ようこそ、黄昏時へ

ひな菊

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第四話 しぐれ

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「次は、妖町~妖町ッス!!お降りの方は、ココで降りて下さいッス」

 サツイによる謎のアナウンスで、下車をする三人。

 三人が向かうのは、いきつけの居酒屋である「しぐれ」だ。そこの女将である「初花」という妖である「八千代(やちよ)」は、三人が人間ということを知っている唯一の妖である。

「いらっしゃい・・・あら、葉月ちゃんたちじゃない」

「やっほー!八千代さん!!」

「ふふ、いつもの場所で良いかしら」

 三人が座る場所は、八千代の前のカウンター。和が広がるこの居酒屋は、とても居心地がいい。葉月は、端っこから二番目の席に腰を下ろした。一番、端っこの席には先客がいたようなので、隣に座ることにした。

「本当に、あなた達はここがお気に入りなのね」

「うん!!だって、八千代さんのご飯美味しんだもん!!」

「あら、嬉しいこと言ってくれるのね」

「本当のことだもん!!」

 取りあえず、お通しのほうれん草のおひたしを出す八千代。

「お飲み物は、どうする?」

「じゃあ、私は緑茶で!」

「オレンジジュース」

 葉月と、鞍馬の注文を聞いてから八千代の視線は、自然と紅葉へと向かう。

「んーー。新しい、妖酒出ました?」

「最近は、はっとりが流行っているわね。でも、かなり強いわよ」

「じゃあ、それください」

 紅葉は、なんの迷いもなく八千代に頼む。

「紅葉兄さんは、お酒強いもんね!!」

「まぁ、酔ったことはないですね」

「ふふ、ちょっと待っててね」

「しぐれ」で、話す他愛もない時間が葉月は大好き仕方なかった。この時間が、ずっと続けばいいそう思っていた。

 その時だった。

『おい!!てめえ!!いい加減にしやがれ!!』

 外の方がやけに騒がしかった。葉月たちは、首を傾げてお店の中から顔をちょろっと出した。

 すると、そこには綺麗な女性を何人かの妖が取り囲んで、蹴ったり殴ったりしていた。

 それを見た葉月は、慌てて外に出る。

「おい!!葉月ッ!!」

 店を出ていった葉月を追う、鞍馬と紅葉。

「ちょっと!!」

「ンだ!?誰だてめえ・・・」

「女に暴力振るなんて最低よ!!」

「てめえに、関係ねえだろ!!!コイツは、妖町の吉原・・・華梅街の遊女なんだよっ!連れ戻して何が悪い!!」

 殴られて口から血を流している女性は、目を瞑り涙を流していた。余程、その場所に戻りたくないのだろう。

「丁度いい、お前もこっちに来い。売り飛ばしてやる」

「はっ!?やめてよっ!!」

 妖たちに、両腕を掴まれて身動きが取れない葉月は一生懸命抵抗しようとジタバタする。

 「ジタバタすんじゃねぇ!!」

 妖が手を上げた瞬間。

 ーーガンガンっ!!

 と、葉月を掴んでいた妖たちがどんどんと、倒れていく。

 彼女は、後ろを振り返るとそこにはいかにも不機嫌な鞍馬と、楽しそうに微笑んでいる紅葉の姿があった。
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