【完結】働くご主人様と、働かないメイドたちの、ささやかな日常

赤崎火凛(吉田定理)

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06. フーカさんと、スマホ

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「フーカさーん!」

 俺はキッチンで料理をしているフーカさんを見つけた。
 フーカさんは、鍋をかき混ぜるレードルを持ったまま振り向く。
 今日もクラシカルなロングスカートのメイド服を少しも乱れなく着こなし、お仕事にあたっている。まさにメイドの鑑だ。
 たぷんたぷんな胸と、大きな垂れ目がステキな美人さん。

「シャノン様、すみませんが、まだお夕飯の支度ができていないので、もう少しお待ちいただけますか」
「そうじゃなくて、ちょっと頼みがありまして」
「なんでしょうか?」

 フーカさんが首をかしげる。もう22歳くらいなのに、そんな子供らしい仕草が似合う。
 俺は声をひそめて耳打ちした。

「驚かないで聴いてください。食事のあと、とある部屋でオナニーしてほしいんです」
「はえっ!? お、おな……?」

 フーカさんは赤面して目を泳がせた。初心(うぶ)なところが可愛いぜ……。

「オナニーです。一人えっちとも言います。やっていただけますか?」
「あの、えーと……」
「今日はそういう気分じゃないですかね?」
「そうじゃないんですが、よく分からなくて」
「そうじゃないということは、今もムラムラしているということですか?」
「そういうわけでも……」

 困ってる、困ってる。
 いきなりこんな話されたら、まあ、こうなるよね。セクハラで訴えられても文句は言えない。
 でも安心してくれ。
 この館のメイドたちは、俺への好感度が全員MAXだから問題ないんだ。

「ダメですか? オナニー嫌いですか?」
「えっと……今晩ですか?」
「はい、可及的速やかにオナニーにふけっていただけると幸いでして!」

 俺は熱を込めて力説した。
 俺がオナニーオナニーって連呼してるものだから、フーカさんはさっきから居心地が悪そうだ。
 だけどそれで、もじもじしたり、恥ずかしがったりしてるところが、いいんだ。

「……見るんですか?」
「いい質問ですね! ですが今晩は見ません。フーカさんには、あくまでも密室で、一人でオナニーしていただきたいんです」

 俺の返答を聞いて、フーカさんは意外に思ったようだ。
 そりゃあ、正直言ってフーカさんのオナニーを生で見学したい。
 フーカさんも俺のそんな性分を理解しているから、当然、じろじろ見られながらオナニーさせられると想像していたんだろう。
 違うんだな、これが。

「……分かりました」
「よっしゃああああッ!! フーカさん最高っす!!」
「なにがヨッシャーなの?」

 金髪ツインテのリサがキッチンにやってきて、歓喜する俺に尋ねた。
 リサはすぐ嫉妬するからな。
 訝(いぶか)しむような目で、俺をじろじろと見ている。
 フーカさんは、なんと答えていいか分からない様子で、あたふたしていた。

「秘密だ。俺とフーカさんのな」
「うっわ。うざ……」

 俺たちを素通りして夕飯の準備を手伝い始めるリサ。
 俺はフーカさんにもう一度、耳打ちする。

「夕食のあと、詳しく話すんで、よろしくお願いします」


***


 翌朝、俺はフーカさんを誘って、例の部屋に一緒に行った。
 例の部屋というのは、昨晩、フーカさんにオナニーをしてもらった部屋だ。
 どの位置に座って、どっちを向いて、どんなふうにオナニーをしてほしいか、詳しく指定してある。
 フーカさんがその通りにやってくれていたら、いいものが出来上がっているはずなのだが。

「では、行きましょう。昨日、フーカさんがハレンチなことをしていた部屋へ」
「は、はい……」

 ドアを開けて入っていく。
 ベッドやテーブル、棚が置かれている、普通の部屋だ。
 ベッドの隣の棚の上に、今回の異世界アイテムがセッティングしてある。

「これがスマホと呼ばれるマジックアイテムです」
「スマホ、ですか」
「そうです。さてさて、どんなのが撮れてるか、一緒にチェックしましょう」
「?」

 フーカさんは当然ながら何も分かっていない。
 スマホの使い方を知っているのは、俺だけなのだから。
 俺は手のひらサイズの平べったいマジックアイテムを手に取り、指で操作する。

「フーカさん、これは過去を閉じ込めるアイテムです。つまり」
「つまり?」
「うまくいっていれば、昨日のハレンチなフーカさんが、この中に閉じ込められているんですよ」
「っ……!?」

 フーカさんが耳まで真っ赤になった。
 なるほど、密室だからと思って、よほどハレンチなことをしてしまったに違いない! 素晴らしい!

「というわけで、二人で鑑賞しましょう」
「わたしも一緒に見る必要あるんでしょうか」
「あります。生身の真面目なフーカさんと比較して楽しみながら見るんです」
「シャノン様の趣味は、ときどきわたしには、よく分かりません」
「まあまあ。では、再生っと。退屈なところは飛ばしますね」

 俺とフーカさんは、並んで椅子に腰かけて、テーブルの上に置いたスマホを眺める。
 最初はただ誰もいない部屋の様子が映っているだけだから、さっさと先へ進めた。

 フーカさん登場!

