9 / 50
取引8件目 明かされる秘密
しおりを挟む
***
午後九時。
俺の部屋に重苦しい空気が漂っている。
「まずは話の前にこれを見てくれ」
「ポーチ?」
渡されたのは、少し大きめのポーチ。
中を開けてみろと言う指示で開けると、中からは色々と出てくる。
スマホ、財布、鍵、パスポート、年金手帳。
なぜ唄子はこんなものを出してきたのか、皆目見当もつかない。
「この鍵、家のじゃないな。というかこの財布百鬼さんの使ってたやつか?」
「私の家の鍵だ、それにその財布は私のだ」
「いつの間に鍵変えたんだろ、俺新しい鍵渡されてないぞ」
基本鍵を持って出ない俺には不要だが、さすがに鍵を新調したなら渡して欲しいぞ。
「身分証をみてくれ、財布の中だ」
「……!?」
身分証を見て俺は、驚きのあまり勢いよく唄子を見る。
唄子は静かに頷くのみ。
「これ、百鬼さんの身分証じゃん。あの人証明写真でも美人だな」
「んっ、そういうのはいい。パスポートを見てくれ」
促されてパスポートを見るが。
「これも百鬼さんのやつだ、やっぱパスポートの写真も美人だな」
「だからそういうのはいいんだ」
「ていうかなんで百鬼さんの身分証とか持ってるんだ?」
なぜ唄子が深刻な表情で百鬼さんの身分証を見せたのか謎すぎるが、そもそも持っていること自体が謎すぎるんだってことに今気付いた。
「嘘だろ? そこまで察しが悪い男だったか?」
「え、なにが」
「百鬼天音の身分証、百鬼天音のパスポート、百鬼天音の年金手帳。それを幻中唄子が所持できる理由はただ一つだろう」
なにを言ってるのかさっぱりわからない。
「つまり私は幻中唄子ではなく、百鬼天音ということだ」
「明日は休んで病院に行こう」
「病気じゃない! 信じがたい話だろうが、信じてくれとしか言えない。というか年金手帳まで出してるんだから疑う余地ないだろう」
目の前にいるのは唄子であって百鬼さん?
なにを言ってるんだこの妹は。
「私、百鬼天音は意識不明だろう?」
「そうだな、一向に目を覚ましてくれない」
いつ目を覚ましてくれるのか、俺は気が気じゃない。
「そして幻中くんの妹、幻中唄子は傷心の末心を病んでしまっただろう?」
「ああ、未だに元凶のあの会社だけは許せない」
妹は新卒入社先の会社で重度のパワハラとセクハラで病んでしまった。それまでは明るく元気な妹だったが、声を発することも、部屋から出る機会も減ってしまっていた。今までは。
「つまりそんな状況で、百鬼天音と幻中唄子はリンクした」
「一旦寝るわ」
「一通り聞いてからにしてくれ」
なにを言っているのかは分からないが、妹が厨二病に目覚めたと認識していいのかこれは。
「彷徨う私の魂を、唄子ちゃんは受け入れてくれたのだ。」
「えーっと……? つまり、ファンタジーみたいな現象が起きてるってことか?」
その通りだと言う唄子だが、やはり俺の脳は追いつかない。
「事の顛末を全て話そう」
言って唄子は、話が長くなるからとコーヒーとクッキーを取りに行った。
午後九時。
俺の部屋に重苦しい空気が漂っている。
「まずは話の前にこれを見てくれ」
「ポーチ?」
渡されたのは、少し大きめのポーチ。
中を開けてみろと言う指示で開けると、中からは色々と出てくる。
スマホ、財布、鍵、パスポート、年金手帳。
なぜ唄子はこんなものを出してきたのか、皆目見当もつかない。
「この鍵、家のじゃないな。というかこの財布百鬼さんの使ってたやつか?」
「私の家の鍵だ、それにその財布は私のだ」
「いつの間に鍵変えたんだろ、俺新しい鍵渡されてないぞ」
基本鍵を持って出ない俺には不要だが、さすがに鍵を新調したなら渡して欲しいぞ。
「身分証をみてくれ、財布の中だ」
「……!?」
身分証を見て俺は、驚きのあまり勢いよく唄子を見る。
唄子は静かに頷くのみ。
「これ、百鬼さんの身分証じゃん。あの人証明写真でも美人だな」
「んっ、そういうのはいい。パスポートを見てくれ」
促されてパスポートを見るが。
「これも百鬼さんのやつだ、やっぱパスポートの写真も美人だな」
「だからそういうのはいいんだ」
「ていうかなんで百鬼さんの身分証とか持ってるんだ?」
なぜ唄子が深刻な表情で百鬼さんの身分証を見せたのか謎すぎるが、そもそも持っていること自体が謎すぎるんだってことに今気付いた。
「嘘だろ? そこまで察しが悪い男だったか?」
「え、なにが」
「百鬼天音の身分証、百鬼天音のパスポート、百鬼天音の年金手帳。それを幻中唄子が所持できる理由はただ一つだろう」
なにを言ってるのかさっぱりわからない。
「つまり私は幻中唄子ではなく、百鬼天音ということだ」
「明日は休んで病院に行こう」
「病気じゃない! 信じがたい話だろうが、信じてくれとしか言えない。というか年金手帳まで出してるんだから疑う余地ないだろう」
目の前にいるのは唄子であって百鬼さん?
なにを言ってるんだこの妹は。
「私、百鬼天音は意識不明だろう?」
「そうだな、一向に目を覚ましてくれない」
いつ目を覚ましてくれるのか、俺は気が気じゃない。
「そして幻中くんの妹、幻中唄子は傷心の末心を病んでしまっただろう?」
「ああ、未だに元凶のあの会社だけは許せない」
妹は新卒入社先の会社で重度のパワハラとセクハラで病んでしまった。それまでは明るく元気な妹だったが、声を発することも、部屋から出る機会も減ってしまっていた。今までは。
「つまりそんな状況で、百鬼天音と幻中唄子はリンクした」
「一旦寝るわ」
「一通り聞いてからにしてくれ」
なにを言っているのかは分からないが、妹が厨二病に目覚めたと認識していいのかこれは。
「彷徨う私の魂を、唄子ちゃんは受け入れてくれたのだ。」
「えーっと……? つまり、ファンタジーみたいな現象が起きてるってことか?」
その通りだと言う唄子だが、やはり俺の脳は追いつかない。
「事の顛末を全て話そう」
言って唄子は、話が長くなるからとコーヒーとクッキーを取りに行った。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
ねえ、私の本性を暴いてよ♡ オナニークラブで働く女子大生
花野りら
恋愛
オナニークラブとは、個室で男性客のオナニーを見てあげたり手コキする風俗店のひとつ。
女子大生がエッチなアルバイトをしているという背徳感!
イケナイことをしている羞恥プレイからの過激なセックスシーンは必読♡
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる