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絆編
クリスマス用 その1
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まえがき
クリスマスエロの準備パートを本編ぶった切って投稿。
まえがき終わり。
聖なる夜……クリスマスに降る雪は、ホワイトクリスマスと呼ばれ、幻想的な雰囲気が恋人たちを祝福する。
けれど、モテない人々にとって、天の恵みは死の灰に見える。 byクロノ・ノワール。
『いつにも増してひねくれているね。どうしたんだい?』
異世界に生まれて初めての12月の半ばのこと。俺は混乱していた。
「ク リ ス マ ス が や っ て く る ! ?」
かつてこの世界に生まれ変わり、ブイブイ言わせていた先人の勇者様が、クリスマスの概念を持ち込んだらしい。
ここは主神アルフレイア様の下、リヴィーズ様やアルマ・ロダン様など神様的係長が管理する世界だぞ。
神は嫉妬深いらしいからな。それはギリシャ神話だっけ? よくわからんから、とりあえず謝ったろ!!
「おぉ、神よ。私を許したまえ」
『神は寛大だからね。言い争うのは、いつだって神を信じる人々さ』
だとしても、クリスマスなんて持ち込まないで欲しかった。別に俺がモテないとかそんなんじゃねーし。ただ、とても困ったことになっている。
「プレゼントどうしよう!? 俺、出禁なんですけどー!?」
今の俺は、すべての店から入店をお断りされている状態だ。プレゼント候補探しすらままならない。何が喜ばれるのか? 実物を見て閃くタイプの俺は、絶望していた。
今は非常時だ。プレゼントを渡さないという選択肢はある。しかし、俺の肩書のひとつに、『おじサンタ』が存在する以上、プレゼントは絶対に渡したい。
だからプレゼント探しをしたいのだが、変装しても溢れ出る清らかさで店員にバレてしまう……。
『異常性の間違いじゃないの』
頭を抱えてのたうち回っていたそのとき、俺に荷物が届いた。その荷物こそ、俺に救いを与えてくれるキーアイテムだった。
なんと、先輩改めロレンスさんのご両親から、感謝の手紙と一緒に、王都で手に入るものなら何でも用意するとカタログが同封されていたのだ!!
「わぁい! 人助けはするもんだなぁ!!」
まるでご祝儀の返礼品を選ぶあのカタログを軽快にめくっていくと、気になるものを見つけた。これなら、彼女たちも喜んでくれることだろう!
そうして、手配を終えた俺に、待ちに待ったクリスマスがやってきた……。
クリスマスの夜……俺は、サンタの格好をして、ボロ宿の屋根に登っていた。
「寒すぎだろ。唸れ我が脂肪!」
気合を入れた言葉は、強い北風にかき消された。
「なぜ、俺は高いところに登るのか? はい、そこのナイトメアくん!」
『バカだから?』
違います。俺がおじサンタだからです。サンタ=プレゼントという発想になりがちだが、俺は過程を大事にする男だ。
サンタとは、赤い服を着て、プレゼント袋を抱えて、煙突から家に侵入するものなのだ。
『分かったから早く入りなよ』
「……煙突が見当たらないんだ」
『帰ろっか?』
「過程は大事だが、結果も大事だ。もう窓から侵入するから、もうちょっとだけ我慢して……」