「あっ、わたしです! ほんとにわたしですよ!? こんなに小さい! すごい魔法です!」
「はしゃいでるフーカさんも可愛いっすね」
「あ、失礼しました。つい興奮してしまって」
「これからもっと興奮しますよ。ぐへへ……」

 いかんいかん、ヤバイ顔になっていたぜ。
 フーカさんがスマホの中で、きょろきょろと辺りをうかがいながら、ベッドに座った。
 所在なさげに部屋の中を眺めたり、シーツの皺を直したりしている。
 やがて靴を脱いで両脚ともベッドの上に載せて、何やらもぞもぞと落ち着きない様子。
 自分の体を気にするような素振り。

「あ、あの、シャノン様」
「何ですか?」
「これ、もしかして、最後まで……全部が……」
「もちろんですよ」

 やがてスマホの中のフーカさんが、メイド服の上から自分の胸の辺りを撫でる。
 俺が事前に指示しておいた通り、目線は常にこちらを向いていた。
 そしてついに……フーカさんがこちらに向かって、脚を左右に大きく開いた。
 ロングスカートのせいでパンツは拝めなかったが、逆に見えないほうがエロい気がする。

「こ、これ以上はだめです、シャノン様」
「ダメじゃないっすよ、むしろイイッ! いいですよ、昨日のフーカさん!」

 スマホの中のフーカさんがスカートをまくりあげたので、パンツと太ももが見えるようになった。
 脚の間へと手を伸ばし、パンツの布の上から大事なところをなでなでする。
 その指の動きも、パンツに寄った皺も、くっきりと保存されている!

「ああ、わたし、こんなことになるなんて……」
「いいぞ! もっとです! もっと大胆に! 俺は乱れたフーカさんが見たいんだ!」
「うぅ……」

 隣のフーカさんが顔を真っ赤にして、もだえている。泣きそう。正直、泣いてるところも見たい。
 スマホの中のフーカさんはというと、ゆっくりめに胸と陰部とを刺激し続ける。
 と思いきや、パツパツの胸のボタンを外していく。
 一つボタンを外すごとに、あふれる乳。
 そして、ぼろん、と転がり落ちた二つのメロン。
 スマホの中のフーカさんの乳と、リアルフーカさんの乳とを、交互に見比べる。

「おぉ……。やっぱでかい……。いつも見てるけど、こうやって覗き見するのは新鮮でたまらん……」
「そんなに顔を近づけないでください」
「いや、むしろ舐めたい」
「シャノン様!」

 フーカさんが下着を取り去って、完全におっぱいを露出したところで、俺はスマホをぺろぺろしようとしたが、フーカさんに怒られたので、少しだけスマホから顔を離した。
 いかんいかん、つい本性が出てしまった。
 スマホの中のフーカさんは乳首を指先で小刻みに弾きながら、パンツを縦にすりすりする。

「あっち向いたり、こっち向いたりで、スマホの中のフーカさんはなんだか落ち着きがないですね。感じてたんですか?」
「知りません」
「こういう触られ方が好きなんですか?」
「うぅ……分かりません……」
「もしかして、自分のハレンチな姿を見て、リアルフーカさんも興奮してます?」
「それは……」

 言い淀むフーカさん。
 真面目だから嘘が吐けないのだ。
 つまり興奮してるらしい。

「このフーカさん、イキそうになってますね。俺には分かります」
「言わないでください……」
「あ、イッた」
「だから言わないでください……」

 両手で顔を覆って、めっちゃ恥ずかしそうに、小さな声で呟くリアルフーカさん。
 くそっ! なんて可愛いんだ!
 もっと虐めたくなってしまう!
 っていうか、どっちを見ればいいの!?

 このあと、言うまでもなく本番を楽しみました。


***


「…………」

 フーカさんはどう考えても性格的に麻雀に向いていない。
 度胸はないし、すぐ顔に出るし、ブラフに引っかかるし。
 なので戦績もあまりよろしくない。
 
 さて、フーカさんのツモは……。

「……!」

 あーあ。顔に出てるぞ。いい牌が来ました、って。
 面前(めんぜん)でのテンパイ。
 待ち牌の選択がいろいろできる面白い形。
 フーカさんは考えて、迷って迷って……牌を曲げた!

「リーチです」

 だけどその待ちは悪いよ!?
 なんで三面待ち捨ててシャボに受けちゃったの!?
 あがれる牌は、あと一枚しか残ってないんだよ!?
 まさか気づいてない!?

 見学している俺があれこれ言うのは無粋なので、あとで教えてあげよう。

「フーカのリーチなんて怖くないわ」

 親は無筋を切り飛ばしていく。
 さらに対面(トイメン)も強気の打牌で、追っかけリーチ!
 舐められてるし、大したことない手だってバレてる……。
 実際、リーチとドラ一つだけの大したことない手、かつ悪形なのだから、こいつらの押しは正解なわけだが。

 しかし、フーカさんのツモ番で。

「ツモです! リーチ、イッパツ、ツモ、ドラ!」
「えええッ!?」
「なにその待ち!?」
「そこイッパツで引いてくるの!?」

 三人から点棒を受け取るフーカさん。
 ふう、危なかった、っていう顔をしているけど、実際めちゃくちゃ危なかったよ!

 んで、なぜかフーカさん以外の三人が、俺をじーっと睨んでいる。

「え、なに? 俺、また何かやらかした?」

「やったんだ?」
「やったでしょ」
「やりましたね」

「ま、まあな。だってこの館のご主人様だし」

 フーカさんの頬が赤らんで、他の三人の目が冷たく細められた。
 なんだ、みんな俺とやりたいのかー。
 正直に「ご主人様とイチャイチャ、チュッチュしたーい♪」って言ってくれれば、呼ぶのに。

「んじゃ、今晩、三人まとめてで」

「死ね」
「うんこ」
「性欲モンスター」

 あれっ? 高感度MAXのはずなんだが。
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