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ギルド職員編
心まで醜いクロノ死す
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アルバに帰ってきた俺は、こっそりと家に入る。別にテレサちゃんを驚かせようとしているわけではなく、単純に夜中だから起こしたくないからである。
「……おかえり。遅かったじゃない」
暗闇の中、仁王立ちしたテレサちゃんがお出迎え。びっくりして叫びそうになった。レンジャースキルの無駄遣いではないか!?
「こっそり帰ってくるなんて、うしろめたいことでもあるわけ?」
「ないぞ。テレサちゃんこそ、怒るような出来事があったのかな?」
暗闇に目が慣れてくると、毎度お馴染みの怒り笑いしたテレサちゃんの顔が見えたのである……。
「突然、黙ってどこかに行っちゃって? あたしが心配しないとでも思ったわけ?」
実に回りくどい言い回しである。反抗期かな。年頃の女の子は難しいなぁ。だが、それは大した問題ではない。
今日のテレサちゃんは一味違う。なんと、ミニスカートを着ているのだ。ミニスカートは好きだ。かしずくほど好きだ。好きすぎて、頭を突っ込むしかないだろう!
温かく滑らかなふとももを撫でながら、かつて俺がプレゼントした黒のおパンティに顔を埋める。ゆっくりと深呼吸すると、生地の匂いに混ざって、女の子の少しツンとした匂いを存分に堪能する……。
「すぅはぁ……あぁ、これだよ。やっぱりこれが一番だ。ただいまテレサちゃん。ひとりにしてごめんね。おじさんも頑張ってきたんだよ」
「……あのね、常日頃から目を見て話せと言っておいて、肝心のあんたは何してるのよ」
「そんなこと言わないでくれ。グッドスメルの誘惑には誰も抗えないんだ」
「あそこに話しかけるの止めてくれる!? ちゃんと顔を見て話しなさい」
「やだ。もうちょっとだけ。すぅはぁ、おぉふ……繊細なレースの奥側には、クロッチがあって、テレサちゃんの大切な部位を包み込んでると思うと、勃起が止まらないよ」
我ながら気持ち悪いことを言っているのは分かっているが、止められないのである。そして、テレサちゃんは俺が気持ち悪いことを知っているので、何の問題もないのである!
「はぁ、もういいわよ。そのままでいいから、ちゃんと説明して」
黙って深呼吸しているとテレサちゃんが暴れ始めたので、仕方がなく炭鉱夫の生活を話した。かなりハードな生活だったと思う。
「そう、頑張ったじゃない。もう少しだけ嗅がせてあげるわ。でもあたしは眠いから、射精したいなら勝手にしごきなさい」
わぁい、ツンツンなご褒美ワードいただきました。張り詰めたテントから開放して、自分で楽しくしごく。たまにテレサちゃんの生足で踏まれてしごかれて、一ヶ月ぶりの射精の快感に脳が焼けるかと思った。
もちろん生足にぶっかける。怒られるかなと思ったが、意外にも静かだった。
「ふぅん、浮気はしてないようね。飼い主の自覚があるようで嬉しいわ。さぁ、今日は寝るわよ。あんたも疲れてるでしょ」
精液の量を確認しているようだ。俺としては、浮気とか他の女とか、そういうレベルじゃなかった。もうずっと穴の中で生活してたし、マッチョなアニキしか居なかったからな……。
テレサちゃんが足を拭いているあいだも、俺はパンツの匂いを嗅ぎ続けた。俺が腰に手を回して一向に離れないものだから、よたよたと怪しい足取りで歩くテレサちゃんに続いて、匂いに誘われるようにベッドに入って一緒に眠った。
