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夜鷹編

アイン調教日記その22 Final

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 おじさんとアインちゃんは、ベッドの上で唇を重ねたまま、吐息と唾液を混ぜ合わせている……。


「じゅる……んむぅ……ちゅぅ……ぴちゃ……」


 息子は熱くうねる肉襞に包み込まれ、萎えることを知らないが、アインちゃんの汗に濡れた両足で腰をホールドされているため動くことも抜くこともできない。


 おじさんの背中にはアインちゃんの両手が置かれており、少しでも離れようとすると爪を立てられてしまう。


「いててっ、アインちゃん、お風呂に入ろうか」

「……あと5分」


 一抹の不安を覚えたおじさんだったが、本当に5分ほどで大好きホールドが解かれた。満点をあげちゃう。


 肉欲の拘束から開放されて、ベッドに寝ているアインちゃんを見下ろす。むわっとした熱気が周囲に満ちており、メイド服はお互いの汗を吸ってぐっしょりと濡れていた……。


「メイド服、汚れちゃったね」

「……そうね。あとで洗うわ」


 重くなったメイド服を脱がせて、アインちゃんをお姫様だっこしたまま風呂場に向かう。


「お湯沸かすから、ちょっと待ってね」

「……汗が冷えて寒いわ」


 お湯が沸くのを待っているあいだ、アインちゃんは体を寄せてきてちっとも降りてくれなかった。肉付きが良くなったせいか、あの日に比べると少し重い。


 しばらくしてお湯が沸いた。本当は浴槽に入るまえに体を洗い流すのだが、両手が塞がっていてどうしようもない。アインちゃんを抱えたままお湯に入ると、ざぶりとお湯が溢れ出る。


「ほら、温かくなったよ。セックスが終わったらやっぱりこれだねぇ」

「……体、洗って。あたし疲れたの」


 背中から手を回して胸やお腹を撫でるが、とくに嫌がる様子もない。すべすべの肌を指の腹で優しく擦り、汚れを落としていく。


「アインちゃん、おじさんこれからちょっと頑張るけど、気にしないでね」

「……? えぇ、100数えるまでに終わらせてね」

「はっはっは、善処するよ。【ウィスパー】」


 光り輝く指先で、アインちゃんの肌に触れる。スッと古傷が消える。すぐに次の古傷を触れて、脇腹や胸、お腹にある少女に相応しくない汚れを消し去っていく……。


「うそ……傷が、消えてる……? あんたがしてるの?」

「あぁ、そうだよ……おろろろろろろっ」

「ちょ、何で吐いてるの!? 大丈夫!?」

「大丈夫だよ。リバースは浴槽の外に出すからね。静かにしててね」


 シャドーデーモンに運ばせた中級マナポーションを飲みながら、治療を後回しにしていた正面……つまり、アインちゃんが自分で見える部位の古傷を治している。


 強烈すぎる吐き気との戦いになるが、体感とは裏腹に、治療時間は圧倒的に短くなる。全身がお湯でふやけきった頃、やっと治療を終えることができた。


「体がふやけちゃったね。そろそろ出ようか」

「う、うん……ありがとう……」

「体はおじさんが拭いてあげるから、自分で鏡を見てごらん」


 かすり傷ひとつない美しい背中をバスタオルで拭いていく。正面もさぞきれいになっていることだろう……。


「……ない。本当に傷がない。あれだけあったのに……信じられない……」

「古傷はね、治せるんだよ。時間がかかっちゃうから、知らない人も多いんだ」


 濡れた髪を拭いてあげながら、鏡に映っているアインちゃんを見る。そこには瞬きひとつせず、自分の体に見惚れている無垢な女の子が居た。


 鏡越しに目が合うと、お礼を言いたそうに振り返ろうとしてくる。おじさんはがしがしと頭を拭いて、それを邪魔する。


「メイド服は洗っておくから、いつもの服を着てね」

「……分かった」


 いつもなら彼女の着替えを凝視するのだが、今はそんな気分ではない。部屋を出て、用意していたプレゼントを抱えて再びバスルームに戻ってきた。


「試験は合格だよ。おめでとう……とびっきりのプレゼントを用意したんだ」


 キャミソールと黒のおパンティと黒ニーソを着ている彼女に近づき、おじさんは歌い始める。日本では一般的なバースデーソングだ。


「ハッピーバースデイ……テレサちゃん」

「……テレサ? 誰のこと?」

「君のことだよ。テレサちゃん。プレゼントはね、何も形あるものだけじゃないんだ。気に入ってくれたら嬉しいね」

「テレサ……テレサ……あたしの、名前……」


 そして、プレゼントはひとつとは限らない。ちゃんと別のプレゼントも用意している。それは、おじさんの独断と偏見で選んだ、ホットパンツだ。


「女の子がいつまでも下着で立っているのはよろしくない。穿いてごらん。きっと似合うよ。おじさんは後ろを向いておくからね」

「う、うん。すぐ穿くから」


 しばらくして振り返ると、ホットパンツを穿いたテレサちゃんが居た。黒いニーソとホットパンツが生み出す絶対領域は、宝という他ない。


「よく似合ってるよ。テレサちゃん可愛い」

「あっ、ありがと……でも、その……あたし、誕生日じゃないというか……誕生日なんて分からないんだけど……? 今日なの、かな?」


 少し内股で、顔が赤い。恥ずかしがる女の子も可愛い。


 今こそ、おじさんなりの調教の全貌を、テレサちゃんに語ろう……。


「テレサちゃん、よく聞いて。君は試験を合格して、人になったんだよ。だから今日が誕生日で、名前とプレゼントをあげたのさ」

「人ってたとえ話の意味は分かるわよ? でも、そんなことでなれるものじゃないと思うわ」

「いいや、君は確かに、獣から人間になったんだ」


 生きるために手段を選ばず、誰かを殺して生きてきたアイン。強者に従い、自分の感情を押し殺す日々。それは仕方がないことだった。けれど、どのような理由があろうとも、罪は罪だ。


 そんなアインが仮に100人を殺して、夜鷹から開放されて自由になり、人間になったと思ったとして、性根は何も変わっていない。


 始めはおとなしくしていても、必要になれば物を盗み、人を殺すだろう。それだけの技術を持っており、それが一番、楽な方法だと知っているのだから。


 幼い頃から夜鷹として生き抜いてきたアインには、理性と道徳心が欠落している。それらが備わって初めて、人間と呼べるだろう。おじさんはそれを与えるために、アインを快楽漬けにしたのだ。


「意味が分からない。試験って言っても、ただのセックスじゃない。快楽に溺れなかったら人間になるって!? バカじゃないの!」

「ただのセックスって言うけどね、快楽という欲望は、君が思っているより遥かに強烈で、依存性が高いものなんだよ。現に、君は溺れ続けただろう?」

「そっ、それは……そうだけど……」


 この世界には、娯楽が少ない。金・暴力・セックス。原始的なものが大半を占め、おじさんが生きていた時代の多様性に富んだ娯楽などないのだ。


 普通の人なら、日々の生活に追われてひとつの物事に病的なまで執着する確率は低くなっているのだが、アインは何一つ持っていなかった。


 友人は殺され、監禁されて自由はない。嫌いな男に身も心も弄ばれて、極度のストレス漬けの日々……それを発散する術は、快楽しかなかった。


 その後に勉強という目的を与えても、面白くなければ意味がない。欲望に忠実なアインはただただ快楽に溺れ続けていた。


 目を覆いたくなるような酷い状態をこの目で見てきたからこそ、今の彼女の成長っぷりがよく分かる。


「君は自分の欲望と向き合い、打ち勝ったんだ。それはとても凄いことだよ。だから自信を持って欲しい。これから先、長い人生で欲望に身を任せたくなるようなことがあっても、君なら必ず、乗り越えられる!」

