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第一部 桃井さんとイチャイチャしたい編
1,開始の合図
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目を覚ますと、なぜか教室にいた。通っている高校の教室の、一番後ろの自分の席に座って、机に突っ伏していた。
俺は確か自分の部屋で寝ていたはずなのに、どうして教室にいるんだ? 寝ぼけているのか? 頭が痛くて思い出せない。
クラスの生徒たちも全員そろっているようだ。このクラスの生徒は、男子十五人、女子十五人の計三十人。男子は学ラン、女子はブレザー。机に突っ伏しているヤツがまだ何人かいるが、ほとんどのヤツはたった今起きたかのような様子。不思議そうに周りをキョロキョロ見回したり、「あれっ、なんで教室にいるんだ?」とつぶやいたり、「私のスマホ、知らない?」と聞いたり、頭が痛いのか顔をしかめたりしている。
平凡な日常のようで、どこか違う、妙な光景だった。
何か首のあたりに違和感を覚え、手で触れてみた。冷たくて固くて滑らかなものが首の周りにある。金属の首輪……? こんなもの、付けた覚えはない。
「佐藤くん、大丈夫ですか」
隣から鈴の音のような声。俺を呼んだのは、桃井桃華(ももい ももか)さん。このクラスの委員長で、美人で巨乳で優等生で誰にでも優しい。俺の片思いの相手。
「桃井さん、俺は大丈夫。桃井さんは?」
俺は首から手を離して桃井さんのほうを向いた。桃井さんのキュートな顔は不安そうに見えた。
「大丈夫ですが、なんだか不気味です。うちで寝ていたはずなのに、起きたらなぜかここにいて。登校した記憶もないんです」
「俺も同じです。頭がちょっと痛くて、どうして学校にいるんだか……」
俺はポケットからスマホを取り出した。
「なんだこれ、俺のスマホじゃないぞ」
メーカーも機種もよく分からない、シンプルなスマホ。ケースは無し。充電は100%。時刻は8:50。窓の外には青空。
「私のスマホもなくなっていて、代わりにこれが」
桃井さんの手には、俺のと同じ機種らしきスマホがあった。
そのとき、教室の前方のドアがガラガラと開き、全員が注目した。ざわめきが止んだ。
ネコだった。
いや、正確には三毛ネコのデブなキャラクターの着ぐるみを着た誰かだった。笑顔なのに目が真っ黒なせいで、逆に不気味だ。ご当地のゆるキャラか何かかもしれないが、見たことはない。
ネコは教師のように教卓のところに立ち、教室を見渡す。
「諸君、着席だ。自分の席に座りなさい」
ネコの着ぐるみが若い男の声で言った。どう考えてもキャラの印象と合っていない声。
一部の生徒たちは座らなかったが、ネコは気にしない様子で、
「全員揃っているようだね。僕の名前はネコベェ、以後よろしく」
と、ちょっと頭を下げた。
「おい、なんだよお前。お前が俺たちをここに連れてきたのか?」
制服をだらしなく着崩した不良男――黒崎黒矢(くろさき くろや)が、威圧的な態度でネコベェに近づいていく。黒矢は、顔をネコベェの鼻にくっつきそうなほど近づけ、にらみつけた。
「おい、クソネコ。ふざけんじゃねえぞ。どういうつもりだ? スマホとか返せ」
ネコベェは怯まず、姿勢良く立ったまま、
「皆さんには、これから生き残りゲームをしてもらいます。まず、」
と言ったとき、黒矢が頭突きをしたので、ネコベェは後ろにたたらを踏み、黒板にぶつかって言葉が途切れた。音に驚いた誰かが「ひっ」と悲鳴をあげた。
みんな、黒矢と謎のネコの次の行動を息を飲んで見守っている。不安そうに、面白そうに。
「無視すんじゃねーよ! てめえに命令してんだよ、俺は」
黒矢がイラついているのは、誰が見ても明らかだ。こいつは暴れると手がつけられないので、多くの教師や生徒から避けられている。
普段なら黒矢は厄介なヤツだが、今は全員の疑問に対する答えを、ネコベェから引き出してくれるかもしれない。だから少なからずみんな、黒矢に期待していただろう。
一方、俺はネコベェが言った「生き残りゲーム」という言葉が気になった。
「生き残りゲームって、どういうことでしょうか?」
隣の桃井さんが俺にこそっと耳打ちしてきた。
「わからないけど、俺たち全員、何かの目的のために集められた可能性がある」
俺は桃井さんに頼れる男だと思われたくて、それっぽいことを言ってみた。実際はマジで何も分からないけど。
「何かの目的?」
「それを、あのふざけたネコが語ってくれるかもしれない」
ネコベェがまた喋り出した。
「まず、ルールを説明します。誠に勝手ながら、皆さんの首には金属製の首輪――リングをつけさせていただきました。このリングはラッキースケベの波動を感知すると爆発します。つまり皆さんは死にます」
あまりに唐突な、予想外の内容だったので、みんな瞬時に理解できなかっただろう。
ラッキースケベの波動?