「……ぐっもーにんっ」
俺の腕にしがみつき、足を折りたたんで丸くなったテレサちゃんは、未だにおやすみのご様子。反抗期ゆえ少しだけ素直じゃないが、やはりひとりで過ごす一ヶ月は寂しかったんだろうな。
ここから性的な意味でいたずらしようとすると、秒で起きるんだよ。毎朝のひと揉みか、ひと舐めが唯一のチャンスタイムなのであった……。
「それじゃ、おじさんは税金を納めてくる。そのままギルドに行くと思うから、また夜にな」
「はぁい。今日くらいは、早く帰って来るのよ?」
家を出ようとすると、扉がノックされる。扉を開けると誰も居ない……と思いきや、下に居る。小さなエンジェル・ティミちゃんだった。
「おかえりブサクロノ。会いたかった」
腰にタックルするように抱きついてくるティミちゃん。うむ、元気そうで何よりだ。抱っこしたくなる可愛さである。
「いやぁ、そのうち挨拶に行くつもりだんだけどね。タイミングが良くてびっくりしちゃったよ」
「風の噂でブサクロノが帰ってきたと聞いた。ブサクロノは、目立つからね」
「それでわざわざ会いに来てくれたのか。うーん、良い子!」
「ブサクロノはいつも突然居なくなる。会えるときに会うしかないの。ついでに、頼まれていたものも出来たよ」
頼んだものは、マナポーションの丸薬である。ミラちゃん経由でおねだりしていたが、こんなに早く作ってくれるとは……。
「ブサクロノ、嬉しい?」
「……あぁ、とても嬉しいよ」
「……悪い顔してる。ほどほどにしてね」
これで勝つための条件が揃った。勝利の女神のおでこにキスをする。予定変更だ。いざゆかん。憎き敵が居座るギルドに。
懐かしのギルドは今日も賑わっている。野郎どもの匂いに混ざって、美味そうな飯の匂いがするのだ。
――おい、腰抜けが戻ってきたぞ。
ルーク一派の嫌味の混ざった挨拶である。バリエーションが少ない。もうちょっとひねりのある内容にして欲しいものだ。
――1ヶ月近くギルドをほったらかして、何がギルド職員だよ。ギルド長が早く帰って来ねぇかなぁ。あんなやつクビにして、ルークさんにもっとたくさん教わりたいぜ。
おっ、良いこと聞いた。やつは今もただの冒険者のままらしい。そして目付役であるギルド長は未だ王都に居るようだ。
さて、いっちょやるか!!
陰口を叩く集団のもとに、ずんずんと歩いていく。周りが急に静かになるが、お察しの通り、そういうことがとうとう起きるぞ。
「今、俺の文句を言ったのはお前か? こそこそ話すしか能がない臆病者が、よくもまぁ俺に腰抜けなんて言えたもんだな!」
うろたえる雑魚は放っておき、取り巻きの中心に居るルークを睨みつける。
「ルーク……お前が先導しているのも分かっている。姑息な手を使わず、堂々としたらどうだ? 俺をギルド職員にしてくださいってな」
「……誤解じゃないか? こいつらが不満を漏らすのは、ある意味で素直な感想なんだよ。強いやつに教わりたいと思うのは自然なことだと思うぜ」
「お前のほうが優れている。そう言いたいわけか?」
「あぁ、そこは譲れないな。Dランクのお前と、Cランクの俺。どちらが冒険者として優れているかなんて、子供でも分かることだ」
その通りだ。だから、こいつと決着をつける方法は決めている。
「ルーク……俺ももう我慢の限界だ。お前に決闘を申し込む!」
「へぇ、大きく出たな! いいぜ、受けてやるよ!」
「一時間後、場所は中央の広場だ。逃げたきゃ来なくてもいいぞ」
――け、決闘だ! ルークとブサクロノの決闘だぁぁぁっ!!
