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07 魔王城とまりも
しおりを挟むちちち…と、小鳥の可愛らしい囀りが聞こえる。もう朝になったのか、いつ寝たのか全く覚えていないけど、またゲームをしていて寝落ちでもしたか。
それにしては背中が痛い、覚えていなくても次の日になれば身体はベッドに入っているんだけど。
ぼうっと瞼を持ち上げれば、いつものように天井に貼られた宮先輩のポスターとご対面………しない。
ようやく違和感に気づいた。
いや気づくの遅過ぎだろう自分。
宮先輩のポスターとご対面どころか、私の視界に映る天井は先が見えない程に高い。え、待ってここどこ?
「………ぐこっ」
起き上がりの第一声は、とてつもなく間抜けな声音で恥ずかしくなった。誰も聞いていないだろうかと辺りに視線を流す。
冷たい大理石に似た石の床に敷かれた真っ赤に長いカーペットに私は寝転がっていた。それは真っ直ぐ、とある場所に続いている。
「ここは…」
どうしようもない既視感は、頭に流れた映像とぴったり重なり合う。
全く変わっていない、重たい空気感が漂うこの場所。
あの時と同じだ、真っ赤なレッドカーペットが敷かれた先に存在を主張するように置かれた玉座………魔王の、玉座。
「………」
思考がピタリと停止した。どこからか聞こえる小鳥のさえずる鳴き声は未だ健在で、重苦しい雰囲気の場所をほんのり明るくしているようだった。
玉座にそっと近づいて、恐る恐る背もたれの枠に指を滑らせる。もう黒い穴はどこにもない。
「チチチ」
「ぐおっ!?」
突然、玉座に一番近い窓から黒い影が飛び出してきた。黒い影は躊躇なく玉座の上に乗り、私はその姿を凝視する。
黒い…まりも?あ、微妙に耳らしき形のものがある。手みたいのもあるが……なにこれ?動物?虫?
虫にしてはサイズが大きい気もするけど、丁度サッカーボール程度の大きさだろうか。
「チチチ」
「え?まさか鳥の鳴き声ってこの子が!?」
可愛らしく鳴いてくれているが、全然鳥に見えない。だけどつぶらな瞳が実に心をくすぐる。とってもキュートな生き物だ。
黒い生き物は玉座の上をぴょこぴょこ飛び跳ねると、勢い余って私の胸に飛び込んできた。
反射的に添えた手が、柔らかくてふわふわの毛に触れる。
な、な、なな…なんなのこの子!?凄い身体が柔らかい!!もちもちふわふわ新感触!!癖になりそうだ。
「チチ」
撫でられて気持ちが良くなったのか、黒い生き物は瞳をうっとりと細める。玉座に戻そうとしたが、抵抗してピタリと私に引っ付く。萌えた。
「にしても…」
仕方がなく黒い生き物を抱き直した私は、くるりと身体を回して辺りを見渡す。
見覚えのある場所。私は前に一度、この場所に訪れた事があった。
「やっぱりここって」
…………魔王城?
「チチチ」
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