屋根を生まれたての子鹿のように移動しながら、入り口となる窓を目指す。サンタさんも大変だ。高い保険に入ってそう……あ゛っ。
ミシッと音がした直後、一瞬の浮遊感があり、尻に衝撃が走る。なんてこった、屋根が抜けやがった……。
「痛てて……くそっ、ボロ宿め」
尻を叩いていると、誰かが一階から駆け上がってくる。
「だっ、誰ですか!? 泥棒ですね!? 修理費を置いて今すぐ出ていってください!!」
部屋が暗くてよく見えないが、この図々しさは、間違いなくミラちゃんだ。
「抵抗は無駄ですよ! 私には、怖いおじさんがバックに付いてるんですからね。ブサクロノさんっていう悪の化身ですよ!」
ボロクソ言ってくれるやん。仕返しに驚かせてやる……。
「何だとぉ!?」
「ひえっ、おとなしくしてください。自主してください。反省してください。ブタ箱で臭い飯食ってください……」
そんなことを言われて、自首する犯罪者がどこに居る。煽りレベルは高いが、身の危険も考えろよ。もうタネ明かしするか。
「あのな、俺だよ俺」
「へっ……あーっ、おじさんじゃないですかーっ!」
いや、待て。今の俺は、『おじサンタ』だ。バカ正直に名乗ってどうする。
「フォッフォッフォッ。ワシはおじサンタじゃよ」
「えっ、ひょっとしなくても、おじさんバカなんですか?」
「ミラちゃんにだけは言われたくねぇ! 犯人煽ってどうすんだ」
「おじさんが泥棒なんですか!? 生活に困ってるなら、養ってあげますよ。だから、泥棒なんてバカなことは止めて、慎ましく一緒に生きていきましょう」
「違うって。おじサンタだって。プレゼントを持ってきたわけ」
「じゃあプレゼントください。そうしたら、養ってあげます」
「逞しいな、おい。まったく……悪い子にはプレゼントあげないぞ……」
「えぇーっ、人の家の屋根を破壊しておいて、それはないですよぉ。あっ、ポーション飲みます?」
「いらん。とりあえず、ティミちゃん呼んできて。あー、俺が降りたほうが早いか。なんかここ、寒いしな」
「はぁ、降りますか。屋根は日が昇ったら直しますから。さっきディスってたみたいですけど、ボロ宿は便利ですよ。壊れても何とも思わないし、素人でも適当に直せますから」
「言わんとすることは分かる。でも、来年はちゃんとした屋根にして欲しい。ついでに、煙突も付けて欲しい」
「煙突……その体で通れるんですか?」
「ジーザス!!」
おじサンタ終了のお知らせ。でも、今日は意地でもおじサンタだ。良い子にプレゼント渡したるわ!
軋む階段を降りて、ロビーで待っていると、床がパカっと開いて、ティミちゃんが登ってきた。おぉ、地下室方式だったな。ロマンあるな。入ったら出られない予感がするから、入らないけど。
「ブサクロノ! あたしに会いに来てくれたの!?」
「フォッフォッフォッ。ワシはおじサンタじゃよ」
「そっか。だからそんな格好してるんだ。うん、とっても似合ってるよ」
「ですね。でっぷりした感じが、イメージ通りです」
「あたしはそういう意味で言ったわけじゃないよ……」
「あーっ、友達を売っちゃうんですか!? 唯一無二の親友をーっ!?」
「ミラが売ったのは喧嘩でしょ。ブサクロノは優しいけど、限度もある。あんまり調子に乗ってると、鍋で煮込むよ」
「ひぇぇぇっ、40℃にしてください~」
この子たち、仲良しだなぁ。見ててほっこりしちゃう。さて、俺もおじサンタとして、派手にプレゼント渡すぞ!!
