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二食目 カリフォルニアロール
しおりを挟む2023年1月7日(土) 昼ご飯
「やっぱり寿司と言えばカリフォルニアロールよね~♪」
カリンはマグロよりサーモンよりイクラよりエビより、カリフォルニアロールが好物である。
店によって巻かれる具材は様々だが、どこで食べてもその店の個性が出ていて興味深い。断面に渦巻き模様を作る海苔は、他の巻き寿司とは似て非なる個性であり、味と食感に独特の面白みを与えている。それから何といっても、宝石のように華やかなトビコのお化粧が、カリフォルニアロールを美術品たらしめるとともに、食欲をそそる。
しかしカリフォルニアロールというものは、日本の寿司屋では決して日の目を浴びることのない、申し訳程度にメニューの後ろの方に載っているだけの存在である。
「ああ、こんなにおいしくて、飽きることもなくて、コスパもいいのに」
カリンは嘆きつつ、カリロー(注1)を二口(注2)で食べる。
エビフライの油分のジャンク感と、プリッとした身の食感と、ふわり、しっとりとした上品な卵がコラボしている料理なんて、カリロー以外に、どこで味わえようか? そして、ときにしつこく口の中に残るトビコを一粒一粒潰すことの楽しさよ。
ところで、エビフライなどというふざけた邪道の食材を巻いているくせに、なぜこうも美味いのか? カリフォルニアロールだからなのか? と哲学しつつ、温かい緑茶をすすって、口の中のトビコを胃に落とす。
「作るのに手間がかかりそうだし、お店的にはあんまり作りたくないのかしら」
もう一度、カリローをタッチパネルから注文する。カリフォルニアロールというものは、なぜか回転寿司のまわるレーンには流れてこないので、わざわざ注文する必要があるのだ。
「あたし的には、アボカドかサーモンが入ってるとポイント高いんだけどな~」
頬杖を突いて気長に待つ。ふとテーブルに置かれているお客様アンケートに目を留め、ボールペンを取ると、自由記述蘭にカリローへの愛を綴った。
「これでよし、と」
また一つ、つまらない文章を書いてしまった、とカリンは一人悦に浸った。
注1 カリローとは、カリフォルニアロールの略語。
注2 カリンは、カリフォルニアロールを一口で頬張り、全ての具材の宇宙的調和を口の中で再現して味わうべきだと考えているが、いかんせん、お口が小さくて一口では入らないのである。
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