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マゾスライム

メスの取り合い

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 イナカ村生活2日目。

 リサとコンはギルドで掲示板を見ていた。
 今日はいつメンと違う依頼があり、リサはそれに食いついた。


「ゴブリンとオークの討伐かぁ。楽しそう」
「ココン。実力を試すいい機会。倒せたら次の街に行こう」
「次の、街!?」
「王都トカイ」
「王都♡ 行ったことある? ちゃんと発展してる?」
「かなり栄えてる。行ったことはない」
「そうなんだ♡」


 コンの言うことはすべて正しい。
 リサが納得したところで、冒険に出発だ。


 森の中の冒険は順調だった。
 魔法の扱いに慣れたリサは、魔物を見たそばからぶっ殺す。
 【アイテムボックス】で触れずとも回収できるので、もはや散歩さつりくだ。

 シャドーウルフは厄介だが、奇襲を受けてもマゾスライムが受け止める。
 コンがぶっ飛ばされるのはいつものことなので、リサが無傷ならパーティーとしてノーダメージだ。


 そうして、いつもより深く入り込んだとき、目的のゴブリンと鉢合わせた。


「うわっ、キモっ」
「獲物は獲物。ちゃっちゃと倒す」


 余裕たっぷりのコンが杖を掲げたとき、茂みから別のゴブリンが現れる。
 こちらもパーティーなら、ゴブリンもパーティーだ。
 いつものように囲まれてしまったが、今回ばかりは真面目にピンチだ。


「ど、どうしよう……」
「各個撃破する。他に道はない」


 しかし戦いは起きなかった。
 ゴブリンたちは武器を捨て、ぺこぺこと頭を下げてくる。
 奇妙な踊りをするゴブリン。花を差し出すゴブリン。土下座するものも居た。


「何、これ……?」
「ココン……たぶん、求愛されてる」
「なんですとぉ!? いや、確かに俺もコンちゃんもかわいいけど……」


 思ってたのと違う。リサは混乱した。


「【上質なマナ】のせいだと思う。困った」
「コンちゃんを困らせるやつは死刑――」


 リサが勝手にキレてやっと戦いが始まると思ったそのとき……。
 今度は、オークが現れた。
 ゴブリンと比べると太っていて、腹が出ている。
 背丈は2メトル近いから、見上げることになった。


「でっかいなぁ。オークはどれくらい強いの?」
「ココン……ゴブリンと同時に相手をするのは難しい」


 二人に緊張が走るなか、またしても予想外のことが起きた。
 ゴブリンたちとオークが、睨み合い、取っ組み合いを始めた。


「えぇぇ……何これぇ……」
「メスの取り合い。ちょっと見守る」
「俺も参加してくるね♡」
「リサはこっち」


 ゴブリン5匹VSオーク1匹。
 オス同士のプライドを賭けた戦いが始まった。

 まずゴブリンは数を活かしてオークを囲んだ。
 短いこんぼうで怒涛どとうのロー攻め。見た目通りの陰湿さだ。

 オークは巨体ゆえに避けられないが、それを物ともしないタフさが売りだ。
 立派なこんぼうを振り回し、包囲網を叩き崩す。


「オーク強いねぇ」
「なかなか。好きになった?」
「まさか。俺はコンちゃん一筋だよ♡ でも、ゴブリンよりはオークがましかな。ぎりぎりだけど、種付けおじさんっぽい体格だし」


 強力なオークを相手に奮闘したゴブリンたちだったが、やはり自力が物を言う。
 1匹ずつ叩き潰され、最後に立っていたのはオークだ。
 傷だらけのオークは、血の付いたこんぼうを空に掲げ、勝利の雄叫びを上げた。

 すごく頑張っていたのは分かったので、ノリで拍手を送るリサとコン。
 我に返ったオークは武器を投げ捨て、へこへこと頭を下げ、それでも良い反応を貰えないとなると、土下座してセックスアピールをしてきた。

 リサの答えはもちろんNOだ。
 コンもそっぽを向いて関わらないようにした。

 その塩対応に怒ったオークは、こんぼうを掴むと襲いかかってきた。


「【ロックスピア】」
「【ネクロファイア】」


 満身創痍まんしんそういのオークは、二人の魔法を受けて死んだ♡


所詮しょせんは、魔物だね」
「そう。力任せじゃコンには勝てない」


 見事な漁夫の利でピンチを脱したリサたちが、討伐証明を回収しようとしたとき、スライムがゴブリンの死体を飲み込み、消化していた。


「ちょっと! 人がせっかく倒した獲物を取るなんて……おこだよ、おこ!!」
「リサは何もしていない。コンも同じ」
「でも、ペットがご主人さまの物を奪うなんてよくないよ」
「ココン……百里ひゃくりある。でも、怒るのは気が早いかもしれない」


 マゾスライムは、討伐証明となる耳だけは残していた。
 ゴブリンもオークも大した装備は持っていない。
 死体も使いみちがないため、放置されるものだ。


「コンたちにはゴブリンの死体は価値がない。でも、スライムには良質な餌」
「そっか、強くなるんだ。特別に許しちゃおうかな♡」


 魔石を取られたことをすっかり忘れたリサ。
 あえてそれに触れないコン。
 そして強欲なマゾスライムは、本来の餌を取り込んだことで、より強くなった。


 スライムが【擬態】を習得しました。
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