首のリングが爆発?
死ぬ?
数秒の空白の後、みんなが一斉に喋り出した。
「なんだこのリング!?」
「私にも付いてる!」
「これ、取れねえぞ!」
「死ぬってなんだよ!?」
「これ、爆発するのか?」
「冗談だろ? 映画か何かかよ?」
「犯罪だろ!」
「ラッキースケベって何なの?」
「笑えるんですけど!」
「意味わかんねー!」
「もう帰っていい?」
「くだらねえ! ホントのわけないだろ」
俺は首のリングをもう一度触ってみたが、継ぎ目がなく、頑丈で、引っ張っても取れそうにない。
ネコベェは生徒たちがざわめく中、大声で説明を続ける。
「行動範囲はこの高校の敷地内! 時間は三日間。今日の午前九時から三日後の午前九時まで! とにかく生き残ること!」
半分以上の生徒はおしゃべりに夢中で、ネコベェの説明を聞いていないようだった。俺は真剣にネコベェの説明に耳を傾けた。黒板の上の掛け時計にも目をやると、八時五十九分。謎のスマホの時計も同じ時刻を表示している。
「おい! だから無視すんな!」
不意に黒矢がもう一度ネコに頭突きをした。ネコは今度は教卓の端を短い手でつかんでいたため、頭突きを食らってもふらつかなかった。
「皆さんのスマホは没収しました。代わりに生き残りゲームの途中でミッションを伝達するための専用端末を配布済みです。通知が来たらきちんと確認するように。確認しないと死にます。説明は以上。質問はありますか? ちなみに、あっても受け付けません」
「おいクソネコ! いい加減にしろよ! ブッ殺すぞ!」
黒矢がついにネコベェの頭部につかみかかった。首をねじり取るみたいに、強引に振り回そうとする。
「爆発とか死ぬとか、わけわかんねえこと言ってんじゃねえぞ。俺のスマホを返せ! それから首のうざったいリングを外せ!」
「では、皆さんの健闘を祈っています」
ネコベェは最後まで楯突く不良少年を徹底的に無視し、黒矢の手を振り払って九十度ターンした。スタスタとドアのほうへ向かう。
「だから無視するんじゃねえッ!!」
黒矢がキレた。ネコベェの背中に飛び蹴り。ネコベェは吹っ飛んで床に倒れた。何人かの悲鳴。黒矢はすかさずネコベェに馬乗りになり、頭部をつかんで着ぐるみを脱がそうとする。手足をばたつかせて抵抗するネコベェ。手当たり次第に殴る黒矢。殴り返すネコベェ。
さすがにやりすぎだ……。
生徒たちはいきなり始まった喧嘩を面白がるか、巻き込まれないように身を引くかするだけで、誰も止めようとはしない。むしろ何人かは「やっちまえ!」「脱がせちまえ!」と黒矢を煽る。
俺はどうしていいか分からなくて、ただ傍観していた。
時計を見た。九時ちょうど。ネコベェが言っていた、ゲームの開始時刻。
まずいのでは? 黒矢を止めたほうがいいかもしれない。
だがどうやって? 俺には黒矢を止められるほどの力も体格もない。度胸もない。というか、キレた黒矢を止めるのは、教師でもかなり大変だ。
「どうして誰も止めないの?」桃井さんが嘆いた。「あれはやりすぎです。私、黒矢くんを止めてきます」
隣で桃井さんが立ち上がった。「危ないよ! 近づかないほうがいい!」と俺は言いたかったが声が全然でなかった。止める間もなく、桃井さんは胸元の二つの大きな桃をゆっさゆっさと揺らしながら駆けていってしまう。
「やめて! 黒矢くん、やりすぎです! ねえ、みんなも黒矢くんを止めて! ねえ聞いて!」
桃井さんは揉み合いになっている黒矢とネコベェのすぐそばまで近づき、声を張り上げた。黒矢がやめろと言われて素直にやめるわけないのに……。
そのとき、ちょうどネコベェが反撃の蹴りを黒矢にお見舞いした。ネコベェにのしかかっていた黒矢は、後ろに吹っ飛んだ拍子に立ち上がり、しかしバランスを崩して後ろによろめいた。そこに桃井さんの豊満な胸がエアバックのごとく待ち構えており、見事に黒矢の顔を受け止めた。
この場にいる男子全員が黒矢を羨ましいと思ったに違いない。男なら誰しも例外なく桃井さんの胸に挟まれたい、埋もれたいと願ったことがあるはずだ。きっとそうだ。いや絶対にそうだ。
黒矢は故意に桃井さんの聖域に飛び込んだわけではない。不可抗力というやつだ。それはよく分かる。しかし許せん! くそっ、黒矢め! なんてラッキーなんだ! 俺は歯ぎしりした。
桃井さんは頬を赤らめ、小さく「きゃっ」と声を上げて、黒矢を胸でキャッチしたわけだが、黒矢の顔が押し付けられた胸は、ぐにゃっと形を歪めて、その究極の柔らかさを物語る。
一方、黒矢は何事もなかったかのように、すぐに巨乳エアバッグから離れ、自分の両足で立った。まあ、目下殴り合いは続いているのだから、ゆっくりと桃パイの感触を味わっている余裕はないのである。なんと勿体ないことか。黒矢の日ごろの行ないが悪いせいだろう。
ネコベェがこの隙に起き上がる。
「よくもやってくれたなクソネコッ!」
黒矢は先ほどの蹴りのお返しとばかりに、大振りに殴りかかっていった。
が、
その瞬間、
ピピピピ……
というアラームみたいな音と、
ボンッと小さな爆発音がして、
黒矢と桃井さんの頭が、
胴体から離れて、
宙を舞った。
俺たちに大量の血の雨を浴びせながら。
1日目 9:03
生存者 30人→28人
俺は確か自分の部屋で寝ていたはずなのに、どうして教室にいるんだ? 寝ぼけているのか? 頭が痛くて思い出せない。
クラスの生徒たちも全員そろっているようだ。このクラスの生徒は、男子十五人、女子十五人の計三十人。男子は学ラン、女子はブレザー。机に突っ伏しているヤツがまだ何人かいるが、ほとんどのヤツはたった今起きたかのような様子。不思議そうに周りをキョロキョロ見回したり、「あれっ、なんで教室にいるんだ?」とつぶやいたり、「私のスマホ、知らない?」と聞いたり、頭が痛いのか顔をしかめたりしている。
平凡な日常のようで、どこか違う、妙な光景だった。
何か首のあたりに違和感を覚え、手で触れてみた。冷たくて固くて滑らかなものが首の周りにある。金属の首輪……? こんなもの、付けた覚えはない。
「佐藤くん、大丈夫ですか」
隣から鈴の音のような声。俺を呼んだのは、桃井桃華(ももい ももか)さん。このクラスの委員長で、美人で巨乳で優等生で誰にでも優しい。俺の片思いの相手。
「桃井さん、俺は大丈夫。桃井さんは?」
俺は首から手を離して桃井さんのほうを向いた。桃井さんのキュートな顔は不安そうに見えた。
「大丈夫ですが、なんだか不気味です。うちで寝ていたはずなのに、起きたらなぜかここにいて。登校した記憶もないんです」
「俺も同じです。頭がちょっと痛くて、どうして学校にいるんだか……」
俺はポケットからスマホを取り出した。
「なんだこれ、俺のスマホじゃないぞ」
メーカーも機種もよく分からない、シンプルなスマホ。ケースは無し。充電は100%。時刻は8:50。窓の外には青空。
「私のスマホもなくなっていて、代わりにこれが」
桃井さんの手には、俺のと同じ機種らしきスマホがあった。
そのとき、教室の前方のドアがガラガラと開き、全員が注目した。ざわめきが止んだ。
ネコだった。
いや、正確には三毛ネコのデブなキャラクターの着ぐるみを着た誰かだった。笑顔なのに目が真っ黒なせいで、逆に不気味だ。ご当地のゆるキャラか何かかもしれないが、見たことはない。
ネコは教師のように教卓のところに立ち、教室を見渡す。
「諸君、着席だ。自分の席に座りなさい」
ネコの着ぐるみが若い男の声で言った。どう考えてもキャラの印象と合っていない声。
一部の生徒たちは座らなかったが、ネコは気にしない様子で、
「全員揃っているようだね。僕の名前はネコベェ、以後よろしく」
と、ちょっと頭を下げた。
「おい、なんだよお前。お前が俺たちをここに連れてきたのか?」
制服をだらしなく着崩した不良男――黒崎黒矢(くろさき くろや)が、威圧的な態度でネコベェに近づいていく。黒矢は、顔をネコベェの鼻にくっつきそうなほど近づけ、にらみつけた。
「おい、クソネコ。ふざけんじゃねえぞ。どういうつもりだ? スマホとか返せ」
ネコベェは怯まず、姿勢良く立ったまま、
「皆さんには、これから生き残りゲームをしてもらいます。まず、」
と言ったとき、黒矢が頭突きをしたので、ネコベェは後ろにたたらを踏み、黒板にぶつかって言葉が途切れた。音に驚いた誰かが「ひっ」と悲鳴をあげた。
みんな、黒矢と謎のネコの次の行動を息を飲んで見守っている。不安そうに、面白そうに。
「無視すんじゃねーよ! てめえに命令してんだよ、俺は」
黒矢がイラついているのは、誰が見ても明らかだ。こいつは暴れると手がつけられないので、多くの教師や生徒から避けられている。
普段なら黒矢は厄介なヤツだが、今は全員の疑問に対する答えを、ネコベェから引き出してくれるかもしれない。だから少なからずみんな、黒矢に期待していただろう。
一方、俺はネコベェが言った「生き残りゲーム」という言葉が気になった。
「生き残りゲームって、どういうことでしょうか?」
隣の桃井さんが俺にこそっと耳打ちしてきた。
「わからないけど、俺たち全員、何かの目的のために集められた可能性がある」
俺は桃井さんに頼れる男だと思われたくて、それっぽいことを言ってみた。実際はマジで何も分からないけど。
「何かの目的?」
「それを、あのふざけたネコが語ってくれるかもしれない」
ネコベェがまた喋り出した。
「まず、ルールを説明します。誠に勝手ながら、皆さんの首には金属製の首輪――リングをつけさせていただきました。このリングはラッキースケベの波動を感知すると爆発します。つまり皆さんは死にます」
あまりに唐突な、予想外の内容だったので、みんな瞬時に理解できなかっただろう。
ラッキースケベの波動?
首のリングが爆発?
死ぬ?
数秒の空白の後、みんなが一斉に喋り出した。
「なんだこのリング!?」
「私にも付いてる!」
「これ、取れねえぞ!」
「死ぬってなんだよ!?」
「これ、爆発するのか?」
「冗談だろ? 映画か何かかよ?」
「犯罪だろ!」
「ラッキースケベって何なの?」
「笑えるんですけど!」
「意味わかんねー!」
「もう帰っていい?」
「くだらねえ! ホントのわけないだろ」
俺は首のリングをもう一度触ってみたが、継ぎ目がなく、頑丈で、引っ張っても取れそうにない。
ネコベェは生徒たちがざわめく中、大声で説明を続ける。
「行動範囲はこの高校の敷地内! 時間は三日間。今日の午前九時から三日後の午前九時まで! とにかく生き残ること!」
半分以上の生徒はおしゃべりに夢中で、ネコベェの説明を聞いていないようだった。俺は真剣にネコベェの説明に耳を傾けた。黒板の上の掛け時計にも目をやると、八時五十九分。謎のスマホの時計も同じ時刻を表示している。
「おい! だから無視すんな!」
不意に黒矢がもう一度ネコに頭突きをした。ネコは今度は教卓の端を短い手でつかんでいたため、頭突きを食らってもふらつかなかった。
「皆さんのスマホは没収しました。代わりに生き残りゲームの途中でミッションを伝達するための専用端末を配布済みです。通知が来たらきちんと確認するように。確認しないと死にます。説明は以上。質問はありますか? ちなみに、あっても受け付けません」
「おいクソネコ! いい加減にしろよ! ブッ殺すぞ!」
