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第一部 桃井さんとイチャイチャしたい編
6, 君に好きだと伝えたい愚か者
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「でもさ、スカート履いてることイコール地雷みたいなものじゃん? これってひどくない? どっかにズボンとかがあればいいのに」
「それだ東山(とおやま)!」
いきなり伊集院慧(いじゅういん けい)が叫んだ。
「簡単なことだ、ズボンを履けばいいんだ! パンチラで爆死するリスクをかなり抑えられるぞ」
「え? もしかして私って天才? じゃあ、ズボンが女子全員分あれば……!」
「なければ最悪、カーテンでも巻いて隠してしまえばいい。ついでに上着も着込めば、ブラチラで死ぬリスクも減らせるぞ」
なるほど、確かにブラチラというラッキースケベもある。そちらは盲点だった。
東山は片手でスカート、もう片手で襟元を押さえて一時的な対策を取った。
「この作戦、最強じゃないか? 女子が全員パンチラ・ブラチラ対策をすれば、直接接触しない限りラッキースケベは起こらない!」
この生き残りゲームには致命的な穴がある、と俺は確信した。主催者はきっとバカだ!
「そうなれば、三日程度の生き残りは余裕だ。でかしたぞ、東山。おまえのおかげで希望が見えた」
「やったね! 私たち、助かるんだ!」
「ああ、生き延びてやろう。まずはズボンを探すぞ」
そこで俺は手を挙げた。
「佐藤、どうした?」
「ズボン、探さなくても、この教室に二人分は確実にあるんじゃないかと思って」
俺は教室のほうを見ないように、教室を指差した。
「なるほど。花岡と大久保が履いているズボンか」
伊集院慧は躊躇うことなく教室をのぞいた。
「片方はわりかし綺麗だが、もう片方はかなり血が付いているな」
「ちょ、ちょっと待って! ズボンって、脱がせるってこと? それを女子が履くの? 嘘でしょ?」
東山の泣きそうな顔には、お願いだから嘘だと言ってほしい、と書いてあった。
誰だって、他人のズボンを履くのは嫌に決まっている。しかもそれが、死んだクラスメイトから剥ぎ取った、血にまみれたズボンならなおさらだ。
「無理無理無理無理! そんなの無理!」
「死ぬよりマシだろう。それとも絶対にパンチラしない自信があるか?」
「分かんないけど、転んだりしなければパンチラなんてしないよ! 私、ドジじゃないし」
「どうだかな。少なくともしっかり者には見えないぞ」
「何それ!? 私、案外しっかりしてるんですけど!」
なんだか二人が険悪になってきた。
俺は空気をなごませようと思って、割って入る。
「じゃ、東山さんには特別に俺のズボン貸そうか?」
「それも嫌!」
冗談のつもりだったのに、拒絶の仕方がガチだったので、俺は少し凹んだ。
「仕方ない。パンチラに注意しながらズボンか、代わりになるものを探すぞ」
伊集院慧がため息を吐いた。
「ついでにこの作戦をみんなに知らせたらどうだろう?」
俺は思いつきを口に出してみた。
「それも必要だ」
「じゃあ私、やるね」
東山がスマホをブレザーの胸ポケットから取り出し、ハッとして俺を見た。
「よく考えたら、みんなこの変なスマホしか持ってないじゃん! 連絡できないじゃん」
俺もスマホ……ネコベェが言っていた「生き残りゲームの専用端末」を見てみた。ロック画面はショッキングピンクの背景に「1日目 10:12」とだけ表示されている。ホーム画面に入ると、アプリは一つだけ。
名前は「ラッキースケベ⭐️デススクール」。
「このアプリで連絡とかできないのかな」
とりあえずアプリを起動。
「私、ほのかとか花岡たちとやってみたけど、メッセージは送れないみたいだったよ。電話もネットもできないし。運営からのお知らせメッセージを読むのと、ミッションとかいう何もないページと、あと……」
東山はそこで口ごもった。
もう一つは「生存者情報」だった。
ページ上部には「残り生存者25人」「ゲームクリアまで70時間45分」という文字。さらに、このゲームのルール「ラッキースケベの波動を感知すると、首のリングが爆発する」ことも明記されている。ネコベェの話を聞いていなかったヤツも、ここを見れば最低限のルールは分かるわけだ。
下にスクロールすると、クラスの30人の名前が並び、すでに死んだ五人の名前が二重線で消されている。
二重線が引かれた桃井桃華という名前を見つめ、なんとも言えない気持ちになった。好きだったのに。卒業までには告白しようと思っていたのに。いつか、またいつか、また今度、次こそは、と先送りにすること一年以上。まさかこんなことになろうとは。
俺はバカだ。
桃井さんに、もう想いを伝えることはできない……。
「作戦をみんなに伝えよう」
俺はスマホをポケットにしまい、顔を上げた。
「殺された五人のために、俺たちは生き残って、このバカげたゲームの主催者に焼き土下座をさせるんだ」
「焼き土下座って?」
「説明している暇はないよ、東山さん」
俺は誓う。もしも、ありえないことだけど、もう一度桃井さんに会えたら、俺は君が好きだと告白する。
フラれたっていい。キモいと思われても構わない。
何もしないで、「いつか」の日を永遠に待ち続けるよりは、ずっといい。
「だが連絡手段がないぞ」
伊集院慧は痛い事実を指摘した。
「大声で叫ぶ。学校を歩き回りながら。それから目立つところにみんなへの指示を書いておく」
俺は無い知恵を絞った。俺に思いつくアイデアなんてこの程度でしかない。スマートで効率的とは言えないな、と思う。
「アナログだが他にズバ抜けていい方法もない。よし、やろうじゃないか」
伊集院慧があっさりと賛同してくれるなんて、予想外だ。
「うん、やるよ! みんなで生き残ろう!」
東山もいい顔をしていた。
1日目 10:23
生存者 25人
「それだ東山(とおやま)!」
いきなり伊集院慧(いじゅういん けい)が叫んだ。
「簡単なことだ、ズボンを履けばいいんだ! パンチラで爆死するリスクをかなり抑えられるぞ」
「え? もしかして私って天才? じゃあ、ズボンが女子全員分あれば……!」
「なければ最悪、カーテンでも巻いて隠してしまえばいい。ついでに上着も着込めば、ブラチラで死ぬリスクも減らせるぞ」
なるほど、確かにブラチラというラッキースケベもある。そちらは盲点だった。
東山は片手でスカート、もう片手で襟元を押さえて一時的な対策を取った。
「この作戦、最強じゃないか? 女子が全員パンチラ・ブラチラ対策をすれば、直接接触しない限りラッキースケベは起こらない!」
この生き残りゲームには致命的な穴がある、と俺は確信した。主催者はきっとバカだ!
