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16、優しいキス

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 パチン、と早苗が指を鳴らしたときだった。
 その音がスイッチだとでもいうように、桐葉の体の奥に小さな火が灯った。下腹部が疼き始め、もじもじと足が動いてしまう。
(なに? 急に体が……)
 微熱はだんだんと大きな炎になり、はっきりと全身が火照り、汗ばむようになった。と同時に、下腹部の辺りに強烈な熱の固まりと、何かが突き上げてくるような感覚が生まれた。
(うそ……。これって……)
 不安が今まさに形を成そうとしているところだった。陰豆がぶくぶくと盛り上がり、肥大化していく。太く長く雄々しい姿へと変わっていく……。桐葉が最も恐れていた、最も見たくなかった、最も忘れたかったもの……。
「いや……やめて……お願い……」震える声で懇願しても、止まらない。
 男の……男よりもたくましいものが、そそり立った。
「ひどい……。こんなのって……」
 汚らわしいそれは、桐葉の気持ちとは反対に、燃えるように熱く、びくびくと震える。それを見た凜と雪菜が指先でその先端に触れた。
「んっ……」
「今、いやらしい声がしましたね」雪菜はそばにひざまずいて、愛おしそうに撫でる。
「出たいって言ってる」凜も同じようにひざまずき、二人で両側から桐葉を挟む形となった。
「出してあげますね」雪菜は上着をはだけさせた。控え目だが品のいい乳房。
「出してあげよう」凜も上着をはだけさせた。こちらは豊満で迫力がある。
「なに……する気なの?」
「……こうするんです」
 両手で寄せた四つの乳房が男のものに両側から近づき……完全に包囲した。凜と雪菜は互いに鼻がくっ付きそうになりながら、ゆっくりと乳房を上下に動かしていく。唾を垂らして潤滑剤にし、時折左右にも動かしたりして変化をつける。
「んん……♡」
(なに、これ……。柔らかくて……気持ちよすぎる……。声が、我慢できない……!)
「いやぁ! やめて……。んっ♡ だめ……。はぁう♡ うぅ♡」
「やめませんよ」
「会長が何も出せなくなるまで、やめない」
 時にたぷたぷと波に揺れるように、かと思えば凜の巨乳がぐにゅうと変形するくらい埋もれさせられる。
「桐葉さん♡」
「会長♡」
 耳元で囁き、耳をなめる唾液の音。姉妹に包み込まれた肉竿は、逃げようと腰を引いても逃がしてくれない。抵抗する術もなく、ひたすらに柔らかな乳肉に抱かれ揉みしだかれ、快感を高められていく。
「あっ♡ んぁぅ♡ うぅ♡ だめっ♡ もうっ♡ イクッ!! …………ッッ!!!」
 濃厚な白濁汁が噴射され、凜の胸に濁った泉を作り……雪菜の頬を汚した。絶頂の瞬間に流出した霊力はなかったが、桐葉は精神的に追い詰められていた。
「まだびくびくしてる」
 四つの胸に挟まれたまま、痙攣する肉竿。
(わたし、あっという間に……)
「桐葉さん、とっても可愛いですよ」雪菜が先っぽをつんつんと人差し指でつつくと、そのたびに桐葉の全身が波打ってしまうのだった。「だから、もっと可愛い姿を、私たちに見せてください」
 休ませてもらうこともできず、すぐに次が始まった。つまり四つの胸が、精子でさらにぬるぬるになって、肉竿を愛撫する。ほどよい圧力と温かさと、何ともいえぬ柔肌の感触に……桐葉の肉竿は限界までそそり立ち、肥大し、張り詰める。桐葉は唇を真一文字に引き結んで、声が漏れるのを必死にこらえるが、努力はむなしく、はしたない声で喘ぎ、またもや絶頂を迎えてしまう。二度目の射精も濃厚な精子をたっぷりと吐き出した。桐葉は虚ろな目をして、緩み切った口端からよだれを垂らして、快楽の波が去っていくのを待つしかない。だが波が去り切る前に、凜と雪菜がまた四つの胸をぐいぐい押し付け、上下に震わせ、刺激を追加してくるから、重なり合った大きな波に襲われる。
「だめっ! 待って! んあっ♡ ちょっと! 休ませて! んんッ♡ あっ♡ だめぇ♡ もう来るっ……♡ きちゃうぅぅぅぅぅぅっ!!」
 三度目の射精。無論、待ってはくれない。今度は触手も攻めに加わり、桐葉の乳房を、充血して尖った乳首を、秘所を、蜜穴の奥を……同時に攻め立てる。