冒険者たちが一斉に立ち上がり、ギルドの建物を出ていく。この騒ぎですぐに衛兵が呼ばれ、町中に広がることだろう。
ルークと取り巻きどもも消えた。宿に戻って準備をするようだ。俺は既に準備を終えているため、自分の足で中央の広場に向かった。
決闘会場に着くと、人で溢れかえっている。その中で活気があるのが、賭けごとである。
――決闘だ決闘だ! どっちが勝つか賭けときな! 銀貨1枚から参加できるぜ。おぉっと、決闘の当事者は賭けには参加できないぜ。
倍率はルークが1.1倍。俺が1.9倍だった。なんと、この賭けは仲介業者が手数料を取らないらしい。どうも賭け事は王都以外では禁止されているようで、商売とすることは出来ないらしい。ちょっとガバガバな法律だな。
それにしても、1.9倍か。ほぼ全員が俺が負けると思ってる。妥当ではあるが、俺に賭けるやついるのかね? そんなことを考えていると、イケメンことライオネルが走ってやってきた。
「久しぶりだなクロノ! 帰ってきたと思ったら決闘って、お前は本当に忙しいやつだな」
「イケメンほどじゃない。そうそう、ライオネルは明日誕生日なんだろ? 何か欲しいものある?」
「欲しいものかぁ。うーん、鎧を買おうか迷ってる。本格的にタンクとして立ち回るなら、金属の全身鎧じゃないと、パーティーを守るのは難しいからなぁ」
「楽しそうだな。でも、全身鎧となると高いだろ」
「そうなんだよ。だから、毎日冒険してたけど、思い切って遠征してさ。ガッツリ稼いで帰ってきたところだ。クロノが決闘しなけりゃ、今晩にでも一緒に飲もうとしたんだけど、取り消すつもりはないのか?」
「ない。俺にも我慢の限界があるんだ。それはともかく、俺から1日早い誕生日プレゼントをあげよう。そこに賭けがあるだろ? 手持ちの金を俺の勝ちに賭けてみな。俺が負けたら、損失分は即金で払うよ」
「変なプレゼントだなぁ。まっ、いいか。俺からの応援だ。全額賭けてやるよ」
これでプレゼントは固まったな。取り巻きのメスAちゃんから、ライオネルの欲しい物を聞き出す約束をしていたが、今からでは間に合わない。ライオネルもプレゼントできない代物だから、言っただけだろうし。
「最前列で応援するぜ。頑張れよ、クロノ! 負けたら俺がおごってやるよ」
俺に向けられたイケメンスマイルで、取り巻きのメスどもがくらりとする。みんな楽しそうだな。他人にとってはイベントでしかないのだから、これでいいのだ。
活気ある広場をのんびりと眺めていると、ガイルさんが血相を変えて走ってきた。うーん、お説教の予感。
「こらブサクロノ! あれだけバカなことはするなと言ったのに、お前というやつは、よりによって決闘を申し込むなどっ」
「あっ、これ家の税金です。お納めください」
「むっ……確かに。これで正式に、あの家はお前のものだ。しかし決闘はいかん。考え直してくれないか。俺が見届人をしなくちゃならんのだ。友人がすべてを失うところなど、見たくないんだ」
「見届けてください。男には、引けないこともあるんです」
「ぐぬぬ……分かった。思いっきり、ぶつかっていけ!」
やらなきゃいけないことが片付いた。いつの間にかルークたちも到着していて、約束の時刻が迫っていた。
見届人にして進行役のガイルさんが、槍を地面に打ち付けて、高らかに叫ぶ。
「両者、前へ! 決闘に至る胸の内を聞かせて貰う!」
まずは俺から話そう。言い出しっぺの法則である。
「俺はルークとその仲間の冒険者から、嫌がらせを受けています。ずっと我慢してきましたが、職務に影響が出るほど酷いものとなりました。決闘で解決を図るしかありません」
「嫌がらせなんてとんでもない。誰もが優れた人に教わりたい。気持ちは分かる。だから、皆が求めるなら、俺はギルド職員を目指す」
バカどもを焚き付けておいてよく言うぜ。まぁ、話し合いで解決しないことだけは事実だけど。
「経緯は分かった。では、勝者の権利として、何を望む!?」
ガイルさんの問い。ここが攻め時だ。
「俺が負けたら、ギルド職員を辞める。空いた枠は、ギルド長の判断に委ねられる。こればかりは俺の権限じゃどうしようもない」
「あぁ、それでいいとも。俺が負けたら――」