「フォッフォッフォッ。良い子たちにエッチなプレゼントを持ってきたぞい」
「エッチなプレゼント……?」
「何でしょうね? 私はちょっと期待してます。仕事道具に使えるかも」
赤いリボンでラッピングされた箱を、ミラちゃんとティミちゃんに渡す。ふたりはリボンを解くと、バリバリと子供のように包装紙を破り捨てた。
「……何これ? 棒?」
「分かった。孫の手ですね!?」
「おばあちゃんか! ヒントは、魔道具だ」
「うーん、棒の先が丸くて、小さな穴がたくさん開いてる」
「分かりました! すりおろし機ですね!?」
「だからおばあちゃんか!? 大ヒントだ。水が出るぞ。お湯も出る」
これだけヒントを出せば、すぐに分かるはず。予想通り、ミラちゃんが反応を示した。プレゼントを両手で持ち、ぷるぷると震えている。頼むから、ダンベルとか言うなよ。
「ま、まままま……まさか、シャワーヘッドですか!?」
「フォッフォッフォッ。大正解じゃ。プレゼントは、シャワーヘッドじゃよ。喧嘩しないように、ふたりとも同じものじゃよ」
シャワーヘッドだけ貰ってどうすんの? 地球の常識なら、困惑する。しかし、ここは異世界である。シャワーヘッドと生活魔法を組み合わせることで、水道もホースも必要ないのだ。
「ティミちゃんってば、いつもの死んだ魚の目をしている場合じゃないですよ。これ、とんでもなく高い魔道具なんですよ!?」
「えぇ? シャワーって、こんなに小さくないよ。備え付けのシャワー室で、壁に両手を付いて魔力を送って、頭からシャバーって浴びるものでしょ」
「鈍い子ですねぇ! それが、片手で簡単に使えるほど、小型化されているんですよ? 間違いなく最高級品です。最低でも金貨ですよ!」
これが工業製品ならば、小型化するほどコストダウンとなるが、異世界では真逆である。
魔道具の命とも言える魔石は、大きいほど質が高いが、使い勝手が悪い。そこで、魔石を圧縮することで質を下げることなく小型化する。その過程で砕けてしまうものも多く、半端じゃないコストがかかっているらしい。
金に貪欲なミラちゃんであるが、大金を持つことに慣れていない。混乱したミラちゃんは、あろうことか服を着たまま、頭からシャワーを浴びている。ちゃんとお湯が出ているから、風邪は引かないと思うけど。
「わぁーっ、温かいです。夢じゃないですぅぅぅ」
「そうやって使うんだ……うん、とっても温かい。これ、いいね」
ティミちゃんまで服を着たまま頭からシャワーを浴びている。使い方は正しいが、使用方法は違うぞ。いや、同じこと言ってるな。シュールな光景に俺も混乱してしまった。
「おじさんあびがどうございます。これで全身を舐め回されてもへっちゃらですよぉおぼぼぼぼ」
「あっ、飲めるんだ。便利だね。お湯を沸かす手間が省ける」
その使い方はどうなんだろう。紅茶は100℃で淹れなきゃ。
「これ凄くないですか!? 秒でお湯が出ましたよ。うちのシャワーだと、5分はかかります! いつも壁に張り付いて、冷たい水を避けながら耐えるんですよ。気分はスパイなんですよ!?」
「本当だ。これ使えば、鍋が沸騰するの早そう。ポーション作りが楽になるね」
ミラちゃんって基本ポンコツだけど、今だけは有能。小人族の生活基準が分かるもん。一方で、ティミちゃんは本来の使い道から随分と逸脱している。柔軟な発想を持っているということにしとこうか。
「フォッフォッフォッ。おじサンタからのプレゼントは、気に入って貰えたかのぅ?」
「はい! とっても! おじサンタさん大好きですぅぅぅ」
「ブサクロノ……じゃなかった。おじサンタありがとう。大切に使うね」
子供のようにはしゃぐミラちゃんと、ちょっとだけ表情を緩ませて、抱きついてくるティミちゃん。うむ、やはりプレゼントを送ると、こういう表情が見えるから素晴らしい。悩んだかいが有るというものだ。
「ねぇねぇ、ブサクロ……おじサンタ。プレゼントは嬉しいけど、これのどこがエッチなの?」
「はっ、そうでした! エッチな要素……さてはローションが出るんですね!?」
そんなプロ仕様じゃねぇよ。まったく、これだからお子様っぽい見た目の人たちは困る。性とは、ひとえにチャレンジだぞ。まぁ、ミラちゃんはプロ的な発想だし、ティミちゃんは処女だから浮かばないのもムリはないが……。
マッサージ機が、電マに使われたように、使用者の発想ひとつで、快適なバスロマンも便利なエログッズとなるのだ。
今から、それをお見せしよう。いや、見せて貰おうか……。
クリスマスエロの準備パートを本編ぶった切って投稿。
まえがき終わり。
聖なる夜……クリスマスに降る雪は、ホワイトクリスマスと呼ばれ、幻想的な雰囲気が恋人たちを祝福する。
けれど、モテない人々にとって、天の恵みは死の灰に見える。 byクロノ・ノワール。
『いつにも増してひねくれているね。どうしたんだい?』
異世界に生まれて初めての12月の半ばのこと。俺は混乱していた。
「ク リ ス マ ス が や っ て く る ! ?」
かつてこの世界に生まれ変わり、ブイブイ言わせていた先人の勇者様が、クリスマスの概念を持ち込んだらしい。
ここは主神アルフレイア様の下、リヴィーズ様やアルマ・ロダン様など神様的係長が管理する世界だぞ。
神は嫉妬深いらしいからな。それはギリシャ神話だっけ? よくわからんから、とりあえず謝ったろ!!
