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6、未知
しおりを挟む柏崎家頭首・早苗は表情一つ変えることなく、桐葉を和室に通した。
「お茶飲む?」
「いえ、お構いなく」
「んじゃ、お言葉に甘えてホントに何も構わんよ」早苗は机を挟んで向こう側に、どかっとあぐらをかいた。「龍ヶ崎のお嬢さんが訪ねてくるってことは、よほどのことがあったんだね」
「桐葉といいます。急に押しかけてすみません」
「ぜんぜん気にしなくてオーケー。まあ、暇だしね」
直接話をするのは初めてだが、それにしても凜と雪菜とはあまり似ていないような気がした。龍ヶ崎という苗字だけで態度を変える退魔師もいる中、桐葉に対してほとんど気を遣っていないように見えるのは、桐葉としてはありがたかった。
「いつでも本題をどーぞ」
「はい。お話は二つあります」桐葉はどう話すのが最善か迷いつつも、とにかく話し始めることにした。あまりゆっくりしていては、また体がうずいて仕方なくなりそうだったから。「私は隠しごとをしていました。これからする話は、まだ誰にも言っていないことです。先日、西の林のあたりで妖魔討伐が行なわれたことはご存知ですか」
「いいや。呼ばれなかった」
「私はその討伐に参加したのですが、そこでトカゲのようなヒト型妖魔と戦いました」
早苗は黙って聞いている。
桐葉は、やっぱり話さないほうがいいのではないかと思い始めた。あれは幻覚だったのではないか? 未だに桐葉自身も信じられずにいる。だからこそ今日まで誰にも打ち明けなかった。何より早苗は二人の母親だ。不確かな情報を与えて、ぬか喜びさせることになるのではないか……。
「大丈夫」早苗は真っ直ぐにこちらを見ていた。「自分のタイミングでいいから」
そう言われて、改めて決心がついた。
「妖魔と戦っているとき、私、凜さんと雪菜さんを見ました」
「本当に!?」早苗は腰を浮かせて身を乗り出したが、「いや、すまんすまん」と言って座りなおした。落ち着いていられないのは無理もないだろう。
「見間違いということは?」
「いいえ、あれは凜さんと雪菜さんでした。戦いましたが、手も足も出ませんでした」
「戦ったのか……?」
「はい。まるで何かに操られているみたいで。妖魔じゃなく、私に攻撃を……」
「詳しい状況を教えてくれる?」
桐葉はそのときのことを順を追って説明した。ただ妖魔に犯されそうになったことはぼかした。
「とにかく礼を言うよ。もしあなたの話が事実なら、娘たちはまだ生きている」
「私こそ、二人を連れ戻すことができなくてすみません」
「気にすることはない。私でも二人を相手に戦うのはもう不可能なくらいだから」
桐葉はちゃんと話してよかった、と思った。この人はちゃんと話を聞いてくれる人だ。母のような頑固者とは違う。
「ところで最初に、話は二つあると言ったね?」
覚悟していたことだが、ドキッとしてしまう。もう一つの話は単純に、死ぬほど恥ずかしい。だがきっとこの人なら、真面目に話を聞いてくれると思えた。何より全盛期の柏崎早苗と言えば、妖魔退治の腕はもちろんだが、優れた解呪術の使い手……解呪師でもあったのだ。相談するなら、これ以上の相手はいない。
「そうなんです」桐葉は視線をはずし、声を落とした。「実は、その……助けてもらえないかと思って……」
「できることなら、何でも力になるよ。貴重な情報ももらったわけだし」
「失礼ですが、妖魔の使う呪術に、お詳しいですよね?」
「まあ、それなりにね」
桐葉は先日の悪夢のような体験をぽつぽつと語った。今も下腹部に熱を感じていること、そして、体に異常が起こっていること。
「妖魔の分泌液が、人間にとって媚薬のように働くケースはある。珍しいことじゃない」早苗は別の部屋から古書を何冊か持ってきて、めくりながら説明した。「昔から知られている。私も見たことがあるし、治したこともある。これ、後で読みな。必ず役に立つから」
「これ、たぶん、私には読めないんですが……」
「いいのいいの。私も読めんし」
「読めないんですか!?」
「絵で分かるから問題ない。ほら持ってけドロボー!」
言われるがまま、早苗からボロボロの本を受け取る。タイトルはどうやら『力の源流』みたいだ。「あ、ありがとうございます……」
(この本、本当に私が持っている意味、あるのかな……)
複雑な思いで本をカバンに仕舞った。
「とりあえず見せて」
「えっ?」
「見せてみて。患部どうなってるか」早苗が身を乗り出す。
「やっ、でも、それはちょっと!」桐葉は逃げるように体を後ろにそらした。頬が引きつっている。「お薬とかもらえれば、それでいいですので」