「俺が勝ったら、そこの獣人の女・キャリィを貸せ。ヤらせろ。1週間でいいや」
はぁい。爆弾投下のお時間です。
「にゃっ!? なんでキャリィが条件になるのにゃん!?」
「何を驚くことがあるんだ? ルーク自身では、俺が求める勝利の報酬にならない」
「待てよ。俺の恋人のキャリィを好き放題させろ、だとぉ? 女の子を物としか考えてないのか。最低のことを言ってるって気づいてないのか?」
――最低のやつだ。顔だけじゃなく心まで醜いのか。
これがただの市民の罵倒なら聞き流すが、ルークの取り巻きの言葉とあっては黙っておけない。まぁ、必ず言うと思ったよ。言われたから、俺は怒る理由を得た。
「心まで醜いだと!? よくもそんなことが言えるな! お前たちは、いつもそうだ。自分たちは遊びだの悪ふざけだと言って、被害者の気持ちを少しも考えない!」
俺の怒声で、どよめいていた会場がシンと静まる。分からないなら、教えてやる。ルークが最低の行動をしており、俺に否がないことを。
「俺は闇の魔術師だ。最弱と笑われ、ギルドのツートップにも冒険者になることを止められた。それでも、冒険者になる道を選んだ」
ギルド長には聖職者を勧められたし、合格してもお祈りをされた。その悔しさを忘れることはない。
「必死にやったさ。誰よりも劣っているから。恵まれたやつらに言われるがまま負けるのが嫌で、過酷なバイトヒーラーもして金を貯め、装備を整えた。戦士の真似事のような格好も、必要だからしている」
毎日が吐き気との戦いだった。クソどうでもいい人間関係を壊さないために、ツケにも応じた。求めらたら必ず治療した。
「他の冒険者が弱いと言っている魔物に恐れ、逃げ出し、改めて立ち向かった。他人が軽く飛び越える階段を、俺は一歩ずつ苦労しながら上がってきた」
ゴブリンに恐怖し、逃げ出した。手にかけた感触を忘れることはない。何度も化け物に遭遇し、命からがら逃げ出して、理不尽な世界に立ち向かっている。
「そうやって必死にやってきて、認められて、ギルド職員という立場を勝ち取ったんだ。いわば、俺の人生そのものだ。それを奪おうとするのなら、お前も人生を賭けろ! 人生の伴侶を賭けろと言っているんだ! それでようやく、決闘の条件として釣り合うんだ。その覚悟がないなら、今すぐ目の前から失せろ!」
流れが、変わる。民衆は外野であり、俺たちのことなど深く知りはしないし、興味もない。だが、俺がぶちまけた思いの正当性に納得せざるを得ない。
挑戦者から一転して、悪役となったルークとキャリィ。さぁ、話し合え。そして答えを出せ。今引けば、腰抜け呼ばわりされるだけで済むぞ。
「キャリィは嫌だにゃん。あんなやつに好き放題されるなんて、死んだほうがましだにゃん!」
「大丈夫だ。俺は勝つ。必ず勝つ。あいつに負けている要素なんてひとつもない。だから、勝とう。そして、ギルド職員になって、一緒に暮らそう!」
「ほ、本気にゃん? 信じていいのにゃん……?」
「あぁ、信じてくれ。この槍に誓おう」
まさかのプロポーズ。指笛がふたりの恋路を祝福する。それフラグって言うんだぜ。帰ったら結婚しようの愚者版だ。
「ブサクロノ! お前の望み通り、俺も人生を賭ける。俺が負けたら、キャリィを貸し出そう。だが、負けるつもりはまったく無い!」
いいねぇ、楽しくなりそうだ。両者が合意したら、見届人のガイルさんの出番である。
「両者が合意したことで、決闘は承認された。ブサクロノが勝てばキャリィを1週間、自由に扱えるものとする。ルークが勝てば、ブサクロノはギルド職員を退職する! 間違いはないか!?」
最終確認に、互いに頷く。これでもう後には引けない。
「相手を殺すか、降参させたら勝者となる。他人の手出しは重罪に問われる。戦士はポーション類の使用を禁止する。魔術師はマナポーション類の使用が認められる。制限時間は無制限だ」
武器を持つ戦士と違って、魔術師の攻撃はMPに依存する。MPが尽きたら杖で殴りかかるなど見苦しい。だからマナポーションの使用は公平である。
「互いに正々堂々と戦うがいい! では……始めっ!!」
「……おかえり。遅かったじゃない」
暗闇の中、仁王立ちしたテレサちゃんがお出迎え。びっくりして叫びそうになった。レンジャースキルの無駄遣いではないか!?
