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マゾスライム

マゾスライムを洗脳する

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 スライムをコンにも絶対服従させることに成功したリサだが、この程度では満足しなかった。
 宿に戻ったリサは、間違いが起きないように、マゾスライムを教育せんのうすることにした。


「コンちゃんは俺。はい、復唱ふくしょう!!」

 コン様はリサ様♡


 リサはスライムの言葉はもちろん、何を考えているのかも分からない。
 しかし、なんとなく態度で察しているのだからやべーやつ。

「俺=コンちゃんは何よりも優先する! はい、復唱!!」

 コン様には絶対服従♡

「コンちゃんにお使いを頼まれました。途中、今にも死にそうな人が助けを求めてきました。はい、どうする!?」

 無視してコン様のお使いを続行する♡

「よろしい!! コンちゃんがお年寄りを担いだまま倒れています。はい、どうする!?」

 邪魔者をどかしてコン様を救出する♡

「違っが~う!! コンちゃんが助けようとした人なんだから、一緒に助けなきゃだめでしょぉぉぉ!?」

 コン様の知人はコン様♡

みぎの頬をぶたれたら!?」

 ひだりの頬を差し出す♡

ひだりを頬をぶたれたら!?」

 みぎの頬を差し出す♡

「違うよね!? コアを差し出すべきでしょーが!!」

 核を差し出し絶対服従をアピールする♡


 リサの教育せんのうは夜遅くまで続いた……。


 翌朝、リサはコンと合流し、スライムを連れて冒険に出た。
 人気のない森の中で、リサはスライムを改めて紹介する。


「昨日はごめんねコンちゃん。こいつも心を入れ替えたから、多めに見てあげて」
「気にしてない。ペットも仲間。これから仲良くする」
「よかったね。寛大かんだいなコンちゃんに感謝するんだよ♡」


 話を振られたマゾスライムは、挨拶代わりにコアをコンに差し出した。


「ココン!?」


 コンは驚いて後ずさりした。
 それもそのはず、魔物に詳しいコンは、コアがスライムの心臓だと知っている。
 これが人間なら、さして親しくもない知人に、挨拶代わりにおはようのノリで心臓をえぐり出して、微笑みながら差し出してくることと同じなわけで、怖がらないほうがおかしい。

 今は見る影もないが、コンは死霊術師ネクロマンサーだ。
 スケルトンやゾンビなど、アンデット系を使役することにも慣れている。
 魂喰らいソウルイーターに一歩も引かない度胸もある。
 そのメンタルモンスター・コンが、ドン引きするほど異常な行為だった。

 リサもコンの話を聞いているから、核が何たるかを知っているのに、歯牙にもかけない。
 はっきり言ってリサは頭がおかしかった。


 コンはスライムに負けたことを引きずっていたが、このスライムの異常性を見て、普通のスライムじゃないと思うことにした。


「コンちゃん、こいつも反省してるから!! 一緒に撫でようよ♡」
「ココン!? リサ、危ない!!」


 コンはリサの手を掴み上げると、手に付着していた粘体を巫女っぽい服で拭う。
 事情が分からないリサだが、コンちゃんに手を握られたから、よし♡


「スライムは酸があると言ったはず。コンを倒す実力者なら、きっと強い酸。リサ、怪我してない?」
「あぁ~、そのことかぁ。大丈夫だよ♡ こいつは酸化しないよ♡」
「ココン? 酸はスライムの鎧。リサにはともかく、コンにはするはず」
「ううん、絶対にしないよ。だって、こいつは酸を禁止してるから♡」
「こ、コココン……???」


 仮にリサが命令したとしても、普通は酸を解かないものだ。
 朝イチに心臓を差し出すやべーやつが、朝イチから全裸で心臓を差し出すやべーやつにレベルアップ。

 リサは説明を放棄し、コンの手を掴んで、一緒にスライムの粘体を撫でた。


「ねっ? 冷たくて気持ちいいでしょ♡」
「ココン。これはなかなか。でも、嫌がらないの?」
「ちっとも♡ ほら、触られるのが嬉しくて震えてるでしょ♡」
「ちょっと心を開きすぎてる。もしかして、【上質なマナ】のせいかも」
「そういえばコンちゃんも持ってたね。何か関係あるの?」
「魔物にとってマナは力のみなもと。マナを摂取せっしゅするほど、強くなる。スライムは粘体だから、触るだけでも凄い効果があるのかもしれない」


 コンが言うには、スライムの粘体は、他の魔物と違って吸収効率がいい。
 つまり、触っているだけで強くなるのだ。

 これがクソザコスライムがコンに勝ち、シャドーウルフの爪を受けても死なず、妙に物分りがいい理由だとコンは思った。


「そうと分かったら、いっぱい撫で撫なでなででする」
「仲間想いのコンちゃん素敵♡」


 コンの理論はおおむね正しいが、ひとつ間違いがある。
 軽く撫でられただけでは、他の魔物が肌を舐めるのとそれほど差はない。

 リサのオナペットとして使われ、リサの体液を吸いまくったからここまで強くなっただけだ。
 とはいえ、排泄物さえも気にせず取り込み、分解する天然の掃除屋マゾスライムだからこそなし得た成長速度だろう。
 さすがのリサも、そのことを言うつもりはない。


 リサとコン。【上質なマナ】をもつ二人にせっせと撫でられているスライムは、戦わずとも成長していた……。


お知らせ
間違ってたルビ修正します。しました。
まだ抜けあったらごめんね。
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感想 4

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