「おぉ、神よ。私を許したまえ」
『神は寛大だからね。言い争うのは、いつだって神を信じる人々さ』
だとしても、クリスマスなんて持ち込まないで欲しかった。別に俺がモテないとかそんなんじゃねーし。ただ、とても困ったことになっている。
「プレゼントどうしよう!? 俺、出禁なんですけどー!?」
今の俺は、すべての店から入店をお断りされている状態だ。プレゼント候補探しすらままならない。何が喜ばれるのか? 実物を見て閃くタイプの俺は、絶望していた。
今は非常時だ。プレゼントを渡さないという選択肢はある。しかし、俺の肩書のひとつに、『おじサンタ』が存在する以上、プレゼントは絶対に渡したい。
だからプレゼント探しをしたいのだが、変装しても溢れ出る清らかさで店員にバレてしまう……。
『異常性の間違いじゃないの』
頭を抱えてのたうち回っていたそのとき、俺に荷物が届いた。その荷物こそ、俺に救いを与えてくれるキーアイテムだった。
なんと、先輩改めロレンスさんのご両親から、感謝の手紙と一緒に、王都で手に入るものなら何でも用意するとカタログが同封されていたのだ!!
「わぁい! 人助けはするもんだなぁ!!」
まるでご祝儀の返礼品を選ぶあのカタログを軽快にめくっていくと、気になるものを見つけた。これなら、彼女たちも喜んでくれることだろう!
そうして、手配を終えた俺に、待ちに待ったクリスマスがやってきた……。
クリスマスの夜……俺は、サンタの格好をして、ボロ宿の屋根に登っていた。
「寒すぎだろ。唸れ我が脂肪!」
気合を入れた言葉は、強い北風にかき消された。
「なぜ、俺は高いところに登るのか? はい、そこのナイトメアくん!」
『バカだから?』
違います。俺がおじサンタだからです。サンタ=プレゼントという発想になりがちだが、俺は過程を大事にする男だ。
サンタとは、赤い服を着て、プレゼント袋を抱えて、煙突から家に侵入するものなのだ。
『分かったから早く入りなよ』
「……煙突が見当たらないんだ」
『帰ろっか?』
「過程は大事だが、結果も大事だ。もう窓から侵入するから、もうちょっとだけ我慢して……」
屋根を生まれたての子鹿のように移動しながら、入り口となる窓を目指す。サンタさんも大変だ。高い保険に入ってそう……あ゛っ。
ミシッと音がした直後、一瞬の浮遊感があり、尻に衝撃が走る。なんてこった、屋根が抜けやがった……。
「痛てて……くそっ、ボロ宿め」
尻を叩いていると、誰かが一階から駆け上がってくる。
「だっ、誰ですか!? 泥棒ですね!? 修理費を置いて今すぐ出ていってください!!」
部屋が暗くてよく見えないが、この図々しさは、間違いなくミラちゃんだ。
「抵抗は無駄ですよ! 私には、怖いおじさんがバックに付いてるんですからね。ブサクロノさんっていう悪の化身ですよ!」