「こっそり帰ってくるなんて、うしろめたいことでもあるわけ?」
「ないぞ。テレサちゃんこそ、怒るような出来事があったのかな?」
暗闇に目が慣れてくると、毎度お馴染みの怒り笑いしたテレサちゃんの顔が見えたのである……。
「突然、黙ってどこかに行っちゃって? あたしが心配しないとでも思ったわけ?」
実に回りくどい言い回しである。反抗期かな。年頃の女の子は難しいなぁ。だが、それは大した問題ではない。
今日のテレサちゃんは一味違う。なんと、ミニスカートを着ているのだ。ミニスカートは好きだ。かしずくほど好きだ。好きすぎて、頭を突っ込むしかないだろう!
温かく滑らかなふとももを撫でながら、かつて俺がプレゼントした黒のおパンティに顔を埋める。ゆっくりと深呼吸すると、生地の匂いに混ざって、女の子の少しツンとした匂いを存分に堪能する……。
「すぅはぁ……あぁ、これだよ。やっぱりこれが一番だ。ただいまテレサちゃん。ひとりにしてごめんね。おじさんも頑張ってきたんだよ」
「……あのね、常日頃から目を見て話せと言っておいて、肝心のあんたは何してるのよ」
「そんなこと言わないでくれ。グッドスメルの誘惑には誰も抗えないんだ」
「あそこに話しかけるの止めてくれる!? ちゃんと顔を見て話しなさい」
「やだ。もうちょっとだけ。すぅはぁ、おぉふ……繊細なレースの奥側には、クロッチがあって、テレサちゃんの大切な部位を包み込んでると思うと、勃起が止まらないよ」
我ながら気持ち悪いことを言っているのは分かっているが、止められないのである。そして、テレサちゃんは俺が気持ち悪いことを知っているので、何の問題もないのである!
「はぁ、もういいわよ。そのままでいいから、ちゃんと説明して」
黙って深呼吸しているとテレサちゃんが暴れ始めたので、仕方がなく炭鉱夫の生活を話した。かなりハードな生活だったと思う。
「そう、頑張ったじゃない。もう少しだけ嗅がせてあげるわ。でもあたしは眠いから、射精したいなら勝手にしごきなさい」
わぁい、ツンツンなご褒美ワードいただきました。張り詰めたテントから開放して、自分で楽しくしごく。たまにテレサちゃんの生足で踏まれてしごかれて、一ヶ月ぶりの射精の快感に脳が焼けるかと思った。
もちろん生足にぶっかける。怒られるかなと思ったが、意外にも静かだった。
「ふぅん、浮気はしてないようね。飼い主の自覚があるようで嬉しいわ。さぁ、今日は寝るわよ。あんたも疲れてるでしょ」
精液の量を確認しているようだ。俺としては、浮気とか他の女とか、そういうレベルじゃなかった。もうずっと穴の中で生活してたし、マッチョなアニキしか居なかったからな……。
テレサちゃんが足を拭いているあいだも、俺はパンツの匂いを嗅ぎ続けた。俺が腰に手を回して一向に離れないものだから、よたよたと怪しい足取りで歩くテレサちゃんに続いて、匂いに誘われるようにベッドに入って一緒に眠った。
「……ぐっもーにんっ」
俺の腕にしがみつき、足を折りたたんで丸くなったテレサちゃんは、未だにおやすみのご様子。反抗期ゆえ少しだけ素直じゃないが、やはりひとりで過ごす一ヶ月は寂しかったんだろうな。
