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水嶋ゆらぎ(無口で無表情、大人っぽい金髪ロングちゃん。女医さんの魔の手で)

水嶋ゆらぎアフター①

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 夕方。リンネの診療所の午後の診療が終わり、患者たちが全員帰った後のこと。
「こんばんは」
 と裏口から診療所を訪ねる者がいた。人目を忍んで、声は控えめ。
 水嶋ゆらぎ。高校二年生。
 落ち着いた上品な雰囲気をまとった、金髪の美少女である。制服の上からでも、出るところが出て、引っ込むところは引っ込んだスタイルの良さが見て取れる。学校帰りに立ち寄ったというふうだ。
 ややあって裏口のドアが開き、白衣の女性・リンネがゆらぎを迎え入れた。
「いらっしゃい、ゆらぎちゃん。さあ、入って」
 リンネは二十代後半くらいの、大人の色気を孕んだ美女だ。彼女が浮かべた優しげな笑みは、どんな男でも勘違いを起こさせるような魅力があった。豊満な胸元はシャツがパツパツに膨らみ、腰回りはキュッとくびれ、タイトスカートからは、黒タイツに包まれた脚がすらりと伸びる。美貌、スタイル、医者という地位・・・他人が羨むものは何でも持っているに等しい、自信にあふれた美女。
「はい、失礼します」
 何度となくそうしているのだろう。ゆらぎは慣れた様子で中に入っていった。リンネがそっとドアを閉めてカギをかけた。
 ゆらぎは診察室の患者用の丸椅子に腰掛け、足元にカバンを置いた。蛍光灯に照らされた頬はほんのりと赤みが刺している。身じろぐように太ももを擦り合わせたのは、緊張と期待の表れだ。
 リンネはゆらぎに歩み寄り、肩に手を置き、腰をかがめ、耳元で囁く。
「また来てくれて嬉しいわ。ねえ聞いて。ついにあれが完成したのよ」
 リンネの妖艶な声には、年齢に似合わずはしゃぐような色がにじみ出ていた。
「ほ、ほんとうですか」
「ええ、すごいわよ。ゆらぎちゃんにも、すぐに使ってほしいのだけど、まあ、まずは落ち着きましょう。紅茶でいいかしら?」
「はい、いつも、ありがとうございます」
 リンネはいつも以上に機嫌が良さそうで、鼻歌など口ずさみながら、棚からティーバッグを取り出し、ポットからお湯を注いでいた。
 ゆらぎは紅茶を待っている間に、リンネが完成させたものについて想像して、そわそわするのだった。
「これが完成品よ」
 傍らのデスクに二人分の紅茶のカップを置いて、リンネは引き出しから小さな茶色の瓶を取り出して見せた。中で液体が揺れる。
「一滴で感度10倍。しかも、あれが生えてくる」
「!?」
 ゆらぎは目を見開いて、その瓶を穴の開くほど見つめてしまった。『あれ』とは、つまり、以前妖魔に襲われてゆらぎの股間に生えてしまったおぞましいモノ。もちろん、あれから数ヶ月が経った今、ゆらぎの体は完全に正常に戻っているが。
 悪夢のようないくつかの出来事を思い出してしまい、ゆらぎは身震いした。
「安心して。この薬は妖魔の毒を弱化させて、無害にしてあるの。効き目も数時間しか保たないわ」
 リンネは興奮気味に説明した。
「すごいでしょ?」
「は、はい」
 ゆらぎは困惑気味に答えた。
「でも、私にはちょっと」
「遠慮しないでいいのよ。最高の体験ができるわ」
 リンネは瓶を置いて、ゆらぎの肩に両手を置いた。
「ゆらぎちゃんはあんなことがあったから、不安を感じている。そうでしょ?」
 胸中を言い当てられ、ゆらぎは観念して頷いた。妖魔に犯されたあの日のことを思い出さずにはいられない。今日はやめておこうか、体調が悪いとか言って帰ろうか、そんな考えが頭をよぎる。
 ゆらぎの不安はかすかな震えとなって、リンネの手のひらに伝わる。
「安心して、ゆらぎちゃん。実はこれは、治療の一環でもあるの。あなたの体はすでに元に戻った。けれど心はまだ、あの日に囚われている。そのカギが男根なの」
 どういうこと?
 リンネの優しい囁きと、手のひらの温かさが、ゆらぎの震えを鎮めていく。
「あなたにとって、男根は最悪な記憶の象徴になっている。だからこそ、男根を伴う幸せな記憶で、最悪な記憶を上書きするのよ。私と一緒にね。そうすることによって、あなたは悪夢から本当の意味で解放される。妖魔に怯えることなく、普通に生きていける」
 リンネの言っている治療法の理屈は、なんとなく分かった。だが、安全な薬を使うとはいえ、再び自分の体に忌まわしき男根を生やすなんて。
「ゆらぎちゃん、立てる?」
 呼びかけられ、ゆらぎは自分が下を向いていたことに気付く。立ち上がると、リンネの奇しくも美しい瞳に、自分が映っていた。
 ふわりと空気が動いたのは、リンネがゆらぎを正面から抱きしめたからだ。
 ゆらぎはハッとして息を飲んだが、抵抗はしなかった。独特な、しかし嫌ではない白衣の香り。豊満な、大人の胸に顔を埋める。手のひらが頭を後ろから撫でてくれる。
「大丈夫よ。あなたは大丈夫」
 ドキドキするのに落ち着くのは、どうしてだろう? いつまでも、こうしていたい。
 ゆらぎの下腹部の深い場所で、じんわりとした熱が疼いていた。
「リンネさん、私、その治療、受けたいです」
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