「ない」
「へ?」
「薬はない!」なぜか胸を張る早苗。
「そんなあっ!!」
「恥ずかしがってたら治療できんぞ」
「いや、でも……」
「いいから見せんしゃーい!」
「いやああああああああッ!!」
机を飛び越えて猫のように襲ってくる早苗。慌てて逃げようとしたが、桐葉は組み伏されてしまった。スカートに早苗の手がかかる。
「見せるから待って! 自分で見せますからあっ!」
それで解放してもらって、今、桐葉は正座した早苗の前に立ち、スカートの裾をつかみ、ゆっくりとたくし上げようとしていた。
「うぅ……」羞恥心で顔は真っ赤だ。今にも泣き出しそうに目がうるんでいる。「本当に、見せなきゃダメですか?」
「ダメ」
「ううっ……」たくし上げていく。太ももの付け根があらわになり、……純白のショーツが晒された。
「パンティーは白か」
「声に出さないでください」
「よく見えない」早苗は容赦ない。「もっと上まで」
桐葉は指示に従い、スカートをさらに上げた。
「ほう……」早苗がまじまじと眺めた。
気のせいか見られるほどに熱がそこに集まり、疼き始める。
(また、体がおかしく……。もう嫌……)
「そこに何かある。そうだね?」
桐葉は首を横には振らなかった。スカートをたくし上げた格好のまま、固く目を閉じて顔をそむけていただけだ。
「そこに寝て。布団敷くから」早苗は押入れから布団を出すと、畳の上にバンと置いた。「ほら、準備できた」
「何をするんですか」
「治療に決まってるでしょ?」
たぶんもうショーツの上からでも、見せてしまった時点で全部お見通しなのだ。桐葉はすがる思いで尋ねる。「治りますか」
「治る。妖魔の媚薬効果は一時的なものだから」
その言葉を信じて桐葉は布団の上で仰向けになった。
「じゃあ、めくるよ。全部」
桐葉は寝たまま首肯した。顔が燃えるように熱くなるのを感じた。体全体もじんわりと熱い。
早苗の手がスカートをどけ、ショーツを下ろしていく。布地が肌と擦れて「んぁっ」という声が思わず出た。『それ』が空気に晒されるのが感じられた。
「こりゃ立派なもんをもらったな」
桐葉は見なくても分かっている。自分の体だから。ありえないものがそこにあるということを。
つまり……桐葉の下腹部には、男のものが生えているのだった。
「これは男根のようだが正確に言えば少し異なるものだ。妖魔の妖気の影響でクリトリスが肥大化して、男根のようになったんだな。射精する機能はありそうだ。まんまペニスだこりゃ。偽男根とでも呼んでおこうか」
早苗の解説など、桐葉の耳にはほとんど入らなかった。恥ずかしすぎて死にたかった。万が一にも学校で誰かにこんなものを見られてしまった日にはお仕舞いだ。その先の人生を真っ当に生きていける自身がない。龍ヶ崎家の跡取りとしても、一人の女としても……。
「わたし……こんな。もう……っ、誰にも……言えなくて……っ」桐葉は嗚咽が漏れるのを止められなかった。悲しいのに、情けないのに……『それ』が刺激を求めてさらに疼くのだ。自分で自分のことが分からない。
「……安心しなさい」早苗がそっと囁く。「力を抜いて。私に体と心を預けて。すぐに楽になるから」
不意に早苗の手が、男のものに触れた。
「えっ!?」桐葉は反射的に早苗の腕をつかんでいた。「あの、今……」
「いいかい? この偽男根は射精機能を持っている。精を吐き出し終われば自然に退化してなくなるよ。つまり射精させればいい」
「でも、人にやってもらうのは……」
「自分でするって?」
つまりそういうことなのだが、桐葉は言葉としてそれを聞くと、また一段と顔を赤らめてしまった。
「それでもダメじゃないんだけど、ちまちまやってたら完治まで時間がかかるし、効率よく精を吐かせれば短期間でなくせる。早くこいつをなくしたいんだよね?」
桐葉は「はい」と答えるしかない。
「じゃあ、私に任せなさい。恥ずかしいかもしれないけど、すぐ慣れるし、リラックスして全部任せてくれればより短期間で解決するから」
不安は泉のように次から次へと湧き上がる。だが今は任せるしかないと思った。一日でも早くこの厄介なものを下半身から取り除かないと、平穏な生活は送れない。
「ひゃっ!?」
突然の冷たさに変な声が出てしまった。早苗が桐葉の下半身に何かの液体を垂らしていた。
「大丈夫、潤滑剤だから」
「……じゅんかつざひっ!?」
