上 下
6 / 46
狐獣人アコン

お義父さんとお義母さんに挨拶

しおりを挟む
 初めての冒険を終え、ギルドに戻った俺たちは、討伐証明を受付に提出した。


「お待たせしました。報酬の5千アドです。討伐の功績を称えまして、Zランクに昇格ですよ。おめでとうございます。Aランク目指して頑張ってくださいね」
「Zランク!? スタート低すぎない!?」
「毎回ランクアップしたほうが楽しいじゃないですか」
「限度があると思うけどなぁ」
「限度はAランクですよ」
「まともに見えて頭おかしい系かぁ」


 初めての報酬でコンちゃんとご飯を食べることにした。
 コンちゃんの好きな食べ物は何かな?
 やっぱりお稲荷さんとか? 今は切らしてまして。


「コンちゃん、明日はどうするの?」
「コンは次の村に行く。ここの魔物は弱すぎる」
「そうしよっか。道は分かるの?」
「知ってる。リサも行くの?」
「もちろんだよ。コンちゃんの仲間だもん。病めるときも健やかなるときも一緒に冒険することを誓っちゃうよ。パーティーって言うんだっけ」


 コンちゃんは黙々とご飯を食べていたが、満更でもなさそうだった。


 夜、宿の自室で寝転がっていると、人が訪ねてきた。


「コンコン。リサ、居る?」


 口頭でノックするコンちゃんかわいい。好き。


「いらっしゃい。優しくするからね」
「実は、大事な話がある」
「分かってるよ。優しくするからね」
「??? きっと違うことを考えてる。相談したいことがある」
「うん、いいよ」
「まだ何も言ってない」


 どんな話であれ、最終的な目的は決まってる。
 俺がコンちゃんを幸せにするんだ。


「コンは事情があって旅をしてる。長い旅になる。リサは自分のしたいことをしたほうがいい」
「まぁまぁ、最後まで話してみてよ」


 コンちゃんが無言でカードを出してきた。
 俺もカードを重ねると、コンちゃんのプロフィールが見えるのだ。


名前:アコン Lv.-30
性別:♀
種族:狐獣人

クラス:
死霊術師ネクロマンサー

アクティブスキル:
【ネクロボックス】
死霊術師ネクロマンサーの収納スキル。レベルに応じた容量を持つ。
死体・死属性の物は、容量に影響しない。

パッシブスキル:
【上質なマナ】
体液・体臭からにじみ出る上質なマナにより、生物に好かれる。


「レベル30!? コンちゃん強いね!!」
「違う。よく見て」
「ん、これ汚れじゃなくて……マイナス!? マイナス30って何!?」
「【ソウルドレイン】を受けた」


 コンちゃんはご両親と一緒に、魂喰らいソウルイーターと戦い、負けてしまった。
 魂喰らいソウルイーターの【ソウルドレイン】を受け、レベルを奪われた。
 レベルが下がり、ステータスが下がる。習得したスキルも使えない。
 これがコンちゃんがクソザコの理由だ。


「いくらなんでもマイナスって……えげつないなぁ」
「コンが生きているのは、父様と母様に庇われたから……【ネクロボックス】」


 歪んだ空間から出てきたのは、2人の死体。
 俺のお義父さんとお義母さんとなるはずだった人たちか……。


「コンちゃんは、どうしたいの?」
「コンは魂喰らいソウルイーターを見つけ出して倒す。それで魂はあるべき肉体に戻る」


 死人が生き返る。何を馬鹿なと言いたいところだけど、コンちゃんを見た今なら信じられる。
 俺としても、ご両親が生き返るのは嬉しいね。


「協力するよ。仲間だもん!」
「……コンはこんな状態だから、【ネクロボックス】も2人の体を収納するだけで手一杯。他のスキルも取られてしまって、何もできない」
「じゃあレベル上げをして、力を取り戻したら勝てるの?」
魂喰らいソウルイーターは、死霊術師ネクロマンサーの天敵。同じ死属性だから、スキルが通じない。しかも、魂喰らいソウルイーターには【ソウルドレイン】がある」


 泥仕合になるはずが、魂喰らいソウルイーターは種族特性の【ソウルドレイン】で一方的に攻撃できるんだ……。
 相性が悪いなんてもんじゃないね。3人がかりで負けたのも納得だ。


「よし、俺が倒すよ。それでいいよね?」
「コンも戦う!! 必ずかたきを取る!!」
「でも、相性が悪いんでしょ? 秘策があるのかな?」
「やり直す。レベルを上げて、魂喰らいソウルイーターを倒すためのスキルを習得する」


 今までの歩みを捨て、新しい道を行く。
 口にするのは簡単だけど、想像を絶する厳しさだろうね……。


「コンちゃんが望むなら、俺は何だってしちゃうよ」
「ありがとう。コンは強い。強すぎて迷惑をかけるかもしれない」
「気にしないで。そんなコンちゃんも大好きだよ♡」


 コンちゃんは自分が弱いのを知っているけど、それを口にしてしまえば、きっと立ち上がれなくなる。
 いつまでも無鉄砲なコンちゃんで居られるように、俺が支えるよ。
 いずれ俺のお義父さんとお義母さんになる人に手を合わせながら誓いを立てた……。



 新しい称号『仲間想い』を取得しました。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

自習室の机の下で。

カゲ
恋愛
とある自習室の机の下での話。

明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄
恋愛
 あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。  奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。  ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。  *BL描写あり  毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました

市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。 私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?! しかも婚約者達との関係も最悪で…… まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

落ち込んでいたら綺麗なお姉さんにナンパされてお持ち帰りされた話

水無瀬雨音
恋愛
実家の花屋で働く璃子。落ち込んでいたら綺麗なお姉さんに花束をプレゼントされ……? 恋の始まりの話。

処理中です...