「そうなれば、三日程度の生き残りは余裕だ。でかしたぞ、東山。おまえのおかげで希望が見えた」
「やったね! 私たち、助かるんだ!」
「ああ、生き延びてやろう。まずはズボンを探すぞ」
そこで俺は手を挙げた。
「佐藤、どうした?」
「ズボン、探さなくても、この教室に二人分は確実にあるんじゃないかと思って」
俺は教室のほうを見ないように、教室を指差した。
「なるほど。花岡と大久保が履いているズボンか」
伊集院慧は躊躇うことなく教室をのぞいた。
「片方はわりかし綺麗だが、もう片方はかなり血が付いているな」
「ちょ、ちょっと待って! ズボンって、脱がせるってこと? それを女子が履くの? 嘘でしょ?」
東山の泣きそうな顔には、お願いだから嘘だと言ってほしい、と書いてあった。
誰だって、他人のズボンを履くのは嫌に決まっている。しかもそれが、死んだクラスメイトから剥ぎ取った、血にまみれたズボンならなおさらだ。
「無理無理無理無理! そんなの無理!」
「死ぬよりマシだろう。それとも絶対にパンチラしない自信があるか?」
「分かんないけど、転んだりしなければパンチラなんてしないよ! 私、ドジじゃないし」
「どうだかな。少なくともしっかり者には見えないぞ」
「何それ!? 私、案外しっかりしてるんですけど!」
なんだか二人が険悪になってきた。
俺は空気をなごませようと思って、割って入る。
「じゃ、東山さんには特別に俺のズボン貸そうか?」
「それも嫌!」
冗談のつもりだったのに、拒絶の仕方がガチだったので、俺は少し凹んだ。
「仕方ない。パンチラに注意しながらズボンか、代わりになるものを探すぞ」
伊集院慧がため息を吐いた。
「ついでにこの作戦をみんなに知らせたらどうだろう?」
俺は思いつきを口に出してみた。
「それも必要だ」
「じゃあ私、やるね」
東山がスマホをブレザーの胸ポケットから取り出し、ハッとして俺を見た。
「よく考えたら、みんなこの変なスマホしか持ってないじゃん! 連絡できないじゃん」
俺もスマホ……ネコベェが言っていた「生き残りゲームの専用端末」を見てみた。ロック画面はショッキングピンクの背景に「1日目 10:12」とだけ表示されている。ホーム画面に入ると、アプリは一つだけ。
名前は「ラッキースケベ⭐️デススクール」。
「このアプリで連絡とかできないのかな」
とりあえずアプリを起動。
「私、ほのかとか花岡たちとやってみたけど、メッセージは送れないみたいだったよ。電話もネットもできないし。運営からのお知らせメッセージを読むのと、ミッションとかいう何もないページと、あと……」
東山はそこで口ごもった。
もう一つは「生存者情報」だった。
ページ上部には「残り生存者25人」「ゲームクリアまで70時間45分」という文字。さらに、このゲームのルール「ラッキースケベの波動を感知すると、首のリングが爆発する」ことも明記されている。ネコベェの話を聞いていなかったヤツも、ここを見れば最低限のルールは分かるわけだ。
下にスクロールすると、クラスの30人の名前が並び、すでに死んだ五人の名前が二重線で消されている。
二重線が引かれた桃井桃華という名前を見つめ、なんとも言えない気持ちになった。好きだったのに。卒業までには告白しようと思っていたのに。いつか、またいつか、また今度、次こそは、と先送りにすること一年以上。まさかこんなことになろうとは。
俺はバカだ。
桃井さんに、もう想いを伝えることはできない……。
「作戦をみんなに伝えよう」
俺はスマホをポケットにしまい、顔を上げた。
「殺された五人のために、俺たちは生き残って、このバカげたゲームの主催者に焼き土下座をさせるんだ」
「焼き土下座って?」
「説明している暇はないよ、東山さん」
俺は誓う。もしも、ありえないことだけど、もう一度桃井さんに会えたら、俺は君が好きだと告白する。
フラれたっていい。キモいと思われても構わない。
何もしないで、「いつか」の日を永遠に待ち続けるよりは、ずっといい。
「だが連絡手段がないぞ」
伊集院慧は痛い事実を指摘した。
「大声で叫ぶ。学校を歩き回りながら。それから目立つところにみんなへの指示を書いておく」
俺は無い知恵を絞った。俺に思いつくアイデアなんてこの程度でしかない。スマートで効率的とは言えないな、と思う。
「アナログだが他にズバ抜けていい方法もない。よし、やろうじゃないか」
伊集院慧があっさりと賛同してくれるなんて、予想外だ。
「うん、やるよ! みんなで生き残ろう!」
東山もいい顔をしていた。
1日目 10:23
生存者 25人
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