黒矢がついにネコベェの頭部につかみかかった。首をねじり取るみたいに、強引に振り回そうとする。
「爆発とか死ぬとか、わけわかんねえこと言ってんじゃねえぞ。俺のスマホを返せ! それから首のうざったいリングを外せ!」
「では、皆さんの健闘を祈っています」
ネコベェは最後まで楯突く不良少年を徹底的に無視し、黒矢の手を振り払って九十度ターンした。スタスタとドアのほうへ向かう。
「だから無視するんじゃねえッ!!」
黒矢がキレた。ネコベェの背中に飛び蹴り。ネコベェは吹っ飛んで床に倒れた。何人かの悲鳴。黒矢はすかさずネコベェに馬乗りになり、頭部をつかんで着ぐるみを脱がそうとする。手足をばたつかせて抵抗するネコベェ。手当たり次第に殴る黒矢。殴り返すネコベェ。
さすがにやりすぎだ……。
生徒たちはいきなり始まった喧嘩を面白がるか、巻き込まれないように身を引くかするだけで、誰も止めようとはしない。むしろ何人かは「やっちまえ!」「脱がせちまえ!」と黒矢を煽る。
俺はどうしていいか分からなくて、ただ傍観していた。
時計を見た。九時ちょうど。ネコベェが言っていた、ゲームの開始時刻。
まずいのでは? 黒矢を止めたほうがいいかもしれない。
だがどうやって? 俺には黒矢を止められるほどの力も体格もない。度胸もない。というか、キレた黒矢を止めるのは、教師でもかなり大変だ。
「どうして誰も止めないの?」桃井さんが嘆いた。「あれはやりすぎです。私、黒矢くんを止めてきます」
隣で桃井さんが立ち上がった。「危ないよ! 近づかないほうがいい!」と俺は言いたかったが声が全然でなかった。止める間もなく、桃井さんは胸元の二つの大きな桃をゆっさゆっさと揺らしながら駆けていってしまう。
「やめて! 黒矢くん、やりすぎです! ねえ、みんなも黒矢くんを止めて! ねえ聞いて!」
桃井さんは揉み合いになっている黒矢とネコベェのすぐそばまで近づき、声を張り上げた。黒矢がやめろと言われて素直にやめるわけないのに……。
そのとき、ちょうどネコベェが反撃の蹴りを黒矢にお見舞いした。ネコベェにのしかかっていた黒矢は、後ろに吹っ飛んだ拍子に立ち上がり、しかしバランスを崩して後ろによろめいた。そこに桃井さんの豊満な胸がエアバックのごとく待ち構えており、見事に黒矢の顔を受け止めた。
この場にいる男子全員が黒矢を羨ましいと思ったに違いない。男なら誰しも例外なく桃井さんの胸に挟まれたい、埋もれたいと願ったことがあるはずだ。きっとそうだ。いや絶対にそうだ。
黒矢は故意に桃井さんの聖域に飛び込んだわけではない。不可抗力というやつだ。それはよく分かる。しかし許せん! くそっ、黒矢め! なんてラッキーなんだ! 俺は歯ぎしりした。
桃井さんは頬を赤らめ、小さく「きゃっ」と声を上げて、黒矢を胸でキャッチしたわけだが、黒矢の顔が押し付けられた胸は、ぐにゃっと形を歪めて、その究極の柔らかさを物語る。
一方、黒矢は何事もなかったかのように、すぐに巨乳エアバッグから離れ、自分の両足で立った。まあ、目下殴り合いは続いているのだから、ゆっくりと桃パイの感触を味わっている余裕はないのである。なんと勿体ないことか。黒矢の日ごろの行ないが悪いせいだろう。
ネコベェがこの隙に起き上がる。
「よくもやってくれたなクソネコッ!」
黒矢は先ほどの蹴りのお返しとばかりに、大振りに殴りかかっていった。
が、
その瞬間、
ピピピピ……
というアラームみたいな音と、
ボンッと小さな爆発音がして、
黒矢と桃井さんの頭が、
胴体から離れて、
宙を舞った。
俺たちに大量の血の雨を浴びせながら。
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