だからな。はたちだけど。さて、ティミちゃんの言い訳は……。
「あー、ミラはポーション作りサボったし?」
なるほど。約束を先に破ったのはミラちゃんだと。微妙に論点をすり替える作戦に出たようだ。
「い、いいじゃないですか。サボったと言われても、ちょっとだけですよ」
「毎日サボってるの知ってるよ。それに、毎日ちょっとずつサボる時間が増えてるのも知ってるよ」
「き、気のせいですよ。ティミちゃん真面目なとこあるから、自分を基準にしちゃいけませんよ」
「どうせ今もあたしを呼ぶふりして、サボろうとしてたでしょ」
「ち、違いますよ。おじさんは信じてくれますよね?」
こういう行為の途中だったので、気持ちの切り替えが難しい。まぁ、ミラちゃんがサボってるのは分かった。
女の子の体をいじるのは大好きだが、ミラちゃんをいじるのも楽しいから好きなのである。
「うーん、おじさん赤ちゃんだからなぁ。難しいことはティミちゃんママに聞いてよ」
「赤ちゃん!? ティミちゃんママ!?」
「そんな目で見ないで。疲れた男を癒やすのも良い女の嗜み」
「良い女って……それ、自分で言っちゃうのは違うと思いますよ。良い女って言うのは、私のような巨乳のことです!」
えっ? ミラちゃん巨乳だったのか? ええっ、意味が分からないぞ。
混乱した俺は、言い争いをするふたりを並べて、横から覗き込んでみる。すると、僅かではあるが、ミラちゃんのほうが膨らみがある……気がする。
「ほら、おじさんも頷いてる。私の勝ちです。反省してください」
小人族の基準だと、これが巨乳なんだなぁ。こういうの、どんぐりの背比べって言うんだぜ。言わないけどな。
「確かにミラは巨乳だけど、胸の大きさで女の子の価値は決まらない」
あっ、やっぱり巨乳なのか。さっきは自分に言い聞かせる感じだったけど、そうなのか。仕方ないね。
「外見よりも内面。最後は包容力が勝つ」
確かに。だって誤差だし。言わないけど。
「好きな人を満足させられるなら、それでいい。実際、ブサクロノを満足させたから間違いない」
「ほらやっぱり抜け駆けです。私だって満足させられますよ! さぁ、おじさん。次は私と楽しいことしますよっ」
名指しされてしまった。もう少し、仲睦まじい口論を眺めていたかった。本物の喧嘩はもっと罵倒が飛び交うものなのだ。
「それが金玉からっぽでさぁ。いやぁ、短時間の連続射精はハードだね」
「ははぁーん。さては私を試してますね? いいですよ! 手順をすっ飛ばして、即尺です――」
「あっ、待ってミラ。止めたほうが――」
ぶらぶらしていた息子をパクっと咥えたミラちゃんは、そのまま固まった。そしてすぐに俺の股間から離れて、天を仰ぐ。
「なんかおしっこ臭いんですけどおぉぉぉっ!?」
「あーあ、だから言ったのに。ブサクロノのちんちん、あたしの……その、あれで洗ったから……」
「なんてことしてるんですかあぁぁぁ!」
「あたしもどうかと思ったよ。でも、ブサクロノに頼まれちゃったから……」
「出したてのおしっこはほぼ無菌だぞ」
「そういうことを言ってるんじゃないですよっ。友達のおしっこの味なんて知りたくなかったですよ……」
落ち込むミラちゃんの肩にポンと手をおいて、慰めの言葉をかけてあげないとな。
「大丈夫だって。だいたいみんな同じ味だ」
「慰めになってません……」
とうとう膝をついてしまった。仕方ないなぁ。ご機嫌を取るか。えーっと、ミラちゃんが喜びそうなことは……。
「機嫌直してくれよ。お詫びにチューしよう」
目を閉じて、唇をタコのように突き出して迫る。冗談半分だったのだが、ミラちゃん的にはOKだったらしい。
小さな唇の感触を楽しんだあと、ぬるりと舌を入れる。
「んっ……おじさん……ちょっと……っ」
いつもならされるがままなのに、今日は抵抗してくるねぇ。いいね、燃えてきたぜ。強引に続けようとしたら、するりと抜け出されて、ミラちゃんはまたしても天を仰いだ。
「なんかおしっこ臭いんですけどおぉぉぉっ!?」
「あぁ……そういえばティミちゃんのあそこを舌で拭いたばかりだ。ごめん」
「一度ならず二度までも!」
「ミラ、ちょっと落ち着いて。元はと言えばミラが割り込んできたのが悪い。ブサクロノは悪くない」
「そんなこと言ったら、ティミちゃんが約束を破るからですよっ」
堂々巡りである。まぁ、タイミングが悪かったってやつじゃないかなぁ。ふたりをなだめて、お部屋を掃除した。
風通しが良すぎる部屋なので、濃密な匂いはもうどこにもない。少し名残惜しいが、気持ちを切り替えて普通のお話をするのも悪くない。
「ミラちゃんってポーション作れたのか」
「ううん、ミラは作れないよ」
「つ、作れてますよ!」
「効果が安定しないものはポーションと呼ばない」
「今日はちょっと調子が悪かっただけです。明日は大成功しますよ!」
ティミちゃんが鼻でため息をついた。ふたりの仲の良さは分かるが、落ち着いて話を聞いたことってほとんどなかったな。この際だから、聞いてみるか。
「小人族はポーションを作れるようになって一人前と認められる。あたしが族長なのは、ポーション作りが得意だから」
「どうせ私は落ちこぼれですよーだ」
うーん、なんとなく分かったけど、太ったゴブリンだって世の中には居るんじゃないか? 別に小人族=ポーションって少し極端じゃないか?