ボロクソ言ってくれるやん。仕返しに驚かせてやる……。
「何だとぉ!?」
「ひえっ、おとなしくしてください。自主してください。反省してください。ブタ箱で臭い飯食ってください……」
そんなことを言われて、自首する犯罪者がどこに居る。煽りレベルは高いが、身の危険も考えろよ。もうタネ明かしするか。
「あのな、俺だよ俺」
「へっ……あーっ、おじさんじゃないですかーっ!」
いや、待て。今の俺は、『おじサンタ』だ。バカ正直に名乗ってどうする。
「フォッフォッフォッ。ワシはおじサンタじゃよ」
「えっ、ひょっとしなくても、おじさんバカなんですか?」
「ミラちゃんにだけは言われたくねぇ! 犯人煽ってどうすんだ」
「おじさんが泥棒なんですか!? 生活に困ってるなら、養ってあげますよ。だから、泥棒なんてバカなことは止めて、慎ましく一緒に生きていきましょう」
「違うって。おじサンタだって。プレゼントを持ってきたわけ」
「じゃあプレゼントください。そうしたら、養ってあげます」
「逞しいな、おい。まったく……悪い子にはプレゼントあげないぞ……」
「えぇーっ、人の家の屋根を破壊しておいて、それはないですよぉ。あっ、ポーション飲みます?」
「いらん。とりあえず、ティミちゃん呼んできて。あー、俺が降りたほうが早いか。なんかここ、寒いしな」
「はぁ、降りますか。屋根は日が昇ったら直しますから。さっきディスってたみたいですけど、ボロ宿は便利ですよ。壊れても何とも思わないし、素人でも適当に直せますから」
「言わんとすることは分かる。でも、来年はちゃんとした屋根にして欲しい。ついでに、煙突も付けて欲しい」
「煙突……その体で通れるんですか?」
「ジーザス!!」
おじサンタ終了のお知らせ。でも、今日は意地でもおじサンタだ。良い子にプレゼント渡したるわ!
軋む階段を降りて、ロビーで待っていると、床がパカっと開いて、ティミちゃんが登ってきた。おぉ、地下室方式だったな。ロマンあるな。入ったら出られない予感がするから、入らないけど。
「ブサクロノ! あたしに会いに来てくれたの!?」
「フォッフォッフォッ。ワシはおじサンタじゃよ」
「そっか。だからそんな格好してるんだ。うん、とっても似合ってるよ」
「ですね。でっぷりした感じが、イメージ通りです」
「あたしはそういう意味で言ったわけじゃないよ……」
「あーっ、友達を売っちゃうんですか!? 唯一無二の親友をーっ!?」
「ミラが売ったのは喧嘩でしょ。ブサクロノは優しいけど、限度もある。あんまり調子に乗ってると、鍋で煮込むよ」
「ひぇぇぇっ、40℃にしてください~」
この子たち、仲良しだなぁ。見ててほっこりしちゃう。さて、俺もおじサンタとして、派手にプレゼント渡すぞ!!