「いやああああっ! やめてええええ! おかしくなる! んあっ♡ あっ!! ああああああああああああっ♡」
 激しい痙攣。桐葉の身体は別々の生き物の集合体であるかのように、そこかしこがビクビク勝手に痙攣してしまって、全く意思でコントロールできず、めちゃくちゃに走り回る電撃のせいで自分の身体だという感覚さえもなくなっていく。
 ようやく連続射精が中断されると、桐葉はもうぐったりと疲れて果ててしまって、呆然として、呼吸しているだけで何も考えることができなかった。
「会長がここまで諦めが悪いとはね」凜が呆れたように笑う。
「自分の心から目をそらしてはダメですよ、桐葉さん」雪菜が優しく諭す。「今、ここにある現実を受け入れる。過去でも未来でもない。今を生きている人って、素敵じゃありません?」
「今を……生きる……」桐葉はかすれた声で繰り返した。
「そうです。桐葉さん、今まで辛かったでしょう? 私も柏崎家の人間だから、少しは分かりますよ。脈々と続く家の歴史と未来を背負って生きるのは、苦しかったでしょう?」
 雪菜の言葉が、桐葉のむき出しの心にすーっと染み込んでいった。するとどうしてか、流したことのない種類の涙がぼろぼろと溢れてきた。
 雪菜の声は昔の母のように優しく響く。「もういいんです。あなたはこれから、私たちと一緒に今を生きるんです。今、ここにあるものを……この瞬間に感じるものを……受け入れる。たったそれだけでいいんです」
 雪菜と凜がまとっていた服を全て脱ぎ去って、肌を寄せ、肌に触れ、そっと寄り添う。その体温、そのぬくもり、その人間らしさ、その柔らかさ、その安心感……。桐葉は涙が止まらない。雪菜が桐葉に口づけする。優しい優しいキス。
 そして凜も二人の肩に手を回し、三人の舌と舌と舌が……絡まり合う。
「……っ」
 不意に誰かの指が乳首に触れた。桐葉が腕を動かすと、誰かの乳房があった。桐葉は命を確かめるように、その肉をつかむ。三人を触手のベールが包み込む。触手は集まって編み込まれ揺り篭のようになって、小さな世界を作った。
 誰かの手が、まだ勃起の止まない肉竿を撫でている。誰の手でもいい、と桐葉は思った。
「会長、吸ってほしい」
 凜に求められ、乳首に吸い付いた。舌の上で転がし、凜の反応を見ながら、最も気持ちいい方法を探る。
 急に肉竿に熱くぬめるものがまとわり付いた。凜の胸によって視界は奪われていて、何が起きているのか知ることはできない。
「桐葉さん、全部入っちゃいました。私の中、どうですか」
(これが……雪菜さんの中……。温かくて……安心する……)
 ぼんやりと思う。返事をする前に、雪菜が腰を動かし始めた。肉壁が桐葉をしっかりとくわえ込んだまま、さざなみのように動いて、ねっとりとまとわり付き、受け止めきれないほどの快楽を生み出す。雪菜の腰遣いはだんだん大きく激しくなり、桐葉は甘く熱い息を吐く。
「だめっ……もう……♡ でちゃう……♡」
「いいですよ、桐葉さん。出してください。私の中にいっぱい、思いっ切り出してください」
 桐葉は凜を抱きしめて、凜の体温をいっぱいに感じながら……自身を腰を振り始める。
(気持ちいい……。雪菜さんの中にぜんぶ出したい……。凜さんのおっぱい好き……。もっと……もっと……もっと……!)
「あっ♡ んんっ♡ いいっ♡ 気持ちいい♡ んぁっ! 来る♡ 出ちゃう……♡」
「来て。桐葉さん、私の中に来て」
「あっ♡ イクっ♡ イっちゃう♡ いっしょに♡ いっしょに来て♡ あっ♡ ん♡ ふあ♡ あっ……あああああああああああああ♡」
 びゅくん、びゅくん、びゅくん……。雪菜の蜜穴の中で、桐葉が精を吐き出す。と同時に、桐葉の心の奥に封じ込んであった最後の霊力が……周囲の触手へと流れ込んでいった。桐葉はそれを自覚していたが、そんなことよりも、初めて誰かと通じ合えた気がして……初めて自分が自分だと思えた気がして……その充足感に比べたら些細なことのように思えたのだった。
「次はあたしだよ、会長」凜が入れ替わりで跨った。
「はい……」桐葉は幸せそうに微笑を浮かべた。

(了)
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