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『手紙と制服』 約1200文字
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「聞いてよ。この前、服を整理してたらさ、高校の制服を見つけたんだ」
「懐かしいね。もう10年も前かぁ」
「うん、そうなんだけど、そうしたらポケットから変な手紙が出てきてね」
「変な手紙?」
「うん、いつ誰が入れたのか、覚えてないし分からないんだ」
「へえ、どんな手紙なの?」
「すごく短くてさ、『好きだ』とだけ書いてあって」
「え? それって告白じゃん!」
「まあ、たぶん、そういうことになるね」
「誰からなの? 名前とか、何かヒントは?」
「『未来のあたし』って書いてあった」
「おまえかよ」
「いや違うってば。あたしそんな手紙、書いてない」
「ホントに? 自分でポケットに入れて忘れたんじゃないの?」
「そんなことしたら、忘れるわけないじゃん」
「それもそうか。じゃあ誰?」
「未来から来たタイムトラベラーのあたしが、17歳のあたしに何かを伝えようとしたとか?」
「急にファンタジーな話になったな。でもその内容が『好きだ』なのか? そんなことを伝えてどうするんだ?」
「モテることの気持ち良さを味わわせたかったとか」
「将来、モテた経験がないせいで絶望して引きこもりにでもなるのか? というか、自分にモテても仕方ないだろ」
「いや、未来の世界は、クローンのあたしがいっぱいいて、あたしはあたしにモテてるのかも。だから、あきらめないで強く生きろってことかも」
「その解釈は無理があるだろ。例えば、未来から来たタイムトラベラーのおまえは、告白のセリフが思いつかなくて悩んでいるおまえにアドバイスを送ったとか、どう?」
「ストレートに『好きだ』って言え、っていうこと?」
「そういうこと」
「そもそもあたし、高校時代、告白のセリフで悩んだことなんてないし。告白しようと思ったこともないし、モテなかったから」
「そうだな」
「もしかして、未来の世界では、男とか女とかじゃなく、制服と恋愛したり結婚したりするようになってるのかも」
「意味が分からない」
「物と恋愛したり結婚したりするってこと。手紙は制服への愛の告白」
「わざわざタイムトラベルして、古い制服に手紙で愛を告白したって? 無理があるだろ」
「じゃあ、未来の世界では制服に高度なAIが組み込まれて、制服が自由意志を持って普通に暮らしていて、タイムトラベルしてあたしに告白しようとしたけど声が出せないから手紙で告白したっていうのはどう?」
「どうって聞かれても、本気でそんな未来があると思ってる? 制服に自由意志を持たせるなら声くらい出せるようにしてやれよ」
「ないね」
「ないだろ」
「実はあたしのことが好きな男子が、あたしに手紙で告白したんだけど、名前を書く勇気がなくて、つい出来心で『未来のあたし』を名乗ってはぐらかした説」
「他の説と比べると、だいぶ現実的に思えるね」
「そうだね。なんにしても、地球に少なくとも一人はあたしのこと好きな誰かがいるってこと」
「おまえ、幸せ者だな」
「懐かしいね。もう10年も前かぁ」
「うん、そうなんだけど、そうしたらポケットから変な手紙が出てきてね」
「変な手紙?」
「うん、いつ誰が入れたのか、覚えてないし分からないんだ」
「へえ、どんな手紙なの?」
「すごく短くてさ、『好きだ』とだけ書いてあって」
「え? それって告白じゃん!」
「まあ、たぶん、そういうことになるね」
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「『未来のあたし』って書いてあった」
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「いや違うってば。あたしそんな手紙、書いてない」
「ホントに? 自分でポケットに入れて忘れたんじゃないの?」
「そんなことしたら、忘れるわけないじゃん」
「それもそうか。じゃあ誰?」
「未来から来たタイムトラベラーのあたしが、17歳のあたしに何かを伝えようとしたとか?」
「急にファンタジーな話になったな。でもその内容が『好きだ』なのか? そんなことを伝えてどうするんだ?」
「モテることの気持ち良さを味わわせたかったとか」
「将来、モテた経験がないせいで絶望して引きこもりにでもなるのか? というか、自分にモテても仕方ないだろ」
「いや、未来の世界は、クローンのあたしがいっぱいいて、あたしはあたしにモテてるのかも。だから、あきらめないで強く生きろってことかも」
「その解釈は無理があるだろ。例えば、未来から来たタイムトラベラーのおまえは、告白のセリフが思いつかなくて悩んでいるおまえにアドバイスを送ったとか、どう?」
「ストレートに『好きだ』って言え、っていうこと?」
「そういうこと」
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「そうだな」
「もしかして、未来の世界では、男とか女とかじゃなく、制服と恋愛したり結婚したりするようになってるのかも」
「意味が分からない」
「物と恋愛したり結婚したりするってこと。手紙は制服への愛の告白」
「わざわざタイムトラベルして、古い制服に手紙で愛を告白したって? 無理があるだろ」
「じゃあ、未来の世界では制服に高度なAIが組み込まれて、制服が自由意志を持って普通に暮らしていて、タイムトラベルしてあたしに告白しようとしたけど声が出せないから手紙で告白したっていうのはどう?」
「どうって聞かれても、本気でそんな未来があると思ってる? 制服に自由意志を持たせるなら声くらい出せるようにしてやれよ」
「ないね」
「ないだろ」
「実はあたしのことが好きな男子が、あたしに手紙で告白したんだけど、名前を書く勇気がなくて、つい出来心で『未来のあたし』を名乗ってはぐらかした説」
「他の説と比べると、だいぶ現実的に思えるね」
「そうだね。なんにしても、地球に少なくとも一人はあたしのこと好きな誰かがいるってこと」
「おまえ、幸せ者だな」
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