ここから性的な意味でいたずらしようとすると、秒で起きるんだよ。毎朝のひと揉みか、ひと舐めが唯一のチャンスタイムなのであった……。
「それじゃ、おじさんは税金を納めてくる。そのままギルドに行くと思うから、また夜にな」
「はぁい。今日くらいは、早く帰って来るのよ?」
家を出ようとすると、扉がノックされる。扉を開けると誰も居ない……と思いきや、下に居る。小さなエンジェル・ティミちゃんだった。
「おかえりブサクロノ。会いたかった」
腰にタックルするように抱きついてくるティミちゃん。うむ、元気そうで何よりだ。抱っこしたくなる可愛さである。
「いやぁ、そのうち挨拶に行くつもりだんだけどね。タイミングが良くてびっくりしちゃったよ」
「風の噂でブサクロノが帰ってきたと聞いた。ブサクロノは、目立つからね」
「それでわざわざ会いに来てくれたのか。うーん、良い子!」
「ブサクロノはいつも突然居なくなる。会えるときに会うしかないの。ついでに、頼まれていたものも出来たよ」
頼んだものは、マナポーションの丸薬である。ミラちゃん経由でおねだりしていたが、こんなに早く作ってくれるとは……。
「ブサクロノ、嬉しい?」
「……あぁ、とても嬉しいよ」
「……悪い顔してる。ほどほどにしてね」
これで勝つための条件が揃った。勝利の女神のおでこにキスをする。予定変更だ。いざゆかん。憎き敵が居座るギルドに。
懐かしのギルドは今日も賑わっている。野郎どもの匂いに混ざって、美味そうな飯の匂いがするのだ。
――おい、腰抜けが戻ってきたぞ。
ルーク一派の嫌味の混ざった挨拶である。バリエーションが少ない。もうちょっとひねりのある内容にして欲しいものだ。
――1ヶ月近くギルドをほったらかして、何がギルド職員だよ。ギルド長が早く帰って来ねぇかなぁ。あんなやつクビにして、ルークさんにもっとたくさん教わりたいぜ。
おっ、良いこと聞いた。やつは今もただの冒険者のままらしい。そして目付役であるギルド長は未だ王都に居るようだ。
さて、いっちょやるか!!
陰口を叩く集団のもとに、ずんずんと歩いていく。周りが急に静かになるが、お察しの通り、そういうことがとうとう起きるぞ。
「今、俺の文句を言ったのはお前か? こそこそ話すしか能がない臆病者が、よくもまぁ俺に腰抜けなんて言えたもんだな!」
うろたえる雑魚は放っておき、取り巻きの中心に居るルークを睨みつける。
「ルーク……お前が先導しているのも分かっている。姑息な手を使わず、堂々としたらどうだ? 俺をギルド職員にしてくださいってな」
「……誤解じゃないか? こいつらが不満を漏らすのは、ある意味で素直な感想なんだよ。強いやつに教わりたいと思うのは自然なことだと思うぜ」
「お前のほうが優れている。そう言いたいわけか?」
「あぁ、そこは譲れないな。Dランクのお前と、Cランクの俺。どちらが冒険者として優れているかなんて、子供でも分かることだ」
その通りだ。だから、こいつと決着をつける方法は決めている。
「ルーク……俺ももう我慢の限界だ。お前に決闘を申し込む!」
「へぇ、大きく出たな! いいぜ、受けてやるよ!」
「一時間後、場所は中央の広場だ。逃げたきゃ来なくてもいいぞ」
――け、決闘だ! ルークとブサクロノの決闘だぁぁぁっ!!
