上 下
8 / 45

第8話 知らない間にバズってました

しおりを挟む
【配信アンケート。
 1.ロリガワを使用しての食べ食べ配信。(0%)
 2.リアル妹を召喚しての食べ食べ配信。(100%)
 リアル妹を召喚しての食べ食べ配信が選択されました。】

 アンケートの結果が容赦なく配信画面に表示される。
「ふえええぇっ!?」
 美織は思わず変な声を発した。

「家族とはもともとわけて食べるつもりでいましたけど⋯⋯、まさか配信に呼んで食べるだなんて⋯⋯。考えてもなかったよ~。」

 アンケートの内容及び結果に、すっかり大パニックだった。しかしアンケート結果は絶対だ。美織が出したものでないとはいえ、リスナーに回答してもらったのだから。

「わ⋯⋯わかりました。妹とご飯を食べる配信をします。妹の顔出しは出来ないので、妹もVtuberとして出てもらいますね。はあ⋯⋯なんでこんなことになったかな。」

 美織はがっくりと肩を落とした。
「妹はまだ小さいので、早く寝かせないといけないですから、明日の配信は夜の6時からおこないますね。妹の夕ご飯の時間です。」

:おk
:把握
:妹ちゃん楽しみ
:リアルょうじょprpr
:夕飯6時って早くね?
:風呂入って寝ること考えたら、小学生なんてそんなもんだろ

 配信は、美織のリアル妹が出るという話で盛り上がっている。それにしてもこのアンケートというスキル、一体どういう決まりで動いているのだろうかと美織は考える。

 確定ドロップのアンケートはわかる。必ずレアが出る代わりに、アンケートに答えてもらわなくてはならないという制約がある。

 いわばそのデメリットがあることで、チートではありつつも、万能ではないスキル、ということになる。

 だが、配信内容の指定というのは、正直どう考えても解せない。スキルに配信が操られているようなものだし、そんなスキルは見たことも聞いたこともない。

 聖魔法系だと、配信の際に画面がチカチカして、体調の悪くなる人も稀に出るから、強いけど配信を邪魔するスキルだとも言われているけれど、知っているのはその程度だ。

 それにまた、変なアンケートを出されて配信が振り回されたらと思うと、正直次の配信が怖くもなってくる、と思っていた。

『とりあえず、今は考えても仕方がないな。ガワはいおりロリバージョンを使うとして、配信で変なことを言わないように、あの子をちゃんと説得しておかなくちゃね。』

 美織はそう考えながら、配信画面の向こうへ向けて、次の配信お楽しみに~と、一見楽しげに手を振ってみせたのだった。

 そんな美織の気持ちとは裏腹に、イレギュラー一撃が本物の実力だったとわかったことにより、にわかに配信が拡散されだした。

 ルカルカを助けた際は、あまりに一瞬の出来事過ぎて、ルカルカの目の前の魔物と美織が戦っている状態を、きちんと認識出来ていたリスナーがいなかったのだ。

 一瞬過ぎた美織の攻撃を、ルカルカのカメラマンが投げ捨て、地面に転がっていたカメラがとらえ、配信に流れていた。

 それを切り抜いて超スロー再生で拡散した切り抜き師もいたのだが、スローにより画像が粗くなったことと、不可能だという思い込みから、一撃斬を信じる者が少なかった。

 だがその実力を、下層のギガントミノタウロス相手に、リアルタイムで嫌でも確認させられたのだ。実力さえ認められていれば、あの日は確実にSNSが祭りだっただろう。

 あのイレギュラーの日。美織の実力さえ正しく把握出来ていれば、それは祭りになる筈の火種だった。ギガントミノタウロス一撃の切り抜きと、あの日のイレギュラーの切り抜きが、合わさって拡散されていく。

 それは最初は静かな燻りから始まり、徐々に大きくなっていった燃えそこねた火種たちは、あの一撃が本物だったこと、剣呑寺いおりが現役女子高生なことに燃え盛った。

 美織が一晩寝て起きるまたたく間の間に、剣呑寺いおりはネット界隈の一躍時の人となっていたのである。

 ──それを面白くなく思っていた人物が1人。

「フーン?現役女子高生ダンVtuber、剣呑寺いおり、ねえ⋯⋯。
 あんなイレギュラーなんて、あたしがあの場にいたら、あたしのほうが倒してたし?あんま調子にのんなって感じな。」

 獄寺ちょこ。いわゆる迷惑系に近い配信をやっている、過激系ダンVtuberだ。
 美織が清楚系とするなら、中の人はいわゆるギャルの見た目をしていてガワもそれだ。

 大手ギルドや大物単独配信者相手に、獲物やドロップ品の横取りをする配信がウケている。厄介なのは、ちょこが上位ランカーにも匹敵するスキルを持ち合わせている点だ。

 スキル盗賊、隠密、移動速度強化。まさに邪魔をする為に付与されたかのようなスキルの数々を駆使して、トドメの一撃を食らわせたり、ドロップ品を奪ったりする。

 何度かチャンネルBANも繰り返していたが、その都度新しいチャンネルを作っては、また10万人規模まですぐに返り咲く。

 そんなちょこが、今最もSNSで注目を浴びている剣呑寺いおりを、見逃す筈がなかったのだった。

────────────────────

この作品は読者参加型です。
アンケートが出たらコメントお願いします!

少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

OLサラリーマン

廣瀬純一
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

とある元令嬢の選択

こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。

処理中です...