「そっ、それはあんたが……ヒントをくれたから……っ。あたしひとりだったら、絶対にムリだったし……」

「依存から抜け出すためには、誰かの助けが必要なんだ。君はそれに耳を傾ける柔軟な発想も手に入れた。大変よくできました」

「……あたし、自信ないよ……っ」


 彼女はうつむき、黙り込んでしまう。続く言葉を待ち続けていたが、迷っているのなら、ときに道を示してあげるのも大人の役目である。


「欲望に負けそうになったとき、思い出して欲しい。テレサ……それが君の名前だ。君が君であろうとし続ける限り、決して変わらない君の名前だ」

「テ……レ……サ……」

「そうだよ。欲望に打ち勝ってこの世界に生まれた、強い女の子の名前だよ」

「ありがっ、とう……っ、あたしは……テレサ……っ!」


 ぼろぼろと涙をこぼしながら、震える声で自分の名を叫んだ。本当の意味で、彼女はテレサになったのだ……。


「泣くのはまだ早い。もうひとつ、プレゼントがあるんだ。ホットパンツのポケットに入ってるんだけどね」

「これ……小瓶? 色の付いた水が入ってる……?」

「ただの水じゃないのさ。使い方を教えてあげるよ」


 蓋を開けると、ふわりと花の香りが広がる。小瓶を傾けて数滴ほどテレサちゃんの手首に落とし、両手首で広げさせる。そして、手首を体に擦りつけさせれば……流行りの香水をつけた女の子のできあがりだ。


「……いい匂い。あぁ……本当に……いい匂い……」

「アルバの若い女の子のあいだで流行っている香水だよ。喜んでくれておじさんも嬉しいよ」

「ありがとう……大切に使うわ……」

「うん。自分の意思で、使うといいよ。この意味が、分かるかな?」


 暗殺者は影に潜み、可能な限り自分の痕跡を隠す。この香水の匂いは、邪魔にしかならない。女の子として生きるなら、何も躊躇うことはない。


 たったひとつの小瓶が、彼女の今後の人生を決める。


「……あぁ、そういう……ことね……イジワルなのね、やっぱり」

「そうだよ。おじさんはイジワルで、君を拉致監禁した悪党さ。そんなおじさんを倒した君に選択肢を与えよう」


 ひとつ……小瓶を捨てて、暗殺者に戻る。
 ふたつ……テレサとして生きる。


「君がどちらを選んでも、開放するよ。もしテレサとして生きるなら、おじさんと一緒に暮らしながら、日常生活で役立つことを学ぶことになる」


 どうしたらいい? そう言いかけた言葉を飲み込んだ彼女は、真剣な表情で考え続けた。やがて、表情が曇って口を開けた。


「……分からない。今すぐ決めないとダメ?」

「好きなだけ待つよ。君が自分の意思を聞かせてくれるまでね」

「ありがとう。しばらくはテレサとして生きてみる。いい……?」

「もちろんさ。さて、最後のプレゼントだ……」


 テレサちゃんに恐ろしいプレゼントを渡す。本当はこんなもの渡したくない。しかし、この調教生活を締めくくるうえで絶対に避けられないことなのだ……。


「……なに、これ? バイブ?」

「ペニスバンドだよ……さぁ、やりたまえ」


 テレサちゃんに背を向けて、四つん這いになる。尻をぐっと持ち上げて、ケツの穴を見せつける。


「ちょ、何してるの!? 汚いもの見せないでよっ!」

「そのペニスバンドを使って、おじさんのアナルを掘りなさい」

「はぁぁっ!? なに考えてるの!? 頭おかしくなったの!?」


 おじさんは真面目である。悲しいほどに真面目である……。


「君はこれまで、強者に弄ばれてきた。長い冬を耐えしのぎ、とうとう復讐のチャンスがやってきたんだ。おじさんは散々、君を弄んだからね。覚悟はできてる」

「覚悟って……別にそんなことしなくても……したくないっていうか……」

「これは強い立場を手に入れたテレサちゃんが、力に溺れないか試す裏試験なんだ。おじさんのアナル処女を散らして、弱かった自分と決別するんだッッッ!」

「もぉぉぉぉぉっ!! やればいいんでしょ! やるわよぉぉぉぉっ!!」

「……アーーーーーーーーーーーーーッッッ!!」


 おじさんのアナル処女を散らし、調教日記を終えることとする……。
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