ぬるぬるの潤滑剤を早苗が手のひらで塗り広げる。他人に肌を触られたことのない桐葉は、くすぐったいような気持ちいいような妙な感覚で落ち着かない。腹の辺り、太もも、腰骨の辺り、それから秘所の周り……エスティシャンのように慣れた手つきで、だんだんときわどい場所に近づいてくる。しばし早苗の温かい手のひらは、きわどい場所や『それ』に触れるか触れないかのところを入念にマッサージしていた。潤滑剤が体に馴染んでいくのが感じられる。同時に体が内側からポカポカしてきて、何となく頭がぼーっとして気持ちよくなってきた。
「どう? 痛い?」
「……いいえ」
「じゃあ続けるよ」
「……はい」
早苗の手が、男のものの根元を撫でる。指で作った輪が根元をぴたりと包み、また離れる。また根元で輪を作り、離れる……。桐葉はかすかに身じろぎする。そしてようやく、ぬるぬるの早苗の指が、男のものを優しく撫でながら、先のほうへとあがってきた。
「……んっ」鼻にかかった音が小さく漏れた。
早苗の手のひらの温かさを感じる。男のものが両手に包み込まれる。ゆっくりと上下にしごかれている。肉棒が硬くなっていくのが分かる。どうしてそうなるのか、桐葉には分からない。だが早苗の手付きが……ぬるぬるとした感触が気持ちよすぎて、無意識に体が動いてしまう。身じろぎしても、早苗の指は肉棒にまとわりついて逃がしてはくれない。それどころか、今度は何かを搾り取るようにしごき上げられ、思わず声が出てしまった。
「んあっ……♡ 待って。それ、ダメです……」
「痛いの?」
「痛くは……あっ♡ それダメです、何か……なにか……」何か未知のものが来る……。桐葉が大きく身をよじり、上半身を起こそうとする。
「起きちゃダメ」早苗が制止する。「私の言うとおりにしないと、いつまでも治らない。ずっとこのままで生活するの?」
「それは……」桐葉はそれ以上何も言えず、起こしかけた体を横たえた。
「いい子だね」早苗が耳元で囁いた。「身を任せて。本当の自分を受け入れて」
「んんっ……♡」肉棒への愛撫が再開された。桐葉は必死で声を押し殺す。
「すごい。こんなに硬くなってる」
「言わないでください……」桐葉は恥ずかしさのあまり顔を背けた。
(わたし、おかしい。あんなものを触られて……気持ちよくなってる……)
早苗の手が肉をしごく。時にゆっくりと規則的に上下運動し、時に先端を手のひらで丸め込むようにしてぐりぐりと擦られる……。びくん、びくんと男のものが脈打つのが分かる。喜んでいるのだと分かる。腰が浮き上がる。桐葉は早苗に体の全て、心の全てを包まれているかのような、大きな温かさを感じている。母性というものなのかもしれない。
「んぁ……♡ いやぁ♡」
偉大で、尊く、抵抗できない存在。何かが上り詰めてくるような感覚。未知の何かが……もう一つの存在が自分の中にいる。その証拠に、股間にそそり立つそれはさらに硬く、さらにパンパンに腫れ上がって、血管が浮き上がり、びくびくびくんと震え脈動し、まるで殻を破って外に出てこようとしているかのようだ。
「んはぁ……あっ♡ だめっ、さなえさん……んんぅ♡ わたし……わたし……」桐葉は知らぬうちに布団をぎゅっと握り締めている。「なに、かっ……くる……。いやっ……、んぁっ♡」
「大丈夫。それを受け入れて」
「あっ……♡ こわい……、こわいですっ」桐葉は瞳に涙をいっぱい浮かべて懇願するように早苗を見つめる。「からだがっ……ん♡ こわい……」
「みんな怖いんだよ」応える早苗の声はどこまでも穏やかで慈悲深い。「怖いのは最初だけ。私がいるから」
「さなえっ……さん♡ あうっ♡ いっしょに……っ……、いっしょに……いて。あっ♡」
桐葉の感覚が高まっていくのに合わせて早苗の愛撫も早くなっていく。「一緒にいるよ。最後まで一緒にいるから」
今や桐葉の熱せられた竿は早苗の手の中で激しく暴れて、別の生き物のようであった。
(熱い……! 来る……! 何かが来る……!)
「あっ♡ う、あ♡ 来る! こわいっ! いやぁっ♡」早苗の両手に高速でしごかれ、桐葉の肉棒は初めての限界へと向かう。「あぁ♡ うぅ♡ んああっ♡ 来ちゃう! あっ♡ ああっ! あっ……あ゛ああああああああああっ♡」
桐葉は仰向けのまま大きく仰け反った。精子に似た白いものが先端から大量に放たれた。脳を焼くほどの快楽が全身を駆け回った。早苗は全て搾り出そうと愛撫を続けていた。
「ぁ…………ぁぁ……ぁ……」力強く脈打つこと七度。桐葉はようやく大波が去った後も、糸の切れた人形のように、力なく天井を見つめていた。断続的に全身が痙攣している。精を吐いた肉棒の先からは白いものの残りがヌトーっと垂れる。大きく見開いた目の端から涙の粒が筋を引き、布団に染み込んでいった。
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