「昔の話をするね。あたしたちは、名前の通り。体が小さく、非力で、戦う力がほとんどない。優しいエルフに守られて生きてきた。でも守ってくれた人は、あたしたちの代わりに傷つく。だから小人族はポーション作りに特化した」
「おぎゃあと言った瞬間から、ポーション作りのいろはを叩き込まれるんですよ。それで、私だけが適応できなかったというか……」
小人族の考えは合理的だ。ただ少し、前時代的だ。俺の生前は、時代とともに変化して、多様化が進んでいたものだが、古い体制はいつもどこかに残っていた。魔物が蔓延るこの世界では、やはり難しい問題だな。
「友達を抜きにしても、あたしは別に、ポーションを作れない小人族が居てもいいと思ってる。でもミラが自分からポーション作りを希望したからには、妥協はしない」
「分かってますよ。ちょっと合わないだけです。それでも、諦めたくないんですよねぇ……」
苦手だろうと頑張る。ティミちゃんママから再教育を受けたばかりのおじさんも、これには同意する。そもそも、なぜ合わないのにやりたがるんだろうか。楽しそうには思えないし。
「ミラはね、いつかブサクロノにポーションを渡したいんだって。小人族にとっては親しい人への贈り物で、愛とか友情とか感謝とか。そんな意味がある。どれだと思う?」
「ちょっ!? ティミちゃん!? それ言わなくていいですよっ」
「あたしが言わなきゃ、ミラ絶対に言わないでしょ……ミラね、もう夜を売るのは止めてるよ。かなり前のことだけど、知らなかったでしょ?」
そりゃ初耳だ。全世界のロリコンも血の涙を流すことだろう。ただ、個人的には喜ばしいことだ。別に独占欲というわけではない。やりたいこと……夢が見つかったのだろう。夢を叶えるために努力する子はいつだって素敵さ。
だから、その夢を叶えてあげたいな。俺はポーション作りに関して協力してあげることはできないが、もしミラちゃんがポーションを作ったときは、飲んであげよう。ティミちゃんと愛のポーション契約をしているが、浮気は男の甲斐性さ。
「あの、おじさん。もし私がポーションを……ちゃんとしたポーションを作ったら、そのときは……飲んでくれますか……?」
「もちろん。それで、ティミちゃんに怒られたときはこう言うんだ。『水とポーションを間違えた』ってね」
「あたしの前で言ってどうするの。でも、そのときだけは目を瞑ってあげる」
「もう……めっちゃ恥ずかしいんですけど! とにかく約束ですよ。嘘付いたらポーション飲~ます」
どっちにしても飲むんだな。ミラちゃんと指切りをしてお約束。
「おじさんは嘘つきだけど、約束は守る主義なんだ。まぁ、困ったことがあったらいつでも言ってくれ。腹の肉を揺らしながら駆けつけるからさ。それじゃ、またね」
笑顔でふたりと別れて、ボロ宿の扉を開け放つ。今日はいつもより晴れ渡っている気がする。まぁ、中に居たときと明るさはほとんど変わってないが、気のせいだろう。
最高の宿に背を向ける。名残惜しさはない。また疲れたら、立ち寄ればいいのだ。湧き上がる気力をエネルギーにして、力強く歩き出した……。
途中でティミちゃんとの行為を思い出して、息子も元気を取り戻してしまったがために、前のめり……いや、前かがみで歩くことになった……。
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