冒険者たちが一斉に立ち上がり、ギルドの建物を出ていく。この騒ぎですぐに衛兵が呼ばれ、町中に広がることだろう。
ルークと取り巻きどもも消えた。宿に戻って準備をするようだ。俺は既に準備を終えているため、自分の足で中央の広場に向かった。
決闘会場に着くと、人で溢れかえっている。その中で活気があるのが、賭けごとである。
――決闘だ決闘だ! どっちが勝つか賭けときな! 銀貨1枚から参加できるぜ。おぉっと、決闘の当事者は賭けには参加できないぜ。
倍率はルークが1.1倍。俺が1.9倍だった。なんと、この賭けは仲介業者が手数料を取らないらしい。どうも賭け事は王都以外では禁止されているようで、商売とすることは出来ないらしい。ちょっとガバガバな法律だな。
それにしても、1.9倍か。ほぼ全員が俺が負けると思ってる。妥当ではあるが、俺に賭けるやついるのかね? そんなことを考えていると、イケメンことライオネルが走ってやってきた。
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「イケメンほどじゃない。そうそう、ライオネルは明日誕生日なんだろ? 何か欲しいものある?」
「欲しいものかぁ。うーん、鎧を買おうか迷ってる。本格的にタンクとして立ち回るなら、金属の全身鎧じゃないと、パーティーを守るのは難しいからなぁ」
「楽しそうだな。でも、全身鎧となると高いだろ」
「そうなんだよ。だから、毎日冒険してたけど、思い切って遠征してさ。ガッツリ稼いで帰ってきたところだ。クロノが決闘しなけりゃ、今晩にでも一緒に飲もうとしたんだけど、取り消すつもりはないのか?」
「ない。俺にも我慢の限界があるんだ。それはともかく、俺から1日早い誕生日プレゼントをあげよう。そこに賭けがあるだろ? 手持ちの金を俺の勝ちに賭けてみな。俺が負けたら、損失分は即金で払うよ」
「変なプレゼントだなぁ。まっ、いいか。俺からの応援だ。全額賭けてやるよ」
これでプレゼントは固まったな。取り巻きのメスAちゃんから、ライオネルの欲しい物を聞き出す約束をしていたが、今からでは間に合わない。ライオネルもプレゼントできない代物だから、言っただけだろうし。
「最前列で応援するぜ。頑張れよ、クロノ! 負けたら俺がおごってやるよ」
俺に向けられたイケメンスマイルで、取り巻きのメスどもがくらりとする。みんな楽しそうだな。他人にとってはイベントでしかないのだから、これでいいのだ。
活気ある広場をのんびりと眺めていると、ガイルさんが血相を変えて走ってきた。うーん、お説教の予感。
「こらブサクロノ! あれだけバカなことはするなと言ったのに、お前というやつは、よりによって決闘を申し込むなどっ」
「あっ、これ家の税金です。お納めください」
「むっ……確かに。これで正式に、あの家はお前のものだ。しかし決闘はいかん。考え直してくれないか。俺が見届人をしなくちゃならんのだ。友人がすべてを失うところなど、見たくないんだ」
「見届けてください。男には、引けないこともあるんです」
「ぐぬぬ……分かった。思いっきり、ぶつかっていけ!」
やらなきゃいけないことが片付いた。いつの間にかルークたちも到着していて、約束の時刻が迫っていた。
見届人にして進行役のガイルさんが、槍を地面に打ち付けて、高らかに叫ぶ。
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まずは俺から話そう。言い出しっぺの法則である。
「俺はルークとその仲間の冒険者から、嫌がらせを受けています。ずっと我慢してきましたが、職務に影響が出るほど酷いものとなりました。決闘で解決を図るしかありません」
「嫌がらせなんてとんでもない。誰もが優れた人に教わりたい。気持ちは分かる。だから、皆が求めるなら、俺はギルド職員を目指す」
バカどもを焚き付けておいてよく言うぜ。まぁ、話し合いで解決しないことだけは事実だけど。
「経緯は分かった。では、勝者の権利として、何を望む!?」
ガイルさんの問い。ここが攻め時だ。
「俺が負けたら、ギルド職員を辞める。空いた枠は、ギルド長の判断に委ねられる。こればかりは俺の権限じゃどうしようもない」
「あぁ、それでいいとも。俺が負けたら――」
「俺が勝ったら、そこの獣人の女・キャリィを貸せ。ヤらせろ。1週間でいいや」
はぁい。爆弾投下のお時間です。
