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『新米審問官』 約900字 PIXIV企画用
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自分の部屋で寝ていたはずなのに、目を覚ますと、教会のようなところにいた。天使のような悪魔のような、ぞっとするほどの美貌の少年が、壇上から私を見下ろしていた。白髪に真紅の瞳、まとっている神々しい雰囲気は、人間を超えた存在のように思われた。
「罪を告白せよ」少年が透き通った声で命令した。私はわけが分からず、反射的に「いいえ、何も罪を犯した記憶はありません」と答えた。すると少年はなぜかうろたえ始めた。「ホ、ホントに? 何かあるでしょ?」急に年相応の少年らしい話し方になったが、私はそれを気にせず、「いや、ひとつも思い浮かびません」としらを切った。「いやいやいや。じゃあどうしてここに来たの?」「私が知りたいくらいですよ、ここはどこなんですか」「ここは天界裁判所で、僕は審問官だ。新米のな」「私は死んだのですか。それで、天国へ行くか地獄へ行くかをここで判断されるということですか」「お前が死んだかどうかは知らない。だけど天国へ行くか地獄へ行くかは僕が決める」「それってやっぱり死んだっていうことですよね」「さあ、そういう情報は何ももらってないから僕にも分からない」私は心配になってきた。この審問官はポンコツなようだし、やたらと若く見えるし、大丈夫なのか。「早く罪を告白するんだ」少年は焦れているようだった。「そう言われても、悪いことをした記憶はないのですが」「それじゃあこれ以上の取り調べのしようがないじゃないか」「私に文句を言われても困るのですが」「くっそー、いきなり罪のない人間が召喚されてくるなんて聞いてないぞ。どうすればいいんだよ。たいていの人間ってのは、同族殺しとか盗みとかをやっているものじゃないのか?」「そんな人間は少数だと思いますが」少年は頭を抱え込んでしまった。しかし私にはどうすることもできない。どうでもいいから早く審判を下して、私の行き先を決定してほしい。「もう帰ってもいいですか」「ちょっと待って。師匠にテレパシーで聞いてみるから」「お願いします」数十秒後、少年が「うん、帰しても問題ないってさ」「じゃあ帰ります」「うん、なんか、悪かったね」律儀に頭を下げる美少年。そして、はっと気がつくと、私は自分の部屋の、いつものベッドの上に戻っていた。
「罪を告白せよ」少年が透き通った声で命令した。私はわけが分からず、反射的に「いいえ、何も罪を犯した記憶はありません」と答えた。すると少年はなぜかうろたえ始めた。「ホ、ホントに? 何かあるでしょ?」急に年相応の少年らしい話し方になったが、私はそれを気にせず、「いや、ひとつも思い浮かびません」としらを切った。「いやいやいや。じゃあどうしてここに来たの?」「私が知りたいくらいですよ、ここはどこなんですか」「ここは天界裁判所で、僕は審問官だ。新米のな」「私は死んだのですか。それで、天国へ行くか地獄へ行くかをここで判断されるということですか」「お前が死んだかどうかは知らない。だけど天国へ行くか地獄へ行くかは僕が決める」「それってやっぱり死んだっていうことですよね」「さあ、そういう情報は何ももらってないから僕にも分からない」私は心配になってきた。この審問官はポンコツなようだし、やたらと若く見えるし、大丈夫なのか。「早く罪を告白するんだ」少年は焦れているようだった。「そう言われても、悪いことをした記憶はないのですが」「それじゃあこれ以上の取り調べのしようがないじゃないか」「私に文句を言われても困るのですが」「くっそー、いきなり罪のない人間が召喚されてくるなんて聞いてないぞ。どうすればいいんだよ。たいていの人間ってのは、同族殺しとか盗みとかをやっているものじゃないのか?」「そんな人間は少数だと思いますが」少年は頭を抱え込んでしまった。しかし私にはどうすることもできない。どうでもいいから早く審判を下して、私の行き先を決定してほしい。「もう帰ってもいいですか」「ちょっと待って。師匠にテレパシーで聞いてみるから」「お願いします」数十秒後、少年が「うん、帰しても問題ないってさ」「じゃあ帰ります」「うん、なんか、悪かったね」律儀に頭を下げる美少年。そして、はっと気がつくと、私は自分の部屋の、いつものベッドの上に戻っていた。
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