「フォッフォッフォッ。良い子たちにエッチなプレゼントを持ってきたぞい」
「エッチなプレゼント……?」
「何でしょうね? 私はちょっと期待してます。仕事道具に使えるかも」
赤いリボンでラッピングされた箱を、ミラちゃんとティミちゃんに渡す。ふたりはリボンを解くと、バリバリと子供のように包装紙を破り捨てた。
「……何これ? 棒?」
「分かった。孫の手ですね!?」
「おばあちゃんか! ヒントは、魔道具だ」
「うーん、棒の先が丸くて、小さな穴がたくさん開いてる」
「分かりました! すりおろし機ですね!?」
「だからおばあちゃんか!? 大ヒントだ。水が出るぞ。お湯も出る」
これだけヒントを出せば、すぐに分かるはず。予想通り、ミラちゃんが反応を示した。プレゼントを両手で持ち、ぷるぷると震えている。頼むから、ダンベルとか言うなよ。
「ま、まままま……まさか、シャワーヘッドですか!?」
「フォッフォッフォッ。大正解じゃ。プレゼントは、シャワーヘッドじゃよ。喧嘩しないように、ふたりとも同じものじゃよ」
シャワーヘッドだけ貰ってどうすんの? 地球の常識なら、困惑する。しかし、ここは異世界である。シャワーヘッドと生活魔法を組み合わせることで、水道もホースも必要ないのだ。
「ティミちゃんってば、いつもの死んだ魚の目をしている場合じゃないですよ。これ、とんでもなく高い魔道具なんですよ!?」
「えぇ? シャワーって、こんなに小さくないよ。備え付けのシャワー室で、壁に両手を付いて魔力を送って、頭からシャバーって浴びるものでしょ」
「鈍い子ですねぇ! それが、片手で簡単に使えるほど、小型化されているんですよ? 間違いなく最高級品です。最低でも金貨ですよ!」
これが工業製品ならば、小型化するほどコストダウンとなるが、異世界では真逆である。
魔道具の命とも言える魔石は、大きいほど質が高いが、使い勝手が悪い。そこで、魔石を圧縮することで質を下げることなく小型化する。その過程で砕けてしまうものも多く、半端じゃないコストがかかっているらしい。
金に貪欲なミラちゃんであるが、大金を持つことに慣れていない。混乱したミラちゃんは、あろうことか服を着たまま、頭からシャワーを浴びている。ちゃんとお湯が出ているから、風邪は引かないと思うけど。
「わぁーっ、温かいです。夢じゃないですぅぅぅ」
「そうやって使うんだ……うん、とっても温かい。これ、いいね」
ティミちゃんまで服を着たまま頭からシャワーを浴びている。使い方は正しいが、使用方法は違うぞ。いや、同じこと言ってるな。シュールな光景に俺も混乱してしまった。
「おじさんあびがどうございます。これで全身を舐め回されてもへっちゃらですよぉおぼぼぼぼ」
「あっ、飲めるんだ。便利だね。お湯を沸かす手間が省ける」
その使い方はどうなんだろう。紅茶は100℃で淹れなきゃ。
「これ凄くないですか!? 秒でお湯が出ましたよ。うちのシャワーだと、5分はかかります! いつも壁に張り付いて、冷たい水を避けながら耐えるんですよ。気分はスパイなんですよ!?」
「本当だ。これ使えば、鍋が沸騰するの早そう。ポーション作りが楽になるね」
ミラちゃんって基本ポンコツだけど、今だけは有能。小人族の生活基準が分かるもん。一方で、ティミちゃんは本来の使い道から随分と逸脱している。柔軟な発想を持っているということにしとこうか。
「フォッフォッフォッ。おじサンタからのプレゼントは、気に入って貰えたかのぅ?」
「はい! とっても! おじサンタさん大好きですぅぅぅ」
「ブサクロノ……じゃなかった。おじサンタありがとう。大切に使うね」
子供のようにはしゃぐミラちゃんと、ちょっとだけ表情を緩ませて、抱きついてくるティミちゃん。うむ、やはりプレゼントを送ると、こういう表情が見えるから素晴らしい。悩んだかいが有るというものだ。
「ねぇねぇ、ブサクロ……おじサンタ。プレゼントは嬉しいけど、これのどこがエッチなの?」
「はっ、そうでした! エッチな要素……さてはローションが出るんですね!?」
そんなプロ仕様じゃねぇよ。まったく、これだからお子様っぽい見た目の人たちは困る。性とは、ひとえにチャレンジだぞ。まぁ、ミラちゃんはプロ的な発想だし、ティミちゃんは処女だから浮かばないのもムリはないが……。
マッサージ機が、電マに使われたように、使用者の発想ひとつで、快適なバスロマンも便利なエログッズとなるのだ。
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