「にゃっ!? なんでキャリィが条件になるのにゃん!?」
「何を驚くことがあるんだ? ルーク自身では、俺が求める勝利の報酬にならない」
「待てよ。俺の恋人のキャリィを好き放題させろ、だとぉ? 女の子を物としか考えてないのか。最低のことを言ってるって気づいてないのか?」
――最低のやつだ。顔だけじゃなく心まで醜いのか。
これがただの市民の罵倒なら聞き流すが、ルークの取り巻きの言葉とあっては黙っておけない。まぁ、必ず言うと思ったよ。言われたから、俺は怒る理由を得た。
「心まで醜いだと!? よくもそんなことが言えるな! お前たちは、いつもそうだ。自分たちは遊びだの悪ふざけだと言って、被害者の気持ちを少しも考えない!」
俺の怒声で、どよめいていた会場がシンと静まる。分からないなら、教えてやる。ルークが最低の行動をしており、俺に否がないことを。
「俺は闇の魔術師だ。最弱と笑われ、ギルドのツートップにも冒険者になることを止められた。それでも、冒険者になる道を選んだ」
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毎日が吐き気との戦いだった。クソどうでもいい人間関係を壊さないために、ツケにも応じた。求めらたら必ず治療した。
「他の冒険者が弱いと言っている魔物に恐れ、逃げ出し、改めて立ち向かった。他人が軽く飛び越える階段を、俺は一歩ずつ苦労しながら上がってきた」
ゴブリンに恐怖し、逃げ出した。手にかけた感触を忘れることはない。何度も化け物に遭遇し、命からがら逃げ出して、理不尽な世界に立ち向かっている。
「そうやって必死にやってきて、認められて、ギルド職員という立場を勝ち取ったんだ。いわば、俺の人生そのものだ。それを奪おうとするのなら、お前も人生を賭けろ! 人生の伴侶を賭けろと言っているんだ! それでようやく、決闘の条件として釣り合うんだ。その覚悟がないなら、今すぐ目の前から失せろ!」
流れが、変わる。民衆は外野であり、俺たちのことなど深く知りはしないし、興味もない。だが、俺がぶちまけた思いの正当性に納得せざるを得ない。
挑戦者から一転して、悪役となったルークとキャリィ。さぁ、話し合え。そして答えを出せ。今引けば、腰抜け呼ばわりされるだけで済むぞ。
「キャリィは嫌だにゃん。あんなやつに好き放題されるなんて、死んだほうがましだにゃん!」
「大丈夫だ。俺は勝つ。必ず勝つ。あいつに負けている要素なんてひとつもない。だから、勝とう。そして、ギルド職員になって、一緒に暮らそう!」
「ほ、本気にゃん? 信じていいのにゃん……?」
「あぁ、信じてくれ。この槍に誓おう」
まさかのプロポーズ。指笛がふたりの恋路を祝福する。それフラグって言うんだぜ。帰ったら結婚しようの愚者版だ。
「ブサクロノ! お前の望み通り、俺も人生を賭ける。俺が負けたら、キャリィを貸し出そう。だが、負けるつもりはまったく無い!」
いいねぇ、楽しくなりそうだ。両者が合意したら、見届人のガイルさんの出番である。
「両者が合意したことで、決闘は承認された。ブサクロノが勝てばキャリィを1週間、自由に扱えるものとする。ルークが勝てば、ブサクロノはギルド職員を退職する! 間違いはないか!?」
最終確認に、互いに頷く。これでもう後には引けない。
「相手を殺すか、降参させたら勝者となる。他人の手出しは重罪に問われる。戦士はポーション類の使用を禁止する。魔術師はマナポーション類の使用が認められる。制限時間は無制限だ」
武器を持つ戦士と違って、魔術師の攻撃はMPに依存する。MPが尽きたら杖で殴りかかるなど見苦しい。だからマナポーションの使用は公平である。
「互いに正々堂々と戦うがいい! では……始めっ!!」
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美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
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【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
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